理論社「ガールズ」シリーズ特集号
〜“ガールズ”が止まらない!〜
2003年12月10日発行
昨年7月にシリーズ第1巻『ガールズ・イン・ラブ』が日本で出版されてから約1年半。10代の多感な少女3人の日常を生き生きと描いた「ガールズ」シリーズは、本国イギリスではもちろんのこと、日本でも、主人公と同世代の女の子を中心に人気を博しています。今回は、これまで刊行された第2巻・第3巻と、来年2月に刊行予定の第4巻、さらにイギリスで放送されたテレビシリーズについてご紹介します。
また、月刊児童文学翻訳9月号の情報編「プロに訊く」のコーナーでは、同シリーズの翻訳を手がけた尾高薫さんへのインタビュー記事が掲載されています。第1巻のレビューと合わせて是非ご覧ください。
●尾高薫さんへのインタビュー記事(本誌2003年9月号 情報編)
●『ガールズ・イン・ラブ』のレビュー(やまねこのおすすめ2003年3月)
「ガールズ」シリーズの出版にあたり(理論社より)
主な登場人物について
テレビシリーズについて
第2巻から未訳の第4巻までのレビューを一挙公開!
『ガールズ アンダー プレッシャー ダイエットしなきゃ!!』
『ガールズ アウト レイト もう帰らなきゃ!!』
"Girls in Tears"(『ガールズ イン ティアーズ:涙がとまらない』)
ジャクリーン・ウィルソン作「ガールズ」シリーズについて、編集担当者である理論社の小宮山さんよりコメントをいただきました。
ジャクリーン・ウィルソンのことは、最初に翻訳者の千葉茂樹さんに相談しました。「イギリスの超売れっ子作家と聞くけれど、そんなに面白いんですか?」と尋ねたら、「じつは、うちの娘も今ハマってまして……」と千葉さん。それで私も偕成社のシリーズを読んでみました。彼女の作品に共通しているのは、軽快な文体。ストーリーの巧さ。そして、さまざまな悩みを抱える子どもたちの気持ちに寄り添い、いつも彼らを励ましつづけていること。たしかに、いい作家だと思いました。
理論社はヤングアダルト路線でいこうということで、偕成社よりちょっと上の「ガールズ」シリーズを出版しはじめました。
予想どおり、中学生くらいの女の子から、毎日ばんばんファンレターが届きます。そこには、本の感想やイラストのほかに、彼女たちが今「かっこいいと思うもの」「悩んでいること」「いちばん欲しいもの」なども書いてもらっているのですが、日本の〈ガールズ〉たちの本音が聞こえてきます。きっとJ・ウィルソンは、子どもたちが本音でつきあえる作家なのだと思います。
(理論社編集部 小宮山民人)
●ジャクリーン・ウィルソン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/w/jwlsn.htm
「ガールズ」シリーズの主人公は次の3人。
あなたが共感できる相手、憧れの存在は誰?
エリー | マグダ |
ナディーン |
---|---|---|
★13歳(9年生) ★親友はマグダとナディーン ★3人の中で芸術的センスは一番 ★シュミは絵を描くこと ★メイクはするけど自信ナシ ★小うるさい弟がいる ★ステキなカレシが欲しい! ★フリーダ・カーロやジョン・レノン、アンネ・フランクが好き ★母親は他界し父親は再婚している |
★13歳(9年生) ★親友はエリーとナディーン ★3人の中で一番ゴージャス ★シュミは男の子とデートすること ★真っ赤な口紅のセクシーメイクなら任せて ★兄妹の末っ子で甘えん坊 ★デートの相手は選び放題 ★お洒落と、ブランド物の服や靴やバッグが大好き ★お金持ち |
★13歳(9年生) ★親友はエリーとマグダ ★3人の中でもスタイルは一番 ★シュミは個性的な化粧とインディーズ系の曲を聴くこと ★白いファンデーションに黒い口紅がポイント ★要領のいい妹がいる ★恋もいいけど友情も大切 ★モノトーンのファッションが大好き ★ヤセの大食い |
イギリスでは第1巻から第3巻までの内容を元に、全13回のテレビドラマが制作され、2003年4月より放送されました(http://www.girlsinlove.com/)。
ドラマの設定は、若干原作と異なります。まず、エリーの父親とアンナはまだ交際中です。そのため、天敵である弟のエッグも生まれていません。また、エリーを始めとする登場人物も、原作のイラストとは別の魅力に溢れています。
ここでは、テレビドラマ全13話のうち第1話から第3話までの概要をご紹介します。英語版DVD "Girls in Love" は12月26日発売予定。
●英語版DVD発売サイト http://www.amazon.co.uk/exec/obidos/ASIN/B0000C24IG/yamanekohonya-21
※参考資料:公式サイトレビュー
◎◎第1話◎◎
わたしはエリー。お城で出会った男の子とつき合い始めたばかりなの。でも、彼はカエルが大好きで木に抱きついちゃうようなヘンな奴。こんなのがカレシって人に言える? 言えるわけがない! 友達には絶対、会わせられない!
友達と言えば親友のナディーンは最近、妙に大人びてきた。もう1人の親友マグダは、相変わらず男の子にモテまくってる。イタリアですごくいい事があったらしい。2人とも同い年なのに超まぶしいヨ〜。
ところでパパの近況。ガールフレンドのアンナが、しょっちゅう遊びに来る! 何だかヤな感じ。
◎◎第2話◎◎
ダンと一緒に居るのを誰かに見られたら、メチャクチャ恥ずかしいと思ってたけど、意外とそうでもないみたい。彼っていいとこあるし、マグダとナディーンも悪くないって言ってくれてる。でも、今夜のパーティーでステキな人と出会ったら、正直言って悩んじゃうかも……。
ナディーンはリアムに夢中。でも、どこまで許すつもりかな? こんな時は恋のエキスパート、マグダに相談しようっと。きっとナディーンの悩みにカンペキに答えてくれるはず。
◎◎第3話◎◎
ダンったら信じられない。ずっとわたしのこと騙してた! ホントは年下の8年生だってこと、なぜ言ってくれなかったの? ショック! ショック! 超ショック!
ナディーンのイケてるカレシのリアムが、イケてるクラブの「セブンズ・ヘブン」に連れて行ってくれるらしい。でもリアムったら、ナディーンをどうするつもり?
店の前の警備をすり抜けるにはマグダをお手本にすべし。どんな服装をして、どんな風にダンスをすれば18歳に見えるのか、マグダを見て研究しなくちゃ!
パパの近況その2。アンナのこと誤解してたみたい。思ってたよりもいい人だった。
(要約:瀬尾友子)
第1巻については、やまねこ翻訳クラブのサイトに掲載されたレビューをご覧ください。
●レビュー(やまねこ翻訳クラブ読書室・レビュー集)
http://www.yamaneko.org/dokusho/shohyo/osusume/2003/march.htm#ginl
エリー、ナディーン、マグダは9年生の3人組。第1巻では、カレシがいないって深刻な(マジで!)悩みを分け合った。悩みって、みんなで抱えればちょっと軽くなる。ところが、今回は3人がそれぞれのことで悩んでいるからかなりツライ。特にエリーは、大親友にコンプレックスをもったから、固い友情が危ういかも……。
ことの起こりは雑誌のモデルコンテスト。ショッピングセンターでクリスマスの買い物をしていた3人は、雑誌の専属モデルのオーディション現場に遭遇した。自分たちには関係ないとエリーは無関心。ところが、ナイスバディが自慢のマグダはいいとして、なんとナディーンまでその気になってエントリーしてしまった。考えてみると、棒のような体で不健康メイクのナディーンは、今はやりのモデルそのもの。エリーははっとする。それって自分だけ場違いってこと? その瞬間、自分の体がどうしても許せなくなったエリーは、ダイエットを決意した。
女の子のダイエットは通過儀礼のようなもの。そう軽く考えているとこわい結果が待っている。拒食症、過食症……限度を超えたダイエットは時に死と結びつく。今回のキーパーソンは優等生のゾーイ。エリーの上をいく、つらいダイエット・スパイラルにはまり込んだゾーイを見て、読者は何かを学ぶはず。とはいえ、そこはウィルソン。人生のセンパイとしてのメッセージは、話の中にごくごくさりげなく混ぜ込んである。どうすればハッピーになれるか、エリーと一緒に悩もうか。
(大塚典子)
親友ふたりとマクドナルドで過ごしていたエリーは、ステキな男の子ラッセルに声をかけられた。そして、美術好きのラッセルと意気投合し、いっしょに帰ることに。デートに誘われ、公園でのキス……と、うっとり夢見心地でいたら、門限の9時を通りこして11時を過ぎていた! エリーが家に帰ると、ラッセルといたことが、おとうさんにバレていて、次の日の外出は禁止になってしまう。それでも、なんとかしてデートの待ち合わせ場所へ行ったのに、ラッセルは来ない。ショックで落ちこむエリー。けれど、次の日、ラッセルはエリーのうちを探しあてて来てくれた。ああ、なんてロマンチックなの! エリーは天にものぼるような気持ち。ラッセルが来られなかったのは、彼のおとうさんに雷を落とされたせいだということもわかって、一件落着……と思ったら、またもや問題が。ラッセルから学校のパーティーに誘われた日は、マグダやナディーンとコンサートに行く約束をしたのと同じ日だった。
第2巻では、マグダやナディーンと自分を比べて劣等感をもっていたエリー。でも、この第3巻では、親友ふたりではなく自分を好きになってくれたラッセルに出会え、幸福感でいっぱい。ラブラブハートが行間からあふれだしてくるかのようで、女の子のトキメキを感じられること間違いなしだ。いっぽうで、エリーは思春期の女の子が悩む問題にもぶつかる。親友とカレシのはざまで悩んだり、門限に頭を抱えたり。そんな悩みもプラスに変え、子どもの目線にたったストーリーを描くウィルソンは、さすがだなぁと思う。なんといっても、読みおわったあといつもパワーをもらって前向きになれるのだから。
今後も、なんだかあぶなっかしいエリーたちから目が離せない。第4巻の訳書の刊行まで待てるかどうか……原書で読むか訳書で読むか思案中だ。
(早川有加)
"Girls in Tears" Doubleday,2002, 191pp, ISBN 0-385-60183-2(UK) 『ガールズ イン ティアーズ:涙がとまらない』(2004.2発売予定) |
ラッセルから指輪をプレゼントされて、幸せいっぱいのエリー。自慢したくて早く学校に行ったのに、ナディーンは子どもだましの指輪だとバカにするし、マグダはペットのハムスターが死んじゃってそれどころじゃない。やっぱり心からわかりあえる人はラッセルだけ……。ところがそう思ったのも束の間、ラッセルが、エリーお得意のゾウのイラストをまねてひそかにコンテストに応募していたことがわかって大ショック。おまけに、継母のアンナとおとうさんの仲がぎくしゃくしてて、家の中はピリピリした雰囲気だ。昨日までは最高の気分だったのに、どうしてこんなにイヤなことばかり続くの? いったん歯車が狂うと、事態はどんどん悪化するばかり。とうとう信じられないような出来事が起きて――
シリーズ第4巻は「女の子の涙」が切り口。第3巻ではラブラブモード全開だったエリーが、一転して涙に暮れる出来事に次々と遭遇する。各章には「女の子が泣くのは……とき」というタイトルがつけられ、女友達とのトラブル、カレシとのケンカ、家庭のゴタゴタなど、いかにも女の子が涙しそうな場面を軸にストーリーが展開する。もちろん悲しい涙だけじゃなく、うれし涙もあるし、涙涙でもけっして湿っぽくはならないのはウィルソンならではだ。エリーたちは泣いているばかりじゃない、自分なりに考えて行動し、悩みを乗り越えていく。読者もエリーのせつないオトメ心に涙したり、ハラハラドキドキ心配しても、最後にはきっとハッピーな気分になれるはず。シリーズのほかの作品同様、ウィルソンの魅力がいっぱいに詰まった1冊だ。
本書の邦訳は、来年2月に理論社から『ガールズ イン ティアーズ:涙がとまらない』のタイトルで出版される予定である。
(児玉敦子)
ジャクリーン・ウィルソン(Jacqueline Wilson):1945年、イギリスのバース生まれ。ジャーナリストを経て作家となる。『おとぎばなしはだいきらい』(稲岡和美訳/偕成社)でカーネギー賞 HC、『バイバイわたしのおうち』(小竹由美子訳/偕成社)でチルドレンズ・ブック賞を受賞。
※2004年3月、作者紹介文中の「カーネギー賞候補」を「カーネギー賞HC」に訂正
●ジャクリーン・ウィルソン作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/w/jwlsn.htm
尾高薫(おだか かおる):1959年、北海道生まれ。国際基督教大学を卒業し、現在は東京に在住。『ガールズ・イン・ラブ』で翻訳デビュー。また、『ガールズ アンダー プレッシャー:ダイエットしなきゃ!!』『ガールズ アウト レイト:もう帰らなきゃ!』のほか、同シリーズ第4巻『ガールズ イン ティアーズ:涙がとまらない』の翻訳も担当。
●尾高薫さんインタビュー(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/kodaka.htm
●尾高薫訳書リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/kodaka.htm
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★編集後記
来年以降もオールズバーグの『急行「北極号」』など、児童文学作品の映画化が目白押し! 楽しみです(せ)
発 行 やまねこ翻訳クラブ http://www.yamaneko.org/
発行人 竹内みどり(やまねこ翻訳クラブ 会長)
企 画 河原まこ
編 集 瀬尾友子
編集協力 大塚典子 早川有加 児玉敦子
あんこ 河まこ さかな 小湖 sky SUGO hanemi
協 力 小宮山民人(理論社)
出版翻訳ネットワーク管理人 小野仙内
・増刊号へのご意見・ご感想は mgzn@yamaneko.org までお願いします。
日本で出版されている作品の表紙画像は、出版社の許可を得て、掲載しています。
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