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特別企画――プロに訊く 第4回 |
今回は、ファンタジー、ミステリー、純文学などの分野でご活躍中の翻訳家、西崎憲さんに、デビューのきっかけや、今後の翻訳のご予定などについてのお話をうかがいました。メール・インタビューに快く応じてくださった西崎憲さんに、厚く御礼申し上げます。
【西崎憲(にしざきけん)さん】 1955年、青森県生まれ。青森県鰺ヶ沢高等学校卒業。英米文学翻訳家。編・共訳書に、『怪奇小説の世紀』全三巻(国書刊行会)、『英国短篇小説の愉しみ』全三巻(筑摩書房)、訳書にアントニイ・バークリー『第二の銃声』(国書刊行会)、A・E・コッパード『郵便局と蛇』(国書刊行会)などがある。 |
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★翻訳を始められたきっかけはなんですか?
読みたい作家の本が訳されていず、それをぜがひでも読みたいと思ったからだと思います。
★最初のお仕事はどのようにして決まりましたか?
すでに文筆家として立っている友人がいて、その友人から編集者に「これこれこういう友人がいて企画書を見てもらいたがっているので見てやって欲しい」という電話を入れてもらってから企画書をその編集氏宛に送りました。幸運にもそれが通り、本を出すことができました。
★最初のお仕事をなさったとき、どのような点に苦労なさいましたか?
普通に英語で苦しみました。あと編集氏とのやりとりはやはり社会人として常識をもってやらなければ駄目なのだなと思いました。当たり前のことですが。
★西崎さんは、ミステリー、ファンタジー、怪奇小説、純文学などを訳されていますが、この中で特にお好きな分野はありますか?
「スーパーナチュラル」ということで私の趣味は大雑把に括られるかしれません。でもそれ以外にも好きなものはあります。
★西崎さんは、イギリス文学を中心に訳されていますが、それについては、何か理由はありますか? 今後、アメリカ文学を訳される予定はあるのでしょうか?
確かにイギリスのものはとても好きですが、アメリカのものが嫌いというわけではないので、いつかナンシー・ウィラードやヘルプリンは訳してみたいなと思っています。
★西崎さんは、新しい作品よりも、古い作品がお好きだという印象があるのですが、そのへんについては、いかがでしょうか?
そうです。でも新しいものでも好きな作品はあります。古いものの好きな新しい人の作品ですね。
★話は変わりますが、子どもの頃から本はお好きでしたか? 子どもの頃にお好きだった本について、具体的に教えていただけるとうれしいです。
もちろん本は好きでした。しかしあまり上等な子供用の本は知りませんでした。宮沢賢治は読んだ覚えがあります。あと『赤い鳥』の選集を読んだ記憶があるのですが、それは定かではありません。どうも何でもよかったらしく、大人向け大衆雑誌にのっていた乱歩の「一寸法師」をどきどきしながら読んだ記憶もあります。翻訳の絵本・児童文学とはまったく無縁でした。子供のころアーサー・ランサムとかを読んでいたらもっとかっこいい都会的な大人になっていたように思います。
★絵本の翻訳に興味をお持ちだそうですが、その理由は何でしょうか?
難しい質問ですね。修辞のひとつの形態として好きという以外に理由もありそうです。絵本の翻訳と言うより、もう少し年齢層の高い児童文学のほうが好きかもしれません。絵本も児童文学もおそらく自己確認みたいな作業かなと思います。つまり子供の頃の世界を取り戻したいということですね。その意味では子供のために、ということを強調するのはあまり好きではありません。自分が好きなふうに訳してそれが結果として読者である子供の楽しみにもなるというのが一番いいかなと思っています。というか実際にはそれしかないかなと。散漫に好きなものを並べると、ドリトル先生の井伏−石井の訳(※)は日本の翻訳史のなかで最上位に位置するものだと思います。アリスもかなり好きだし、エルマーも好きだし、レオーニとかもいいと思います。古典になっているリンクレーターの、挿絵が大好きな『月に吹く風』や、ほぼ百年前に書かれたサイレットの可愛らしい物語『魔法の街』(これも挿絵が美しい)など訳せたらなと思いますが、今の状況では無理のようですね。
ところで全然質問の答えになっていませんね。まじめに考えると、確かに詩的な部分に惹かれもしますし、少ない文字に凝縮された何かに惹かれもするのですが、それより何かオブジェのような、確固としたものを、絵本の訳でやってみたいのかもしれません。文章には形はないですよね。でも、絵本はほかの玩具などと一緒で、「物」であるわけですし、おそらく、そのなかの文字・文章も「物」的な側面があるのではないでしょうか。だから、こつこつと、木とかを使って遊具を造るように、文を造ってみたいという気があるのかもしれません。喜びを与えてくれる小さな愛らしい玩具、そうしたものをつくってみたいです。やらせてくれる方募集中。
★今後の翻訳のご予定について、もしよろしければ教えてください。
意外にたくさんあることに気づいてしまいました。まず『ヴァージニア・ウルフ短篇集』でこれは文庫です。気が遠くなるくらい難しいです。それから『ドイル傑作集』、二巻本で共同編纂もやります。これは自分の担当するのは八作くらいだし、難しくないし、楽しく訳せるので、締切以外に大変なことはないです。あとG・K・チェスタトンの中篇集があります。こちらもウルフ同様難しいのですが、チェスタトンの文体は自分にあっているような気がするので、長さ以外に気が重い点はありません。あとアメリカのフォークロアを集めた『アメリカの想像力』という本をある出版社に企画として持ちこんでいますが、こちらはまだ企画自体が通っていません。これは大部なので十人くらいでやる予定です。それから大分以前に原稿を渡しているのですが、遅れているものがあって、早く出て欲しいものだと思っています。
『エレガント・ナイトメア』というもので共訳です。ああ、あと事典もありました。編集・訳に携わった『幻想文学大事典』というものが二月末に出ます。でも二万円という恐ろしい値段がついているので、ちょっと個人では買えないですね。図書館にリクエストしてくだされば嬉しいです。そのほかに今考えているものとしては『東洋幻想譚』『英米怪談集』『ヘルプリン短篇集』などがあります。果たして実現するかどうか。
★最後に、文芸翻訳家をめざしている読者のみなさんへ、ひとことお願いします。
ただ翻訳家を目指すのではなく、良い翻訳家を目指して欲しいなと思います。で、私の考える良い翻訳家とは、英語の読めるということでもなく、日本語の達者なということでもなく、小説や文章にたいする理解が深い翻訳家ということになります。小説や文章があまり好きではないのに文芸関係の翻訳をやるというのは私には不思議なことのように思われますし、腹立たしいことでもあります。それに原文にたいして尊敬の念を持っていない翻訳者には殺意を覚えることもしばしばです。ああ、これを書いて自分がいかに頑迷固陋な人間か判りました。
(インタビュアー:宮坂宏美)
※編集注: | ドリトル先生シリーズは、全巻井伏鱒二の単独訳だが、実際には編集者だった石井桃子が下訳などで訳業に大きくかかわっており、共訳的な側面の強い訳書であったとされている。 |
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特集 |
2月1日、アメリカで最も権威のある児童文学賞といわれているニューベリー賞、コールデコット賞が発表された。これは、ALA(American Library Association)が、昨年度アメリカで出版された子どもの本の中から、最も優れた作品に対して贈る賞である。受賞作家は、6月に行われるALAの総会で受賞スピーチを行い、そのスピーチは"The Horn Book Magazine"に掲載される。本年度の受賞作品は以下の通り。なお、両賞の詳細については本誌98年12月号で、過去の受賞作品については、やまねこ翻訳クラブのホームページで参照できる。
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/newbery/
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/caldecot/
★☆★☆【ニューベリー賞】☆★☆★
★大賞 "HOLES" by Louis Sachar |
〜技巧のかぎりを尽くして、運命の不思議を描く〜
スタンレー・イエルナッツ(Stanley Yelnats)は、プレミアムつきの運動靴を盗んだという無実の罪で、テキサスにある非行少年収容所、キャンプ・グリーンレイクに送られる。無実ではあるが、彼も家族も頭のどこかで「仕方がない」と思っている。実はスタンレーの一族には「呪い」がかかっているという言い伝えがあった。曾々祖父が、ある約束を違えたために、子々孫々に至るまで不運に見舞われる羽目になったというのだ。
さて、グリーンレイクとは名ばかりのこの荒涼たる収容所で、少年たちは、来る日も来る日も直径5フィート深さ5フィートの穴を掘らされる。所長は、それが彼らの性根をたたきなおすというのだが、どうもそれだけではないらしい。ある日スタンレーが穴の中から奇妙な金色の筒を見つけ、所長に報告したところ、所長は目の色を変えてそのあたりの地面を集中的に掘らせた。何かを探しているのだろうか?
スタンレーと収容所の少年「ゼロ」(Zero)との友情と因縁、スタンレーの一族にまつわる不思議な運命、そしてキャンプ・グリーンレイクそのものにまつわる110年前の伝説。3つの大きな流れが時代を超えてからみ合い、やがてパズルのようにおさまるべきところにおさまってゆく。技巧のかぎりを尽くした「運命小説」である。
「巧まざる」という言葉があるが、この小説はまったく逆で、「巧みに巧んだ」という感じ。なにしろ、Stanley Yelnats という名前だって、実は「回文」(前から読んでも後ろから読んでも同じ)になっていて、それがまたこの物語の構造を象徴してもいるのだから。先祖の物語が繰り返され、土地の因縁が繰り返され……。だから初めからそれを楽しむつもりで読むといいのかもしれない。
物語の初めには、ただやみくもに運命を受け入れる気弱な少年だったスタンレーも、物語が終わるころには、みずからの手で運命を切り開くたくましい少年に成長していく。ただ、このあたりの心の動きは、あまりリアルにみっちりと描かれてはいない。人物描写、感情の描写は、むしろ希薄と言えるほど淡々としている。でも、考えてみるとそれもきっとわざとなのだろう。この物語全体が、いわゆる「おはなし」として書かれているからだ。昔話では、人物や心の動きはむしろ類型的に描かれるもの。そういう意味で、インターネット書店アマゾンに感想を寄せている読者の多くが、この小説を"tall tale"(ほら話)と呼んでいるのが印象的だった。テキサスという土地柄や、途中に挿入される女盗賊の物語などがあいまって、アメリカの人たちには無理なく「ほら話」として受け止められるのかもしれない。そのあたりに人気の秘密がありそうな気もする。この作品は、1998年度全米図書賞も受賞している。
☆次点(オナーブック) "A Long Way from Chicago" |
ジョーイは少年の頃、イリノイ州の祖母の家に泊まりにいくのが楽しみだった。祖母は驚くようなことを豪快にやってのける女性。その祖母との夏の思い出が、毎年ひとつずつ計7編収められた、ユーモアあふれる秀作である。大恐慌時代のいなか町の様子も印象的に描かれている。著者のリチャード・ペックは、ヤングアダルト向けを中心に、多くの作品を発表している。 |
★☆★☆【コールデコット賞】☆★☆★
★大賞 "Snowflake Bentley" by Mary Azarian |
幼いころから雪に魅せられ、顕微鏡付きのカメラで雪の結晶を撮ることに一生を捧げたウィルソン・ベントレーの絵本伝記。力強い木版画はすばらしく、本のデザインも凝っている。
☆次点(オナーブック)は以下の4作品
"Duke Ellington : The Piano Prince and His Orchestra" by Brian Pinkney Andrea Davis Pinkney文 HYPERION 32pp. ISBN:0786801786) |
「デューク」の愛称で親しまれているジャズピアニスト兼作曲家、エドワード・ケネディ・エリントンの生涯が描かれた絵本。ブライアン・ピンクニーは、カラフルな色彩と躍動感あふれるイラストレーションで、デュークの音楽を見事に表現した。 1996年度コールデコット賞オナーブック、1997年度ボストングローブ=ホーンブック賞(絵本部門)を受賞するなど、注目の作家。ジェリー・ピンクニーは彼の父親。 |
壁に落書きしたり、裸で道を走ったり……その度に母親から"NO DAVID"といわれるやんちゃな子どもの姿が生き生きと描かれている。子どもも、そして昔子どもだった大人も、ともに楽しめる絵本である。作者デイビッド・シャノンが5歳の時に自分のことについて書きつづった作品が、この絵本をつくるきっかけになったという。シャノンの絵本は、これまでに日本で2冊出版されている。 |
"No David" by David Shannon Blue Sky/Scholastic 32pp. ISBN:0590930028 |
"Snow" by Uri Shulevitz Farrar Straus Giroux 32pp. ISBN:0374370923 |
男の子の雪への思いと素直な喜びが豊かに描かれた作品。灰色の街が白い世界へと変わっていく絵も美しい。 作者のユリ・シュルビッツは、1969年『空とぶ船と世界一のばか』でコールデコット賞、1980年にもオナーブックに輝いている。本作品はあすなろ書房より『ゆき』と題して既に邦訳が出ている。他にも4冊の絵本が日本で出版されている。 |
父の書斎に置かれていた赤い箱の中には、何年も前、映画製作のためチベットに行った父が、クルーからはぐれ、山中をさまよったときの日記が入っていた。「私」はその日記を読み、父がチベットで繰り広げた不思議な冒険の数々を知る。 チベットの伝説を織り交ぜながら、かの地へのあこがれと父への思いを綴った1冊。曼陀羅などを巧みに取り込んだ、精緻で透明感あふれる美しい世界が描かれている。ピーター・シスの絵本は、1997年度コールデコット賞オナーブック『星の使者』を含め、全部で8冊が日本で出版されている。 |
"Tibet : Through the Red Box" by Peter Sis Farrar Straus Giroux 64pp. ISBN:0374375526 |
◆熱い思いで受賞作発表を待つ◆
子どもの本の情報サイト Children's Literature Web Guide では、昨年12月10日から発表直前の今年1月31日まで、50人近くの人々が、思い思いにニューベリー、コールデコット両賞の予想を行った。 ここでも断然多くの支持を集めたのが"Holes"。中には「感動的というよりうまい作品」という鋭い評もあったが、際だってユニークな作品という点では大方の見方が一致していたようだ。他にアラビアン・ナイトに題材をとったスーザン・フレッチャーの"Shadow Spinner"、知的障害者の両親をもつ少女を主人公にしたキンバリー・ウィリス・ホルトの"My Louisiana Sky"、シャロン・クリーチの新作"Bloomability"、本誌創刊号でも紹介したポール・フライシュマンの"Whirligig"などが幅広い支持を集めていた。これらの作品は、本誌でも順次紹介してゆきたい。 候補作をめぐる予想と共に目立ったのが、イギリスの作品"Harry Potter and the Sorcerer's Stone"(原題は"Harry Potter and the Philosopher's Stone":本誌98年9月号で紹介)に受賞資格がないことを嘆く声の多さだった。読んでみたいけれどちょっと恥ずかしいという大人のために、ついに大人向けの装幀をした版まで売り出されたというこの本、英米両国で一大ブームを巻き起こしていることがうかがえる。 それにしても、子どもから大人まで様々な人たちが「これ」と思う新刊書を読み、熱い思いで受賞作の発表を待ちわびるというのは何ともうらやましい状況ではないか。前回、今回とこの下馬評をつぶさに読んでみて、一番強く感じたのがそのことだった。 |
("Holes"紹介、下馬評について ―― 内藤 文子)
(コールデコット賞、各オナーブック紹介 ―― 植村わらび)
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展示会/セミナー・講演会情報 |
◎エルツおもちゃ博物館「ドイツ絵本原画展」
「ドイツ・おもちゃと古城の旅 一志敦子原画展」 |
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所在地: | 長野県北佐久郡軽井沢町塩沢193-3 |
電 話: | 0267-48-2009 |
会 期: | 平成11年3月3日から平成11年6月21日 |
休館日: | 火曜日 |
入場料: | 大人400円 中・高校生300円 小学生200円 |
内 容: | ドイツ現代絵本作家5人の原画展および、ドイツ・エルツ地方に伝わるおもちゃや伝統技術の展示会 |
◎都立日比谷図書館子ども室「ことばのない世界」 | |
所在地: | 東京都千代田区日比谷公園1-4 |
電 話: | 03-3502-0101 |
会 期: | 平成11年3月末まで |
休館日: | 日曜・祝祭日 |
入場料: | 無料 |
内 容: | 国内外の文字のない絵本の展示会 |
◎大阪府立中央図書館「カナダと日本文化の絆展」 | |
場 所: | 大阪府立中央図書館展示ホール(東大阪市荒本北57-3) |
電 話: | 06-6745-0170(代表) 問い合わせはこども資料室まで |
会 期: | 平成11年2月16日から平成11年2月27日 |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 無料 |
内 容: | カナダ関連の絵本やビデオ・パネルを展示 |
◎絵本美術館&コテージ「『マッチ売りの少女』絵本原画展」 | |
所在地: | 南安曇郡穂高町大字有明2215-9 |
電 話: | 0263-83-5670 |
会 期: | 平成11年4月6日(火)まで |
入場料: | 大人700円 小人500円 |
内 容: | バーナデット・ワッツの描いた絵本『マッチ売りの少女』と『くつやのマルチン』の原画展 |
(瀬尾友子/菊池由美/植村わらび)
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◎遊学館「外国絵本翻訳コンクール 翻訳セミナー 〜翻訳と誤訳〜」 | |
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講 師: | 掛川恭子(翻訳家) |
場 所: | 山形県「遊学館」第1研修室 |
日 時: | 平成11年3月7日(日) 14:30〜16:00 |
参加費: | 無料 |
内 容: | 第8回「遊学館」外国絵本翻訳コンクールの課題図書を使いながら、今回の翻訳のポイントと、あわせて翻訳全般に関する講義を行う。 |
申込先: | 山形県生涯学習センター(TEL 023-625-6411 FAX 023-625-6415) |
◎フェロー・アカデミー「オープンセサミ 〜ヤングアダルト〜」 | |
講 師: | こだまともこ(翻訳家) |
場 所: | 東京都港区赤坂8-5-6 翻訳会館 |
日 時: | 平成11年3月1日、8日(月) 18:50〜20:30 |
参加費: | 12,000円 |
内 容: | 悩み多き年頃のティーンエイジャーに人気のヤングアダルト小説を題材にした翻訳演習。 |
申込先: | フェロー・アカデミー(TEL 03-3475-5811) |
☆大阪京阪こどものとも絵本の講座 | |
場 所: | 門真市民文化会館ルミエールホール |
日 時: | 平成11年3月6日 13:30〜 |
参加費: | 2,800円 |
内 容: | 薮内正幸・長新太さんを迎えての講演会 |
申込先: | 大阪京阪こどものとも社(TEL 0720-23-5604) |
(横山和江/菊池由美)
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Chicocoの洋書奮闘記 第4回 | よしいちよこ |
3冊めは前回の"Sarah, Plain and Tall"の続編。またまたワラビさんに借りた本。"Skylark"(Patricia MacLachlan/1994年/Harper Trophy)。『草原のサラ』というタイトルで邦訳が出ているが、これまた未読。字は大きい。本文は87ページ。
サラはアナの父親と結婚した。その夏、彼らの住む草原には雨が降らず、水不足で苦しむ。近所の人たちは水を求めて去っていくが、父は草原を離れようとしない。家族になったばかりのアナたちに幸せな暮らしは訪れるのか。
【6/18】 | 24p。前作に感動したので、かなり期待して読みはじめる。 |
【6/19】 | 32p。難しい単語がほとんどない。ときどきあっても、そう重要そうではない(花の名前や、馬具?らしきもの)ので「まあ、いいやろ」と読みとばす。来る日も来る日も日照り続きで、みんなが暗い。おまけに火事までおこってしまうし、ちょっと話をつらくしすぎ……と感じてしまった。私はひねくれ者かも。 |
【6/20】 | 31p。1日に30ページ以上も読めるのは、やはりこの本だからだろう。この2冊は、洋書ビギナーにちょうどいい。 |
1冊めの感動をそのまま期待しすぎていたかもしれない。読者に感動させようとしているのが見え見えで、かえってしらけてしまった。アナとケイレブがあまりに良い子すぎて、ウルフ・スタルクの本に出てくるような悪がきが恋しくなる。アメリカの大草原をおそう自然の恐さは、英語で読むと映像がうかぶようにいきいき感じられる。これは得した気分。
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注目の本 |
『紙人形のぼうけん』 原作:"FIVE SISTERS", Hamish Hamilton Ltd.1996 |
静かな夏の日。サリーのおばあちゃんが1枚の紙を折り畳み、女の子の絵を描いて切り抜くと、同じ形の5人の人形が手をつないだ細工ができた。おばあちゃんは、自分の描いた人形にアルファと名付けた。ところが、サリーとおばあちゃんが席を外した隙に、紙人形たちは消えてしまった。二人は知らなかったが、紙とペンには秘密があり、アルファは心を持ったのだ。そこから、紙人形たちの風まかせの冒険が始まる。冒険の途中で紙人形を見つけた人が輪郭だけの人形に絵を描く度に、新しい性格を持った姉妹が増えていった。元気なアルファの後に続いたのは、想像力豊かなキャサベル、泣き虫のエロディー、賢いイカシア、そしてユーモアたっぷりのザマイラ。たくさんの冒険を経て、5人の姉妹が揃うまでには長い年月がかかった。そして、5人が揃った場所は……。
マーヒーのストーリーテラーとしての力量がいかんなく発揮された作品。やさしい語り口の短い作品だが、その中に多くのメッセージが詰められていて、しかもそれが押しつけがましくなく心に届く。パトリシア・マッカーシーの可愛らしいイラストが興を添え、こどもに安心して読ませられる1冊である。5人姉妹を通して個性を持つことの素晴らしさを訴えるメッセージは、画一的なしつけをしがちな親にも是非受け止めてほしい。後半に出てくる化学の「共有結合」などの概念のために対象読者が小学校4、5年以上になったようだが、ここをもう少しやさしい事例にすれば低学年でも充分に楽しめただろう。物語の雰囲気は低学年向けなだけにこのアンバランスが唯一悔やまれる。
(沢崎杏子)
【作者】Margaret Mahy(マーガレット・マーヒー) 1935年、ニュージーランド北島ワカタネ生まれ。ニュージーランド大学卒。1958年以降、図書館員として働く。1969年に"A LION IN THE MEADOW"(『はらっぱにライオンがいるよ』/偕成社)でデビュー。以後、精力的に作品を発表する。1980年より創作に専念。1982年"The Haunting"(『足音がやってくる』/岩波書店)、1984年"The Changeover"(『めざめれば魔女』/岩波書店)でカーネギー賞を受賞。作品は絵本のテキストや奇想天外な低学年向けの物語から超自然的な要素を取り入れたヤングアダルトまで幅広い。 【訳者】清水真砂子(しみず・まさこ) 1941年、北朝鮮生まれ。1964年静岡大学卒業。青山学院女子短大教授。訳書にマーヒー『めざめれば魔女』『ゆがめられた記憶』『ヒーローのふたつの世界』のほか、ル=グウィン『ゲド戦記』四部作(いずれも岩波書店)など多数。他に児童文学評論の分野で『子どもの本の現在』(大和書房)『子どもの本のまなざし』(JICC出版局)などの著書がある。 |
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お菓子の旅 第3回 |
There below him lay the Valley of the Moomins. And in the middle amongst the plum and poplar trees, stood a blue Moominhouse, as blue and peaceful and wonderful as when he had left it. And inside his mother was peacefully baking bread and cakes. Tove Jansson "COMET IN MOOMINLAND" |
子どもから大人まで、世界中で愛されている北欧生まれの童話ムーミン。どの巻でも、料理がお得意のムーミンママが作るおいしそうなごちそうが、物語に花を添えています。1作目『ムーミン谷の彗星』も例外ではありません。
彗星が地球に向かっていることがわかり、ムーミン谷は大騒ぎ。ムーミンたちは遠い天文台へ彗星観測に出かけます。その後やっとの思いで帰ってきたとき、いちばんに出迎えてくれたのが、ムーミンママの焼く香ばしいパンのにおいでした。
そのパンは、英語版では "bread" ですが、「ムーミン」シリーズの原語であるスウェーデン語(※)では "bulle"、そしてフィンランド語では"pulla" といいます。"pulla" とは丸くて甘いバターパンのことです。
においをかいだムーミンが、思わずかけだしたという"pulla"。あなたもこれを焼きはじめたら、だれかがかけこんでくるかもしれませんね。
(※)フィンランドではスウェーデン語とフィンランド語が公用語になっている。「ムーミン」のシリーズはすべてスウェーデン語で書かれた。
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*-* 作り方 *-*
バターを溶かしておく。
ボウルに40度の牛乳、ドライイーストを入れ、砂糖、卵、小麦粉、カルダモン、塩を加えてこねる。小麦粉はパンが固くなりすぎない程度になるべくたくさん混ぜこみ、ボウルにくっつかなくなるほど弾力に富んだパン生地になったら、冷めた1も混ぜこむ。こね作業の最後に好みでレーズンも混ぜる。
生地にふきんをかけて21度の室温で1時間ねかせ、倍にふくらませる。
ふたつに分けた生地をそれぞれ棒状にして12等分し、合計24個の丸い生地を作り、オーブンシートをしいた天板に並べて、さらに30分ふきんをかけてふくらませる。
ふくれた4のまん中に親指でくぼみをつけ、バターかマーガリンを小さじ1ほど入れてから表面にとき卵をぬり、グラニュー糖やアーモンドスライスをふりかける。
200度のオーブンで10〜12分焼いて、できあがり。
『ムーミン谷の彗星』 |
トーベ・ヤンソン文/絵 下村隆一訳 |
講談社 |
『ムーミンママのお料理の本』 |
サミ・マリラ文 トーベ・ヤンソン絵/引用文 渡部翠訳 |
講談社 |
"Muumi Mamman Keittokirja" | Sami Malila | Werner Soderstron Osakeyhtio |
"Natural Cooking the Finnish Way" | Ulla Kakonen | The New York Times Book Co. |
※資料収集には、フィンランド大使館広報部にご協力いただきました。ありがとうございました。
(田中亜希子/森久里子)
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やまねこ翻訳クラブ(会員数126名)
やまねこ翻訳クラブは、海外の子どもの本に関する情報交換、翻訳・シノプシス自主勉強会などを行っている児童書専門サークルです。翻訳と子どもの本に興味のある方でしたらどなたでも入会できますので、ぜひお気軽にご参加ください。
―― 99年2〜3月の主な活動 ――
◆海外児童文学賞受賞作読破マラソン ◆未訳作品の全訳勉強会(Sharon Creech "Pleasing the Ghost") |
●編集後記●
98年12月号でもお知らせしましたが、99年1月号は、年末年始の編集作業となるため、お休みさせていただきました。――ということで、改めまして「あけましておめでとうございます!」今年も頑張りますのでよろしくお願いします!(み)
発 行: | NIFTY SERVE 文芸翻訳フォーラム・やまねこ翻訳クラブ |
発行人: | 小野仙内(文芸翻訳フォーラム・マネージャー) |
編集人: | 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブ・スタッフ) |
企 画: | 河まこ、キャトル、くるり、Chicoco、BUN、ベス、YUU、りり、ワラビ |
協 力: | ながさわくにお、SUGO、わんちゅく |
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