★幼児
オスカーとフー
テオ 文 マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット絵
さくまゆみこ 訳
評論社 1365円
英語に「雲に頭をつっこんでる人」「頭に雲がかかっている人」という表現があります。いつも空想にふけっているようなぼんやりさんのことです。
この絵本の主人公オスカーの頭にはまさに雲がかかっています。といってもたとえではなく、ちゃんとフーという名前まである本物の雲です。
まどべにすわってぼんやり空を見ているのが好きなオスカーは、ある日、両親といっしょに旅行にでかけます。
ところが、オスカーは砂漠のまんなかで迷子になってしまいました。砂と燃えるような空しかない砂漠をかけまわって大声で助けを呼びますが、ひとっこひとり見かけません。しゃがみこんで泣いているオスカーに声をかけたのが雲のフーだったのです。
淡い水彩画で描かれた美しい砂漠の風景のなかで育まれる少年と雲の友情物語。
バスをおりたら…
小泉るみ子 作
ポプラ社 1365円
東京で会社勤めをしている頃、何度か北海道にきたことがあります。そのたびに強い印象を受けたのは、空の広さと風の心地よさでした。東京ではほとんど風を感じることなどなかったのです。
この絵本には本物の空があり、本物の風が吹いています。
毎日、長い距離をひとりで歩いて学校に通う「わたし」はバスにあこがれています。夏のある日の帰り道、意を決してとうとう乗りこんではみたものの、どうやらまちがったバスに乗ってしまったようです。見知らぬ場所であわてておりて、夕暮れがせまる草原をかきわけ、とうもろこし畑を抜けてころげるように必死で家に帰り着くまでの心細さがひしひしと伝わってきます。でも、そんな「わたし」をやさしく見守ってくれる空と風も感じられるのです。美唄出身の絵本作家の真骨頂!
★低・中学年
風たんてい日記
杉田比呂美 作
小峰書店 1365円
風といえば、クライアントの依頼を受けて、風そのものを集めたり、風に関するさがしものをしてくれる探偵さんがいることをご存知ですか?
そんな一風かわった仕事をしているミナミカゼワタル君の絵日記が本書です。
風の化石をさがしてくださいとたのまれれば洞窟の奥へ奥へと大むかしの風探しにでかけ、ちいさなたつまきがあばれているときけば、さっそくつかまえに出動。風の写真を撮ってくださいという依頼もお安い御用。
イヌのゼファーといっしょに、四季をとわず海へ山へ草原へとでかけていって、風を追いかけまわるミナミカゼ君の毎日を見ているだけで、心にすがすがしい風が吹きわたるようです。ああ、うらやましい。わたしも弟子入りして、風たんてい事務所をひらきたいなあ。
サティさんはかわりもの
M・T・アンダーソン 作 ペトラ・マザーズ 絵
今江祥智&遠藤育枝 訳
BL出版 1470円
変な人、かわりものといわれる人が大好きで、ついつい心を魅かれてしまうのですが、サティさんのかわりものぶりもなかなかのものです。いまではテレビのCMなどでもよく耳にする「ジムノペディ」や「グノシエンヌ」などを作曲したフランスの音楽家エリック・サティです。
子どものままおとなになってしまったようなサティのかわりものぶりと、新しい音楽を生み出そうともがく苦悩が淡々と描かれた絵本です。かわりものであるが故に旧弊を打ち破って新しい音楽を生み出すことのできたサティですが、かわりものであることの自由さと悲しさが胸を打ちます。ぜひ、サティの音楽をBGMに(家具のようにさりげなくそこにある音楽というBGMの概念を生んだのもサティですが)ページをくってみてください。
★高学年以上
夜のピクニック
恩田陸 作
新潮社 1680円
数多くのファンに支持され、新作が出るたび話題をひっさらう大人気エンターテインメント作家の作品をわざわざとりあげるまでもないかとも思ったのですが、まだ恩田陸ワールドを体験したことのない不幸な人に読んでもらえるきっかけになればと思い直し、紹介します。
八十キロの行程を二十四時間かけてただひたすら歩きとおすという高校の行事のはじまりから終わりまでを描いただけの、特に大きな事件が起きる訳でもない小説なのですが、どうしてこんなにおもしろいんだ!
高校時代からは遠く離れてしまった人には、泣きたくなるほど切なく当時を思い出させてくれるでしょうし、いままさに高校生活を送っている人には、大きな勇気を与えてくれることでしょう。特に高三諸君、まだまにあうぞ!
サンネンイチゴ
笹生陽子 作
理論社 1260円
詩を書くことくらいしかとりえのないナオミは、ひょんなことから学校一の問題児、アサミと近づきになり、あれよあれよというまにホームレスの若者と知り合ったり、地元をさわがせる物騒な事件にまきこまれたりしてしまいます。でも、おかげでナオミは自分を見つめなおし、新しい友情を手に入れるのです。
いまを生きる中学生の姿がとてもリアルに描かれていて、どきどきしながら一気に読み終えました。いやな先生や、ややこしい人間関係にふりまわされたこと、いろんなプレッシャーにおしつぶされそうになったことまでまざまざと思い出して、ちょっとひやりとした感触もありました。でも、それも作品の力。いまもむかしも子どもたちは現実の中を生きていかねばならず、その毎日の中にこそ喜びもあることを再認識できました。
★幼児
赤いカヌーにのって
ベラ・B・ウィリアムズ 作
斎藤倫子 訳
あすなろ書房 1365円
赤いカヌーで二泊三日の川くだりにでかける大人ふたり子どもふたりのお話です。まずは地図を広げてコース選び。それから旅に必要なものを全部紙に書き出して買いだしへ。そして、朝霧のなかをいざ出発! とちゅうで魚つりをしたり水浴びをしたりしながらの旅。ゆったりした時間が流れていきます。
ロープの結びかた、フルーツ・シチューのつくり方、テントのはり方なんていう実践コーナーや、魚や鳥を紹介するページもあって旅へのあこがれをかきたてます。
せっかくカヌーの旅にはぴったりの川がたくさんある北海道にいるんだから、いずれはぜひなんて常々思っていたんですが、結局実現できずにきました。でも、この絵本を読んでいるとむずむずしてきます。よーし、やるぞ!(いつかきっとね)
かいぶつぞろぞろ
辻村益朗 構成・文
福音館書店 1575円
「絵にみるたし算のいきもの」というちょっと不思議な副題が。でも、ページをめくっていくと納得!
古今東西のさまざまな想像上のかいぶつの絵を紹介しているのですが、どれほど想像力豊かな絵描きさんといえどもいきなり見たこともないものを描くのはたいへん。そこで、いろいろな動物を寄せ集める、つまりたし算するところからはじめたんですね。
羽のはえた馬ペガソス、頭はワシ、からだはライオンのグリフォンといった風に。
それから、一枚の絵にこれでもかというぐらいに次々とこわいイメージをたしていって見るものに恐怖を与えようという絵もあります。そういった地獄図が西洋にも東洋にもあるのがまたおもしろい。
それにしても中国の『山海経』のかいぶつたち、絵を見ている分にはけっこう笑えるけど、本当にいたらこわいぞ。
★低・中学年
土の中からでてきたよ
小川忠博 写真・文
平凡社 1680円
ときにユーモラス、ときにちょっとこわい豊かな表情の土偶や、さまざまな意匠が目を楽しませてくれる土器、生活の一端を生き生きとうかがわせてくれる道具やアクセサリーなど、この写真絵本に登場するのはすべて縄文時代の発掘品です。
なかには未消化の魚の骨まではっきりわかる立派なうんちの化石まであります。
質感や重みまで感じ取れそうな写真を見ていると、はるかむかしからこの日本の大地で日々を生きていた人たちにいつのまにか思いを馳せている自分に気づきます。
そして、自分もまた営々とつづく長い歴史のなかに確かな位置をしめる存在なんだと感じるのです。
学生時代には考古学をかじり、縄文遺跡で発掘に携わったこともあるわたしとしては、とってもうれしい作品でした。
金曜日がおわらない
アニー・ドルトン 作 風川恭子 絵
岡本浜江 訳
文研出版 1260円
主人公のレニーは、こんなやつがそばにいたらちょっと迷惑という感じのジコチュウで粗暴な男の子。
そのレニーが金曜日につかまってしまった! むしゃくしゃすることばかりが起こって、まわりにもやたらとあたりちらしてやっと終わったと思った金曜日が、目覚めてみるとまたはじめからくりかえされるのです。何度も何度も際限なく。
同様の趣向の作品、ケン・グリムウッドの『リプレイ』や北村薫の『ターン』といった作品が大好きなわたしとしては、思わずニヤリ。
戸惑い、怒り、絶望感を味わうレニー。さて、レニーはくりかえす金曜日をどのように過ごし、どのように抜け出すのでしょうか。それはもちろん、読んでのお楽しみ。自分だったらどうするかと考えるのも楽しいですよ。
★高学年以上
ダストビン・ベイビー
ジャクリーン・ウィルソン 作 ニック・シャラット 絵
小竹由美子 訳
偕成社 1470円
主人公のエイプリルは、誕生日が大きらい。自分の生い立ちと立ち向かわなければならないからです。彼女は生まれた日に、裸のままごみ箱に捨てられていたのです。
十四歳の誕生日、現在の里親とのちょっとした行き違いをきっかけに、エイプリルは学校に行かずに自分の過去にかかわりのあった人たちを訪ね歩くことにしました。
つかのまの楽しい思い出をとりもどしたり、なつかしい人にも会うことができましたが、施設や養父母の元でのつらいつらい体験がすさまじい勢いでよみがえり、すっかり心乱れるエイプリル。最後には何を得るのでしょう。
難しいテーマですがさすがに英国の大ベストセラー作家ウィルソン。周到な取材にも裏付けられているのでしょう、息をのむほどリアルに描かれ、深い感動を与えてくれます。
ルビーの谷
シャロン・クリーチ 作
赤尾秀子 訳
早川書房 1575円
偶然ですがこちらも赤ん坊のときに親に捨てられた孤児の物語。里親や施設の間を転々とし、つらい人生を送ってきたという点では共通するのですが、『タストビン・ベイビー』のきわめて現代的な「痛さ」に対して、こちらの作品にはむかしなつかしい『ハイジ』や『小公子』を読むような安心感があります。
それはこちらの主人公が双子の兄妹で、かたときも離れずに苦しみや喜びをわかちあっていることからもたらされるものでしょうし、ふたりを取り巻く豊かな自然のやさしさにもよるのでしょう。そして、もちろん、ふたりを受け入れようとする老夫婦のあたたかさ。
今回取り上げた同じテーマのまったくちがったすばらしい物語。両方を読み比べることのできる幸せをぜひ味わってみてください。
★幼児
なんだってしてあげるよ
ジョン・ウォレス 文 ハリー・ホース 絵
さくまゆみこ 訳
あすなろ書房 1300円
ちびくまのチャーリーはおっきなくまのジンジャーが大好き。ジンジャーのためならなんだってしてあげたいと思っています。でも、なにをやってもうまくいきません。庭のていれもリンゴ集めもだめ、そうじをはじめるとかえって家中ちらかってしまう始末。けれども、そんなことでめげるチャーリーではありません。ジンジャーによろこんでもらえそうなことならどんなことでもしてあげたいんです。そこでジンジャーがチャーリーにお願いしたことは……。
この絵本を読んでもらった子どもは、あたたかい安心感に包まれてとてもしあわせな気持ちになることでしょう。
一方、もうちびくまではなくなってしまったわが家の子どもたちとチャーリーを重ねあわせて読んでいた私は、ちょっとばかり切ない思いがこみあげてしまったのでした。
だめだめ、デイジー
ケス・グレイ 文 ニック・シャラット 絵
よしがみきょうた 訳
小峰書店 1300円
子育て中のお父さんお母さんがこの本を読んだら、きっとドキッとするはずです。ママにはなをほじくっちゃだめといわれたデイジーは、「だってママだって」と具体的にいつどこでかまであげて言い返すんですから。
「洋服をゆかにちらかしちゃだめ」といわれても、「だらだらするんじゃありません」といわれてもちゃんと言い返します。ママは必死でいいわけしますが、なんだか旗色は悪いんですよね。ね、思い当たることありません?
でも、考えてもみてください。すぐ言い返せるってことは自分でもそれがいけないんだとわかってるってことだし、こと細かに観察しているのもデイジーがママのことを大好きだからなんです。
さて、ママはそんなデイジーにどんなおしおきをしたんでしょう。
★低・中学年
2年3組マンガ少女町田メグちゃん
那須正幹 作 はたこうしろう 絵
ポプラ社 900円
うちの子たちは読む専門ですが、将来マンガ家になることを夢見ているマンガ好きの子もたくさんいることでしょう。メグちゃんもそんな子のひとりで、頭の中はいつでもマンガのことでいっぱい。実際に描くのも上手でまわりからも一目置かれています。
でも、親友のみさとちゃんはマンガ以外になんのとりえもないメグちゃんのことを心配しています。さかあがりもできない運動音痴だし、くろさかくんにボールをぶつけられてもだまったままで怒ることもできない弱虫だと思っているのです。
でもね、ご安心を。時間を忘れて没頭できる好きなことを持つメグちゃんは、本当はだれよりも強いんだから。
マンガに必要な道具やテクニックも紹介してくれる入門書にもなっています。
色形
栗林慧 文・写真
フレーベル館 1400円
本欄では毎回計六冊の本をご紹介しているのですが、もし許されるならそのうちの四冊分を使ってこの『栗林さんの虫めがね』シリーズ全巻を一冊ずつ取り上げたいくらい。本書はその代表です。
虫の写真家の栗林さんが長年にわたって研究開発してきたカメラや機材、テクニックを駆使して撮影した虫たちがつぎつぎと登場します。その造形の美しさ、奇抜さにおどろきの声をあげたり、ため息をついたりの連続です。
自分が観察した記録をすべて文章で書きとめるという難儀な作業にあけくれたファーブルさんが本シリーズを見たなら、いったいどんな反応を示したでしょう。
肉眼ではけっしてとらえることのできない画像が目白押しの他の巻『発見』『瞬間』『変身』もぜひご覧ください。
★高学年以上
パイの物語
ヤン・マーテル 作
唐沢則幸 訳
竹書房 1800円
十六歳の少年パイは動物園経営者の息子。インドからカナダへ、動物ごと移動することになった一家でしたが、太平洋上で貨物船が沈没してしまい、パイはただひとり救命ボートに乗り込んで命をとりとめます。ところがそのボートにはトラをはじめ、数種の動物たちも乗っていたのです。
動物たちと主人公はやがて心を通わせ協力しながら……なんて甘っちょろい展開を想像したらとんでもありません。それぞれの動物はそれぞれの動物のまま。トラは獰猛で危険な野獣であり続けるのです。ありったけの知恵と勇気をふりしぼりながら長い長い漂流をつづけるパイの運命は……。
手に汗握る冒険小説でありながら、重層的で哲学的、さまざまな解釈が可能な真の文学作品といえるでしょう。さすがイギリスの権威ある文学賞ブッカー賞受賞作。
あゆみ
しんやひろゆき 作 松尾たいこ 画
講談社 1300円
異性である自分の息子のことがよくわからないというお母さんの声が耳に届くことがあります。特に思春期にさしかかって、小さな男の子からおとなに変わりつつある子どもならなおさらです。そんなお母さんや、近頃クラスの男の子のことがよくわからなくなってきたと思っている女の子におすすめ。いつもエッチなことばっかり考えてる自分って、どこか変なんだろうかと心配している男子もね。
小六のブンとサブを中心に全編ノリノリの関西弁でつづられた軽妙な物語ですが、笑えるだけじゃありません。友情やほのかな恋、将来の夢や地域との交流がときに真剣に、ときに切々と語られていて、きっとまぶしい思いで読み進めることになるでしょう。そして、すこしばかり、この年頃の男の子の心理も理解できるようになるかもしれません。
★幼児
ハリネズミと金貨
ウラジーミル・オルロフ 原作 田中潔 文 ヴァレンチン・オリシヴァング 絵
偕成社 1400円
子どもに喜ばれる絵本に、おなじようなできごとがすこしずつ形を変えてくりかえし起こり、最後にクライマックスをむかえるというパターンのものがあります。この作品もその典型といっていいかもしれません。
年をとったハリネズミが森の小道で金貨を拾いました。冬のしたくにその金貨を使おうと思っているところで、まずリスと出会います。ハリネズミはリスからキノコを買おうとするのですが……。次にはカラスと出会います。そして、クモ、クマ……。ハリネズミはその金貨をどのように使ったのでしょう。
森の住人たちのさりげないやさしさや思いやり、そして、静かな静かな最後のシーンに、心がぽかぽかとあたたかくなり、穏やかに笑みを浮かべている自分に気づく。そんな絵本です。
てがみはすてきなおくりもの
スギヤマカナヨ 作
講談社 1300円
これだけメールがあたりまえの時代に、手書きの文字で書いた手紙の方が心がこもるから、みんなもっと手紙を書きましょう。なんていうと、まずまちがいなく、オヤジがなにを時代錯誤なこといってんだと思われるでしょう。
でも、この絵本を読んだら、だれだって手紙を書きたくなっちゃうと思います。手紙にはこんなにおしゃれで奇抜で相手をびっくりさせる「技」があるんだから!
文字通りの葉っぱのはがきや貝殻をそのまま使った手紙、切手を駆使してアートしちゃったはがきなどなど、これほど遊べるなんて知らなかった。日本の郵便局も捨てたもんじゃないぞ! 実際に受け取ったらうれしいだろうな。
サンプルとして紹介されている「作品」が、どれもちゃんと消し印の押されたものだというところにもニンマリ。
★低・中学年
エンザロ村のかまど
さくまゆみこ 文 沢田としき 絵
福音館書店・月刊たくさんのふしぎ2月号 667円
電気も水道も通っていないケニアの村々で、とても重宝されているかまどがあるそうです。だれにでも簡単に作れて、なべをかける口が三つもあって便利。そのうえ熱効率がよく、たきぎの量もすくなくてすむんだそうな。
アフリカの人々の暮らしにぴったりあったこのかまど、実はある日本人が考え出して広めたものなのです。長年ケニアで暮らし、一九九一年からは農村の生活を改善する仕事に取り組んでいる岸田さんという女性のアイディアです。
お金だけはつぎこむけど、本当に役に立っているのかどうかよくわからない国としての日本の援助のありかたを大いに考えさせられます。
援助とはその土地の生活をよく知った上で、頭と心を使って本当によろこばれることをする、それって、本来あたりまえのことなんですけどね。
こうちゃんごんたくれ
鹿島和夫 文・写真
ポプラ社 1000円
どのクラスにもひとりくらいは、やんちゃで手がおえないけど、人気者っていう子がいるんじゃないでしょうか。マイペースでクラスをひっかきまわし、いつもトラブルの種になっている。だけど、その子がいないとなんだかクラスが静かでつまんない。
こうちゃんはそんな「ごんたくれ」の男の子。その表情のなんと豊かなこと。たくさんのクラスメートといっしょに写った写真のなかでも、ひとりだけ目立つ目立つ!
写真を撮った担任の鹿島さんも、こうちゃんのおかげでいろいろ困った目にもあったことでしょう。でも、それもひっくるめて楽しくて仕方ないという思いがあらわれたいい写真がいっぱい。
その後、こうちゃんはどんな風に成長しているんでしょう。それも知りたいなあ。
★高学年以上
モギ――ちいさな焼きもの師
リンダ・スー・パーク 作
片岡しのぶ 訳
あすなろ書房 1300円
両親どころか自分の本当の名前も知らずに橋の下で育った少年モギが暮らすのは、青磁の産地である十二世紀の韓国のある村。育ててくれたトゥルミじいさんの、貧しいとはいえ、やさしく節度ある人間性もあって、モギは素直で誠実な少年です。
ひょんなことから、以前からあこがれていた青磁作りの道に踏みこんだモギですが、頑固一徹の親方のもとでの長くてきびしい試練がつづきます。それでもモギは、けっして屈することはありません。やがて大きな転機がやってきて、重い責任を背負わされたモギは……。
今の子どもたちには想像もつかない、どん底ともいえる環境で生きるモギですが、きっとうらやましく思う子どもも多いのではないかと思います。モギにはこれほどまでに強く魅かれ、のめりこめるものがあるのですから。
駆けぬけて、テッサ!
K・M・ペイトン 作
山内智恵子 訳
徳間書店 2000円
両親の離婚で幼い頃に愛する馬と引き離され、母親の再婚相手の冷酷な仕打ちもあって、かたくなに心を閉ざしてしまうテッサ。まわりにはいつもちゃんと見守ってくれている人たちがいるのにね。
自虐的になり自ら呼びこんだともいえますが、テッサにはこれでもかとばかりに次々と不幸が襲いかかります。
そんなテッサが、ぶかっこうで、役立たずの烙印を押され、やがては失明にまで追いこまれる馬のピエロと出会ったことから運命の歯車が音を立てて回り始めます。
騎手を目指し、ピエロに乗ってイギリス最大のレース、グランド・ナショナル大障害に出るというテッサの夢はかなうのでしょうか。
「フランバース屋敷」のシリーズでおなじみのペイトン、さすがに馬の描き方は抜群でレースシーンも迫力満点!
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