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アイスランド文学賞

このレビュー集について 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メルマガ「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。



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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

アイスランド文学賞(アイスランド) レビュー集
 

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最終更新日 2009/01/23 新規公開

アイスランド文学賞の概要

授 賞 者: アイスランド大統領
創   設: 1989年 アイスランド出版社連盟(仮訳、※)が、創立100周年を記念して創設(日付は1月12日)。
授賞の目的: アイスランド文学の地位を高めること、質の高い書籍の出版を奨励すること、文学がメディアに取り上げられる頻度を上げること、
       文学について一般読者が語り合う機会を増やすこと。授賞は毎年行われる。

過去の受賞者一覧(アイスランド語)http://www.forseti.is/Forsida/Verdlaunogvidurkenningar/Islenskubokmenntaverdlaunin/Verdlaunahafar/

※「アイスランド出版社連盟」(仮訳)→ Felag islenskra bokautgefenda 〔Félag íslenskra bókaútgefenda〕

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"Sagan af blaa hnettinum 〔Sagan af bláa hnettinum〕"『青い惑星のはなし』


1999年アイスランド文学賞(アイスランド)受賞

"Sagan af blaa hnettinum 〔Sagan af bláa hnettinum〕" by Andri Snaer Magnason 〔Andri Snær Magnason〕 アンドリ・スナイル・マグナソン
『青い惑星のはなし』 土師明子訳 学習研究社 2007年

その他の受賞歴


 宇宙のはるかかなたにある、ごく普通の青い惑星には、ひとつだけ他の青い惑星と違うところがあった。子どもだけしか住んでいないのだ。なぜ子どもしかいないのか、子どもたちはどこからやってきたのか、なぜ大人にならないのか、それはだれにもわからない。
 自然の美しさに喜びを感じ、小さなことに幸せを感じながら楽しく生きていた子どもたちの惑星に、ある日ロケットが墜落した。そして、ロケットから降りてきたのは、ひとりの大人だった……。

 満月の時に高いがけで風と波を聞くのが一番楽しくて、空から雨が落ちてくるだけでも楽しい、そんな暮らしをしていた子どもたちのところに、「夢かなえ人」の大人、グロイムルがやってきた。グロイムルが「かなえる」夢は、たしかに子どもたちが望んだものではあったが、それは最初から子どもたちの頭にあったものではない。グロイムルが「ヒント」を与え、そこから子どもたちが「たしかにそうなればいいな」と思い始めるのだ。そして、実現すると、さっきまでの小さな喜びはたいくつなものとなり、ほんの少し前まで楽しかった暮らしが、もう二度と戻りたくない世界になっている。グロイムルは子どもたちにこのうえなく上手にヒントを与え、子どもたちはグロイムルに感謝し続ける。どんどん深みにはまっているとも気づかずに。どこかで聞いたような、見たような、なんとも空恐ろしい情景だ。
 物語の後半は、それが青い惑星全体の大問題になる。そうなったときにもまだグロイムルの言う通りにするか、それとも自分たちで解決策を見いだすか、子どもたちは選択を迫られる。そして最後の最後にたどりついた結末に、その手があったか! と読者は恐れ入るのだ。
 大人にもぜひ読んでほしい一作。

(冬木 恵子) 2009年1月公開


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