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************************** 『みどりの船』The Green Ship クェンティン・ブレイク/作・絵 千葉茂樹/訳 ************************** |
「ぼく」とアリスは、夏休みをおばさんの家ですごしています。でも二週間もすぎると、いなかの生活も何だか退屈。
そんなとき、ふたりは庭の奥の森で、すてきなものを見つけました。それは、生えている木をマストやえんとつにして作った「みどりの船」。ふたりは、船の持ち主トリディーガさんとも知り合い、楽しい冒険の毎日を送ります。
そして夏休みも終わりに近づき・・・。
ロアルド・ダールの本の挿し絵でもおなじみの、クェンティン・ブレイクの絵本です。タイトルのとおり、みどりが美しく印象的。読み終えたとき、心の中にさわやかな風が吹きわたります。
子どもの頃、夏休みが本当に楽しみでした。遊んでも遊んでも遊び足りないくらい。でも、そんな毎日もいつか終わりがきて、少し冷たい風が吹き始めると、楽しかった分だけ、心の中にはぼんやりとしたさみしさがこみあげてきたものです。この絵本には、そんな夏休みの楽しさとさみしさが、いっぱいにつまっています。
絵は、クェンティン・ブレイク独特のさらりとしたシンプルなタッチです。それでいて、登場人物たちの表情がとても豊かなのに驚かされます。トリディーガさんの開く地図に見入る子どもたち、子どもたちと一緒に船のかじを握るトリディーガさんの背中・・・。ひとつひとつが、本当に魅力的です。
夏の暑い日にこの絵本を開いたら、しばらくの間、どこかとても風の涼しい気持ちのいい場所で過ごしたような気持ちになれることでしょう。これからの季節に、ぜひおすすめしたい一冊です。
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