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『ウィーツィ・バット』WEETZIE BAT フランチェスカ・リア・ブロック/作 ************************** *表紙の画像は、出版社の許可を得て使用しています。
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ウィーツィ・バットはLAでハイスクールに通う女の子。ダークは同じ学校でいちばんカッコイイ男の子。ふたりはクールな者同士、最高に気の合うカップルだ。ところがある日、ダークが告白した。「おれ、ゲイなんだ」すると、ウィーツィ、「ってことは、あたしたち、一緒にオトコをゲットしにいけるわね」そこでふたりの理想のオトコ探しが始まった。けれども、これがなかなかうまくいかない。そんなとき、ウ ィーツィの目の前に、三つの願いをかなえてくれるランプの精が現れた。ウィーツィは願う。ダークとあたしに素敵な彼氏を、そして、あたしたちが幸せに暮らせる家を! さて、このあと、物語はますます不思議なことに……。つづきは本のほうでどうぞ。 途中でランプの精が出てきたとき、私は思った。「あれ? このお話、ファンタジーだったの?」――というのも、はじめは「LAおしゃれスポット案内」さながらに、カタカナの店名が続々登場、さらに、両親の離婚とかドラッグとか、若い子を取り巻く問題も見えはじめ……。ね? いかにも「ポップなリアリズム」って感じでしょ。そこに、ランプの精が出現、ファンタジーの同居がはじまったってわけ。だけど、こ の不思議な雰囲気、いやじゃない。反対にとても心地よかった。 それにしても、このお話はカッコイイ。ウィーツィをはじめ、出てくるみんなが自分の「好き」をわかってる。たとえばウィーツィの格好は、ホワイト・ブロンドのクルーカットにピンクのハーレクインのサングラス、ストロベリー色のリップにラメ入り白のアイシャドー。そしてダークは髪を黒く染めたモヒカン(わお!)。ファッションにしても、生き方にしても、自分の「好き」を通すのは、けっこうパワーがいる。それをウィーツィたちはさらりとやってのけて、思い切り「大好き」のなかで生きている。この本は1989年に発売以来、アメリカの若い子たちに大人気なんだとか。やっぱりねって思う。だれだってこんなにパワフルなウィーツィたちに出会ったら、「なんてクールなの」ってときめいちゃうよね、きっと。 そして、この本を読み終わって最初に思ったのは、「やっぱり愛でしょ、愛!」ってこと。ポップな雰囲気でありながら、この本はちっとも底が浅くない。それは物語全体に「愛」が貫かれているから。たとえば、ウィーツィはダークがゲイだということを、あっさりと受け入れる。他にも、いろんな問題や障害にぶつかるたびに、それらをうまく消化してしまう。それって愛でいっぱいの女の子だからこそできる技! ウィーツィが幸せに対してどん欲に生きる姿は、見ていてわくわくするし、ちょっとせつなくて、胸がきゅんとなる(そこがまたいいんだなあ、このお話は)。 短いながらも内容は盛りだくさんの『ウィーツィ・バット』。他4冊と合わせて<ウィーツィ・バット ブックス>というシリーズになっている。『ウィッチ・ベイビ』、『チェロキー・バット』、『エンジェル・フアン』、『ベイビー・ビバップ』。物語の雰囲気は、タイトルにもなっている5人の主人公たちの個性によって少しずつ違う。でも、「ポップでリアルでファンタジック」というテイストは変わらない。全部通して読んでみて! (田中亜希子) |
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【作者】Francesca Lia Block(フランチェスカ・リア・ブロック):ロサンゼルス在住の作家。処女作『ウィーツィ・バット』を含む本シリーズは、刊行以来、米国でティーンから大人まで、幅広い層に絶大な人気を博してきた。日本では本シリーズの他に、短編集『"少女神"第9号』(金原瑞人訳/理論社)が出ている。
【訳】金原瑞人(かねはら みずひと):1954年、岡山県生まれ。法政大学文学部英文科博士課程修了。現在、法政大学教授。翻訳家。『かかし』(ベネッセ)、『のっぽのサラ』(ベネッセ)、『豚の死なない日』(白水社)、『アーサー王物語』(偕成社)、『リザベーション・ブルース』(東京創元社)など、訳書多数。 |
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