Page 19 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼【カ】Unique えみりい(WYN-1041) 05/6/15(水) 16:12 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 【カ】Unique ■名前 : えみりい(WYN-1041) ■日付 : 05/6/15(水) 16:12 -------------------------------------------------------------------------
"Unique" by Alison Allen-Gray Oxford University Press ドミニクは15歳。父親は製薬会社を経営している。父は、ひとり息子のドミニクに跡を継がせるため、常にドミニクを厳しく叱咤激励しているが、ドミニクはそれに応えられない。昔オペラ歌手だった母は、ずっと精神的に不安定で、アルコールに逃げてばかりいる。ドミニクがほっとできる場所は、近くに住む母方の祖父のところだけだった。 祖父は痴呆が進んでいる。だが、祖父が施設に入れられるのを恐れ、ドミニクはそのことを両親には言っていない。ある日、祖父は突然「出かけなければ」と言い出し、旅の支度をするからトランクを出してくれと、ドミニクを屋根裏部屋に連れていった。ドミニクは屋根裏部屋の存在すら、その時まで知らなかった。そこには、古い家具や道具に混じって、子どもの玩具などもあった。母が子どもの頃のアルバムもある。そして――次にドミニクが手に取ったアルバムには小さい頃の自分が写っていた。今とは違い、両親は幸せそうに笑っている。だが、ページをめくるうち、ドミニクは奇妙なことに気づいた。小学校時代の自分が、なぜか見知らぬ制服を着ている。後に続く写真にも、確かに自分が写っているのに、一緒に写っているのは、見知らぬ場所、見知らぬ友だち。そして……現れたのは、今の自分よりも明らかに年上の自分の姿だった…… こんなミステリアスなところから話は始まります。このあたりまではかなりいい感じに読者を引っぱっていく感じです。 なぜ、そのアルバムにもう一人の自分が写っているのか。いろいろと推理はできますね。たぶん、その中に答えも混じっているでしょう。あっと驚く、というほどの答えではありません。この後、ドミニクはこの謎を解こうとして、家出までします。そして見つけた答えは、ドミニクの予想だにしないことでした。この先は、タイトルに "Unique" とあるように、ドミニクがアイデンティティーの問題に迷い、悩む自分探しの物語となっていきます。ミステリーな、というかサスペンスタッチなところもなんとなく続いていますが、YAらしく親子の葛藤とか自分らしく生きることとかがストーリーの中心になって、じーんとくる場面もあります。でも、最初の謎の「答え」というのが今はもうそんなに目新しくない気もして、さらに表紙に書いてある言葉とかがネタバレ気味だったりして、導入部の雰囲気はすごくいいのになーと残念な気がしました。しかも、最後に起こる重大事件が、いかにも「サスペンス劇場」っぽいのもどうかなあという気が。最後のほうは、両親との関係が結構深みのある展開になってきただけに、「サスペンス劇場」でそれが薄まってしまったようで、これも残念。……と、ちょっと「残念」が多いのですが、人物造型とか描写とか魅力的なところもたくさんあったので、次の作品に期待したいです。 |