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※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
M E N U
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プロに訊く 第20回 |
―― 福本友美子さん(翻訳家) ――
今月は、『子どもの本の歴史』(※本誌2002年4月号情報編参照)、『図説 子どもの本・翻訳の歩み事典』と立て続けに話題のリファレンス本の翻訳、編纂にかかわられた福本友美子さんにご登場願いました。インタビューでは、『翻訳の歩み事典』のことを中心に、児童書のお仕事に携わるようになったきっかけなどもお訊きしています。お忙しい中、快く取材に応じてくださった福本さんに心より感謝いたします。
【福本友美子(ふくもと ゆみこ)さん】 1951年生まれ。慶応義塾大学卒業後、図書館に勤務し、主に児童サービスに携わる。退職後、児童書の翻訳、研究に専念。訳書は、『おぎょうぎのよいペンギンくん』(H・A・レイ作/岩波書店)、『リディアのガーデニング』(サラ・スチュワート文/デイビッド・スモール絵/アスラン書房)など多数。 |
★児童書の仕事にかかわるようになったきっかけは何でしょうか?
私は、スタートは児童図書館員だったのですが、今考えてみると、そのことに少なからず影響を及ぼしていると思える体験があります。それは、子どものころ先生に本を読んでもらった思い出です。本が好きで、学校の図書室でよく本を借りていましたが、小学校2年のときに、図書の先生に『はなのすきなうし』(マンロー・リーフ作/ロバート・ローソン絵/光吉夏弥訳/岩波書店)を読んでもらったことは、今でも忘れられません。また、中学のときは、『はるかなるわがラスカル』(スターリング・ノース作/川口正吉訳/学習研究社)を授業の合間に、1章ずつ読んでくれた先生がいて、物語の印象ばかりか、続きを楽しみに聞いたその時の気持ちが今でもはっきりと思い出せるんです。人に本を読んでもらうと、その本の印象は大きく変わりますし、世界の広がり方もちがうんですね。この二つの思い出は私の中で今でもとても大切なもので、児童図書館員になったことと、潜在的な関係があるように感じています。また高校生のころには7つ年下の妹が読んでいた子どもの本を、一緒になってずいぶん読みました。ちょうど日本で世界の新しい児童文学が次々に翻訳された時期と重なるのですが、学研の新しい翻訳シリーズや岩波書店のケストナーやリンドグレーンなどをリアルタイムで読み、児童文学のおもしろさにはまりました。またそのころ、石井桃子さんの『子どもの図書館』(岩波書店)を読み、子どもと一緒に本を読むという仕事に魅力を感じるようになりました。
★児童書の翻訳にかかわられるようになった経緯をお聞かせください。
翻訳という仕事を最初に知ったのは、大学にはいってから、小学校時代の恩師石竹光江さんの主催する「おはなしきゃらばん」の事務所に出入りしていたころです。さきほどの『はなのすきなうし』を読んでくれた先生は石竹先生だったんです。その事務所でコールデコット賞受賞作などアメリカのすぐれた絵本の原書にふれたり、スタッフの方々がそれをストーリーテリング用に翻訳するのを一緒に勉強させていただいたりしました。4冊の絵本がセットになった「じぶんでひらく絵本」(H・A・レイ作/石竹光江訳/文化出版局)は、石竹先生のご指導によるグループ作業から生まれた翻訳絵本です。これは私が翻訳にかかわった最初の本ということになるのですが、偶然にもその後、H・A・レイの作品を多く手がけることになって、不思議なご縁を感じています。その後、大学では図書館・情報学科に進み、渡辺茂男先生に師事しました。英米から帰国直後の先生の授業はとても新鮮でおもしろく、学科の図書室には、英米の黄金時代の児童書や、ブックリスト、参考図書も数多く揃っていて、暇さえあれば図書室で勉強していました。
★『図説 子どもの本・翻訳の歩み事典』の編纂を終えられたそうですね。これを手がけることになった経緯と、本の特徴を教えていただけますか?
2000年の5月に国際子ども図書館が部分開館したときに、JBBY(日本国際児童図書評議会)で長年にわたって続けていた研究をもとに「子どもの本・翻訳の歩み展」という展覧会が開催され、児童書の翻訳作品281点を展示しました。その後、研究会ではまだまだ多くの作品を紹介したいという思いがあり、展覧会用の図録をもとにして、今度は962点という膨大な作品を載せた事典を出版し、資料として活用していただけるようにしたわけです。
今までは、日本の創作児童文学、翻訳児童文学、さらに翻訳書は、国別、言語別に分けて研究されることが多かったのですが、この事典は、日本の創作も、海外の翻訳作品も、ともに日本の子どもたちが読んできたもの、という観点から、同じ流れのなかでとらえているのが特徴です。明治から1979年までを8つの時代に分け、エポックメーキング的な日本の作品と、主な翻訳書を載せているので、それぞれの時代にどんな本が読まれてきたかを概観できるようになっています。全962作品に解題がつき、索引は「著者・原作者名」「翻訳者名」「作品名・書名」と3種類つけましたので、かなり使いやすい資料になっていると思います。またところどころに各分野の専門家が執筆したコラムも入れましたので、読み物としても楽しめます。
★時代とともに児童書も変化してきていると思いますが、長い間、児童書にかかわってこられたご経験から、よい児童書の条件とは、何だとお考えでしょうか?
やはりおもしろいもの、のひとことです。といっても、ただおもしろおかしいという意味ではなく、読んだ後にああよかったと思えるもの。シリアスな状況を描いていても、どこかで子どもの力になってくれる本です。児童文学も、社会の変化に伴って暗い設定のものが多くなりました。今の子どもたちは、現実につらい思いをしていると思いますが、本の中ではどんなに苛酷な状況にあっても、主人公が自分でものを考え、自分の道をきりひらく姿が描かれていれば、それは読者にも先に進む力を与えてくれると思います。何が描かれているかではなく、どう描かれているかだと思います。たとえ、残酷なことが書かれていても、惨めな結末であっても、読者に勇気を与えてくれる作品には、子どもをひきつけるものがあるし、後々まで残っていくと思います。
★翻訳を志す読者のかたにアドバイスをお願いします。
子どもの本を訳そうと思っていらっしゃるみなさんには、なにより、子どもに興味をもっていただきたいですね。英語の勉強ばかりでなく、子どものことばやものの感じ方を知ってほしいです。それを知るのにとてもいい本があります。亀村五郎さんの著書『幼児のつぶやきと成長』(大月書店)です。大人では思いもつかない子どもならではの発想や、子どもらしいことばのつかいかたを知ることができます。
★今後のご予定をお聞かせください。
私は児童図書館員という仕事が大好きでしたが、諸事情で途中で辞めることになったとき、これからは図書館員に役立つような仕事をしていこう、と心に思いました。リファレンス資料づくりはこれからも励みたいですし、翻訳は、昔のものでも、どういうわけかこれまで翻訳されなかった傑作がけっこうあるので、これから訳してみたいです。
それから、大学の社会教育課程で、児童サービス論を教えていますが、ひとりでも多くの学生が子どもに本を手渡す仕事の魅力に気づいてくれたらと思っています。
(取材 高原昴)
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展示会/セミナー・講演会情報 |
―― 展示会情報 ――
◎新津市美術館「ガース・ウィリアムズ 絵本の世界」 | |
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所在地: | 新潟県新津市大字蒲ヶ沢109-1(花と遺跡のふるさと公園内) |
電 話: | 0250-25-1301 |
会 期: | 平成14年7月19日から8月18日まで(予定) |
休館日: | 月曜日(予定) |
入場料: | 一般600円 大学生・高校生400円 中学生・小学生200円(予定) |
内 容: | 「大草原の小さな家」シリーズの挿し絵で有名な画家、ガース・ウィリアムズの展覧会。シリーズ挿し絵の原画約50点を展示予定。 |
参 考: |
http://www.city.niitsu.niigata.jp/cityinfo/info/naf/frontpage.html ※詳細は6月以降上記サイトをご覧ください。 |
◎東京国立博物館平成館「日韓文化交流特別展 韓国の名宝」 | |
所在地: | 東京都台東区上野公園13-9 |
電 話: | 03-3822-1111 |
会 期: | 平成14年6月11日から7月28日まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 一般1300円 大学生・高校生900円 中学生・小学生400円 |
内 容: | 紀元前3000年から20世紀初頭に至るまでの韓国の文化財約270点を展示。「先史・三国」「仏教美術」「高麗青磁」「朝鮮陶磁」「絵画・書跡」「宮廷・両班(ヤンバン)」の6つのテーマで構成されている。なお、「高麗青磁」は本誌今月号書評編「注目の本(未訳)」 "A Single Shard" でストーリーを盛り上げる小道具として登場している。 |
参 考: | http://www.tnm.jp/scripts/Index.idc |
(瀬尾友子)
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―― セミナー・講演会情報 ――
◎フェロー・アカデミー 通信講座「リーディング講座〈児童文芸〉」 | |
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講 師: | こだまともこ(翻訳家) |
期 間: | 3か月(毎月開講) |
入会金: | なし |
受講料: | 25000円(税別) |
問合せ: |
フェロー・アカデミー通信教育事務局 TEL 03-3475-5814 E-mail info@fellow-academy.com |
その他: | 日本で翻訳出版されるかどうかの検討資料となるシノプシス。作品の全体像をしっかりつかみ、客観的評価ができるように、2冊の原書を読み、シノプシスのまとめ方を学ぶ。 |
◎東京こども図書館 講演会「『コドモノクニ』の画家たち」 | |
講 師: | 島多代(国際児童図書評議会〈IBBY〉会長、東京こども図書館評議員) |
場 所: | 東京子ども図書館(〒165-0023 東京都中野区江原町1-19-10) |
日 時: | 平成14年6月29日(土)14:00〜16:00 |
参加費: | 一般2000円 賛助会員1500円 |
定 員: | 40名 |
申込み: | 往復はがきに、講座名、氏名、住所(郵便番号も)、電話番号(昼の連絡先)、会員か否かを記入して同図書館へ申し込む。5月31日(金)必着。定員を超えた場合は抽選。 |
◎クレヨンハウス 子どもの本の学校「人生のお汁」 | |
講 師: | 田島征三(絵本作家) |
場 所: |
劇団ひまわりビル(大阪府吹田市江坂町1-18-2) クレヨンハウス東京店(東京都港区北青山3-8-15) |
日 時: |
大阪 平成14年6月8日(土)16:00〜17:30 東京 平成14年6月15日(土)16:00〜17:30 |
参加費: | 2500円(会員は無料) |
定 員: |
大阪 150名 東京 120名 |
問合せ: |
大阪店(TEL 06-6330-8071) 東京店(TEL 03-3406-6492) |
その他: | 非会員は、当日の朝11時から子どもの本売場にて販売される当日券を購入。会員のみで定員に達した場合は立ち見になることもあり。 |
(竹内みどり/吉村有加)
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お菓子の旅 第18回 |
―― 収穫を祝うユダヤの祭日のお菓子 ――
〜ブリンツ Blintz〜
The pancakes reminded me a little of the blintzes that Mrs. Aronson sometimes makes. Mama used to make blintzes too. "Do you ever cook blintzes?" I asked Mrs. Meade. "Faraway Summer" Morrow Junior Books (1998) |
ニューヨークで暮らす少女ドーシが、バーモント州ジェリコに住むミード家の農場で過ごした2週間を爽やかに綴った物語、"Faraway Summer"(『ジェリコの夏』ジョハナ・ハーウィッツ作/千葉茂樹訳/BL出版)。ユダヤ教徒のドーシは豚肉を食べられないなど、キリスト教徒であるミード家で出される心づくしの料理を、全部は口にすることができません。そうした信仰や習慣の違いに戸惑いながらも、ドーシとミード家の人々は少しずつ心を通わせていきます。
"blintz"(ブリンツ)とは、ドーシがミード家の人たちに紹介したユダヤ料理。薄く焼いたパンケーキ状の生地に、チーズや果物をのせて巻いたものです。ユダヤの家庭では日常的に食べられていますが、ユダヤ教三大祭のひとつ、「五旬祭(*)」には欠かせない料理でもあります。とくに収穫を感謝する意味から、小麦、牛乳、卵を使った生地に、チーズを巻いただけの簡素なものを食すのが伝統です。
ドーシたちは、料理やお菓子を通じて異なった文化を受け入れることを学んでいきました。物語の最後には、特別な意味を持ったミード夫人特製のお菓子も登場します。巻末にレシピがついていますので、"blintz" とともにぜひ試してみてください。
*五旬祭……過越の祭りの50日後、モーセに律法が授けられたことを記念する祭日。時期は毎年5月から6月となり、小麦の初穂を捧げて祝う収穫の祭りでもある。* |
*-* チーズブリンツの作り方 *-*
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★参考文献 |
(森久里子/田中亜希子)
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読者の広場 |
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