[NEW!]
★幼児
はこははこ?
アントワネット・ポーティス 作>
中川ひろたか 訳
光村教育図書 1470円
大人にとってはなんでもないものが、子どもには宝物っていうこと、ありますよね。石ころだったり、びんのふただったり、包装紙のきれはしだったり……。捨てなさいといっても、頑として受け入れない。親としては、やれやれ。でも、そんなこだわりを、まだ未熟で物の価値がわかっていないからだ、などと思ったら大まちがい。子どもだからこそ、大人が失くしてしまった柔らかい感性や豊かな想像力で、測り知れない価値を見出しているのです。
主人公のウサギくんが大好きなのは段ボール箱。だって、箱はただの箱じゃないから。たったひとつの箱から広がる大きな世界に、子どもたちはみな、ワクワクしながら共感するでしょう。
ゆうびんやさんおねがいね
サンドラ・ホーニング 文
バレリー・ゴルバチョフ 絵
なかがわちひろ 訳
徳間書店 1575円
もうじき、遠くはなれたまちに住むおばあちゃんの誕生日。コブタくんはおばあちゃんによろこんでもらおうと、郵便屋さんに、「あるもの」を届けてもらうことにします。それは窓口のイヌさん、仕分け係のヤギさん、トラック運転手のウサギくん……、というぐあいに、つぎつぎとリレーされていきます。
それは、かかわったみんなをとても幸せにしてくれるものでした。最後に受け取ったおばあちゃんが大よろこびしたのはいうまでもありません。そして、おばあちゃんがお返しに送ったものは……。
読み終わったら、きっと親子で郵便屋さんごっこをしたくなりますよ。そして、幸せな気分をあじわえることまちがいなし!
★低・中学年
ワビシーネ農場のふしぎなガチョウ
ディック・キング=スミス 作
三原泉 訳
いとうひろし 絵
あすなろ書房 1260円
幸せな気持ちになれるということにかけては、前出の『ゆうびんやさん……』にけっしてひけをとりません。
いつも貧乏で、運のわるさにはあきれてしまうぐらいのワビシーネ農場のスカンピンさんですが、ある日、農場のガチョウが金の卵をうみます。その卵から生まれたのがウレシーナと名づけられた金のガチョウ。ウレシーナにはある不思議な力がそなわっていたのです。その力とは……。
金の卵、金のガチョウといえば、民話や伝説にも多く見られますが、本書はけっして古くさい物語には仕上がっていません。なのに、なんだかなつかしくて、心がほっこりとあたたかくなる、そんな幸せな物語。挿絵も大きく貢献しています。
りんごの礼拝堂
たくぼひさこ 文
HAYATO 絵
福音館書店 700円
「たくさんのふしぎ」という月刊誌の最新号です。この雑誌、毎号非常に高い水準の作品が目白押しで、お手軽な価格でこんなにおもしろくていいのか! と毎回感動しています。テーマも多岐にわたっていて、科学、民俗・人類学、社会学、芸術などが一応のメインといえるようですが、ジャンルでは割り切れない「ふしぎ」も「たくさん」。
今号も、ひとりの芸術家が、フランスの古びた礼拝堂を美術作品として再生させる過程を中心に描いていますが、彼の芸術家としての歩みや、地元のひとたちとの交流なども丹念に紹介されていて、読みごたえがあります。この礼拝堂を見るためだけに、フランスまでいってみたいという気にさせるほどに。
★高学年以上
ミクロの世界にズームイン!
阿達直樹・岩永浩・元島栖二 著
文研出版 1470円
虫眼鏡にはじまって、カメラや天体望遠鏡、顕微鏡など、いわゆる光学系の道具が大好きです。その究極といえるのが電子顕微鏡。どうしても実物が見てみたくて、某大学までおしかけたことがあるほど。そんなわけで、電子顕微鏡がとらえた画像が、これでもかというぐらいたくさん載っている本書を読んでいるあいだ、ずっとウキウキ、ワクワクしっぱなしでした。
いずれも、肉眼ではけっして見ることのできない驚異の画像ばかり。ミツバチの眼から生えた毛にからみついた花粉とか、タバコの煙の粒なんて想像できます?
写真を見ているだけでも十分楽しいのですが、解説を丁寧に読んでいくと、自然界の巧妙な仕組みにただただ感心。
最後のひと葉
オー・ヘンリー 作
千葉茂樹 訳
和田誠 絵
理論社 1260円
実はこの欄を担当させていただくのは今回が最後となります。というわけで、最後の最後に拙訳書の紹介を。
現在進行中のオー・ヘンリーの作品集全八巻のうちの一冊。全巻ひとりで訳しているのですが、まずは残された二百数十編をほぼすべて読むところからはじめました。その結果、これまで邦訳のない作品が、全体の三分の一ほどをしめる画期的な作品集に。本編も定番の表題作のほか、感動的なもの、ひねりのきいたニヤリとさせられるものまでたっぷり。和田誠さんの温かみのあるしゃれた挿絵がたくさん入っているのもシリーズの大きな特徴です。ぜひ、手にとってみてください。
それでは、長いあいだ、ありがとうございました。
[NEW!]
★幼児
ローバー
マイケル・ローゼン 文
ニール・レイトン 絵
しみずなおこ 訳
評論社 1365円
歩いていて、ときおり散歩中の犬に吠えつかれることがあります。連れている人は、やめさせることができないんですよね。思わず「どっちが主人なんだ!」といいたくなりますが、この絵本を読むと、人間中心の自分の視野のせまさに気づかされました。
主人公の犬にはペットがいます。人間の女の子で、ローバーという名前をつけてあげました。夜には寝かしつけてあげるし、公園に散歩にもつれていってあげます。夏のある日、ローバーの両親に車を運転させて海につれていったのですが、そこでひと騒動が起きて……。犬から見た人間社会の描写にくすくす、にやにやしっぱなしです。
でも、やっぱり、犬はちゃんとしつけてくださいね。
さがそう! ちがう虫
海野和男 写真・文
偕成社 1470円
ページを開くと見慣れたものも、はじめて見るようなものもふくめてたくさんの生き物がうじゃうじゃ。そして、こんな設問が。「昆虫ではない生きものはなんびき?」蝶やカブトムシは昆虫。カタツムリやカニはもちろんちがう……、慎重に数えてページをめくると答えがでてきます。昆虫の定義や見分け方の解説もあります。次々とでてくるクイズには思わず夢中になってしまうし、簡潔でわかりやすい解説にも感心。たしかにムシハカセも夢じゃないかも。
ちなみに、昆虫にはくわしいつもりでしたが、全問不正解というみじめな結果で、ちょっとくやしい。全三巻のシリーズで『まねする虫』『かくれる虫』もおもしろい! 親子でわいわい楽しめます。
★低・中学年
おわらいコンビ ムサシとコジロー
上條さなえ 作
岡本順 絵
ポプラ社 1050円
はたからは気楽な小学生に見えたって、人には言えない悩みや秘密はあるもの。ときにその重さに耐え切れず、だめだとわかっていることに手をだしてしまうことだって。
お笑い芸人をめざす、明るく元気なムサシにも、自分では解決しようのない悩みが。お父さんは落語家の修行中で収入ゼロ、家計を支えているのは、朝夜かけもちでパート勤めのお母さん。そう、ムサシの家は貧乏なんです。そのせいでかなわないあれやこれやを数え上げれば、友だちまでがうらやましく、うとましくなり、あげくのはてにある事件が……。そんなムサシが立ち直ることができたのも、やっぱり両親をはじめ、愛し、気にかけてくれる人たちあってこそなんですよね。
ふたり☆おなじ星のうえで
谷川俊太郎 文
谷本美加 写真
塚本やすし 絵
東京書籍 1470円
左ページにはインドの実在の少女ラマデビが写真で、右には日本の架空の女の子春佳がイラストで紹介されています。家族や食事、学校、生活の断片を淡々と重ねていくだけなのですが、きっとなにかを感じずにはいられません。
ラマデビは父を亡くし、推定九歳のいま、学校にいかず働いています。春佳とくらべれば、極貧といっていい生活ですが、だからといって不幸なの? 春佳はなに不自由ない暮らしだからといって幸せ? 売り上げの一部が途上国の児童の支援に使われるということなので、豊かな国の「幸せな」人間として、貧しい国の人を助けようというメッセージをこめて作られたのでしょうが、もっと深い読み方ができる本だと思いました。
★高学年以上
たたみの部屋の写真展
朝比奈蓉子 作
偕成社 1260円
正直言って、タイトルも装丁も地味なたたずまいの作品です。でも、だからといって見過ごすのはもったいない。
中一のタモツとユウイチは空き家だと思った古い民家の庭を隠れ家として利用しはじめます。ところが、家主のおばあさんが入院生活からもどってきたうえに、認知症のそのおばあさんに、死んだ息子と親友だとかんちがいされて……。親子の絆、友情、別れといった、むずかしいテーマに、誠心誠意、真正面から取り組む著者の姿勢はとてもすがすがしく、大きな感動をもたらしてくれるでしょう。
著者が抱いている、人間の善意への絶対的な信頼が書かせた作品だということがくっきりと見てとれて、うれしくなってしまいます。
サイン会はいかが?
大崎梢 作
東京創元社 1575円
本屋さんが舞台のミステリー。大きな事件や犯罪が起こるわけではないのですが、成風堂では、謎めいた事件が次々に発生します。探偵役は超がつくほど不器用な学生バイトの多絵ちゃん。
ちょっと不気味だったり、ほほえましかったり、事件のタイプもいろいろですが、小学生の男の子の不思議な行動がテーマの『君と語る永遠』には、こみあげるものが。
著者が元書店員というだけあって、書店の舞台裏も垣間見ることができます。シリーズ第三弾ですが、この巻から読んでもだいじょうぶ。このシリーズを読んでいると、あらためて、本も本屋さんも大好きな自分に気づき、その業界にずっと関われてこれた幸せをかみしめています。
[NEW!]
★幼児
ラポラポラ
ふくだゆきひろ 写真・文
草炎社 1365円
「ラポラポラ」とはアイヌ語で「はばたく」という意味だそうです。そして、森を自由に飛び回る妖精をもさすことばだとか。北海道の野生動物がたくさん登場する写真絵本ですが、ラポラポラの気配をとらえようとする著者の思いが反映してか、ただの写真集ではない物語性の豊かな作品に仕上がっています。
ページを開いた瞬間には、愛らしい動物たちの表情に目がいくのですが、じっくり見ているうちに、それらの動物たちをあたたかく見守る「なにものか」の存在も確かに感じられて……。
いそがしさにかまけて、せっかく北海道にいながら、ラポラポラと出会う機会を作れないでいることが、なんだかもったいなく思えてきます。
としょかんライオン
ミシェル・ヌードセン 作
ケビン・ホークス 絵
福本友美子 訳
岩崎書店 1680円
ある日、図書館に大きなライオンがぶらりとはいってきました。すっかり気に入ったライオンですが、大きな声でほえたときには、館長さんにしかられて、しょんぼり。でも、ちゃんときまりを教えてもらい、毎日通うように。
館長さんの仕事を率先して手伝い、子どもたちの人気者にもなったライオンですが、あるとき、わけあってきまりを破ってしまい、自分から図書館をでていきます。その「わけ」とは? 大好きな図書館にはもどってこられるのでしょうか?
このライオン、ことばを話したり、手でページをめくったりといった擬人化は一切なし。ライオン本来の風格と存在感のまま、しっくり絵本にとけこんでいます。すごい!
★低・中学年
棚田を歩けば
青柳健二 文・写真
福音館書店 1995円
日本、そしてアジア各地の棚田をめぐり歩いた写真絵本です。まずは、山あいに展開する幾何学模様の美しさに息をのみます。それから、こんな斜面に一段一段、田んぼを作り上げた先人のはかりしれない労力に驚嘆し、現在もなお、大きな機械などつかわずに稲作に取り組む方々のさまざまな苦労に思いいたって、頭がさがります。
こんな棚田が、いつまでも残ってほしいと祈らずにいられません。いつかは、自分の目で見て歩きたい。
偉大な古代遺跡の数々を「宇宙人が作った」と主張するトンデモな人たちにも、ぜひ見てもらいたいものです。古来より、人間にはこれほど偉大なものを作り、守るすばらしい能力が備わっていることの、なによりの証拠ですから。
ニュートン・アインシュタイン号の大航海
えびなみつる 著
渡部潤一 監修
旬報社 1890円
ニュートン・アインシュタイン号とは地球のまわりをまわる宇宙ステーション。観光でやってきた女の子が、ここで働くお父さんに宇宙のことをいろいろと教えてもらうという筋立ての科学まんが絵本です。もちろん、実在するステーションではありませんが、宇宙のことを宇宙で学ぶことができたら、どんなにすばらしいだろうと、うっとりしながら読みました。
太陽系の各惑星のようすからビッグ・バン説まで、なかにはかなり高度な内容もふくまれているのですが、まんがの手法がきいて、すんなり理解できます。さあ、宇宙の無限の広がりに思いをはせてみませんか?
宇宙がテーマの全三巻の最終巻です。前二作もぜひ。
★高学年以上
「美しい」ってなんだろう
森村泰昌 著
理論社 1470円
古今東西の名画に「なりきる」ユニークな作品で知られる森村さんが、美の世界への道案内をしてくれます。絵の前ではうでぐみせずに、笑っていいんだよ、というのが第一の教え。先入観や世間の評判にたよらず、感じたままに受け止めることからはじまる、ということなんですね。そして、さらに一歩ふみこんだ鑑賞のヒントが、さまざまな実例とともにちりばめられています。
ご本人の作品もたくさん紹介されています。それぞれの作品を生むきっかけや創作の過程が語られていて、興味しんしん。また、子どもからの質問コーナーでの、ていねいで真摯な返答ぶりに感動。 ちなみに表紙の「モナ・リザ」も森村さんの作品ですよ。
ボクたちの値段
坂本綾子 構成・文
荻原博子 監修
講談社 1260円
お金、つまり経済にまつわるさまざまな知識や常識をQ&A形式で教えてくれる一冊。おこづかいのこと、友だちとのお金の貸し借りといった、子どもに身近な話題から、クレジットカードの仕組みや株への投資といった、おとなでも簡単には答えられそうにないテーマまで、実にわかりやすく解説されています。
それぞれの質問には具体的なデータが添えられていて説得力がありますが、けっして結論をおしつけることはありません。データをもとに自分で考えて! という立場をつらぬいているのがいい。
節約の効用にも大きくページをさいていますので、「毎月家計のやりくりが大変」というお宅にもお勧め。きっと参考になりますよ。
★幼児
365まいにちペンギン
ジャン=リュック・フロマンタル 文
ジョエル・ジョリヴェ 絵
石津ちひろ 訳
ブロンズ新社 1680円
もし、あなたの家に一日一羽ずつペンギンが増えていったらどうします? 一月一日を皮切りに「ぼく」の家には、毎日一羽、宅急便でペンギンが送られてきます。だれから、なんのためになのかもわからないまま。
たちまち家中ペンギンだらけ、たいへんな騒ぎだというのに、この家族、意外にひょうひょうと受け止めて、それどころかときには楽しそう。
どのページを開いても、ずんぐりむっくりで、まん丸目玉の白黒ペンギンで埋め尽くされているさまは、それだけで笑っちゃいます。
大晦日にようやく送り主とその目的が明かされ、ペンギンたちからもやっと開放されるのですが、翌朝届いたのは……。
さあ、犬になるんだ!
C・V・オールズバーグ 文・絵
村上春樹 訳
河出書房新社 1680円
日常からちょっとはずれた幻想的な世界を描き、読者を魅了し続けてきたオールズバーグ、今度はどんな魔法をかけてくれるのでしょう。
いたずら好きのカルヴィンは、誕生日に偉大な催眠術師ロマックスのショーにでかけます。ショーから帰ってきたカルヴィンが、妹に犬になる催眠術をかけてみると、妹はすっかり犬になりきってしまいます。
はじめのうちはおもしろがっていたものの、犬として暴走をくりかえす妹に手をやき、ほとほと困るはめに。そのうえ、もとにもどす呪文は覚えていないのです。
さてカルヴィンと妹にはどんな運命が……。作者が幻想の達人であるがゆえに、結末はとびきり効いています。
★低・中学年
ぬすまれた月
和田誠 作
岩崎書店 1365円
あるところに月が大好きな男がいました。どうしても月を自分のものにしたくて長い長いはしごを作り、ついに手に入れます。ところが、箱にしまってだいじにしていたのに、ある日、箱ごとぬすまれてしまいます。ぬすまれた月はその後、さまざまな持ち主の手にわたり、数奇な運命をたどることに。
楽しく、ちょっぴり皮肉のきいた物語のあいまあいまに、 月にまつわる伝承や科学的な知識などがわかりやすく盛りこまれているのですが、ストーリーをじゃますることなく、さらに魅力を添える構成の技はみごとです。
買ってもらったばかりの天体望遠鏡で、月面のクレーターをはじめて見たときの感動を思い出しました。
愛をみつけたうさぎ
ケイト・ディカミロ 作
バグラム・イバトーリーン 絵
子安亜弥 訳
ポプラ社 1470円
アメリカで暮らす姪から、おもしろい本があるから次の訳本にどう? というメールが。調べてみると、すでに訳されていました。ちょっと残念でしたが、本当におもしろかった! いい年したおっちゃんが、人形のうさぎの話で涙を流すことになるとは。
陶器でできたうさぎのエドワードは、女の子にとてもだいじにされていたのですが、アメリカからイギリスへの航海の途中で海に落ちてしまいます。その後、魚網にかかって引き上げられ、転々と持ち主が変わるのですが、そのたびにそそがれる愛情と悲しい別れとで、からっぽのエドワードの心も愛で満たされていきます。どのような結末が待っているのかは、どうぞ読んでたしかめて。
★高学年以上
いたずらカメムシはゆかいな友だち
谷本雄治 文
つだかつみ 絵
くもん出版 1365円
最近、わけあってカメムシについて調べる機会がありました。普通、見た目はきれいだけどくさい虫といった程度のことしか知りませんよね。まずは、種類の多さにびっくり。日本にいるカメムシだけをあつかった分厚い二巻本の図鑑まであるんです。いやあ、知らなかった。
ちょうどそんなときだったこともあり、この本も楽しめました。知らないことを知ろうと、とことん追求する探究心には感銘を受けます。あのにおいについても、自分の鼻を犠牲にして、調べ上げているんですよね。珍しい姿かたちのカメムシやさまざまな生態を知ったおかげでずいぶんイメージが変わりました。著者のようにカメムシを飼おうとまでは思わないですけど。
冬の龍
藤江じゅん 作
福音館書店 1680円
母は亡く、父とも離れて、ひとり下宿屋九月館に暮らすシゲルは、ひょんなことから欅の化身二郎さんと出会います。二郎さんを助けて親友の雄治、哲とともに龍にまつわる「雷の玉」をさがす冬休みの冒険がはじまりました。大晦日までに見つからなければ、この地域に災いがふりかかるというのですが……。
人間に姿を変えた欅の化身や龍が登場するのですから、ファンタジーということになるのでしょう。しかし、最近流行の薄っぺらなものではありません。友情の物語、家族の物語としての根幹の上に、成長や冒険、歴史や知的好奇心の追及といった要素がていねいに、ごく自然に物語に織りこまれています。この筆力、ただものではないと見た。
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