●ミニ・インタビュー●すべての始まり
京都を皮切りに、旭川、東京で行われた「絵本『ARE YOU AN ECHO?』出版記念 ト
ークイベントツアー2017」。ラストを飾った東京開催の翌日、デーヴィッド・ジェイ
コブソンさんに金子みすゞの詩集を贈られたご友人の杉本なおみさんにお会いする機
会をいただきました。その際伺ったお話から一部ご紹介いたします。
★デーヴィッドさんに金子みすゞの詩集を贈られた時のことを覚えていらっしゃいま
すか。
はい。父が震災以前からみすゞのファンだったのですが、震災を機に私もみすゞの
詩集を借りて読んでみたところ、「大漁」のところで手が止まりました。実は私も同
じ発想をしたことがあったのです。米国留学中、南部料理の本で "Rabbit Delight"
というレシピを見つけ、「これって人間にとっては "delight" だけど、ウサギにし
てみたら "rabbit disaster" なんじゃないの?」と思ったんですよね……。
かねがね David とは感性が似ていると思っていて、何か理由があって本を贈りた
いと思った時、この「大漁」の irony も彼なら分かるだろうと思ってみすゞの詩集
を1冊お送りしたんです。その後、彼が家族で泊まりに来てくれた際に、父が自身の
蔵書から何冊か選んで渡しておりました。
★みすゞの詩集以外にも本を紹介されたことはありましたか。
はい。20年くらい前に五味太郎さんの「さる・るるる」シリーズを送ったところ、
"Naomi, you know me too well" というメールが返ってきて、「David とは詩や絵本
の感性が似ているのね」と思いました。
★お父様は昨年亡くなられたとお聞きしましたが、この出版企画が進んでいることは
ご存じでしたでしょうか。
はい。本の出版には間に合いませんでしたが、David が PDF を送ってくれたので、
製本はされていないものの、ほぼ完成状態のものに自分の名前が記されていることを
確認して非常に感慨深げにしておりました。その時、父はどの詩に最初に興味を持っ
たのかと尋ねたところ、「私と小鳥と鈴と」あるいは「大漁」だったと思うと申して
おりました。
短い時間でしたが、みすゞの詩そのもののようなお話をお聞きして、胸がいっぱい
になりました。この絵本を開くたび、巻末に記されたおふたりのお名前を見つめなが
ら、この始まりの物語に思いを馳せています。
お忙しいところお時間を作っていただき、本当にありがとうございました。
(赤間美和子)
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