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やまねこ調査隊

第20回 ゴーリーの不気味で珍妙な世界――河出書房新社に聞く

「ギャシュリークラムのちびっ子たち」表紙 「うろんな客」表紙 「優雅に叱責する自転車」表紙
『ギャシュリークラムのちびっ子たち』
『うろんな客』
『優雅に叱責する自転車』
エドワード・ゴーリー著 柴田元幸訳(河出書房新社 本体各1000円)

 とんでもない絵本が出たものだ。26人の子どもたちが、「Aはエイミー かいだんおちた Bはベイジル くまにやられた ……」と次々と悲惨な運命に見舞われる姿が展開される。神経質そうな線画に、不気味な存在感とそこはかとないユーモアが漂う、エドワード・ゴーリーの『ギャシュリークラムのちびっ子たち』。続いて出た『うろんな客』『優雅に叱責する自転車』では、ちょっとシュールな、とぼけた味わいで独自の世界を構築している。3作を訳したのは、ポール・オースターなどの翻訳で有名な柴田元幸氏。出版社は、C・V・オールズバーグの絵本などを手がける河出書房新社だ。この一癖ある組み合わせに興味を持った調査隊は、編集部の田中優子さんを訪ねた。

「ゴーリーって、日本ではほとんど知られていませんが、欧米では、カルトな人気を持つ有名な絵本作家なんです」それをなんとか日本に紹介したいという思いから、97年に再版された代表作3作の邦訳を検討する。99年に大人向けの絵本として出した、ティム・バートンの『オイスター・ボーイの憂鬱な死』(発行:アップリンク/発売:河出書房新社)の評判が良かったことも受けて、出版が決まる。

「柴田元幸さんならこういう作品がお好きかもしれない」とアタックしてみれば、なんと柴田氏は、ニューヨークのショップでゴーリーTシャツを買っていたほどのファンだったという。「翻訳者との幸運な出会いが果たせましたね」

『ギャシュリークラム……』では原文の脚韻をも再現する工夫をした柴田氏。『うろんな客』も、対句形式の韻文だったが、それをなんと短歌形式で訳した。柴田氏曰く、こういう作品は「あるとき、瞬間湯沸かし器のように訳文が浮かんでくる」のだそうだ。楽しく訳したであろうことが、訳文からもうかがえる。

 この3作は、もちろん大人向けの絵本だが、田中さんは「個人的には、中学生くらいから読んでほしい」と語る。「そのくらいの子が読む本が少なすぎます」という田中さんは、ヤングアダルト作品にも強い興味を抱いているそうだ。「ほかでは出さない、変わった作品をすきま産業的に出していきたいですね(笑)」

(ながさわくにお)



「キッズBOOKカフェ」(月刊『eとらんす』2001年2月号掲載)のホームページ版です。

表紙の画像は、出版社の許可を得て掲載しています(無断転載不可)。

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2月号「洋書でブレイク」

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