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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

ボローニャ・ラガッツィ賞(世界) レビュー集

The Bologna Ragazzi Award

 

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最終更新日 2008/12/05 レビューを1点追加 

ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアの公式サイト → ボローニャ・ラガッツィ賞のページ 

「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」は、イタリアのボローニャで開催される世界最大かつ唯一の児童書専門の見本市で、1964年より毎年3月か4月に開催されている。このボローニャ・ チルドレンズ・ブックフェアが主催しているのがボローニャ・ラガッツイ賞で、ブックフェアの会期中に授賞式が行われる。部門は、フィクション、ノンフィクション、ニューホライズンの3部門 があり、それぞれに、受賞作(Winner)1点、特別賞(Mention)数点が発表される。2008年は、特別に詩の部門が設けられた。賞は出版社に対して贈られ、 対象となるのは、その年のブックフェアに出展され、過去3年以内に出版された初版本である。

このレビュー集について
 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。


"Santiago" * "Redbean Porridge Granny and the Tiger"『あずきがゆばあさんとトラ』←NEW 


 2008年ボローニャ・ラガッツィ賞 詩の部門 特別賞(Mension)

"Santiago" (2007)  Federico Garcia Lorca 〔Federico García Lorca〕 ガルシア・ロルカ詩 Javier Zabala 絵
 出版社:LIBROS DEL ZORRO ROJO (Barcelona-Madrid, Spain) (スペイン) (未訳絵本)

その他の受賞歴


仮題『聖サンティアゴ』

 今宵 聖サンティアゴがお通りになった
 空に輝く光の道を。
 子どもたちはそう語る
 澄んだ河床の水にたわむれながら。

 明るく果てなき小道をぬけて
 天の巡礼はどこへいく?
 氷のようにましろな馬で
 きらきら輝く あけぼのの底をめざすのだ。

 スペインを代表する詩人、ガルシア・ロルカの一遍の詩がそのまま1冊の絵本になったのが、この作品だ。ロルカの初期の作品集、『詩の本』に収められているこの詩は、2部構成でできており、十二使徒のひとり、聖サンティアゴ(聖ヤコブのスペイン語読み)が巡礼の旅を行う様子や、昔聖サンティアゴに会ったという老婆の話が描かれている。全体に色を抑えたハビエル・サバラによるイラストは、アクセントにコラージュを用い、淡くにじませたような水彩画で、巧みに詩ととけあいながら厳かな風景を映しだしている。

 2005年に絵本 "El soldadito Salomon"(Salomon の2つ目の o にアクセント)で、スペインイラスト賞を受賞したハビエル・サバラの名前にひかれて、この作品を手に取った。だが、案の定、詩はなかなか手に負えず、『詩の本』片手に辞書をひきひき読みすすんだ。ロルカの詩は音読してこそ、その味わいがわかるというものが多く、この作品も例外ではない。何度も読み返し、声に出して味わってみたい作品だ。また、そのまま額にいれて飾ってもよさそうな幻想的なイラストも、眺めるだけで心が落ち着くようだ。
 万人受けするような絵本ではないかもしれない。だが、この作品がボローニャで評価されたのは、なんともうれしい。

 ちなみに、スペインの北西部に位置するサンティアゴ・デ・コンポステーラは、聖ヤコブ(サンティアゴ)の遺骸があるということから、キリスト教の三大巡礼地とされ、その巡礼の道は世界遺産にもなっている。

(美馬しょうこ) 2008年10月公開

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 2004年ボローニャ・ラガッツィ賞フィクション部門特別賞(Honorable Mention)

"Redbean Porridge Granny and the Tiger" (2003) by Cho Ho-Sang チョ・ホサン文 Yoon Mi-Sook ユン・ミスク絵 追加
『あずきがゆばあさんとトラ』 おおたけきよみ訳 アートン 2004 (邦訳絵本)

その他の受賞歴


 むかしむかし、山里で、あずきを育てているおばあさんがいました。山からおりてきたトラに食べられそうになりますが、「あずきが実って、あずきがゆを食べるまで待っておくれ」と頼むと、トラは聞き入れてくれました。トラも、あずきがゆが食べたくなったのです。
 さて、秋になりました。おばあさんがあずきがゆを炊き炊き、食べられてしまうのが悲しくて泣いていると、たまごがころころ、ころがってきます。泣いている理由を聞いたたまごは、「おかゆを1ぱいくれたら、助けてあげる」と言います。そして、おかゆを食べるとかまどの中に入っていきました。おばあさんをたずねてきたのは、たまごだけではありません。すっぽん、うんち、きり、石うす、むしろ、しょいこなどもやってきて、おかゆを食べると、それぞれの場所にかくれま した。さあ、そこへ、おばあさんを食べてやろうとトラがやってきます……。

 韓国の有名な昔話。日本の「さるかに合戦」に似ていますが、おばあさんの助っ人たちがバラエティ豊かで数が多い点に、韓国と日本の違いを感じました。くりかえしが多くても、文のリズムが良く、読んでいてちっとも飽きません。絵は素朴で、ユーモアと躍動感にあふれています。目玉がぎょろっとしたトラは、迫力がありますがとぼけた感じもあり、にくめません。後半のトラがやってきてからの場面は、特に工夫がこらしてあって、おもしろくて爽快。読み聞かせの会にも良さそうだし、おやすみ前の絵本タイムにも楽しめる1冊でしょう。

(植村わらび) 2008年12月公開

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