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やまねこ翻訳クラブ レビュー集

今月のおすすめ(2000年12月)


『かようびはシャンプー』表紙 **************************

  『かようびはシャンプー』

Der haarige Dienstag
(Original - Hebrew Language)

   ウーリー・オルレブ/文
 ジャッキー・グライヒ/絵
    もたいなつう/訳  講談社 
2000.2

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*表紙の画像は、出版社の許可を得て使用しています。

2000年やまねこ賞絵本部門大賞受賞

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 3歳の男の子イタマルは、シャンプーが大の苦手。毎週火曜日はお母さんがイタマルの髪を洗ってくれる日で、夕方になるとイタマルの泣き叫ぶ声がうちじゅうにひびきわたる。こりゃたまらんと、お父さんはどこかに出かけてしまい、お姉ちゃんのダニエラは指を耳につっこんでひたすら我慢するだけ。ある晩、ダニエラはいいことを思いついが。イタマルの頭を丸ぼうずにしてしまえば、もう髪を洗わなくてもすむじゃない! ダニエラはイタマルを連れて床屋にでかけていくが……。

 一進一退しながら成長していく子どもの姿を、急がずせかさず、やさしい目で見つめる作者の思いがよく伝わってくる絵本。シャンプーができるようになりました、とはいかずに、やっぱり最後に泣いてしまうイタマルの姿は現実の子どもそのもの。その上で、半年後のエピソードを最後の最後に付け加えたところがなんとも心憎い。同じ年頃の子どもを持つお父さんやお母さんにも、是非読んでほしい1冊だ。

 オルレブといえば、『壁のむこうの街』など自らのホロコーストの経験を元にした作品で知られるイスラエル在住の作家。この絵本では、遠いイスラエルの国でも、日本と同じように暖かい家庭が営まれていることを自然に感じさせてくれる。泣いたり、笑ったり、怒ったり、だれかを大切に思ったり……どこの国でも一緒である。

 また、グライヒのデフォルメされた絵も、お話にしっくり合っている。単純だけれど人の表情がとても豊か。どの人物も個性的で生き生きとしている。絵もお話も、小さな子どもの心にすっと入りこんでいきそうだ。

(植村わらび)

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【作者】Uri Orlev(ウーリー・オルレブ):1931年ポーランド・ワルシャワ生まれ。ユダヤ人であったため、第2次世界大戦中はゲットーやポーランド人地区で隠れて暮らし、その後強制収容所に送られた。1945年にイスラエルに渡り、エルサレム・ヘブライ大学で学ぶ。『壁のむこうの街』(偕成社)『壁のむこうから来た男』(岩波書店)などホロコーストを題材とした作品をはじめ、ファンタジーや絵本などを幅広く発表している。1996年国際アンデルセン賞作家賞を受賞した。

【画家】Jacky Gleich (ジャッキー・グライヒ):1964年、ドイツ・ダルムシュタット生まれ。1995年より絵本を描き始めた。日本で紹介された『どこにいるの、おじいちゃん』(偕成社)で、ドイツ児童文学賞・ドイツの最も美しい本賞を受賞した。

【訳】母袋夏生(もたい なつう):長野県生まれ。東京学芸大学卒業後、留学生としてイスラエルに渡り、ヘブライ大学文学部修士過程実用言語コースを修了した。ヘブライ語の文学やドキュメント作品を数多く翻訳している。

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〔やまねこ会員の声〕
★イタマルがとにかくカワイイ! シャンプーいやさに、ぼうずにしようか本気で悩むイタマルを抱きしめたくなってしまいます。今年、息子を産んだ影響が多分にあるかもしれませんが……。(SUGO)
★イタマルがかわいかったです。親のための本じゃなくて、子どもの視点にたっていてくれるのがいいなあと思いました。(河まこ)
★素朴なお話と絵がしみじみと心にしみました。作者の愛情あふれる視点が、本当にいいのです。シャンプー嫌がって泣いているイタマルの表情が最高!(くるり)

〔この本が気に入ったあなたにおすすめする次の一冊〕
★オルレブの他の本もどうぞ。『壁のむこうの街』(偕成社)『砂のゲーム』(岩崎書店)

〔ここも御覧ください〕
訳者インタビュー

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