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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2023年6月号 =====☆ ☆===== =====★ 月 刊 児 童 文 学 翻 訳 ★===== =====☆  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ☆===== No.220 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌 http://www.yamaneko.org 編集部:mgzn@yamaneko.org 2023年6月15日発行 配信数 2560 無料 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●2023年6月号もくじ● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ◎賞情報:第70回(2023年)産経児童出版文化賞翻訳作品賞発表! 受賞作品レビュー:『ことばとふたり』 ジョン・エガード文/きたむらさとし絵・訳 ◎ことばの海 多言語を愛するやまねこ会員に聞く 第2回 あべなおさん ◎賞速報 ◎イベント速報 |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞情報●第70回(2023年)産経児童出版文化賞翻訳作品賞発表! ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 産経児童出版文化賞は、子どもたちに優れた本を与えることを目的に、1954年の学 校図書館法の施行とともに制定された。大賞を含む8つの賞と奨励賞からなり、その うち翻訳作品賞は2007年より設けられている。前年の1年間に初版として刊行された 児童書が対象で、毎年5月5日の「こどもの日」に発表される。 2023年の翻訳作品賞には、以下の2作品が選ばれた。 ★翻訳作品賞 『カメラにうつらなかった真実 3人の写真家が見た日系人収容所』 エリザベス・パートリッジ文/ローレン・タマキ絵/松波佐知子訳/徳間書店 『ことばとふたり』 ジョン・エガード文/きたむらさとし絵・訳/岩波書店 『カメラにうつらなかった真実 3人の写真家が見た日系人収容所』は、第2次世界 大戦下、突如すべてを奪われ、収容所での生活を強いられた米国の日系人たちの真実 に迫るノンフィクション長編絵本。写真家のひとりを名付け親にもつ作家エリザベス ・パートリッジ氏と日系カナダ人4世の画家ローレン・タマキ氏が手がけた。当時の 出来事を時系列でたどりながら、3人の写真家が残した貴重な写真とイラストを巧み に組み合わせ、日系人の強制収容の実態を描く。3人の写真家は立場が異なり、見え ているものも、撮影したいものも少しずつちがっていた。撮影や写真の公開を禁じら れたり、あえて撮影しなかったりということもあった。本書はその背景やそれぞれの 写真家の思いにもふれ、読者が日系人たちの姿や彼らをとりまく状況をさまざまな角 度からとらえることを可能にしている。2023年、米国で優れたノンフィクション作品 に贈られるロバート・F・サイバート知識の本賞を受賞。翻訳を手がけた松波佐知子 氏は、写真家としても活動している。 『ことばとふたり』は、ともに国際的に活躍する英国の詩人ジョン・エガード氏と日 本の絵本作家きたむらさとし氏が、ことばを知らない生きものと、ことばを知ってい る生きものとの出会いを描いた絵本。詳しくは、本誌今月号のレビューをご参照いた だきたい。 【参考】 ▼産経児童出版文化賞公式ウェブサイト https://www.sankei.com/feature/child_award/ ▼第70回産経児童出版文化賞公式ツイッター https://twitter.com/sanjidoushuppan ▽産経児童出版文化賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/jp/sankei/index.htm (平野麻紗) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『ことばとふたり』 ジョン・エガード文/きたむらさとし絵・訳 岩波書店 定価1,600円(本体) 2022.09 32ページ ISBN 978-4001127003 "When Creature Met Creature" text by John Agard, illustrations by Satoshi Kitamura Scallywag Press Ltd., 2022 Amazonで検索する:ISBN Amazonで検索する:書名と作者名 毛むくじゃらの《いきもの》が、のんびりと気ままに暮らしている。ことばを知ら ないこのいきものは、楽しい気持ちになると、腕をのばして鳥のようにぱたぱた。お いしいものを食べれば、おなかを叩いてくるりと宙返り。悲しいときには顔をゆがめ、 目には涙を浮かべる。ある日、そのようすを見つめる別のいきものが現れた。ことば を知っているそのいきものは腕を広げ「ハグ ハグ」と言いながら、ことばを知らな いいきものに近づいていった。すると、ことばを知らないいきものに変化が訪れ……。 物語の主人公は、人間なのか動物なのかもわからない、不思議ないきものたちだ。 ひとりは自分の気持ちを表現するすべを持たず、自分は今「楽しい」のか「悲しい」 のか、わからないまま体を動かし、涙を流す。その姿は、まるでせき止められた感情 が出口を求めて暴れているかのよう。全身で思いのたけを表現してはいるが、みずか らの感情に振り回されながら、表情はどこか苦しげだ。一方、ことばを知っているも うひとりは「ああ、たのしい!」と声に出し、晴れやかで満ち足りたようすだ。対照 的な彼らの姿を見て、子どもがことばを獲得していく過程を連想した。自分の要求を 泣いて親に訴える赤ん坊の頃から、友達に気持ちをうまく伝えられずに手を出してし まう幼児期を経て、ことばで意思疎通が図れるようになると、子どもを取り巻く世界 は格段に広がる。 ことばとは本来、気持ちを共有するための手段だ。ことばを使って自分の思いを他 者に伝えるだけでなく、相手のことばに耳を傾けることによって、理解しようと努力 し、共感が生まれる。ことばによって誤解が生じ、すれ違うこともあるが、わかりあ えたときの喜びは何物にも代えがたい。この絵本では《ふたり》の出会いと関係が勢 いよく大胆な線と目のさめるような色遣いによっていきいきと描かれている。詩的で リズミカルな文章は、ことばがテーマの作品にふさわしい力強さだ。ことばのあるべ き姿を提示しつつも、耳をふさぎたくなるときはことばから離れ、静けさに立ち返ろ うと語る。そんな本作は、顔の見えない者同士で攻撃的なことばが交わされがちな現 代にこそ、子どもにも大人にも広く読まれるべき作品だと思う。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【文】ジョン・エガード(John Agard):1949年旧英領ギアナ(現ガイアナ)生まれ。 1977年に英国へ渡ったのち、詩人、劇作家、児童書作家として活躍。数々の賞を受賞 している。邦訳に『わたしの名前は「本」』(ニール・パッカー絵/金原瑞人訳/フ ィルムアート社※)がある。"The Young Inferno" や "Goldilocks on CCTV" など、 きたむらさとしとのコンビで多くの作品を生み出している。サセックス在住。 ※作者名表記は「ジョン・アガード」 【絵・訳】きたむら さとし:1956年東京都生まれ。1979年に英国へ渡り、初めての 絵本 "Angry Arthur"(邦訳『ぼくはおこった』ハーウィン・オラム文/きたむらさ とし絵・訳/評論社)で英国の新人絵本画家に贈られるマザーグース賞を受賞。絵本 作家、イラストレーターとして活躍。『ミリーのすてきなぼうし』(BL出版)は小 学校の国語の教科書に掲載されている。現在は帰国し、神戸市在住。 【参考】 ▼ジョン・エガード公式ツイッター https://twitter.com/JohnAgard1 (山本みき) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●賞速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★2023年MWA賞受賞作品発表 ★2023年オーストラリア児童図書賞ショートリスト発表 (受賞作品の発表は8月19日の予定) ★第28回日本絵本賞受賞作品発表 ★2023年ニュージーランド児童書及びヤングアダルト小説賞候補作品発表 (受賞作品の発表は8月10日の予定) 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を ご覧ください。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●イベント速報● ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★展示会情報 釧路市立美術館「美術館で体験! しかけ絵本の世界」 ベルナール・ビュフェ美術館 「こわくて、たのしいスイスの絵本展 〜クライドルフ、フィッシャー、ホフマンの世界〜」 など ★講座・講演会情報 クレヨンハウス(東京店会場&オンライン) 「鈴木のりたけさん講演会 おもしろがるとたのしくなる」 奈良 蔦屋書店 絵本作家 谷口智則さん「絵本原画展&絵本と音楽の時間」 など 詳細やその他のイベント情報は、「児童書関連イベント情報掲示板」をご覧くださ い。なお、空席状況については各自ご確認願います。 http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event ツイッターアカウントでも最新情報を提供していますので、どうぞご注目ください。 ▽やまねこ翻訳クラブ*イベント情報 Twitter https://twitter.com/YamanekoEvent (山本真奈美/冬木恵子) |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●お知らせ● ・本誌に対するご感想をはじめ、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等をお 待ちしています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。ご質問等は本誌 に掲載させていただく場合があります。 ・このたび、本誌予告のやまねこ翻訳クラブウェブサイト内掲示板への掲載を終了い たしました。今後は、各種SNSで適宜お知らせしてまいります。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= ◇各掲示板の話題やクラブの動きなど、HOT な情報をご紹介しています◇ ★やまねこ翻訳クラブ Facebook ページ https://www.facebook.com/yamaneko1997/ ★やまねこ翻訳クラブ Twitter やまねこアクチベーター https://twitter.com/YActivator やまねこ翻訳クラブ☆ゆる猫ツイート https://twitter.com/yamanekohonyaku やまねこ翻訳クラブ*イベント情報 https://twitter.com/YamanekoEvent 巷で見かけたやまねこたち https://twitter.com/ChimataYamaneko *=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*= ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ★☆メールマガジン『海外ミステリ通信』 隔月15日発行☆★ http://honyakuwhod.blog.shinobi.jp/ 未訳書から邦訳新刊まで、あらゆる海外ミステリの情報を厳選して紹介。翻訳家や 編集者の方々へのインタビューもあります! 〈フーダニット翻訳倶楽部〉 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●編集後記●今年も本誌6月号で産経児童出版文化賞翻訳作品賞の受賞作品をご紹介 することができて、たいへんうれしく思っています。受賞されたみなさまおめでとう ございます。発行後まもなく2023年カーネギー賞作家賞、および画家賞の受賞作品が 発表される予定です。結果を楽しみに待ちたいと思います。(み) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 発 行 やまねこ翻訳クラブ 編集人 三好美香/森井理沙/平野麻紗(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) 企 画 赤塚きょう子 尾被ほっぽ かまだゆうこ 蒲池由佳 小島明子 小原美穂 冬木恵子 松倉真理 牟禮あゆみ 山本真奈美 山本みき 協 力 からくっこ ながさわくにお みちこ html版担当 ayo ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ・このメールマガジンは、「まぐまぐ」( http://www.mag2.com/ )を利用して配信 しています。購読のお申し込み、解除は下記のページからお手続きください。 http://www.mag2.com/m/0000013198.html ・バックナンバーは、http://www.yamaneko.org/mgzn/ でご覧いただけます。 ・「月刊児童文学翻訳」編集部 連絡先 mgzn@yamaneko.org ・無断転載を禁じます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ |
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