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やまねこ翻訳クラブ レビュー集

やまねこのおすすめ(98年6月)

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  『みどりの船』

  The Green Ship

  クェンティン・ブレイク/作・絵 千葉茂樹/訳
  あかね書房 1600円 1998.5.20.

  1998年やまねこ賞絵本部門大賞受賞

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【あらすじ】

 「ぼく」とアリスは、夏休みをおばさんの家ですごしています。でも二週間もすぎると、いなかの生活も何だか退屈。

 そんなとき、ふたりは庭の奥の森で、すてきなものを見つけました。それは、生えている木をマストやえんとつにして作った「みどりの船」。ふたりは、船の持ち主トリディーガさんとも知り合い、楽しい冒険の毎日を送ります。

 そして夏休みも終わりに近づき・・・。

【感想】

 ロアルド・ダールの本の挿し絵でもおなじみの、クェンティン・ブレイクの絵本です。タイトルのとおり、みどりが美しく印象的。読み終えたとき、心の中にさわやかな風が吹きわたります。

 子どもの頃、夏休みが本当に楽しみでした。遊んでも遊んでも遊び足りないくらい。でも、そんな毎日もいつか終わりがきて、少し冷たい風が吹き始めると、楽しかった分だけ、心の中にはぼんやりとしたさみしさがこみあげてきたものです。この絵本には、そんな夏休みの楽しさとさみしさが、いっぱいにつまっています。

 絵は、クェンティン・ブレイク独特のさらりとしたシンプルなタッチです。それでいて、登場人物たちの表情がとても豊かなのに驚かされます。トリディーガさんの開く地図に見入る子どもたち、子どもたちと一緒に船のかじを握るトリディーガさんの背中・・・。ひとつひとつが、本当に魅力的です。

 夏の暑い日にこの絵本を開いたら、しばらくの間、どこかとても風の涼しい気持ちのいい場所で過ごしたような気持ちになれることでしょう。これからの季節に、ぜひおすすめしたい一冊です。

● 訳者のことば ●

 ずいぶん以前からクェンティン・ブレイクのファンだった私としましては、なんだか夢のような仕事でした。絵がすばらしいうえに物語もとてもよくって自分の手で翻訳できるなんてほんと、幸せです。

 大判で場所をとるやつですが、ぜひ手にとってみてください。(千葉 茂樹)

担当:くるり  *表紙の写真は出版社の許可を得て使用しています。

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