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●特別企画●プロに訊く 第2回 |
―― 中釜浩一郎さん&中村悦子さん(画家) ――
今回は、画家の中釜浩一郎さんと中村悦子さんに、デビューのきっかけや、児童書の挿し絵についてのお話をうかがいました。インタビューに快く応じてくださった中釜浩一郎さん、中村悦子さんに、この場をかりて厚く御礼申し上げます。
なお、今回の中釜さんと中村さん、および、10月号でご紹介したこだまともこさんの作品リストを、近日中にホームページでご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。
【中釜浩一郎(なかがまこういちろう)さん】 1965年、鹿児島県生まれ。児童書や専門書など、幅広い分野で挿し絵を手がけ、活躍中。主な作品に、『汽車にのって』(講談社)、『天使の足あと』(徳間書店)、『銀色のクレヨン』(PHP)、『ドロップス』(パロル舎)、『タイムマ シン』(集英社)、『ねこかぶりデイズ』(小峰書店)、『狼がくるとき』(佑学社)、『さよならクックー』(ポプラ社)、『見習い物語』(ベネッセ)などがある。よみうり日本テレビ文化センター、および、自宅の絵画教室「きらら」では、<児童書挿し絵入門>のクラスも開いている。東京都在住。 |
★画家になられたきっかけはなんですか?
絵を描くのは、昔から大好きでした。小さい頃、お小遣いで画用紙を買うのが本当に楽しみで――100円のお小遣いで買えるだけの画用紙(当時は1枚5円でしたから20枚)を買って帰るとき、何ともいえない幸せな気分でしたね。理容学校を卒業して、1年間理容師をしていたのですが、体をこわしたこともあって、画家としてやっていこうと思うようになりました。
★最初のお仕事について教えてください。
高校1年生のとき、同級生の女の子に頼まれて絵を描いたことがあります。報酬はお金ではなく、船の形をした風鈴でしたが、とてもうれしかったのをおぼえています。その風鈴は、今でも大事にとってありますよ。はじめてお金をいただいたのは、ヘアスタイルのデザイン画を描いたときです。本の挿し絵を手がけたのは、『まぼろしのストライカー』(国土社)がはじめてでした。
出版社には、片っ端から足を運びました。一度断られたところにも、何度も何度も通って、編集者の方の意見を聞きました。やはり、何事もあきらめないことが大事なのではないでしょうか。国土社から仕事をいただいたのも、たまたま絵を描く人が不足していたときに、まめに顔を出していた私を思い出してもらえたからなんです。あきらめずに通っていてよかったなと思いました。
★児童書の挿し絵のお仕事について、詳しく教えてください。
挿し絵をかくときは、当然のことですが、まずその作品をじっくり読み込みます。そして、情景を思い浮かべます。分からない部分があるときは、もちろん、調べものもします――この調べものが結構大変なんですけどね。絵を入れる箇所や枚数は、編集者の方と相談します。作家の方や、翻訳者の方とお会いする機会は、残念ながらほとんどないですね。1冊の本の挿し絵を仕上げる期間は、だいたい1か月弱でしょうか。
絵のタッチも、作品の雰囲気によって変えます。私は、鉛筆やペンだけでなく、つまようじやサランラップなども使って絵を描くのですが、アメリカを代表する児童文学作家、カニグズバーグの『エリコの丘から』(佑学社)は、私がつまようじで挿し絵を描いた作品のひとつでした。
子どもは大好きなので、児童書の挿し絵を描くのは楽しいです。子どもの姿をうまく表現できるようにと、保育園に通ってスケッチをしたこともあります。でも、保育園の子どもたちが抱きついてきたりするので、スケッチどころではなくなることのほうが多かったのですが(笑)。みんなの似顔絵を描いてあげると、子どもたちが大喜びしてくれるので、それがまた楽しかった。子どもたちの喜ぶ姿を見ていると、絵を描いていてよかったなと心から思います。
これからも、子どもに喜んでもらえるような絵を描いていきたいです。いつか絵本も手がけてみたいと思っています。
(インタビュアー:宮坂宏美)
【中村悦子(なかむらえつこ)さん】 1959年、群馬県生まれ。児童書の挿し絵や絵本の分野で活躍中。主な児童書の挿し絵に、『あらし』(ほるぷ出版)、『アリスの見習い物語』(あすなろ書房)、『のっぽのサラ』(ベネッセ)、『草原のサラ』(徳間書店)、『峠をこえたふたりの夏』(あかね書房)、『遠くへいく川』(くもん出版)、『鳥と少年』(佑学社)、『おねいちゃん』(理論社)、絵本に、『ひだまり村のあなぐまモンタン』『森のせんたくやさん あなぐまモンタン』(いずれも学研)、『シンデレラ』(ほるぷ出版)などがある。東京都在住。 |
★このお仕事はどのようにしてはじめられたのですか?
絵は特に学校などには行かず、独学で身につけました。24歳のころ、しばらく続けていたアルバイト生活に区切りをつけるため、一念発起してラフスケッチをたくさん描き、知り合いの紹介で会った編集者に見てもらいました。それがきっかけとなって、最初の挿し絵の仕事をもらいました。
★児童書の世界を選ばれたのは、なぜですか?
いろんな理由があります。例えば子どもの頃読んだ絵本がとても印象的だったのもそのひとつです。たくさん本を読む子供ではありませんでしたが、4、5歳のとき初めてもらった絵本がとても気に入って、わくわくしながら繰り返し読みました。
★『シンデレラ』(新倉朗子/文)では絵本のお仕事もされていますが、絵本と挿し絵では取り組み方が違いますか?
絵本も挿し絵も作家の方の作られた世界やイメージを大切にするという意味では、基本的に似ていると思います。文章を読んだ人がそれぞれ自分の想像をふくらませることのできるような挿し絵を描きたいですね。
★調べものは大変ですか?
そうですね。私はその世界がまるで目の前にあるようにリアルに見えないと描けないんです。作品の世界に入り込んでイメージを作るまでが、一番時間がかかります。
例えば、きつねを描くときも動物園に通ってスケッチしたり、資料や写真を集めて部屋中に貼ったりします。目の前に本当にきつねがいるようになって、やっと描けるんです。
『アリスの見習い物語』のときには、13世紀ごろのことを調べていくうちに「なんて汚い世界なんだ!」とびっくりしました。描いているとき、夫が「きれいな絵だね」って言ってくれたんですが、「そう。でも臭いの」って答えていたんですよ(笑)。
★印象に残る作品はどれですか?
すべての本に対して思いは同じですが、強いてあげるなら『のっぽのサラ』です。仕事を始めて3年目ぐらいに、この仕事を続けるには実力が足りないと悩んでいました。そんな時に『のっぽのサラ』の話がきて、私の好きな世界だったので、これにかけてみようと思ったんです。少し、自分らしさが出せたので、「もう少しがんばってみよう」という気持ちになれました。
この作品の表紙は、話のイメージがよく出るもの、タイトルともぴったり合うものということで、あの絵を選びました。表紙はとても大切だと思っています。読み終えてから本を閉じて表紙を眺めたとき、またお話のイメージが戻ってくるようなものを描きたいですね。また、どんなに重く暗いイメージの物語でも、必ず作品の中の明るさや前向きな部分を大切にして描くようにしています。
★オリジナルの絵本を作ってみたいというお気持ちはありますか?
私らしいオリジナルを描けるようにあたためているところです。いつになるかわからないけれど、私自身が早く見たいと一番思っています。
★最後に、何か今望んでいることがありましたら、教えてください。
ストーリーに生活感があり、ファンタジーが入っているようなお話が大好きなので、読者としてももっと読みたいし、挿し絵の仕事もしてみたいです。そう、『あらし』はちょうどそんな作品で、今でもとても好きなひとつです。そういう本にこれからもめぐりあえればと思っています。
(インタビュアー:内藤文子)
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特集 |
―― 1998年ケイト・グリーナウェイ賞受賞作研究 ――
P.J.Lynch "When Jessie Came Across the Sea" (text by Amy Hest)
ケイト・グリーナウェイ賞は、イギリスで出版された児童書のイラストレーターに与えられる権威ある賞で、アメリカでいえばコールデコット賞(9月号参照)に匹敵する。ここでは、今年7月に発表になった1998年の受賞作"When Jessie Came Across the Sea"を詳しく紹介しよう。
【あらすじ】 〜19世紀、東欧から約束の地アメリカへと旅立つ少女の物語〜 両親を早くに亡くした13歳の少女ジェシーは、東欧にあるユダヤ人村に、祖母とふたりで住んでいた。ジェシーは祖母に読み書きを、祖母はジェシーにレース編みをそれぞれ教えながら、ふたりは仲良く暮らしていた。 ある日、宗教的指導者の「ラビ」が村人に告げた。自分の兄弟が亡くなり、「約束の地」(アメリカ)へのチケットを彼に残したと。ラビは立場上、村を離れられないと考え、村人にチケットを譲ることに決めた。たくさんの村人が自分こそアメリカに行くべきだとラビに懇願したが、ラビが選んだのはジェシーだった。ジェシーにとっても祖母にとっても、離れて暮らすのは耐え難いことだったが、祖母は、孫のためを思い、アメリカ行きをジェシーにすすめた。 旅立つ時、ジェシーは亡き母の結婚指輪をお守りとして祖母に預けた。祖母との別れ、嵐で揺れる船――ジェシーにとって船旅はつらいものだった。しかし、天候も回復し、気持ちが落ち着くと、ジェシーは得意のレース編みを乗船客の服に飾りつけはじめた。そんなジェシーの様子を見ていたルーという青年が、彼女に声をかけ、ふたりはすぐに打ち解けた。 ニューヨークに着くと、ジェシーはラビの親類の婦人服仕立て屋でレース飾りを編む仕事に就いた。稼いだお金は、すべて瓶の中にためていった。また、仕立て屋のケイのすすめで、英語を習いに学校へも通いはじめた。英語は難しかったが、彼女は熱心に勉強した。彼女の編む美しいレースも次第に評判になり、ジェシーは忙しい毎日を送るようになった。 3年が経ち、16歳に成長したジェシーは、ある日偶然ルーと再会する。その日以来、ふたりは毎週会うようになった。また、ジェシーは自分がためたお金でチケットを買い、ようやく祖母に送ることができた。ジェシーは大好きな祖母に再び会うことができるのだろうか……。 |
【解説】 〜ユダヤ人の物語とアイルランド人画家による異文化の共存〜 パトリック・ジェームズ・リンチ(P.J. Lynch)は、北アイルランドの首都ベルファスト(アイルランドのプロテスタンティズム中心地)でカソリックを信仰する家族の5人兄弟の末っ子として生まれた。18歳のときにイギリスへ渡り、ブライトン美術学校へ入学した。 彼の最初の仕事は、おとぎ話やファンタジーに挿し絵を描くことだった。当時は、アーサー・ラッカムの影響を受けていたという。1996年にケイト・グリーナウェイ賞を受賞した"The Christmas Miracle of Jonathan Toomey"と今回の作品は、ノーマン・ロックウェルの影響を受けているとのことだが、絵を見るとなるほどと思えてくる。 水彩画で細部まで入念に書き込まれ、人物の表情が生き生きとしているからだ。この絵本のテーマは、離別の悲しみ、新しい生活に対する戸惑いと適応、成長過程における苦悩、年長者に対する尊敬、幸福の追求などと思われるが、それらに直面するときのジェシーの表情は特に印象的だ。表紙にも使用されている、ジェシーがニューヨークに到着するときの船上の場面は、映画のワンシーンのような臨場感さえある。 当初リンチは、この作品にイラストを描くことに対し慎重になっていたらしい。だが、次第にユダヤ人の物語にユダヤ人ではない画家が絵を描くのを刺激的でおもしろいことだと思うようになったという。そもそも彼自身、社会における多様な文化の共存を強く支持していた上、ユダヤ人のディアスポラ(国外離散)という状況が、アイルランド人にも共通していると思えたからである。彼は現在、ダブリン(アイルランド共和国及びダブリン州首都)に住んでいるが、故郷のベルファストにもできるだけ帰っているという。 リンチの他にケイト・グリーナウェイ賞を2回受賞したのは、マイケル・フォアマン、アンソニー・ブラウン、レイモンド・ブリッグスそしてジャネット&アラン・アルバーグだけである。 日本で紹介されているリンチの作品には、『オーディンと呪われた語り部』(スーザン・プライス著 当麻ゆか訳 徳間書店)、『幽霊の友だちをすくえ』(ヘレン・クレスウェル著 岡本浜江訳 大日本図書)などがある。 参考:英国図書館協会ホームページ http://www.la-hq.org.uk/directory/medals_awards/lynch.html http://www.la-hq.org.uk/directory/medals_awards/greenaway_winner.html |
◎P.J. Lynch 作品リスト |
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タイトル |
文 |
絵 |
"Catkin" |
Antonia Barber |
P.J. Lynch |
"The Christmas Miracle of Jonathan Toomey" |
Susan Wojciechowski |
P.J. Lynch |
"Favourite Fairy Tales" |
Sarah Hayes |
P.J. Lynch |
"The King of Ireland's Son" |
Brendan Behan |
P.J. Lynch |
"Oscar Wilde Stories for Children" |
Oscar Wilde |
P.J. Lynch |
"Raggy Taggy Toys" |
Joyce Dunbar |
P.J. Lynch |
"The Steadfast Tin Soldier" |
Hans Christian Andersen |
P.J. Lynch |
"When Jessie Came Across the Sea" |
Amy Hest |
P.J. Lynch |
"The Candlewick Book of Fairy Tales" |
Sarah Hayes(Editor) |
P.J. Lynch |
"A Bag of Moonshine " |
Alan Garner |
P.J. Lynch |
"Boy in Darkness" |
Mervyn Peake |
P.J. Lynch |
"East O' the Sun, West O' the Moon" |
Naomi Lewis |
P.J. Lynch |
"Irish fairy tales" |
P. J. Lynch |
P. J. Lynch |
"Memories of Steam Around Britain" |
P.J. Lynch |
P.J. Lynch |
"Sarah, Plain and Tall" |
Patricia MacLachlan |
P.J. Lynch |
"The Snow Queen" |
Hans Christian Andersen |
P.J. Lynch |
(双沢和江)
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コンテスト・トライアル/展示会・講演会情報 |
―― コンテスト・トライアル情報 ――
いたばし「国際絵本翻訳大賞」――絵本翻訳 | |
課題: |
"The First Red Maple Leaf" by Ludmila Zeman(英語) |
締切: |
1998年11月30日(必着) |
応募: |
事務局へ問い合わせのこと(03-3265-7691) |
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―― 展示会・講演会情報 ――
フジタトイミュージアム「ロンドンおもちゃと模型の博物館展」 |
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所在地: |
東京都渋谷区千駄ヶ谷4-6-15 |
電 話: |
03-3401-4242 |
会 期: |
平成11年3月31日まで |
休館日: |
木曜日 |
入場料: |
無料 |
内 容: |
18世紀から現代までのロンドンを中心としたおもちゃの展示会 |
宮沢賢治イーハトーブ館「宮沢賢治・イギリス海岸展」 |
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所在地: |
花巻市高松1-1-1 |
電 話: |
0198-31-2116 |
会 期: |
平成10年12月27日まで |
休館日: |
なし |
入場料: |
無料 |
内 容: |
賢治に関するさまざまなジャンルの芸術作品、資料を収集した展示会 |
沼田絵本美術館「『宝栄たかこ・森は生きている』展」 |
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所在地: |
東京都世田谷区上用賀1-25-20 |
電 話: |
03-3708-8200 |
会 期: |
平成11年1月24日まで |
休館日: |
月曜日と年末年始 |
入場料: |
大人800円、高中生600円、小学生400円 |
内 容: |
小学館「世界の名作」シリーズ第12巻「森は生きている」(マルシャーク)の全原画を初公開 |
安曇野絵本館「ジョン・ロウの世界」 |
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所在地: |
南安曇郡穂高町有明2186-117 |
電 話: |
0263-83-6173 |
会 期: |
平成11年2月28日まで |
休館日: |
火曜日(ただし、1、2月は土、日、祝日のみ開館) |
入場料: |
一律700円(飲み物付き) |
内 容: |
動物を主人公にした絵本で有名なジョン・ロウの原画展 |
(担当:瀬尾友子/菊池由美)
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Chicocoの洋書奮闘記 第2回 |
よしいちよこ |
―― 「衝動買いの1冊め」 ――
りっぱな洋書読みをめざす「洋書奮闘記」。1冊目は何にしよう。大阪梅田の紀伊國屋書店に行ってみた。思わず衝動買いしたのは"TOM'S MIDNIGHT GARDEN"(Philippa Pearce/1958年/Puffin Books)。児童文学ではあまりにも有名な『トムは真夜中の庭で』だ。邦訳は未読。きれいな表紙。「とりあえず始めなくちゃ」と、1690円+消費税で購入。本文212ページ。字はやや小さめ。
【5/31】 |
スタート。たったの5p。挿し絵のトムがかわいくない。 |
【6/1】 |
1日に最低10pは読むぞと誓いをたて、がんばる。18p。 |
【6/2】 |
10p。誓いは守られた。 |
【6/3】 |
3p。やばい。知らない形容詞続出。せっかくの庭の描写がうかばない。 |
【6/4】 |
8p。またしても、誓いが守れない。 |
【6/5】 |
仕事がドタキャン。こんな日こそ、たくさん読もう。でも、やっと11p。庭の描写より、おじさんたちとの会話のほうが楽しめる。正しい味わい方ではないかも。 |
【6/6】 |
とうとうやってしまった。0p。今日は私の誕生日。大目に見よう。 |
【6/7】 |
友人宅に遊びにいく電車の中。21p。ハティって? 前にも出てたかな。自分の読書力にちっとも自信がもてない。 |
【6/8】 |
7p。 |
【6/9】 |
7p。栞の位置を見て、あと半分もあるのかと悲しくなる。もっと薄い本にすればよかったか。英字を見ると眠くなる。楽しくない。 |
【6/10】 |
22p。 |
【6/11】 |
29p。時間のことで混乱していたが、謎がとけて理解できるようになってきた。うれしい。 |
【6/12】 |
電車でたくさん読む。えっへん。28p。ハティと庭のことには飽き飽き。ピーター(トムの弟)からの手紙で状況がかわりそう。おもしろくなってきた。 |
【6/13】 |
FMCの関西セミナーとニフティのオフライン・ミーティング(お茶会)に参加。帰りの電車で14p。 |
【6/14】 |
29p。読了。ふー。児童書に15日もかけてしまった……。 |
後半はおもしろくなってきて、1日20ページを超すペースで読めた。でも、正直なところ、名作だ、感動するとの噂をきいていたわりには、あまり好きになれなかった。レベルを考えずに衝動買いしたせいで、名作形無しだ。やれやれ、道は遠い。
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注目の本(邦訳編) |
―― 自由を求めて、少年は19世紀のアメリカを生き抜いてゆく ――
『北極星を目ざして――ジップの物語』 キャサリン・パターソン作 岡本浜江訳 1998/9発行 偕成社 本体1,600円 原書:"JIP―HIS STORY", Lodestar Books, 1996 |
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アメリカ、ヴァーモント州。ジップは3歳のとき馬車から落ち、誰も探しにこないまま町の救貧農場にひきとられた。8年後の1855年、人や動物の扱いがうまいジップは、老人の多い農場で一番の働き手として暮らしていた。豊かな暮らしではなかったが、他の生活を知らないジップに不満はなかった。ある時監督官が、町からやっかい払いするため「あばれモン」を農場へ連れてきた。檻に入れられた「あばれモン」は、発作が起きた時にだけひどく暴れまわるが、正気の時にはやさしいパットという男だった。ジップはこの物知りのパットを親切に世話し、やがて父親のように慕いはじめる。また、ジップは農場で共に暮らすようになったルーシーと一緒に学校に通いはじめ、暖かく、毅然とした態度の先生に深く感化される。そんなジップの心配事は、町で偶然出会った見知らぬ男からしつこくつきまとわれることだった。どうもこの男は自分の出生の秘密を知っているらしい……。
最初の2、3ページをめくっただけで、読者をすぐに物語の世界にひきこんでしまうキャサリン・パターソンの力を思い知らされる作品である。アメリカの暗く重い歴史が描かれているが、無理なく物語の世界に入りこむことができる。家族の愛も学ぶことの楽しさも知らなかったジップが、それらに目覚め、自由を求めて生きぬいて行く姿に心が揺さぶられる。読者は主人公になりきって、自由に生きることの尊さを実感することができるだろう。
『ワーキングガール』(Liddie 1991)の主人公リディが、ジップの先生として登場している。
(植村わらび)
【作者】キャサリン・パターソン 1932年、中国に生まれる。24歳から4年間布教活動のため日本で過ごす。『テラビシアにかける橋』『海は知っていた』で、2度ニューベリー賞受賞。"The Crane Wife""The Tongue-Cut Sparrow"の絵本の翻訳も含め、これまでに30冊以上の本を書いている。日本では偕成社より8冊が翻訳出版されている。1998年には、これまでの業績に対して国際アンデルセン賞を受賞した。 【訳者】岡本浜江(おかもと はまえ) 1955年、東京生まれ。大学卒業後、記者生活を経て、英米文学翻訳家となる。パターソンの邦訳全作品(偕成社)、カニグズバーグの『800番への旅』『エリコの丘から』(佑学社)、アン・ファインの『ぎょろ目のジェラルド』『妖怪バンシーの本』(講談社)など訳書多数。 |
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注目の本(未訳編) |
―― ローティーンの少年少女の声なき叫び ――
『ジャンク』(仮題)
Melvin Burgess "Junk" 278pp. |
14歳のタールは、暴力をふるう父親とアルコール依存症で無気力な母親に耐えきれず、家を飛び出した。ガールフレンドのジェンマも、何かと干渉する両親を疎ましく思い、タールのあとを追って家出する。自由を求めるジェンマと、彼女に引きずられ気味のタール。やがてジェンマは、パーティーで知り合った自由奔放な少女リリィに強く引かれ、リリィとその恋人ロブのところへ転がり込む。そこにタールも加わり、4人の共同生活が始まった。
タールとジェンマは、リリィたちに麻薬を教わり、次第に深みにはまっていく。リリィの妊娠をきっかけに一度は麻薬をやめようとするが、どうしてもやめることができなかった。ふたりともすでにjunkie(麻薬常習者)になってしまっていたのだ。やがて、自分が妊娠していることに気がついたジェンマは……。
1980年代のイギリス、ブリストルを舞台に、ひたむきで純粋だが未熟で不安定で無鉄砲、というローティーンの少年少女特有の姿を描いた作品である。登場人物が交互に語り手となり、タールとジェンマが家を出てからの数年間をそれぞれの視点で語っていく。未熟であるがゆえに、自分の未熟さには気づかない子どもたち。そんな彼らが必死にもがき、苦しむ姿は、いいようのないほど痛ましい。さらにタールの父親とタールが語るラスト2章では、大人になるために知らねばならない現実の厳しさをつきつけられる思いがする。
若者の麻薬中毒患者が急増している昨今のイギリスにとって、実にリアルで衝撃的な題材を扱ったこの作品は、1997年度のカーネギー賞・ガーディアン賞の両方を受賞した。アメリカでは、"Smack"というタイトルで出版されている。
(生方頼子)
Melvin Burgess(メルヴィン・バージェス) 1954年イギリス、ロンドン生まれ。レンガ積み工、染色業などの職を経て、1990年に"The Cry Of The Wolf"(邦題『オオカミは歌う』/偕成社)で作家としてデビュー。以後、個性豊かな作品を発表し続け、高い評価を受けている。その他の邦訳作品に『メイの天使』『エイプリルに恋して』(ともに東京創元社)がある。現在は妻子とともにランカシャーに在住。 |
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お菓子の旅 第2回 |
―― アメリカのクリスマス ――
★ ヴィネガー・パイ ★ Vinegar Pie ★
Ma was busy all day long, cooking good things for Christmas.(中略)She baked vinegar pies and dried-apple pies, and filled a big jar with cookeis, and she let Laura and Mary lick the cake spoon. Laura Ingalls Wilder "Little House in the Big Woods"
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あまりにも有名な、ローラとその一家の物語です。ローラが著したシリーズ9作に加え、テレビドラマでも大人気となりました。
決して豊かだったとはいえないインガルス一家でしたが、母さんが作る料理は質素ながらもどれも愛情と工夫に満ちたおいしそうなものばかり。この母さんの料理と、父さんのバイオリンの音色こそ、厳しい開拓時代をたくましく生き抜いたインガルス一家の絆の象徴といえるでしょう。
ヴィネガー・パイは、クリスマスをはじめとする、特別な日のためのお菓子です。当時はレモンが非常に高価だったために、レモンの代わりにヴィネガーを使って作ったという、まさにアイディアにあふれたものでした。このヴィネガーは、リンゴの芯を蜂蜜水に2か月ほど漬けて発酵させたもの。お菓子だけではなく、料理にもよく使われていました。ここでは、市販のリンゴ酢を代用しています。できあがりは、ほんのりリンゴの香りが漂う、アップルパイに似た素朴で優しい味。作り方もとても簡単ですので、お菓子作りが苦手という方にもおすすめです。
直径23cmのパイ皿1つ分 |
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無漂白粉 |
1.5カップ |
グラニュー糖 |
1/2カップ |
塩 |
小さじ1/2弱 |
ブラウンシュガー |
1/2カップ |
ラード |
大さじ5 |
無漂白粉 |
大さじ4 |
バター |
大さじ4 |
ナツメグ |
少々 |
卵 |
2個 |
リンゴ酢 |
大さじ3 |
*-* 作り方 *-*
『小さな家の料理の本』 |
バーバラ・M・ウォーカー/文
|
文化出版局 |
『ローラのお料理ノート』 |
本間千枝子・本間長世/文 |
文化出版局 |
『ようこそローラのキッチンへ』 |
ウィリアム・アンダーソン/文
|
求龍堂 |
『ローラ・インガルス・ワイルダー』 |
ウィリアム・アンダーソン/文
|
佑学社 |
(森久里子/田中亜希子)
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やまねこ翻訳クラブ(会員数99名)
やまねこ翻訳クラブは、海外の子どもの本に関する情報交換、翻訳・シノプシス自主勉強会などを行っている児童書専門サークルです。翻訳と子どもの本に興味のある方でしたらどなたでも入会できますので、ぜひお気軽にご参加ください。
―― 11〜12月の活動 ――
◆海外児童文学賞受賞作読破マラソン
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●編集後記●
11月3日、旧童話屋書店の店長竹村さんが、渋谷に児童書専門店「子どもの本の店」をオープンしました。以前よりもこぢんまりとしていますが、あたたかい雰囲気の素敵なお店です。やまねこ翻訳クラブがボランティアでホームページを作成しましたので、ぜひご覧ください。(み)
発 行: |
NIFTY SERVE 文芸翻訳フォーラム・やまねこ翻訳クラブ |
発行人: | 小野仙内(文芸翻訳フォーラムマネージャー) |
編集人: | 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブスタッフ) |
企 画: |
河まこ、キャトル、くるり、Chicoco、BUN、ベス、YUU、りり、ワラビ |
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