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やまねこ調査隊

第31回 PHP研究所の個性派翻訳書 秘密は「出会い系」にあり?!

元気が出る作品代表格!!
『エレベーター・ファミリー』
ダグラス・エバンス作 清水奈緒子訳
本体1200円

12月出版の新刊はオランダの作品。
「ちびろばくん」が本当にかわいい!
『おおきくなりたいちびろばくん』
リンデルト・クロムハウト作
アンネマリー・ファン・ハーリンゲン絵
野坂悦子訳 本体1200円

 PHP研究所というと、ビジネス啓蒙書や生活ノウハウ本といった一般書のイメージが強い出版社だ。ところが児童書のラインナップに注目すると、翻訳物には台湾やオランダなど非英語圏の作品もあり、かなりユニーク。我らがやまねこ翻訳クラブで今“イチ押し”の作家、ローレン・チャイルドの邦訳をいち早く出版したのもPHP研究所だった。そこで調査隊は、同社児童書出版部に、編集長の後藤淳一さんと編集の大久保徳久子さんを訪ね、その個性派ラインナップの秘密を探ってみることにした。

 PHP研究所では、5年ほど前から翻訳児童書の出版を始めている。その後本格的に翻訳物を手がけるきっかけとなったのは、1998年出版の『マイロのふしぎな冒険』(ノートン・ジャスター作/斉藤健一訳)だ。原書はアメリカで40年近く読み継がれ、100万部を越すロングセラー。編集者のひとりが個人的に知っていて、強く推した1冊だった。「読んでみると本当におもしろくて、これが未訳だなんてと、驚きました。それが、埋もれた名作にこそ目を向けようという、今に至る大きなはずみになったんです」と大久保さん。また、翻訳作品を出す際のノウハウがほとんどなかったため、版権取得のプロセスや印刷コストなどは「今もまだ勉強中」と編集長の後藤さんは笑う。が、受賞作に注目したり、エージェントに頼ったりという既存の方法だけではなく、独自のやり方で本作りをしてきたことで、逆にPHP研究所としてのカラーができてきたとも。たとえば、台湾の絵本『いすになった木』(梁淑玲作)は、訳者の宝迫典子さんからのメールで「舞い込んできた」企画が実現したもの。以前に出版した作者であっても、流れで次作を出すということもしない。出会った作品ひとつひとつをじっくり吟味して、自分たちが本当に「おもしろい」と思ったものを出す。結果、少ない点数ながらも、個性の光る作品がそろったというわけだ。「そういう意味では、“出会い系”出版社ですね」という後藤さんの言葉に、大久保さんが吹き出した。

「翻訳物には、日本の作品にない発想とおもしろさがある。今後も“出会い”を大切に、PHP研究所だからこそできる作品を出して、子どもたちに夢を与えていきたいです」(後藤さん)

(中村久里子)



「キッズBOOKカフェ」(月刊『eとらんす』2002年2月号掲載)のホームページ版です。

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2月号「洋書でブレイク」

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