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月刊児童文学翻訳

─99年9月号(No.13 書評編)─

※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:mgzn@yamaneko.org
1999年9月15日発行 配信数1,180


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎特集 "Harry Potter"シリーズの魔力
【概要紹介】シリーズの設定とストーリー展開、他
【レビュー】"Harry Potter and the Chamber of Secrets"(シリーズ第2巻)

◎注目の本(邦訳絵本)
P.フライシュマン文/K.ホークス絵『ウエズレーの国』

◎注目の本(未訳絵本)
ヘレン・クーパー作 "Pumpkin Soup"

◎Chicocoの洋書奮闘記
第8回「エルマーとの再会」(よしいちよこ)



特集

―― "Harry Potter"シリーズの魔力 ――

 

 情報編でお知らせした通り、いよいよ日本でも"Harry Potter"シリーズの翻訳が出版される。本誌では、いち早く昨年9月号でシリーズ第1巻の紹介をしているが、今回はその後の展開を含めた情報をまとめ、子供だけではなく大人達まで熱狂させている魅力の秘密をさぐってみよう。また、今号では第2巻のレビュー、来号では最新の第3巻のレビューもお届けする。

 

【概要紹介】

◆シリーズの設定とストーリー展開

 ハリー・ポッターは、魔術師の卵。彼が1歳のとき、魔法界では一大事件が起きた。ヴォルデモートという闇の魔術師が世界制覇を狙い、強力な魔術師だったハリーの両親を殺害したのである。しかしヴォルデモートは、ハリーをもその手にかけようとしたとき、なぜか魔力をすべて失い、姿を消した。ハリーは、額に稲妻型の不思議な傷跡を持つ孤児となり、伯母の家、ダースリー家に預けられる。

 実は、伯母の一家はマグルズ(魔力がない人間)で、魔術の「ま」の字にも身震いするほどそれを嫌悪していた。おかげでハリーは10年間、この家では階段下の押し入れに住まわせられ、厄介者としてみじめな日々を送る。ところが、11歳の誕生日にはじめて自分に魔術師の血が流れていること、しかも、自分が魔法界では有名なヒーローであることを知り、ホグワーツという魔法・魔術学校で勉強することになった。

 ハリーは、全く馴染みがない魔法界で自分がどの様に受入れられるか不安に思っていたが、幸い、学校ではすぐに心強い親友ができた。優秀な兄達に対するコンプレックスを持つ赤毛の男の子、ロンと、マグルズの両親から生まれたガリ勉娘、ハーマイオニー達だ。また、ハリーは魔法界の人気スポーツ、クィディッチ(箒で空を飛びながら競う球技)で類い稀な才能を発揮し、名声も人気も一層高めていく。

 しかし、陰湿な同級生や、ハリーを目の敵にする先生などもおり、学内での生活は決して平和ではない。先生が突然、闇の魔術師と判明したり、ヴォルデモートの残した品が悪さを引き起こしたり、ハリーが恐ろしい殺人鬼に狙われたりもする。また、周囲の敵だけでなく、自分自身の中の恐怖心や影と直面しなければならない状況も少なからず発生する。これらの困難は安易な「魔術」では乗り切れない。

 シリーズを通して、ハリーは、「闇の力」と戦い続ける小さな救済者として描かれている。「闇の力」は、敗北を喫しても、ギリシャ神話の怪物ヒドラのように、毎回凄まじさと力を増して戻ってくるのだ。ハリーは、友人や先生達に支えられてこそ勝利を収め、毎年、1巻ごとに成長していく。


◆著者にまつわる伝説と出版までの経緯

 著者J.K.ローリングは、大学卒業後、ポルトガルで教師を務めていた。しかし、現地ジャーナリストとの結婚破局後、乳児の娘を抱えて現在も住むエディンバラに移った。生活保護を受けるシングル・マザーとなった彼女は、寒さしのぎにカフェ「ニコルソンズ」に通い、赤ん坊の昼寝の隙にこの作品を書いたという。

 ローリングは、第1巻出版までに5年もの歳月を費やした。しかしその後、毎年1冊ずつ完成度の高い続編を出版し、2003年の7巻目で終了するまでこのペースを約束している。では、最初の5年間は何だったのか? 実はローリングは、この間に1〜7巻までのすべての構想を練り上げ、カードに内容を書き出してファイルしている。さらに、7巻目の最後の章を完成させてから、第1巻の推敲に取りかかっていたのだ。隙のないよく練られた筋と構成は、そのためだろう。


◆シリーズが巻き起こした一大ブーム

 "Harry Potter"シリーズの第1巻は1997年6月に、続く第2、3巻は翌年と翌々年の7月に、それぞれ英国Bloomsbury社より出版された。どの巻もたちまちベストセラーとなり、著者に与えられるAuthor of the Year、子供達が決定するスマーティー賞やChildren's Book Award(共に第1、2巻で2年連続受賞)など、数多くの賞に輝いた。

 アメリカでは、Scholastic社が第1巻の米国出版権を、児童書としては異例の高額、約1300万円で買い取り、ワーナー・ブラザーズ社は映画化権・商品化権を、億単位とも噂される額で買った。昨年9月に第1巻、今年の6月に第2巻、そして今月8日に第3巻が出版されている。第1、2巻は共にミリオン・セラーとなり、N.Y.タイムズ・ベストセラーリストに各々既に37週、12週掲載され、第3巻も両者を上回る売れ行きが予想されている。既に28か国語に翻訳され、130か国で出版あるいは出版予定で、第3巻までの全世界合計発行部数は、750万部にのぼる。日本でもいよいよ12月に静山社より第1巻の邦訳が出る。

 もちろん、インターネットも既にハリー熱で賑わっている。夏頃より次々とハリー・ポッター・ファンクラブが誕生し、特に十代前半の子供達が、ハリーへの情熱からか、なかなか素晴らしいサイトを作っている。現在、内容・繁栄度から言えば、The Unofficial Harry Potter Fan Clubが一番お勧めだ。また最近、日本でも公式のハリー・ポッターファンクラブが誕生した。


◆人気の秘密?

 ハリーのシリーズは、もともとの本好きはもちろんながら、今まで本に見向きもしなかった子供や大人を夢中にさせている。(Bloomsbury社は、大人向けの落ち着いた装幀まで作った。)また、かなりページ数が多く、使用される言葉に難しいものもあるため、学校の先生が、あるいは親が、子供に「読み聞かせ」して一緒に楽しむという習慣が広がっている。ここまで人気が高まったのは、出版社の販売戦略だけでなく、そういう親や教師達、子供達の口コミのおかげでもある。ローリングは、魔法、ミステリー、学園、孤児の人情話などの要素を巧みに練り合わせ、ウィットを利かせた描写で万人を虜にしている。

 ハリー達の魔法界は、私達の住む世界と隣接して存在する。我々マグルズは、魔法のかわりにテクノロジーに頼らざるを得なかった。しかしそれも行き過ぎれば「闇の魔法」にかわりなく、住む環境を破壊するばかりか、私達の心にまでその弊害をもたらす。テレビやコンピュータゲームなど他人の手による画像で頭が埋め尽くされていては、独自の想像力が成長し自由に羽ばたくスペースがない。救済者を求めていたそういう我々にも、ハリーの魔法は威力を発揮した。

 2、3行聞けばどんなやんちゃな子でもたちまちシーンと聞き入ると言われるハリー・ポッター。原作には挿し絵が一切なく、ローリングは言葉だけで、読者独自のハリーの世界と物語を、ひとりひとりの心の中に描いていく。読み物が与えるこのような想像の喜びは大きい。言葉の錬金術師である彼女は、まさに"Philosopher's Stone※"を創造した。日本の子供達にも、そして大人達にも、この作品を通じて読書の楽しみや想像の喜びを知ってほしいと思う。ローリングの"Philosopher's Stone"が、閉塞したテクノロジー文化に新たな命を与えていってくれることを心から祈っている。

 さぁ、間もなくハリー様が箒にまたがって日本上陸だ!

 

※Philosopher's Stone: 錬金術の「賢者の石」。 万物を金に変え、永遠の命を与えるとされている。

(池上小湖)

 

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【レビュー】

『ハリー・ポッターと秘密の部屋
  ―― ハリー・ポッターシリーズ第2巻』(仮題)

J.K.ローリング作

J.K.Rowling "Harry Potter and the Chamber of Secrets" 341pp.
Bloomsbury Publishing Plc, July 1998,  ISBN 0-7475-3274-5 (Paperback)
   ISBN 0-7475-3269-9 (Hardback)
Scholastic Press, June 1999, American Edition, ISBN 0-439-06486-4

 

 ハリー・ポッターシリーズ第2巻、"Harry Potter and the Chamber of Secrets"は第1巻と同じく、意地悪いダースリー家の様子から始まる。ハリーは夏休みで魔法学校から帰省していたが、ある日、突然現れたドビーという妖精に警告をうける。ハリーの身に危険が起こるから、新学期になってもホグワーツ魔法学校には戻るなというのだ。でもハリーにとってはダースリー家にいること自体、災い以外のなにものでもない。ハリーは早く夏休みが終わり、学校が始まるのを心待ちにする。

 魔法学校での2年目が始まった。ところがまもなく、学校で奇怪な事件が起こる。ハロウィーンの夜、「秘密の部屋は開けられた。」という文字が壁に現れたのだ。これを皮切りに、猫をはじめ生徒達や幽霊までもが次々と何者かに襲われ、石になってしまう。そしてハリーはいつもその事件現場に居合わせてしまうのだ。生徒達は、秘密の部屋を開け、怪物を解き放ったのは、ハリーではないかと疑いはじめる。そのうえハリーは悪の魔法使いの後継者ではないかという風評がたつ。ハリーには、悪の魔法使いだけが持つという特殊な能力、蛇の言葉をあやつる力があるからだ。ハリーは友人のロンとハーマイオニーと共に、秘密の部屋の謎と、生徒を襲う怪物の正体を解明しようとするのだった。

 謎の解明と悪との対決を主軸にホグワーツ学校での1年間が描かれるという展開は前作と同様だが、作者ローリングの創造力、描写力はますます冴え渡り、読者を引き込んでくれる。最後まで、そして隅から隅まで、楽しくて読み応えのある作品になっている。今回もまた新たな魔法の小道具や秘薬が登場し、そして魔法の授業でも愉快な大騒動が巻き起こる。登場する幽霊達もグロテスクな姿なのに、ちっとも恐くなく、幽霊なりの悩みを抱えていてとてもユニークだ。古臭く、灰色がかり、立ち入ってはいけないイメージのある魔法の世界を、ローリングはカラフルで愉快で親しみの持てる場所に描いている。この本を読んで、ハリー達の真似をしたい、魔法の学校に行きたいと思う子供達は大勢いるのではないだろうか。

 魔法使いとして優れた才能を持ってはいるが、学校では決して優等生とはいえない普通の少年ハリーの憂いを通し、哲学的なものを感じさせられる作品でもある。我らのヒーロー、ハリーは自分が悪の魔法使いの後継者ではないかと思い悩む。自分は悪の魔法使いになるよう運命づけられているのか、それとも、自ら道を選択することは可能なのか? そしてハリーが悪と対決し、悪を破った力の源は、魔法使いとしての才能ではないことを、読者は知る。私達の誰もが持ち得る愛情、信頼、信念なのだ。ハリーに親近感を抱かずにはいられない。

 前作同様、年齢を問わず、大人にも読んでもらいたい作品だ。一旦ページをめくりだすと、魔法がかかったように、止められなくなること間違いない。

(鎌田千代子)

 

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注目の本(邦訳絵本)

―― 庭に文明を築いた少年の物語 ――

 

『ウエズレーの国』
ポール・フライシュマン文 ケビン・ホークス絵
千葉茂樹訳 1999.6 あすなろ書房発行 本体1,400円

"WESLANDIA"
Paul Fleischman/Kevin Hawkes
Walker Books Ltd., 1999

『ウエズレーの国』表紙

 

 青空を背景に手をかざし、遠くを見つめる少年。吹き抜ける風を見極めるかのように立つ主人公ウエズレーが、表紙を飾っている。

 流行にはまるで興味のない主人公。"みんなと同じ"ではないから仲間はずれにされ、いじめられる。あまり口には出さないが、両親も息子の様子に困惑している。しかし、読んでいる側からみれば、まわりに流されず、想像力を武器にして好きなことに没頭する、結構かっこいいやつに思える。

 そんな彼が夏休みの自由研究に選んだテーマは、"自分だけの文明"をつくること。偶然風が運んできた不可思議な作物を育てながら、ウエズレーは庭に"ウエズランディア"という国を作り上げていく。架空の植物と、いるはずのない野生の動物達は登場するが、決して奇想天外でも、壮大なドラマでもない。手をのばせば届きそうな現実味のある物語だ。

 少年は実や根を食用にし、茎の繊維からは衣服を作り、さらには新しいゲームまで考え、最後には文字さえも創造する。そんな変わり者のおかしな行動に、まわりのこども達はやがて引き寄せられ、ウエズランディアへと足を踏み入れる。その時、彼らを冷静に受け入れるウエズレーは、発明を駆使していじめから逃げているだけの少年ではなくなっている。周囲と同様、ウエズレーも徐々に変化していた。

 作品の中で一貫して流れるのは、主人公の意志。彼は"人と同じ"ことが嫌いなのではなく、自分が認めることのできないものには迎合しないだけだ。作者は、"人と違う"ことが個性だと声高に主張しているのではなく、自分の意志を持つことの尊さ、他人の意志を尊重することのすばらしさを、静かに語りかけてくる。

 ウエズレーは一人で文明を創り出し、人類が歩んできた長い道のりを再現する。時代に埋もれた記憶を呼び起こし、自力で原点に戻ろうとした。その上で、ウエズランディアがただの器にすぎず、人がいて、初めて文明は成り立つことを学び、視点を外へと移していく。

 フライシュマンのイメージをみごとに描き上げたホークス。夏の日の少年の、その熱い体温を読者に伝え、思い出させてくれる。選んだ色の美しさもさることながら、構図の中に隠されたメッセージに、心を傾けたい。とりわけ、初めと終わりの対照的なシーンに読者が何を思うのか、ウエズレーは目を輝かせ、興味津々で問い掛けてくるに違いない。

(大原慈省)

 

【文】Paul Fleischman(ポール・フライシュマン)

 1952年、米国生まれ。"Joyful Noise" でニューベリー賞、"Bull Run" でスコット・オデール賞受賞。邦訳に『種をまく人』(あすなろ書房)、『わたしの生まれた部屋』(偕成社)など。こどもの頃、友達と独自のスポーツや遊びを作って楽しんだ経験が、本書の下敷きになっているという。


【絵】Kevin Hawkes (ケビン・ホークス)

 1959年、米国生まれ。作品に"Marven of the Great North Woods" "My Friend the Piano" など。ウエズレーの世界に、大好きだったロビンソン・クルーソーを思い出したと語っている。


【訳】千葉茂樹(ちば しげき)

 1959年、北海道生まれ。編集者として出版社に勤務した後、翻訳に従事。訳書に『みどりの船』(あかね書房)『ファーブルの夏ものがたり』(くもん出版)など多数。第1回やまねこ賞(絵本部門)受賞。

 

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注目の本(未訳絵本)

―― かぼちゃのスープは友情の味 ――

 

『かぼちゃのスープ』(仮題)
ヘレン・クーパー作

Helen Cooper "Pumpkin Soup" 30pp.
Doubleday, 1998 ISBN 0 385 407947

 

 深い深い森の奥に、一軒の古くて白い家がたっていた。庭にはたくさんのかぼちゃがなっており、いつもおいしそうなスープのかおりがただよっている。その家には、ネコとリスとアヒルが暮らしていた。3人(2匹と1羽)がつくるかぼちゃのスープはとてもおいしい。ネコがかぼちゃを切って、リスがスープをかきまぜ、アヒルは味つけの塩をはかる。何をするにも、3人の役目があり、協力しあって平和に過ごしていた。

 ところが、ある朝のこと、アヒルが「きょうは、ぼくがスープをかきまぜる」といいだしたから大変だ。リスは自分の役目をゆずるわけにはいかないといい、ネコは小さいアヒルには無理だという。大げんかのすえ、アヒルは家を出ていった。すぐに帰ってくるだろうと思っていたネコとリスだったが、スープをつくる時間になっても、アヒルは帰ってこなかった……

 有名どころを差しおいて、今年のケイト・グリーナウェイ賞を受賞したのは、私にとって未知の作家、ヘレン・クーパーだった。さっそく、アマゾンUKで、"Pumpkin Soup"を注文した。ネコとリスとアヒルが一皿のスープをすすっている表紙の絵は、かわいいようだが、よく見るとすこしくせがあり、読む前から期待させてくれる。

 話の内容は、単純なストーリーだが、アヒルとネコとリス、3人の個性が際だっていて、おもしろさにふくらみが出ている。身の回りにあるものをとりいれたというクーパーの絵は、空想と現実がいりまじった不思議な魅力をもち、奇妙で独特な世界にいざなう。また、3人の表情がじつに豊かに変化する。怒った顔、泣いた顔、うれしい顔、困った顔。リアルな動物の顔が、おかしな表現だが、人間味にあふれており、笑ってしまう。ページいっぱいの大きな絵、作者がコマ割りのマンガを想定してかいたという小さな絵、どちらもユーモアがあり、ページをめくるたびに新しい発見がある。作者クーパーは、アメリカに旅行中、ハロウィンのかぼちゃを見て、この絵本を書こうと思ったという。全体的に重厚なあたたかい色使いで、これからの実りの秋にぴったりの1冊だ。

(よしいちよこ)

 

Helen Cooper(ヘレン・クーパー)

 1963年生まれ。ロンドンで、同じく児童書の作家でありイラストレーターでもある夫、テッド・デュワンと暮らしている。1997年、"The baby who wouldn't go to bed"でケイト・グリーナウェイ賞を受賞。1999年、本書で、2度めの受賞をはたした。邦訳書に『ねことまほうのたこ』(掛川恭子訳/岩波書店)がある。

 

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Chicocoの洋書奮闘記 よしいちよこ

―― 第8回「エルマーとの再会」 ――

 

 7冊目は、"MY FATHER'S DRAGON"(Ruth Stiles Gannett/1948年/RANDOM HOUSE)。大阪梅田の紀伊国屋書店で、夫に会社帰りに買ってきてもらった。1066円なり。ちょいと高め。表紙がカラフルなライオンの絵で好印象。87ページと薄いうえ、挿し絵が多いし、字も大きい。ニューベリー・オナー賞受賞作品。

 父さん(エルマー)の小さいころの話。ある雨の日、エルマーは年とったのら猫に出会い、世話をした。猫はエルマーに将来の夢をたずねる。「飛行機に乗って空を飛びたい」とこたえたエルマーに、猫は旅先で出会ったかわいそうな竜の話をした。動物島のどう猛な動物たちにつかまっている竜を助ければ、きっと背に乗せて空を飛んでくれるというのだ。エルマーは、竜を助けるために出発する……。

 

【9/1】 10ページ。ドラゴンのカラフルな姿を想像して楽しむ。表紙に、小さいカラーのドラゴンの絵があった。このころ、わたしは妊娠15週。おなかが少し出てきた。『妊娠大百科』によると、胎盤ができるころらしい。
【9/2】 11ページ。いよいよエルマーがみかん島から動物島へわたる。
【9/3】 9ページ。登場する動物の挿し絵が楽しい。
【9/4】 17ページ。
【9/5】 32ページ。最後はいっきに読んでしまった。

 

 邦訳『エルマーのぼうけん』は、かれこれ20数年前、幼稚園で読み聞かせをしてもらった。食いしん坊な子どもだったので、エルマーがリュックにガムをつめるところと、みかん島のみかんを食べるところしか、はっきり覚えていなかったのが情けない。あらためて読み返すと、けっこうおもしろかった。冒険のために準備したものが後でどう使われるかや、エルマーを食べようとするどう猛な動物たちの少しまのぬけたところなど、短い話だが、楽しめる要素はたっぷりだ。洋書を読んでから、1997年に日本で制作されたアニメ映画『エルマーのぼうけん』のビデオをレンタルして見たが、こちらは大人のわたしには向いていなかった。小室哲哉氏のノリノリのBGMは、洋書のイメージとはほど遠く、苦笑した。

 

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●編集後記●

 話題のハリー・ポッター君の特集、いかがでしょうか。彼のキャラクターは、日本人にも受けそうな気がします。(き)


発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 生方頼子(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 菊池由美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 河まこ キャトル くるり 小湖 Chicoco どんぐり BUN ベス YUU りり ワラビ
協 力: NIFTY SERVE 文芸翻訳フォーラム マネジャー 小野仙内
つー KAMACHIYO MOMO ながさわくにお みるか わんちゅく タイ


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