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※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
M E N U |
出版社研究 第4回 |
―― 静山社 ――
第4回は、世界的な大ベストセラー、"Harry Potter and the Philosopher's Stone"(本誌98年9月号および今月号「書評編」参照)の邦訳、『ハリー・ポッター〜魔法の石〜』(仮題)を今年12月に出版予定の「静山社」。東京・飯田橋にあるオフィスに、社長の松岡佑子さんを訪ね、同書の出版に至る経緯や、今後の予定を中心にお話をうかがった。 |
★ 会社概要 〜人間の尊厳を社会に訴えるノンフィクションを中心に
"Harry Potter and the Philosopher's Stone"は、今や英米で社会現象といえるほどの大ブームとなっている「ハリー・ポッター」シリーズの第1巻で、作者J.K.ローリングのデビュー作。出版翌年の98年には、スマーティー賞を受賞した他、英国内で数多くの児童文学賞の候補作にもあげられている。その後、世界各国で出版され、日本でも翻訳が待たれていた。これほどの話題作なら、児童書の大手出版社から出るだろうという予想に反し、版権を取得したのは、児童書、フィクションともに初めて手がけるという若手出版社の静山社だった。
静山社は、79年、前社長である故・松岡幸雄氏によって設立された。当初より民衆史関連など社会性の高い作品を出版してきたが、83年に難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者である故・川口武久氏の手記『しんぼう』を出版したのをきっかけに、ALS関連の本を数多く手がけるようになった。また松岡前社長は、86年に自ら中心となって患者、医師らと日本ALS協会を設立、ボランティアで事務局長を務めるなど、個人としても患者の支援に深く関わった。こうした前社長の姿勢を反映して、静山社は歴史、医療関連のノンフィクションを中心に、一貫して人間の尊厳を問う作品を出版し続けた。
出版、ボランティア活動を通じて、精力的に自らの信念を社会に訴えかけてきた松岡前社長だったが、97年12月に肺がんのため逝去。そのあとを引き継いで新社長となったのが、妻である佑子さんだった。もともと、同時通訳者として長年第一線でキャリアを積んできた佑子さん。前社長のかねてからの勧めもあり、自らの専門である語学を出版活動に活かしたいと、翻訳に強い関心を持つようになった。そして今年4月、初の翻訳書として、自ら訳・編に携わった『国際会議用語辞典』(ジャン・エルベール著/ウィンター良子監修)を出版、静山社の新しい方向性を示した。
★ ハリー・ポッター情報 〜出会いから版権取得まで
社長就任後、先述の経緯で、翻訳作品の出版に力を入れていきたいと考えていた佑子さん。長年の友人である英国人の夫妻にその話をしたところ、「今イギリスで一番ホットな本」と紹介されたのが"Harry Potter and the Philosopher's Stone"だった。それが昨年の10月のこと。一読して大ファンとなった佑子さんは、早速英国の出版元であるBloomsbury社に連絡、作者のエージェントを紹介された。その時点で、既に日本の大手出版社3社から版権取得希望のオファーが来ていると聞いたものの、あきらめることなくファックス、電子メールなどで綿密に連絡をとり、熱意を伝え続けた。 「とにかくこんなに惚れ込んだ作品なのだから、絶対に自分で翻訳したいと思っていました」 そして昨年12月、エージェントから「静山社に決定」と、嬉しいニュースが届く。松岡社長は、こうして「ハリー・ポッター」シリーズの第1巻、第2巻の版権、および第3巻から第7巻までの優先版権を手にした。 |
【翻訳 うらばなし】 これほどの人気作の翻訳、しかも大手出版社を退けて版権を取得したことに、重圧はいかほどのものかと思いきや、「プレッシャーは、特に感じていません」と、佑子さん。むしろ、ここまで自分で気に入った作品を訳せることは、最高の喜びであり、幸せだとのこと。翻訳作業のために何度読み返しても、そのたびに新しい発見があり、飽きるどころかますますおもしろさがわかってくるそうだ。 佑子さんにとって「ハリー・ポッター」の魅力は、「声が聞こえてくるような生き生きした会話」、「色の描写など、鮮烈に視覚に訴える表現の巧みさ」、「細部まで練りこんだ綿密な筋立てと構成」、「愛や勇気の大切さというシンプルなテーマ」にあるという。翻訳にあたっては、こうした魅力を最大限に引き出せるよう、編集者や翻訳アドバイザーなど数人のスタッフと、定期的に会議を開いて訳文を細かく検討している。また、原書の語彙が内容や対象年齢に比して難度が高いこと、読者の想像力や好奇心を制限したくないという理由から、特に児童書を意識した翻訳は行っていないそうだ。「原語の持つ雰囲気にできるだけ近い表現ができるように、ということを一番に心がけています」もちろん、子どもたちにも読んでもらえるよう、ルビや最低限の訳註などはつける予定である。 現在は、全体の訳が終了し、推敲を重ねている段階。12月の刊行に向け、タイトル、装幀、挿し絵なども含めて大詰めの作業が続く。 |
★今後の予定
「ハリー・ポッター」シリーズの原書は、全7巻となる予定で、現在は第3巻まで刊行されている。静山社では、原書と同じく年1巻、もしくは2巻のペースで翻訳出版をしていく予定になっている。
将来的には、翻訳作品にはいっそう力を入れていくつもりで、気に入った作品をさらに選りすぐり、年に数点ずつでも出版していきたいとのこと。持ち込みについては、今後積極的に対応、検討していく方針だ。
また、前社長の遺志を受け継いで、これからも闘病記や介護マニュアルなど、ALS関連の作品を出版し続けるという。その第一歩として、前社長の一周忌にあたる昨年12月には、ALS患者である杉山進氏の手記、『負けてたまるか負けたら俺の男がすたるよ』を刊行した。
株式会社静山社 | |||
住 所 | 〒162-0814 東京都新宿区新小川町9-10-701 | ||
電 話 | (03)3267-6941 | F A X | (03)3267-6940 |
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特別企画 |
―― 絵本コンテスト 一次審査を突破するには ――
昨年、ある絵本コンテストの一次審査員を務める機会があった。私自身、過去に何度となく応募しては惨敗した絵本コンテスト。いつしか別ルートで翻訳を手がけるようになり応募資格を失ってしまったが、審査をして初めて気がついたこともある。そこで今回は昨年の体験にもとづいて、コンテストに臨むための基本的な心構えなどを述べてみたいと思う。ただしあくまでも一度きりの体験なので、細かい点はコンテストにより異なるかもしれない。あらかじめご了承を。 |
◎一次審査は、減点法
まず心してほしいのが、一次審査は減点法だということ。だめなものをふるい落とすための選考だ。その意味でまず最初にチェックされるのが、「応募要項に従っているかどうか」というポイント。言わずもがなのことなのに、案外この段階でミスをしている人が多かった。私の担当分110編の中で、応募用紙の大きさを守っていないものが2編。これらは中身も読まれずに「不合格」の袋へ直行だ。うう、もったいない。他にも課題の範囲を間違えて減点されたものが数編。将来、翻訳の仕事につくことを真剣に考えるのなら、約束事を把握するのは基本中の基本だ。ゆめゆめ怠りなきよう。
◎校正、印字、清書
これ以外にも、訳文の出来以前の段階で失点を重ねている人がかなりいた。一番目立ったのがワープロの変換ミス。「音が児玉する」「……と、訪ねました」(ask の意味で)などもったいない間違いのオンパレードだ。「クリーム」を「ジャム」と訳すようなうっかりミスもあった。いずれも見直せば防げるものばかりである。校正にはたっぷり時間をかけてほしい。
また直接減点にはつながらないものの、全体の印象を左右してしまうのが、原稿の見ばえである。応募原稿には手書きのものもたくさんあったが、同じ内容のものが大量に集まるコンテストでは、字の雑な人は損だということを改めて実感した。粗雑な文字で書いてあると、内容までお粗末に見えてきてしまうのだ。乱筆の自覚がある人(それは私!)は、ワープロやパソコンを使った方がいい。ただし印刷した文字も、行間、字間を考えないと、ひどく読みづらくなる場合がある。読む人の気持ちを思いやって、きれいな原稿を作りあげよう。
◎そうはいっても、やっぱり内容
もちろんいくら体裁を整えても、それだけでどうにかなるほどコンテストは甘くない。大切なのはやっぱり訳文の内容だ。去年審査してみて一番強く感じたのが、辞書をまめに引かない人が多いのではないかということ。見なれない単語は、誰でもきちんと調べるからあまり問題ない。むしろ、基本動詞や前置詞がらみの語句に誤訳が集中していた。例えば 'wait on'。こうやって抜き書きすればすぐに熟語だとわかるが、文の流れの中に混じり込んでいると、「wait=待つ」と決めつけてしまう人が案外多い。今ドキッとした人は要注意。ていねいに辞書を引きながら、まずは英文をしっかり読み込もう。
もうひとつ目立ったのが、絵を読まないままに訳してしまうケース。テキストとにらめっこしているうちに、絵のことを忘れてしまうのだろうか。描かれた場面と明らかに食い違った訳をしている人がずいぶんいた。推敲のときにはぜひとも絵と文を照らし合わせて見てほしい。文章を切り取って各ページに貼りつけるなどの工夫をすれば、なおさら確かだろう。
◎とにかくたくさん絵本を読む
去年の応募作を見てもうひとつ感じたのは、「絵本」というものに勝手なイメージを抱いている人が多いということ。「絵本はかわいい」派の人たちは、「○○ちゃんはね、〜したの」といった具合に、歯の浮くような甘ったるい言葉を並べて訳文をつづる。また「絵本はリズミカル派」の人たちは、全文をむりやり七五調に押し込んだり、徹頭徹尾体言止めだらけの文を書いたりする。このような誤解を解く手だてはただひとつ、とにかくたくさんの絵本に触れること。図書館の児童書コーナーに座り込んで、手当たり次第に絵本を開いてみてほしい。ひとくちに絵本といっても、実に様々な種類のものがあることに驚かされるだろう。かわいらしさやリズムももちろん大切な要素だけれど、それだけではない。ひとつひとつの絵本に違った色彩、違った文体、違ったリズムがあることに気づくはずだ。各作品の生きた個性に真剣に向き合えば、子どもの本の奥深い世界が見えてくる。
◎減点法を超えて
冒頭にも書いたように、一次審査は減点法である。個性があるけどポカも多いという人よりは、ミスが少なくきれいにまとめられる人の方が通りやすい。原文にない文章を挿入したり、あるはずの文章をカットしたりするのも減点対象。「忠実な訳」が基本である。
しかし、ただ忠実にきちんきちんと訳していくだけでは、一次審査は通れてもその先へ進めない。賞を手にし、また将来仕事を手にするには、誰もが難しいと感じるようなポイントで、個性的な突っ込んだ訳文を書けることが必要だ。減点を乗り越えるくらいの、冒険心と創意工夫も忘れないでほしいのだ。
忠実に、でも冒険心を忘れずに。真剣に、でも楽しく。一見矛盾したこの命題は、そのまま翻訳という行為の難しさと楽しさにつながる。秋、それは絵本コンテストの季節。入賞を目指し、しかしあくまでも自分の楽しみのために、あなたも挑戦してみませんか。
(内藤文子)
※本誌98年8月号、9月号でも、特別企画として絵本コンテスト研究を行っています。ぜひホームページからバックナンバーをご覧ください。
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コンテスト/展示会/セミナー・講演会情報 |
―― コンテスト情報 ――
◎山形県遊学館「第9回外国絵本翻訳コンクール」 | |
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課 題: |
"PUDDLES" by Jonathan London / G. Brian Karas "Smudge" by Julie Sykes / Jane Chapman ※"Smudge"には米国版と英国版があります。課題になっているのは英国版です。 |
締 切: | 1999年9月30日(消印有効) |
応 募: | 課題絵本(全国の主要書店で販売)に添付されている応募要項を参照のこと |
問合先: |
山形県生涯学習センター(TEL:023-625-6411) 山形県立図書館(TEL:023-631-2523) |
参 考: | http://www.yugakukan.or.jp/ |
◎バベル・プレス「第8回絵本翻訳コンテスト」 | |
課 題: | "PIERRE'S DREAM" by Jeniffer Armstrong / Susan Gaber |
締 切: | 1999年10月末日(消印有効) |
応 募: | 月刊誌『翻訳の世界』(バベル・プレス)10月号の募集要項を参照のこと |
問合先: | バベル・プレス(TEL:03-5275-2438) |
参 考: | http://www.babel.co.jp/ |
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―― 展示会情報 ――
◎西宮市大谷記念美術館「'99イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」 | |
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所在地: | 兵庫県西宮市中浜町4-38 |
電 話: | 0798-33-0164 |
会 期: | 平成11年9月26日まで |
休館日: | 水曜日(9月15日は開館、16日休館) |
入場料: | 一般800円 高・大学生600円 小・中学生400円 |
内 容: | ボローニャ絵本原画コンクールで入選した、17か国98人(日本人6人含む)の作品約490点を展示。 |
◎平塚市美術館展示室「堀内誠一 雑誌と絵本の世界展」 | |
所在地: | 神奈川県平塚市西八幡1-3-3 |
電 話: | 0463-35-2111 |
会 期: | 平成11年10月3日まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 一般600円 高・大学生400円 小・中学生200円 |
内 容: |
雑誌、絵本、絵本原画、イラスト、原稿、写真資料など、堀内誠一氏の作品、約250点を展示。 ※以下のサイトで作品の一部を見ることができます。 http://www.kid.ne.jp/bus/zenrin/lapan9907/html/la07_4.html |
◎まほろば・童話の里「浜田広介記念館」 | |
所在地: | 山形県東置賜郡高畠町大字一本柳2110番地 |
電 話: | 0238-52-3838 |
会 期: | 常設展 |
休館日: | 月曜日、祝日の翌日 |
入場料: | 大人300円 中・高校生200円 小学生100円 |
内 容: | 「泣いた赤鬼」「りゅうの目のなみだ」の作者、浜田広介の作品を展示した美術館。高畠町の風土紹介コーナーや図書館も併設されている。 |
◎兵庫県立円山川公苑美術館「ユゼフ・ヴィルコン展――物語る動物たち――」 | |
所在地: | 兵庫県豊岡市小島1163 |
電 話: | 0796-28-3085(代) |
会 期: | 平成11年10月3日まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 大人300円 小人150円 |
内 容: | 絵本原画181点、彫刻60点。ヴィルコン42年間の仕事の全貌を伝える。 |
(瀬尾友子)
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―― セミナー・講演会情報 ――
◎津田ホール トーク&シネマ「映画『赤毛のアン・完全版』」 | |
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お 話: | 松本侑子(作家、日本ペンクラブ理事) |
場 所: | 津田ホール(東京都渋谷区千駄ヶ谷1-18-24) |
日 時: | 平成11年10月2日(土)13:30〜18:00 |
参加費: | 一般前売 1,500円 一般当日 1,800円 学生 1,300円 |
申 込: | 9月22日まで前売受付。電話またはファックスで受付番号を確認し、参加費を郵便振替。9月23日以降は電話で予約状況を確認、余裕があれば参加可(参加費は当日持参)。(TEL 03-3402-8832 FAX 03-3402-7901) |
◎宮城子どもの本を楽しむ会 第4回子どもの本・秋・連続講座 | |
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場 所: |
(2) 141ビル(仙台市青葉区一番町4-11-1)5階セミナーホール (3) フォレスト仙台ビル(仙台市青葉区柏木1-2-45)2階ホール (4) 仙台市シルバーセンター(仙台市青葉区花京院1-3-2)7階 |
日 時: | (2) 10/17 (3) 11/14 (4)12/5 いずれも日曜日、13:30〜15:30 |
参加費: | 1回 1,500円(定員180名) |
申 込: | 何回目の講座かを明記して、参加費を郵便振替【番号 02290−8-41871 名称 宮城子どもの本を楽しむ会】、折り返しチケットが送付される。 |
問合せ: | 増田家次子(TEL/FAX 022-265-1936)松尾福子(TEL/FAX 022-231-2712) |
◎梅花女子大学公開講座 「イギリス児童文学−その古さ−」 | |
講 師: | 三宅興子 |
場 所: | 茨木市立中央公民館(大阪府茨木市東中条町2-13) |
日 時: | 平成11年10月28日(木)13:30〜15:30 |
参加費: | 無料 |
申 込: | 往復はがきに住所、氏名、電話、希望講座番号(7番)、返信の宛先を明記し、〒567-8578 茨木市宿久庄2-19-5 梅花女子大学公開講座係へ。定員(100名)になり次第締切。(TEL 0726-43-6221(代表)、内線213) |
◎東京子ども図書館 T&T(Tea and Talk)「ケイト・グリーナウェイ」 | |
お 話: | 島多代(ミュゼ・イマジネール主宰、国際児童図書評議会会長) |
場 所: | 東京子ども図書館(〒165-0023 東京都中野区江原町1-19-10) |
日 時: | 平成11年11月6日(土)14:00〜16:00 |
参加費: | 一般 3,000円 賛助会員 2,000円(茶菓付) |
定 員: | 40名(定員を超える場合は抽選) |
内 容: | 絵本の草創期を築いた画家、ケイト・グリーナウェイにまつわるお話。 |
申 込: | 往復はがきに(1)希望する講演・講座名 (2)氏名 (3)住所(郵便番号も)(4)電話番号(昼の連絡先)(5)賛助会員か否かを記入の上、(財)東京子ども図書館まで。10月15日(金)締切。(TEL 03-3565-7711) |
(中野伊都子)
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お菓子の旅 第6回 |
―― ティータイムの定番 ☆ショートブレッド Shortbread☆ ――
'My dear, if it doesn't rain I think Jane and Michael might call for me at the Office today - that is, if you are agreeable. I have a feeling I should like to be taken to Tea and Shortbread Fingers and it's not often I have a Treat.' P.L.Travers "Mary Poppins" Puffin Books 1962(初版1934年) |
突然、東風にのってバンクス家に現れたメアリー・ポピンズ。開いたかさを片手に風にのっている場面は有名ですね。このお話は、20世紀初頭の典型的なイギリス中産階級の家庭の子どもたちとメアリー・ポピンズが織りなすファンタジーです。
ある日のこと、お父さんが自分の働くロンドンの金融街、シティに子どもたちを招いてくれました。そのときにお茶と一緒にごちそうしてくれると言ったのがショートブレッド・フィンガーでした。ショートブレッドは、バターがたっぷり入った、サクサクした歯触りのクッキーです。もともと「ショート」には「油脂が入っていてサクサクしている」という意味があり、また、ショートブレッド発祥の地、スコットランドで「ブレッド(パン)」といえば、ふっくらしたものではなく薄く平たいものを指していました。
ショートブレッドは出来上がりの形によって呼び名が違います。例えば円形を放射状に8等分したものはペチコートテイル・ショートブレッド、丸い形に抜いて焼き上げたものはラウンド・ショートブレッド、そして、小さな短冊形に切り分けたものがショートブレッド・フィンガーです。今回は材料に紅茶の葉が入るので、市販のものとはひと味違うものができます。紅茶の種類はアールグレイがおすすめです。
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*-* 作り方 *-*
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『イギリスのお話は、おいしい。』 | 白泉社 | |
『英国おいしい物語』 |
ジェイン・ベスト・クック著 原口優子訳 |
東京書籍 |
『イギリスのお菓子 I』 | 北野佐久子著・写真 | ソニー・マガジンズ |
『風にのってきたメアリー・ポピンズ』 |
P.L.トラヴァース作 林容吉訳 |
岩波書店 |
(田中亜希子/森久里子)
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やまねこ翻訳クラブ(会員数150名)
やまねこ翻訳クラブは、海外の子どもの本に関する情報交換、翻訳・シノプシス自主勉強会などを行っている児童書専門サークルです。翻訳と子どもの本に興味のある方でしたらどなたでも入会できますので、ぜひお気軽にご参加ください。
―― 「ニューベリー賞読破マラソン」進行中! ――
新刊情報(16冊)を掲載中!
●編集後記●
秋は絵本コンテストの季節。夏休みに遊びほうけて、今頃あわてている方も多いのでは……と、人のことは言っていられないわたしなのでありました。(み)
発 行: | やまねこ翻訳クラブ |
発行人: | 生方頼子(やまねこ翻訳クラブ 会長) |
編集人: | 宮坂宏美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) |
企 画: | 河まこ キャトル くるり 小湖 Chicoco どんぐり BUN ベス YUU りり ワラビ |
協 力: |
NIFTY SERVE 文芸翻訳フォーラム マネジャー 小野仙内 ながさわくにお きら みーこ みるか 万希子 アイリーン |
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