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Scholastic 1999, ISBN
0-590-33125-6
〜 カレン・ヘス文 ジョン・J・ミュース絵 『雨よ、ふれ』(仮題)〜
Review by 生方頼子
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あつい、あつい夏。もう3週間、ひとつぶの雨もふっていない。このままでは母さんのトマトが枯れてしまう。だけどある日、ベランダから外をながめていたら、向こうのほうに雨雲が広がっているのが見えた。"Come
on, rain!" わたしはドキドキしながらつぶやいた――。
主人公のテスは黒人の女の子。もうすぐ雨が降るとわかると、近所の友だちを誘って水着に着替える。4人の少女たちは表の路地に立ち、雨を待つ。このシーンで描かれているのは、雨雲に覆われた灰色の空に向かって伸びる8本の手。4人の顔は見えない。ページをめくると、今度は足だけだ。やがてポツ、ポツ……と大つぶの雨が降り始める。そして次のページでとうとう4人の全身が現れる。肌の色も髪の毛の色も違う少女たちが、雨の中、水着姿で楽しそうにはしゃいでいる。歓声をあげ、走りまわる少女たち。さらに、それぞれの母親も子どもたちの声に誘われ、靴もストッキングも脱ぎ捨てて、一緒になって踊り始める。久しぶりの雨を心から喜び、思い思いの ダンスを楽しむ4組の親子の幸せそうなようすを見ていると、こちらまで幸せな気分になってくる。 物語の舞台となっている時代は今から30〜40年くらい前だろうか。抑えた色調の水彩画がノスタルジックな雰囲気を醸し出している。水彩のにじみ、ぼかしなどの効果によって、うだるような夏の暑さや、雨が降る直前の風に含まれる湿気などが、絵の中から伝わってくる。親子で踊るシーンでは、子どもの水着と母親の洋服の色がそれぞれ合っているのがわかって楽しい。 (生方頼子) |
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【文】Karen Hesse(カレン・ヘス):夫とふたりの娘とともにアメリカ、バーモント州在住。1998年に"Out of the Dust"でニューベリー賞を受賞。1999年9月に新作"A Light in the Storm : The Civil War Diary of Amelia Martin (Dear America)"が出版された。日本での翻訳作品はまだない。 |
【絵】Jon J. Muth(ジョン・J・ミュース):妻とふたりの子どもとともにアメリカ、ニューヨーク州在住。18歳のとき、初めての作品を発表する。"Doracula : A Symphony in Moonlight & Nightmares" など、アメリカン・コミックスに多数の作品があり、日本でも彼が絵を担当した『空想の大きさ』(ジョン・クラモト作/河野万里子訳/講談社)が出版されている。 |
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1999年11月作成
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