*************************** 『ワトソン一家に天使がやってくるとき』The Watosons Go to Birmingham--1963 クリストファー・ポール・カーティス/作 唐沢則幸/訳 *************************** |
物語の語り手は、ワトソン家の二男で10才のケニー。それを取りまくのは、ケニーをいじめてばかりいるけれど、愉快でどこか憎めないワルのバイロン兄ちゃん、幼い妹のジョーイ、陽気で頼りがいのある父ちゃん、そして怒るときびしいけれど、愛情豊かな母ちゃん。このワトソン一家の繰り広げるゆかいな日々を、ケニーがいかにも子どもらしい口調でつづってゆきます。
バイロン兄ちゃんの悪さは、母ちゃんのおしおきにもかかわらずひどくなる一方。ついに父ちゃんと母ちゃんは、夏休みの間、バイロンを遠くにいるおばあちゃんのうちに預けようと考えます。一家はおばあちゃんの住んでいるアラバマ州バーミンガムを目指して出発しました。そして……。
97年11月に出版されたこの物語、やまねこ翻訳クラブでも熱烈な支持が広がっています。会議室に書き込まれた会員の声をご紹介しましょう。(一部編集しています。)
やまねこの部屋より☆読んでみるとこれがびっくり! おもしろいのなんの。ワトソン家の次男坊ケニーの一人称で綴られたごく平凡な日常が展開するのですが、これが抱腹絶倒! なんといっても不良の兄貴バイロンのばかばかしくも愛すべきキャラクターは抜群です。次はなにをやらかしてくれるのかと、ゲラゲラ笑いながら読み進みましたよ。ときどき、じんわりと胸を打つエピソードに涙目になりながらも。そして、読んでいくうちにこの物語には実はとても重いテーマがひそんでいたことに気づくことになるのです。 ☆正直言って、泣きました。もう最後は泣きっぱなしでした。……(1963年のアラバマで)あんな事件があったなんて知りませんでした。そして、ワトソン一家の愛の絆の素晴らしさに本当に感動しました。……本当にいい作品だと思います。最後は泣くと書きましたが、全くじめじめしていません。最後までからっとしていて、それでいてじんわり感動できる本です。(ベス) ☆やはりお兄ちゃんのバイロンが好きになりました。ティーンになってから、どんどん悪いことをするようになるのですが、あちこちに弟のケニーに対する優しさを感じます。でも、べたべたした優しさではなくて、からっと、さりげないんです。ケニーは、ある身体的な特徴で悩んでいるのですが、そのときの一言もよかったですし、なんといっても最後のふたりの会話は、もう……。 ☆私は――どうしてもそうなってしまうのですが――やはりこの一家の親子関係に深い関心を抱きつつ読みました。両親の存在感がほんとうにすごい。それもただ「単に立派」というのではなく、どこかすっとぼけていて失敗もすれば子どもっぽいところもある。でも大事なところでは一歩も引かない。それがとても人間味を感じさせます。 ☆家族っていいなあと、兄弟っていいなあと、心から思いました。わたし自身、姉が二人いて、時にはいじめられたり、喧嘩して泣かされたりしながらも、子どもの頃から姉の影響をみっしり受けて大きくなりましたし、ケニーのように、つらいときには姉に助けてもらったりしました。……自分が親になったときに読み返してみたいと思いました。 ☆笑いあり、涙ありのお話で、一気に読んでしまいました。一家の楽しいエピソードの裏には、人種差別という重たいテーマが隠されているのですが、物語が暗く沈み込むことなく展開するので、読みやすく大変楽しい作品になっています。本書を読み終わり、あらためて日本での差別問題を考えさせられました。(YUU) |
*表紙の写真は出版社の許可を得て使用しています。
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