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月刊児童文学翻訳

─99年12月号(No.16 書評編)─

※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版>
http://www.yamaneko.org/mgzn/
編集部:mgzn@yamaneko.org
1999年12月15日発行 配信数1,388


「どんぐりとやまねこ」

     M E N U

◎特集 第2回やまねこ賞 会員が選んだ、今年の邦訳児童書ベスト5は?
読み物部門
絵本部門
未訳部門
オールタイム部門

◎Chicocoの洋書奮闘記
第11回「いよいよ10冊め」(よしいちよこ)



特集 第2回やまねこ賞

―― 会員が選んだ、今年の邦訳児童書ベスト5は? ――

 

 過日、やまねこ翻訳クラブで、昨年11月から今年10月までに出版された邦訳児童書、および、過去に海外で出版された未訳児童書を対象に、ベスト5の投票が行われました。以下に、その結果をご報告します。大賞に輝いた邦訳作品の翻訳家の方には、賞状と記念品が贈られます。

 なお、「読み物」「絵本」の分類については、(株)図書館流通センター(TRC)による分類種別に準拠しています。

 

★☆【99年 第2回やまねこ賞 読み物部門】☆★

 

★大賞 『ちいさくなったパパ』
ウルフ・スタルク作 菱木晃子訳 小峰書店


「私を子供の時のようにしてください」と、パパが流れ星に願いをかけたら、次の日、大変なことになっちゃった。スウェーデンの人気作家スタルクが贈る、ユーモラスで胸にじんとくる物語。
『ちいさくなったパパ』表紙



【受賞のことば】 翻訳家 菱木晃子さん

 大好きなウルフ・スタルクの作品で大賞をいただき、たいへんうれしく思っています。とくに『ちいパパ』(『ちいさくなったパパ』の略。内輪では、こう呼んでいます)は話の内容はもちろん、イラストも装幀もとても気に入っている本なので、なおのことうれしいです。この賞を励みに、来年もばりばり仕事します。スタルクの作品もいくつか出る予定なので、どうぞご期待ください。みなさん、ありがとうございました。

 

『穴』表紙 ◆2位 『穴』
ルイス・サッカー作 幸田敦子訳 講談社


 無実の罪で矯正キャンプに送られたスタンリーは、人格形成を理由に、キャンプの少年たちと来る日も来る日も穴を掘らされる。謎と友情と笑いの織りなす、摩訶不思議な物語。99年度ニューベリー賞受賞。(詳細は、本誌99年2月号の特集記事をご参照ください)


 

◆3位 『ひねり屋』
ジェリー・スピネッリ作 千葉茂樹訳 理論社


 毎年恒例の鳩撃ち競技で、傷ついた鳩の首をひねるのは10歳の少年の仕事だった。だが、今年10歳になるパーマーは、ひねり屋になんてなりたくなかった。少年の心の葛藤と成長を鮮やかに描いた、重みのある1冊。98年度ニューベリー賞オナー受賞。
『ひねり屋』表紙


 

◆4位 『彼の名はヤン』
イリーナ・コルシュノフ作 上田真而子訳 徳間書店


 空襲の夜、レギーネはヤンと出会った。彼はドイツに強制連行されてきていた労働者だった。第2次世界大戦末期のドイツを舞台に、17歳のドイツ人少女とポーランド人青年との愛を描いた、感動の戦争児童文学。


 

◆5位 『見えない道のむこうへ』
クヴィント・ブーフホルツ作 平野卿子訳 講談社


 音楽好きの少年「ぼく」が住むアパートに、画家のマックスが越してきた。芸術を愛する二人の交流を静かに描いた1冊。味わいのあるストーリーと絵の美しさが心に染みる。ボローニャ国際児童図書展ラガッツィ賞受賞。


 

【6位以下の作品】

6位 『友情をこめて、ハンナより』
7位 『ウィーツィ・バット』
8位 『風、つめたい風』『レモネードをつくろう』『勇者の剣』
(3作同点)

 

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★☆【99年 第2回やまねこ賞 絵本部門】☆★

 

★大賞 『ウエズレーの国』 ポール・フライシュマン作
ケビン・ホークス絵 千葉茂樹訳 あすなろ書房


「みんなと同じ」じゃないため、仲間はずれにされていた少年ウエズレーは、夏休みの自由研究で、「自分だけの文明」を庭に築き上げる。(詳細は、本誌99年9月号のレビューをご参照ください)
『ウエズレーの国』表紙



【受賞のことば】 翻訳家 千葉茂樹さん

 多くのみなさんの支持をいただいての「やまねこ大賞」とっても光栄です。
 とても魅力的なキャラクター、ウエズレーに出会えて私も幸せです。この本を訳している最中は、子ども時代がしきりに思い出されました。転勤族の子どもだったせいか、いつも一歩離れてまわりと接していた自分の姿や、「基地」作りに励んだどきどきするような気持ちなんかが呼び起こされたんです。こんな気持ちを取り戻せるのも子どもの本に関わる者の役得だなあ!

 

『夕あかりの国』表紙 ◆2位 『夕あかりの国』
アストリッド・リンドグレーン作 マリット・テルンクヴィスト絵
石井登志子訳 徳間書店(2作同点2位)


 病気で歩けなくなり、ずっとベッドですごしていた僕。ある日の夕暮れ、不思議なおじさんが窓から入ってきた。僕たちは一緒に空を飛んで夕あかりの国へ……。


 

◆2位 『ストライプ たいへん! しまもようになっちゃった』
デビッド・シャノン作/絵 清水奈緒子訳 セーラー出版
(2作同点2位)


 カミラはいつも人の目が気になる女の子。みんなが嫌いなリマ豆が本当は好物なのも秘密。新学期の朝、格好を気にしてばかりのカミラの体が、しまもように!
『ストライプ』表紙


 

『くまのオルソン』表紙 ◆4位 『くまのオルソン』
ラスカル作 マリオ・ラモ絵 堀内紅子訳 徳間書店


 大きくて力の強いくまのオルソンは、いつもひとりぼっち。動物たちはみんな怖がって逃げ出してしまう。でも、あるとき出会った小さなくまは……。


 

◆5位 『クレリア えだのうえでおきたできごと』
マイケル・グレイニエツ作/絵 ほそのあやこ訳
セーラー出版


 黄緑色の虫、クレリアは、気持ちのいい寝床を少しずつ皆に譲っていきます。そして最後に……。結末が話題を呼んだ1冊。
『クレリア』表紙


 

【6位以下の作品】

6位 『たこのぼうやがついてきた』
7位 『シェイカー通りの人びと』
8位 『あと10ぷんでねるじかん』
9位 『はるかな湖』
10位 『イカはいかようにしてもイカだ』『あなたが生まれるまで』
   『かぜがふいたら』(3作同点)

 

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★☆【99年 第2回やまねこ賞 未訳部門】☆★

 

★大賞
HARRY POTTER AND THE PRISONER OF AZKABAN by J.K. Rowling(1999 イギリス:スマーティ賞受賞)

ハリー・ポッターシリーズ第3巻。ハリーを狙う極悪殺人犯が脱獄した!(詳細は、本誌99年10月号のレビューをご参照ください)


 

◆2位
NO, DAVID! <絵本> by David Shannon (1999 アメリカ:コールデコット賞次点)

 デイヴィッドは毎日お母さんに叱られてばかり。別に悪気はないのに〜。幼児期の純粋な悪戯心を見事に描いた作品。


 

◆3位
HARRY POTTER AND THE CHAMBER OF SECRETS by J.K. Rowling(1998 イギリス:スマーティ賞ほか英米の賞を多数受賞)

 ハリー・ポッターシリーズ第2巻。生徒を次々と襲う正体不明の魔物。しかもハリーに疑いの目が……。(詳細は、本誌99年9月号の特集記事をご参照ください)


 

◆4位 (2作同点4位)
THE WOOL-PACK(初版時の題:NICHOLAS AND THE WOOL-PACK)by Cynthia Harnett(1951 イギリス:カーネギー賞受賞)

 羊毛商にまつわる謎を、跡継ぎ息子の少年が友人と共に明かしていく。中世を舞台に繰り広げられるミステリー。


 

◆4位 (2作同点4位)
HOMECOMING by Cynthia Voigt(1981 アメリカ)

 ティラマン家シリーズ全7巻の中の第1巻。男女ふたりずつの4人きょうだいが、両親に捨てられ、子どもだけで祖母のもとへ旅をする感動的な物語。


 

【6位以下の作品】

6位 "Dancing on the Edge"
7位 "TIBET-Through the Red Box"
8位 "Bloomability"
9位 "Come on, Rain" "The Baby Who Wouldn't Go to Bed"
   "Subtle Knife" "The Tulip Touch"(4作同点)

 

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★☆【番外編 やまねこ賞 オールタイム部門】☆★

 

 出版年を問わず、過去1年間にやまねこ翻訳クラブ会員が読んだ児童書の中から、ベスト5を選出しました。
『光草−ストラリスコ−』表紙
1位 『光草−ストラリスコ−』
   ピウミーニ作 長野徹訳 小峰書店 1998

2位 『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』
   アダムス作 神宮輝男訳 評論社 1975

3位 『見習い物語』
   ガーフィールド作 斎藤健一訳 ベネッセ 1992

4位 『おじいちゃんの休暇』
   モーフレ作 末松氷海子訳 偕成社 1992

5位 『謎の足跡事件 恐竜探偵フェントン1』『ケイティの夏』
   『シーラスの家作り』『戦争ゲーム』『シューラの婚約』
   『ウィリーのそりのものがたり』『シロクマたちのダンス』
   『アップルバウム先生にベゴニアの花を』
『見習い物語』表紙


 1位の『光草−ストラリスコ−』は、発売日が98年10月末だったため、昨年の新刊ベストに間に合わなかった人の票が集まり、圧倒的な強さを見せた。

 2位の『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』は、翻訳クラブで企画したカーネギー受賞作マラソンで読み、印象に残ったという人が多かった。

 3位以下も、やまねこ翻訳クラブの電子会議室で話題になった本が軒並み並び、1年間の活動が反映された結果となった。

(蒲池由佳/菊池由美/池上小湖/森久里子/よしいちよこ)

 

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Chicocoの洋書奮闘記 第11回 よしいちよこ

―― 「いよいよ10冊め」 ――

 

「10冊読むと世界がかわる」といわれてはじめた洋書奮闘記。いよいよ、念願の10冊めに到達した。記念すべき洋書は、"WALK TWO MOONS"(Sharon Creech/1994年/MACMILLAN CHILDREN'S BOOKS)。244ページ。ニューベリー賞受賞作品。

 サラマンカは、祖父母といっしょに、いなくなった母をたずねる旅に出た。車の中で、友だちのフィービーの家族におこったできごとを話しだす。話しているうち、フィービーの母親に、自分の母親をかさねて考えるようになり、子どもの立場からではなく、一人の人間として、母の気持ちを理解しようとしていた。


1998年の日記から
【11/30】16p。やまねこ翻訳クラブの関西オフ。行き帰りの電車の中で読む。
【12/1】妊娠8か月めの健診を受けに行く。逆子になっているうえ、おなかがはっているので、自宅安静といわれる。はりどめの薬は、心臓がどきどきする。横になって、19p。サラマンカのじいちゃんとばあちゃんのラブラブぶりが微笑ましい。
【12/2】病院での指示どおり、右を下にして寝ながら読書。26p。
【12/3】おなかの中で、赤ちゃんは、上でけったり、下でけったりしているような気がする。回転しているのかな。ただただ安静、そして読書。39p。
【12/4】38p。フィービーとサラマンカの母の話は、なんだか考えさせられる。妻になり、母になるってことは、幸せなことではあるけれど……。
【12/5】35p。
【12/6】3p。あーあ、いいペースで読んできていたのに……。日曜日、夫が家にいると、じっくり読書ができないんだよなあ。
【12/7】45p。
【12/8】23P。後半、謎がどんどんとけていき、ミステリーのおもしろさが味わえる。それでも、涙がとまらない。


 自宅安静といわれたおかげで、読書の時間がたっぷりとれ、244ページの洋書をあっさり読み終えた。1日に30ページ前後のペースは、かなりの自信につながった。

 数か月前に邦訳『めぐりめぐる月』(講談社/もきかずこ訳)を読んだときにくらべると、涙の量が減った。それでも、洋書を読むのが楽しいなあと、はじめて思い、さっそく、11冊めにとりかかりたい気分になった。

 

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●編集後記●

「やまねこ賞」によせられた、数々の熱い推薦文。本を愛する思いが伝わってきました。もっと、もっと読みたい!(き)


発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 生方頼子(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 菊池由美(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 河まこ キャトル くるり 小湖 Chicoco どんぐり BUN ベス YUU りり ワラビ MOMO つー さかな こべに みーこ きら Rinko SUGO わんちゅく みるか
協 力: @nifty 文芸翻訳フォーラム
小野仙内 ながさわくにお うさぎうま

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