************************** 「ライラの冒険」シリーズ 第1作 『黄金の羅針盤』 フィリップ・プルマン/作 ************************** *表紙の画像は、出版社の許可を得て使用しています。
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主人公たちが不思議な力を手に、架空の世界で活躍し、新しい自分と出会う――ファンタジーには、「自分を超えた自分になれる」楽しさがある。自分も「ここではないどこか」で「本当の自分」に出会えるかもしれない、そんな夢を見せてくれる魔法がある。 しかしフィリップ・プルマンの「ライラの冒険」シリーズは、そうしたファンタジーとは違う。次元が異なる3つの世界を舞台に、動物の姿をした人間の分身や、魔女、天使、ことばを話すクマなどが出てくる、いかにもファンタスティックな設定。主人公たちはそんな世界を、次元を超えて旅するが、どこまで行っても「本当の自分」に出会えない。つまり、この作品には「ここではないどこか」が、ないのだ。 シリーズ第1作『黄金の羅針盤』は、わたしたちの世界と似て非なる世界が舞台になっている。主人公の少女ライラは、大人たちが異常に恐れる「ダスト」という物語の謎と、自分の出生に深い関わりを持つある人物を追って、オックスフォードから最北の地まで波瀾万丈の冒険をする。ついにはオーロラの光に乗って次元を超え、異世界へと移動、そこから第2作『神秘の短剣』の主人公である、ウィルと出会う。ウィルは、わたしたちが生きる世界の少年。幼いころに探険家だった父親が北極で行方不明となって以来、母親とふたりで暮らしていた。いつからか、父が残した秘密を追って、謎の男たちがウィルたちの生活を脅かし、母は神経を病んでしまう。ウィルは母を守るため、また父への強い思慕から、父の足跡をたどり、その秘密を解明しようと家を出る。そして例の男たちに追われて身を隠しているときに、偶然異世界への入り口を見つけたのだった。 特別な力を手に、次元を超え、さまざまな謎を追って旅をするライラとウィル。でもふたりは、英雄になることもなければ、幸福になることもない。それどころか、その力のために、大人たちの欲望に翻弄され、だまされ、利用されるばかり。どこまでいっても、「本当の自分」がいる「ここではないどこか」に、たどりつけない。今のままの自分自身を受け入れて生きていくだけ。それでもライラとウィルは、自らの境遇に受け身なだけではない。ずるい大人相手に要領よく立ちまわり、子どもゆえの特権を知りつくして、したたかに利用している。決して純粋な子どもの象徴などではない。 |
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【作者】Philip Pullman(フィリップ・プルマン):1946年英国ノリッジ生まれ。オックスフォード大学卒業後、ウェストミンスター大学等で教鞭をとるかたわら、小説や戯曲を執筆、発表してきた。1995年、"Northern
Lights" (US title "The Golden compass" /『黄金の羅針盤』)でカーネギー賞、ガーディアン賞を受賞。本シリーズ完結編である"The
Amber Spyglass"
が、先日発売されたばかり。 【訳】大久保寛(おおくぼ ひろし):1954年、東京生まれ。主な訳書にリチャード・ハーマン・ジュニア『ウォーロード作戦』『米中衝突』(新潮文庫)、ディーン・R・クーンツ『コールド・ファイア』(文春文庫)、ジェイムズ・リー・バーク『天国の囚人』(角川文庫)など、ミステリ、ハードボイルドの分野で活躍。 |
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