やまねこ翻訳クラブ 資料室
こだまともこさんインタビュー
(翻訳家)
『月刊児童文学翻訳』98年10月号より
Q: 翻訳家デビューのきっかけはなんですか? A: もともと「こだま児童文学会」(※1)という同人誌で創作をしていましたが、創作ができるなら翻訳もできるだろうと、絵本の翻訳の仕事がまとめてとびこんできたのが最初です。 ※1こだま児童文学会: 埼玉県東松山市在住の福島亨を中心に地元の学友、幼稚園の保母などが結成。1955〜1972年まで全93冊出された同会の同人誌「こだま」には、乙骨淑子、宇野克彦、奥田継夫、掛川恭子、北畑静子、柴田道子、山下明生、八木田宜子などが名を連ねている。 Q: このメールマガジンは地方在住の読者も多いのですが、地方で文芸翻訳家デビューを果たすのは難しいと思われますか? A: 出版社へのアプローチの仕方だと思います。リーディングの仕事から入る場合ですと、チャンスが少なくなるかなという気もしますけれど……。 Q: 最近のお仕事について教えてください。 A: 新しい本が2冊でます。YAと絵本です。YAのほうは、ヴァージニア・ユウワー・ウルフ作『レモネードを作ろう』(徳間書店)。アメリカの作家で、日本で紹介されるのは、この本が初めてです。犯罪やドラッグや絶望が路上にごろごろ落ちているような町に住む14歳の少女が主人公で、彼女のモノローグでストーリーが綴られていきます。いつかこの町を出て、いい仕事について、いい暮らしがしたい……そのためには大学にいかなきゃ、と思った主人公がベビーシッターに行った先は、2人の子どもを抱える、17歳のシングル・マザーだった……という話。翻訳はけっこう大変で 絵本のほうは『はがぬけたら、どうするの?』(ビーラー文/ブライアン・カラス絵/フレーベル館)。「こどものころ、歯がぬけましたよね。そのとき、その歯をどうしましたか?」と世界各国の人にきいて集めた答えを絵本にしたものです。文句なく楽しい絵本ですので、ぜひ読んでください。読み終わったあと、「人間っていいなあ!」ってしみじみ思うような絵本です。 どちらも4月か5月には書店にならびます。ご感想をきかせてくだされば嬉しいのですが。 |
Q: 最初に訳された作品について教えてください。 A: 初めに訳したのは『バーバ・ヤガー』(アーネスト・スモール文/ブレア・レント絵/冨山房、童話館)、『きみなんかだいきらいさ』(ジャニス・メイ・ユードリイ文/モーリス・センダック絵/冨山房)、『うさぎさんてつだってほしいの』(シャーロット・S・ゾロトウ文/モーリス・センダック絵/冨山房)他数冊です。センダックの2冊はもともと大好きで、わたしが英語を教えていた近所の子どもたちに自分で訳したものを読み聞かせていたので、もう訳は半分できあがっていたようなものでした。 Q: 2冊目のお仕事はどのようにして決まりましたか? A: はじめにセンダックの絵本を訳すという幸運にめぐまれたため、なんとなく仕事が入ってきました Q: 今年の8月末にイギリスを訪れた際、『メニム一家の物語』シリーズの作者であるシルヴィア・ウォーさんと久しぶりの再会を果たされたそうですが、そのときのお話をお聞かせください。 A: CLNE(Children's Literature New
England)というアメリカの児童文学団体がケンブリッジ大学で開いたセミナーで会いました。ご夫妻でゲーツヘッド(イングラ ブロックルハースト・グローブの謎の屋敷 メニム一家の物語 Q: 最後に、児童文学翻訳家をめざす人たちへひとことお願いします。 A: 翻訳の仕事の半分は本を読むことだと思います。ジャンルを問わず、言語を問わず、どんどん読んで、そして買って下さい(貧しい翻訳者のために!)。 |
【こだまともこさん】 出版社勤務を経て、児童文学の創作および翻訳を始める。作品に『三じのおちゃにきてください』(なかのひろたか絵/福音館)、訳書に『大草原の小さな家』(ローラ・インガルス・ワイルダー作/渡辺南都子共訳/講談社)、『草原のサラ』(パトリシア・マクラクラン作/徳間書店)、『屋根裏部屋のエンジェルさん』(ダイアナ・ヘンドリー作/徳間書店)などがある。97年秋には、人形一家が繰り広げる新しいタイプのファンタジーとして大いに話題を呼んだ『メニム一家の物語』シリーズ(シルヴィア・ウォー作/講談社)が5巻の完結を迎えた。東京都在住。 |
インタビュアー : 田中亜希子
※本の表紙は、出版社の許可を得て使用しています。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ copyright © 1999, 2002 yamaneko honyaku club |