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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
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編集部:mgzn@yamaneko.org
1998年12月15日発行 配信数300
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特別企画――プロに訊く 第3回 |
―― 古沢嘉通さん(翻訳家) ――
今回は、SF、ファンタジー、ミステリーなどの分野で活躍しておられる翻訳家の古沢嘉通さんに、デビューのきっかけや、子どもの頃に夢中になった本について語っていただきました。インタビューに快く応じてくださった古沢嘉通さんに、この場をかりて厚く御礼申し上げます。
【古沢嘉通(ふるさわよしみち)さん】 1958年生まれ。大阪外国語大学デンマーク語科卒業。英米娯楽小説翻訳家。プリースト『魔法』、マクドナルド『黎明の王 白昼の女王』、ライマン『夢の終わりに…』、ホルト『疾風魔法大戦』(以上、早川書房)、コナリー『トランク・ミュージック』『ザ・ポエット』(扶桑社ミステリー)など、訳書多数。マクドナルド『火星夜想曲』(早川書房)で、1998年、第8回BABEL国際翻訳大賞新人賞を受賞。サッカー日本代表と飼い猫をこよなく愛す。最近のお気に入りは、フジ系TVドラマ『ソムリエ』の稲垣吾郎の怪演。大阪府在住。 |
★翻訳家になられたきっかけはなんですか?
どうせ一回しか生きられないのだから、いやな思いをしながら生きていたくないなあ、と思っているうちに……。
好きなことをして暮らしていけるなら、それにこしたことはないですからね。
二十五年まえにJリーグができていたら、そっちに進んでいたでしょう(笑)。
★最初のお仕事はどのようにして決まりましたか?
編集者をしていた、SFファン仲間からの紹介です。東京創元社で、新人翻訳家を数名採用して新しいシリーズ(マリオン・ジマー・ブラッドリーの〈ダーコーヴァ〉シリーズ)を出すことになり、そのうちの一冊(『ハスターの後継者』)をやってみないかといわれて。
SFファングループには、十六歳のときSFマガジンに投書したのをきっかけに、積極的に関わるようになりました。たまたま入ったファングループが、翻訳を中心に活動していたので、わたしも翻訳に興味を持つようになったんです。大学に入ってからは、SF研究会を作って活動していました。
★最初のお仕事をなさったとき、どのような点にご苦労なさいましたか?
勤めながら翻訳していたので、眠かったなあ、という印象しか残っていないですね。とくに苦労した覚えはありません。こ、この本が百万部売れたら、すぐにでも会社辞められるのになあ、と夢想しながら、ワープロをぶったたいておりました。
あっ、字を書くのがきらいなので、ワープロがなかったら、翻訳家にはなっていなかったでしょうね。
★様々なジャンルの翻訳をなさっていますが、特にお好きな分野はありますか? また、翻訳なさる際に特に注意していることなどがありましたら教えてください。
SF畑出身なので、もちろんSFやファンタジーは好きですが、自分が面白いと思える小説はなんでも好きです。
翻訳の際に気をつけているのは、原文がいわんとしていることを日本語化の過程で恣意的に変えてしまわないようにすることですね。なにも足さない、なにも引かない、が理想ですか。
『ナイトホークス』 マイクル・コナリー作 (扶桑社) |
★作家や作品の情報は、どのような方法で入手なさっているのでしょうか? また、作家の方と直接コンタクトをとられることはありますか?
業界の情報誌に目を通しておくのは基本ですが、好きなジャンルであれば、自然とアンテナにひっかかってくるものです。本を買うのが仕事ですもの。
ただ、わたしの場合、先に誰かが訳して、その訳者の色がついている作家を訳すのは気が進まないので、なるべく新しい作家を探すようにはしています。
それから、作品に興味はあっても作家個人にはなんの興味もないので、なるべく著者にコンタクトを取ることはしないようにしています。日本に来たって絶対に会ってやんない(笑)。
★ずばり、今、注目の作家を教えてください。
今後わたしが訳す作家をご注目ください(笑)。
★出版社から依頼されるお仕事と、持ちこみとでは、どちらが多いのでしょうか。
編集者から提示された作品を読んで、面白かったら、引き受けるようにしております。つまんない作品訳したって、仕方ないもんね。もっとも、たくさん売れるという保証つきであれば、四の五のいわずに引き受けますが。
売りこんでも諸般の事情でうまくいかない場合が多いですね。
★ところで、古沢さんは大阪にお住まいですが、東京以外でお仕事をされていることで、何か不便を感じることはありますか? また、地方在住の方が翻訳家デビューするのは難しいと思われますか?
東京に出版社が集中していることから、なにかとお金がかかりますねえ。足代とか電話代とか。でも、それほどデメリットは感じておりません。
翻訳家としてやっていけるかどうかは、居住地よりも本人の資質の問題でしょう。デビューしたからといって、ずっとやっていける保証なんてないんだし。
★やはり、子どもの頃から本がお好きだったのでしょうか?
友だちの家に遊びにいって、友だちをほっぽって、その家にある本を読みふけり、そこの親に「その本貸してあげるから、もう帰ったら?」といわれるような子どもでした。
近所に、マンガ週刊誌をすべて買っているお兄さんがおり、毎週一度その家に勝手にあがりこんで(笑)、読みふけっていたなあ……。
そういえば小学生の頃、月に一度、家族で神戸の三ノ宮に食事に行っていたんですが、行く度にポプラ社のルパン・シリーズを一巻ずつ買ってもらうのがとても楽しみでしたね。あまり裕福な、というか、ありていにいえば貧しい家庭だったんですが、ほしい本はたいてい買ってくれました。いま思えば、けっこうムリして買ってくれていたようで、両親にはとても感謝しています。
とにかく、字の書かれているものが手許にあればなんでも読んでいたと思います。あのころの情熱がいまあれば……。
★最後に、翻訳家をめざしている読者のみなさんに、ひとことお願いします。
ライバルが増えてほしくないので、あんまりめざしてほしくないんですが(笑)。ただでさえ、才人ぞろいの業界なんだから。まあ、わたしがかつかつ生活できるだけのパイは残しておいてください。オ・ネ・ガ・イ。
(インタビュアー:宮坂宏美)
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特集 |
過日、1周年を迎えたやまねこ翻訳クラブで、昨年11月から今年10月までに出版された邦訳児童書、および、過去に海外で出版された未訳児童書を対象に、ベスト5の選出が行われました。以下に、その結果をご報告します。見事大賞に輝いた邦訳作品の翻訳家の方には、賞状と記念品が贈られます。
★大賞 『ヤンネ、ぼくの友だち』 名字も、住所も、そして性別さえも分からないヤンネと、何不自由ない家庭で育った少年クリッレとの友情を描いた物語。スウェーデン文学協会新人賞他、多数受賞。 |
【受賞のことば】 翻訳家 ただのただおさん 作品の力でしょうが、うれしいですね。『ヤンネ、ぼくの友だち』は、北欧語の自在さを極限まで駆使した文体の作品です。それを日本語で掘り起こしていく作業は、作品の力を感じる、ゾクゾクするような体験でした。子どもの本の翻訳には関心があったので、編集者に恵まれて今回のような仕事ができたのは幸せなことだと思います。これからも、子どもたちの心に迫るような本をとどけていきたいですね。 |
◆2位 『猫の帰還』 主人のあとを追って、戦渦の中を旅する一匹の猫。その猫の目を通して、旅の途中に出会う人間たちの姿を鋭く描く。英国の巨匠ウェストールが1989年に執筆した作品。 |
◆3位 『ワトソン一家に天使がやってくるとき』 愛すべき黒人一家の笑いと涙の日々を描いた物語。コメディ仕立てでありながら、人種差別問題を浮き彫りにしている。1996年の米国ニューベリー賞次点。 |
◆4位 『種をまく人』 都会の片隅にまいた一粒の種が、やがて人種や身分を超えて、人の心と心をしっかりと結びつけていく。92ページと短いながらも、様々なことを考えさせられる一冊。 |
◆5位 『不思議を売る男』 1989年の英国カーネギー賞受賞作。骨董屋に住み込みで働くことになった男が、品物にまつわる話を次々に作り上げ、その話に感心した客に売っていくという物語。 |
◆6位から10位の作品: | 『夜行バスにのって』『エイプリルに恋して』『時計はとまらない』『北極星をめざして』『子犬のラッキー大脱走』 |
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★大賞 『みどりの船』 夏休みをおばさんの家で過ごすぼくらが、となりのお屋敷の庭で見つけたのは、植木を刈り込んで作った「みどりの船」。その船に乗ってぼくらは大冒険を繰り広げる。 |
【受賞のことば】 翻訳家 千葉茂樹さん わーい、記念すべき第一回の大賞だ! 大のお気に入りの絵本が、目の肥えたやまねこの多くの方に支持されて、感謝感激です。『みどりの船』がいつまでもみなさんの心の片隅にとどまり続けるならば、これ以上にうれしいことはありません。1999年も、みなさんに愛される作品をお届けできるようがんばらなくちゃ。みなさん、本当にありがとう! |
◆2位 『でんしゃがくるよ!』 土曜日になると、お父さんとぼくとお姉ちゃんは、電車を見に鉄橋まで出かける。くるよ、くるよ、電車がくるよ! 電車好きの子供の心をみごとに描ききった一冊。 |
◆3位 『エマおばあちゃん』 72歳で、ひとりぐらしのエマおばあちゃんは、子供や孫たちから、誕生祝いに一枚の絵を贈られた。その絵をながめるうちに、おばあちゃんの心の中で何かが起こる。 |
◆4位 『それいけ! あかいきかんしゃ』 小さな赤い機関車を走らせるノーム、アルフ、ジョージの三人組。ある日、野原いっぱいに広がるブラックベリーにさそわれて……。オーストラリアののどかなお話。 |
◆5位 『アーミテージさんのすてきなじてんしゃ』 自転車でお散歩中のアーミテージさんは、次々とハプニングに見舞われる。そのたびに自転車に改良をほどこすが……。元気でとぼけたアーミテージさんが楽しい一冊。 |
◆6位から10位の作品: | 『ひとしずくの水』『青い馬と天使』『ヘイスタック』『こうしはそりにのって』『時計つくりのジョニー』『ほんとにほんとにほしいもの』 |
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★大賞 NORTHERN LIGHTS(米版:THE
GOLDEN COMPASS) 両親のいない少女ライラは、子どもの連続誘拐事件を追いかけるうち、自分の出生の秘密と、とある組織の存在を知り、北へ向かって旅立つ。壮大な長編ファンタジー。 |
◆2位 THE GARDENER <絵本> 大恐慌の頃のアメリカ。リディアは失業した両親のもとを離れ、パン屋を営む叔父の家で暮らす。そして園芸の才能を生かし、殺風景な叔父の店で花を育てはじめる。 |
◆3位 WRINGER ぼくは、町の鳩撃ち大会で鳩を締め殺す係(wringer)になんてなりたくない! 慣習やいじめ、そして命の問題に直面した、少年の心の葛藤を描く。 |
◆4位 HARRY POTTER AND THE
PHILOSOPHER'S STONE あらすじは、本誌9月号を参照のこと。 |
◆5位 WHIRLIGIG あらすじは、本誌創刊号(8月号)を参照のこと。 |
◆5位(同点) THE VIEW FROM
SATURDAY |
◆付記◆ Philip Pullmanの"Clockwork or All Wound Up"を未訳部門の1位にしたいという声も多かったのですが、こちらは98年10月に邦訳(『時計はとまらない』西田紀子訳 偕成社)が出版されましたので、選外とさせていただきました。ご了承ください。なお、1位から3位、および5位のTHE VIEW FROM SATURDAYは、すでに邦訳出版の予定があるとのことです。 |
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出版年を問わず、過去1年間にやまねこ翻訳クラブ会員が読んだ児童書の中から、ベスト5を選出しました。ご参考までに、作品情報のみをご紹介します。
タイトル | 作家 | 訳者 | 出版社 | 出版年 | |
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1位 | 『めぐりめぐる月』 | シャロン・クリーチ | もきかずこ | 講談社 | 1996 |
2位 | 『ジャズ・カントリー』 | ナット・ヘントフ | 木島始 | 晶文社/講談社 | 1964 |
3位 | 『のっぽのサラ』 | パトリシア・マクラクラン | 金原瑞人 | ベネッセ | 1987 |
4位 | 『ゴースト・ドラム』 | スーザン・プライス | 金原瑞人 | ベネッセ | 1991 |
5位 | 『ヘンショーさんへの手紙』 | B.クリアリー | 谷口由美子 | あかね書房 | 1984 |
(担当:内藤文子/宮坂宏美/小宮由紀)
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◎群馬県立歴史博物館 こどものための特集展示 「むかしのくらし――おじいさん、おばあさんの子どものころ」 |
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所在地: | 群馬県高崎市岩鼻町239番地 県立公園「群馬の森」内 |
電 話: | 027-346-5522 |
会 期: | 平成11年1月6日から平成11年2月21日 |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 大人200円 大学・高校生100円 中・小学生50円 |
内 容: | 小学生を対象に、彼らの祖父母にあたる世代の生活を伝える展示会 |
◎石川県七尾美術館 「'98イタリアボローニャ国際絵本原画展」 |
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所在地: | 石川県七尾市西部第二土地区画整理事業区域23街区1 |
電 話: | 0767-53-1500 |
会 期: | 平成10年11月8日から平成10年12月20日 |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 一般700円 大学・高校生350円 中学生以下無料 |
内 容: | 日本人4人を含む25カ国81人の厳選された作品、約400点を紹介 |
◎兵庫県立近代美術館 「見ること、伝えること 子どもたちの見た美術作品」 |
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所在地: | 神戸市灘区原田町通3-8-30(阪急王子公園駅西出口から西へ5分) |
電 話: | 078-801-1591 |
会 期: | 平成10年12月23日まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 大人200円 大学・高校生150円 中・小学生100円 |
内 容: | 子どもたちの美術館鑑賞体験をもとに制作した作品、文章を所蔵品とあわせて展示。 |
◎高槻現代劇場 「絵本ワールド in たかつき 世界の絵本が高槻にやってくる」 |
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所在地: | 高槻市野見町(阪急高槻市駅南5分) |
電 話: | 0727-85-0520 |
会 期: | 平成10年12月23から26日 |
入場料: | 無料 |
内 容: | オーストラリア、フランス、イタリア(ボローニャ)の絵本、アンデルセン賞受賞作品など、世界の絵本の展示。講演やおはなし会の予定もあり。 |
(担当:瀬尾友子/菊池由美)
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世界の児童文学賞 第3回 |
John Newbery Medal / Randolph Caldecott Medal
〜アメリカで最も権威ある、世界初の児童文学賞〜
名 称 : | ニューベリー賞/コールデコット賞 |
部 門 : | フィクション/絵本 |
創 設 : | 1922年/1937年 |
対 象 : | 米国籍、または米在住の作家の作品で前年に米国で出版されたもの |
選 考 : | 米国図書館協会 (American Library Association) |
発 表 : | 毎年1月もしくは2月(1999年は2月1日) |
関連サイト: | http://www.ala.org/alsc/newbery.html http://www.ala.org/alsc/caldecott.html |
ニューベリー賞は、1921年、雑誌"Publisher's Weekly"編集主幹であるMelcherが米国図書館協会の会議で設立を提唱した、世界初の児童文学賞である。名称は、18世紀イギリスの出版業者で、児童文学の発展に貢献したJohn Newberyの名をとってつけられた。審査では、テーマや構成の秀逸さ・緻密さといった文学としての質と同時に、「子どもを惹きつける」ことが重要な基準となっており、単に教訓的なもの、人気が先行しているものが評価されるとは限らない。
一方コールデコット賞は、ニューベリー賞設立の15年後、児童書における「絵」の役割に対する評価が高まる中、同じくMelcherの提案により、画家対象の賞として設立された。19世紀イギリスの代表的絵本画家であるRandolph Caldecottの名が名称の由来である。絵としての完成度は当然のことながら、絵が文章と一体となって物語の世界を表現し、子どもの心に訴えかける絵本となっているかどうかが評価される。
コールデコット賞設立当初は、一作品が両賞を同時受賞できないことになっていたが、1977年以降はその規制がはずされ、1982年には"A Visit to William Blake's Inn"がニューベリー賞、およびコールデコット賞次点に選ばれた。また、1977年には、それまでひとつの委員会で行っていた各賞の審査を、別々の委員会を設けて独立して行うようになった。
■1999年の候補作 関連サイトで近々発表される予定。なお、The Childern's Literature Web Guideでは、掲示板を設けて一般利用者による受賞作予想を受けつけている。 http://www.acs.ucalgary.ca/~dkbrown/
■過去の受賞作品と主な受賞作家 1998年の各受賞作品については、本誌創刊号と第2号に特集記事が掲載されている。過去の受賞作品(次点を含む)については、やまねこ翻訳クラブ作成の邦訳・未訳受賞作品リストが、ホームページで参照できる。 http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/newbery/ |
(森久里子)
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Chicocoの洋書奮闘記 第3回 | よしいちよこ |
やまねこ翻訳クラブのワラビさんが洋書を4冊も貸してくれた。感謝。まずは、いちばん薄い本から読みはじめる。"Sarah, Plain and Tall"(Patricia MacLachlan/1985年/Harper Trophy)。『のっぽのサラ』というタイトルで邦訳が出ているが、未読。字はかなり大きい。本文は56ページしかない。
【6/15】 | 10p。"TOM'S MIDNIGHT GARDEN"の苦労を思うと、あまりの薄さに「楽勝」などとつぶやく。ほのぼのしたストーリー。登場人物の心情があちこちにあらわれている。弟ケイレブが生まれた次の朝、母は死んでしまった。母を恋しいと思う姉アナのケイレブに対する複雑な気持ちが痛々しく、涙が出た。ある日、父が、新聞に新しい妻を求める広告を出したところ、サラという女性から手紙がきた。 |
【6/16】 | 20p。サラはアナたちの住む草原で、1か月、いっしょに過ごすことになる。子どもたちはサラにお母さんになってほしい。なにげないサラの一言一言やしぐさに一喜一憂する子どもたちがかわいく、また、とてもせつない。 |
【6/17】 | 26p。クライマックス。もう、最後は涙が出っぱなし。読了。 |
おお! 2冊めは3日で読み終えた。薄い本だけれど、感動は大きい。ニューベリー賞受賞も納得。あとがきによると、テレビドラマ化されているらしい。サラはグレン・クローズ。『101』のクルエラかあ。でも、けっこうあってるかも。見てみたい。
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やまねこ翻訳クラブ(会員数107名)
やまねこ翻訳クラブは、海外の子どもの本に関する情報交換、翻訳・シノプシス自主勉強会などを行っている児童書専門サークルです。翻訳と子どもの本に興味のある方でしたらどなたでも入会できますので、ぜひお気軽にご参加ください。
―― 98年12〜99年1月の活動 ――
◆海外児童文学賞受賞作読破マラソン ◆未訳作品の全訳勉強会(Sharon Creech "Pleasing the Ghost") ◆遊学館絵本コンクール勉強会("When I Was Little Like You")12月まで |
●編集後記●
先月6日、「消える? 都民の書斎」と題して、都立日比谷図書館の存続問題を報じる記事が朝日新聞夕刊に掲載されました。原書・訳書とも、児童書や児童書参考資料の非常に充実した図書館なので、絶対消えてほしくありません!(み)
発 行: | NIFTY SERVE 文芸翻訳フォーラム・やまねこ翻訳クラブ |
発行人: | 小野仙内(文芸翻訳フォーラム・マネージャー) |
編集人: | 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブ・スタッフ) |
企 画: | 河まこ、キャトル、くるり、Chicoco、BUN、ベス、YUU、りり、ワラビ |
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