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やまねこ翻訳クラブ レビュー集
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*表紙の画像は、出版社の許可を得て使用しています。
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トラベリング・パンツと過ごす2年目の夏。オープンカレッジの映画製作コースに参加するためヴァージニアへ行くティビー。突然、アラバマの祖母に会いにいくことにしたブリジット。そして地元に残るレーナとカルメン。今年の夏もそれぞれ別々に過ごすことになった4人。去年の夏の体験で、少しは大人になったと思っていたけれど……。 セカンドサマーは去年の夏よりももっと切なく苦しい。心の奥底にしまいこんだ悲しみ。見失ってしまった自分自身。はじめての本当の恋。母親との関係の変化。4人が体験したことは、つらいことばかり。でも、そのつらさに立ち向かう勇気をくれたのは、さらに深い友情でむすばれた親友たち。そして、その悲しみ、つらさを乗り越えたとき、4人は大人への階段をまた一歩のぼることができたのだった。 若さゆえの純粋さ、もろさ、そして残酷さ。登場人物たちの深い心理描写は2作目も見事だ。セカンドサマーでは友情や恋愛の話に加えて、母と娘の関係についても詳しく描かれている。大人になるということは、けっして楽しいことばかりではない。4人は大人になるための通過点に立ったばかり、これから先、彼女たちの人生にどんなことが起こるのか見守っていきたくなるような、そんな作品になっている。作者の頭の中にはこのシリーズの次のアイデアもあるらしい。ぜひ、また少し成長した4人に再会したいものである。 白井久子 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4652077297/yamanekohonya-22 ☆bk1でこの本の情報を見る http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3e0380f83cba50100f25?aid=p-yamaneko01386&bibid=02336652&volno=0000 |
<ひと夏の出会いが残していったものは……>
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*表紙の画像は、出版社の許可を得て使用しています。
真夏の陽射しは、地上の存在すべてを焼き尽くしそうだった。浜辺に隣接する〈カプリ・ビーチ・クラブ〉はかつての賑わいをなくし、8月一杯で閉鎖が決まっていた。テニスコートには雑草が生え、プールにはカモメが住みつき、寂れたクラブの最後を感じさせた。 唯一開いている売店では、夏が終わったらマイアミの大学に行く予定の青年、レイモンドが店番をしている。客足の途絶えたクラブには、12歳の少女のヘイリーとクレアだけが、毎日のようにやってくる。親友同士の2人は、クレアの両親が交通事故で亡くなった時も、ヘイリーの両親が離婚した時も、お互いに支えあってきた。しかし、今は避けようのない別れが待っている。クレアが祖父母と共に遠いフロリダに旅立つことが決まっていたからだ。頼れる友と離れ離れになって1人でうまく過ごしていけるのか、友情も続けられるのか、2人とも不安を拭えなかった。 そんな時、激しい嵐が通過していった。強風と高潮でからす貝が飛び散り、海藻でどろどろになったプールに、「遊泳禁止」の看板が空しく立てかけられた。その看板を目にした2人はやるせなくなる。プールには懐かしい思い出が沢山つまっていたから……。感極まったヘイリーは、プールに飛び込む。泳げないクレアは心配で水面を見つめて、気が気でない。やっとヘイリーが水面から顔を出した。ほっと胸をなで下ろすクレア。次の瞬間、2人は目を交わし、水中に何かを見つけたことを確認しあう。――プールの底に人魚がいる! 人魚は、アクアマリンと名のった。アクアマリンは嵐で流れ着いたプールから顔を出した時、偶然ハンサムなレイモンドを見かけ、あろうことか彼に一目ぼれしていた。クレアもヘイリーも人間との恋は無理よと忠告するが、アクアマリンは彼と会えるまで絶対海には帰らないと言い張る。レイモンドは夏が終われば大学に行ってしまうし、アクアマリンも海に戻らなければ死んでしまう。2人はアクアマリンを海に戻すために、一度だけレイモンドに会わせてあげると約束し、思いきった計画を練る。 中学の頃、私もヘイリーと同じような経験をした。親友が遠いところに引っ越したのだ。親友はお笑い系のタイプで涙もこぼさずに越していったが、私は寂しくて仕方がなかった。が、時が経つにつれ、物理的に親友と離れても友情は簡単に終わるものではないし、離れることで自分も成長するのではないかと感じた。別れというのも1つの成長の糧なのかもしれない。ホフマンは、このお話を従姉妹のキャロルと義姉妹にあたるジョー・アンとの思い出を元に書いたと公式ホームページで語っている。身近な存在が登場人物のモデルだったからだろう、少女たちの姿が生き生きと爽やかに描かれている。 ところで、原書の英国版と米国版は邦訳よりも装丁がちょっと大人っぽい。私が持っている英国版には、ページごとに貝殻などの挿絵がちりばめられておしゃれだ。 【作者】アリス・ホフマン Alice Hoffman:1952年ニューヨーク生まれ。アデルファイ大学、スタンフォード大学を卒業後、執筆活動に入る。幻想と現実を交差させた独特の作風は高い評価を得ている。新作を発表するたび全米ベストセラーとなり、映画化されているものもある。邦訳には、『7番目の天国』(岡真知子訳、早川書房)『オーウェンズ家の魔女姉妹』(船木裕訳 集英社)『タートルムーン』(深町真理子訳、早川書房)などがある。 【訳者】野口百合子 のぐち ゆりこ:東京外国語大学英米語学科卒。主な翻訳書に『コレクター蒐集』(ティボール・フィッシャー作、東京創元社)『狼の震える夜』(ウィリアム・ケント・クルーガー作、講談社文庫)『マリー・アントワネットの首飾り』(エリザベス・ハンド作、新潮社文庫)などがある。 【参考】 ☆アリス・ホフマン公式サイト http://www.alicehoffman.com/ 高橋めい ☆アマゾン・ジャパンでこの本の情報を見る
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