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やまねこ調査隊

第29回 韓国からやってきた“うんちくん”

『こいぬのうんち』
『あなぐまさんちのはなばたけ』
クォン・ジョンセン文 チョン・スンガク絵
ピョン・キジャ訳(平凡社 本体各1500円)

 こいぬが落としていったちいさなうんち。なきむしのうんちくんは、なんの役にも立たない自分にいやけがさしてしまう。ある日、そんなうんちくんに、たんぽぽが語りかけた――。韓国生まれの絵本『こいぬのうんち』は、昨年9月に平凡社から出版され大きな反響を呼んだ。これまで児童書とも絵本ともあまり縁のなかった平凡社から、なぜ韓国の絵本が出版されたのだろう。

 『こいぬのうんち』は、1969年に韓国の第1回キリスト教児童文学賞を受賞した、クォン・ジョンセン作の童話を、絵本作家チョン・スンガクが1996年に絵本化した作品。おはなし自体は、長い間韓国の子どもたちに親しまれてきた有名なものだ。

 在日朝鮮人2世である訳者のピョン・キジャさんは、この絵本をぜひ日本に紹介したいと児童書出版社に持ち込んだが、断られ続けたという。「なじみのない韓国の絵本ということもあり、なかなか受け入れてくれる出版社がなかったようです」と語るのは、編集を担当した浅井四葉さん。たまたま知り合いを通じてこの作品を知った浅井さんは、「うちから出したい」と熱心に社内を説得、平凡社はじめての絵本の出版が決まった。

 刊行後は、売れ行きも好調で、同コンビによる2作目『あなぐまさんちのはなばたけ』も今年6月に出版された。現在浅井さんは、韓国の幼年読み物『庭を飛び出しためんどり(仮題)』をピョンさんの訳で準備中。“うんちくん”コンビによる3作目の絵本『黄牛(ファンソ)おじさん』も、出版を検討している。

 絵本の編集ははじめてだった浅井さんは、ピョンさんの言葉への真剣な取り組みに圧倒されたという。例えば、韓国語には「アイゴー」という、うれしいとき、かなしいとき、おどろいたときなどにつかう言葉がある。それをあえて日本語に噛み砕かずそのまま入れた。ほかにも、韓国独特の言葉など、注釈をつけて使ったものが多い。「そういう部分が、この絵本の魅力にもなっているんです」と語る浅井さんは、今後も、他社とはひと味ちがう絵本を手がけていきたいと考えている。いまはやはり韓国をはじめとするアジア圏の作品に注目しているところだ。「韓国では、ここ数年、いい創作絵本が生まれる状況になってきています。日本のみなさんにもぜひ楽しんでいただきたいですね」

(ながさわくにお)



「キッズBOOKカフェ」(月刊『eとらんす』2001年12月号掲載)のホームページ版です。

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