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※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
M E N U
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特集 |
さる10月26日、やまねこ翻訳クラブ創設5周年を記念して、翻訳家の金原瑞人さんとクラブ会員との座談会が開かれました。会員の鋭い質問に、ユーモアを交え真剣に答えてくださった金原さんに心より感謝いたします。
【金原瑞人(かねはら みずひと)さん】 1954年岡山県生まれ。翻訳家。法政大学社会学部教授。『エルフギフト』(スーザン・プライス作/ポプラ社)※、『青空のむこう』(アレックス・シアラー作/求龍堂)、『豚の死なない日』(ロバート・ニュートン・ペック作/白水社)、『レイチェルと滅びの呪文』(クリフ・マクニッシュ作/理論社)、『不思議を売る男』(ジェラルディン・マコーリアン作/偕成社)など英米の児童文学を中心に130冊を超す翻訳書がある。 |
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※『エルフギフト』は本誌今月号書評編「注目の本」にレビュー掲載。 |
★翻訳家になられたきっかけは何ですか?
話はさかのぼりますが、小学生の頃はほとんど本を読まない少年でした。とくに児童書は女の子の本という感じで読むのが恥ずかしかったですね。放課後思いっきり遊んで、家に帰ればテレビアニメと漫画が待っているという毎日。子どもの本離れが言われ出した頃です。かろうじて読んだのは、けばけばしい表紙の『怪盗ルパン』や『十五少年漂流記』、『宝島』や『ジャングル・ブック』。中学からそこそこ本を読むようになったものの、当時男が文学をやるという雰囲気はほとんどなくて、大学は医学部を志望しました。しかし2浪。生活は乱れ成績も落ちる一方でした。そんなある日、突然下宿を訪ねてきた母親に、苦しまぎれに「志望を文系に変えた」と言ったら、母は「自分の好きなことをやりなさい」と言ってくれたんですよ。それで次の年に唯一受かった法政大学の英文科に入りました。しかし4年後、就職試験にすべて失敗。一時は妹とカレー屋をやろうという話もあったんですが、指導教授の犬飼和雄先生から大学院進学をすすめられ、「授業は週に3時間、あとは本を読め」という言葉にひかれて進学しました(笑)。実は犬飼先生はぬぷん児童図書出版の編集をなさっていて、訳者養成のためにぼくを誘ってくださったらしいのです。それが児童文学に進む直接のきっかけになりました。
★新人の頃の失敗談をお聞かせください。
失敗は今もありますよ。ときどき誤訳に気づいてどきっとすることも。確かに誤訳はいけないんですが、日本語の本を読む時も100%理解して読んでいるわけじゃないですよね。まして日本人が外国語の文章を読むんだから、そこには誤解も生じます。 また、作者自身も自分の書きたいこと全てを表現できるかというと、そうでもない。 こういうことを全てひっくるめて一種の誤訳と考えれば、誤訳はつきものということになります。もちろんできるだけ減らす努力はしてますが。いつか誤訳で恥ずかしい思いをした経験を集めて本を書こうかと思ったりしてます(笑)。
★ご自分がプロになったと思われたのは、いつぐらいの時期からですか?
うーん、今でもプロとは思ってないかもしれない。翻訳で食べていく自信が今ひとつないので。印税はベテランでも新人でも同じ。訳すスピードだって際限なく速くなるわけじゃない。となると、本が売れることが頼みなんですが、それって宝くじを買うようなものですよね(笑)。
★訳される本はいつもどのようにして探されるのでしょうか?
1年に1、2回アメリカ西海岸に原書の買い付けに行きます。白人文化が中心の東海岸より、ネイティブ・アメリカン、チカーノ、アジア系など、ぼくが注目しているエスニック文学が多いんです。ネットでも探せますけど、実際に本を手にとって数ページ読んで判断するほうがいいですよね。段ボール3、4箱分買って帰って、ひたすら読む。それぞれの本はまず5分の1読んで、だめならやめます。3分の1まで読んで面白いものは、たいてい最後まで面白いですね。お気に入りの本屋はサンフランシスコにあるんですが、去年の9月12日に予約した飛行機に乗れなくなって、そのあと一度も行けないでいます。
★ご自分で見つけた本と編集者から依頼される本の割合はどれくらいですか?
以前は自分の持ち込みが100%でした。今は7、8割かな。編集者から依頼される本が増えたのは2、3年前からですね。基本的に面白い本があったら要約を作って出版社に持ち込むんですが、成功率は3割か4割。要約はもう100以上はたまってます。編集者から「こんな感じの本ないですか」と聞かれたら、骨董屋のおやじみたいに「これなんか、どう?」と出すんですが、それで昔断られた本が、ファンタジーブームで取り上げられたなんてこともあります。
★児童書の中でも、YAをたくさん翻訳されているのはなぜですか? また、YAのどんなところがお好きですか?
15年ほど前まで日本ではYAのジャンルが定着してなくて、いい作品がたくさん訳されずに残ってました。それで中高生向きに、どんどん紹介していこうってことになったんです。それに、ぼくはもともと児童書を読まない少年だったから、小学4年生くらいまでの児童書の面白さが今ひとつわからないんですよ。法政の後輩にあたる赤木かん子さんは、この辺の感覚がすごいんですが、ぼくの文学的な感覚は中学生以上。だからYAなんです。
★エスニック文学に着目されているのはなぜですか? また文化的な疑問はどのようにして解決されますか。
日本ではエスニック文学がまだあまり翻訳されていなくて、いい作品がいっぱい残ってます。エスニック文学は粗雑で完成度が低いという見方もありますが、白人文学を切り崩していくようなすごい力がみなぎっていて、ぼく自身は魅力を感じます。 文化的な疑問は、作家に直接問い合わせます。90%は返事が来ますね。だから生きてる作家が好きなんですよ。
★翻訳という仕事について、楽しい点や大変な点を聞かせてください。また、思い入れの深い作品、苦労した作品は何ですか?
すいすい仕事が進むと楽しいですね(笑)。そして、大変なのはいつも「今訳している本」です。これまででもっとも苦労したのは、ベン・オクリの『満たされぬ道』(平凡社刊)。この作品は言葉が難しくてイメージが濃く、1日に10〜20枚しか訳せませんでした。でもこの本が訳書の中でいちばん好きです。相性がよくて効率よく訳せたのはロバート・コーミア。1日に60枚は進みました。ぼくはよく「1ブレス」と言ってますが、ひとつの作品をあんまり時間をかけて訳さないほうがいいですよ。最後のほうで文体が変わってしまいますから。
★ここ数年、最新のYAの共訳と古典の新訳という、一見両極にも思えるお仕事を同時進行されていますが、そのあたりのお考えを聞かせてください。
最新のYAには、いかにも文体が命といった若い人の作品がありますよね。ぼくには今そういう文体はないから、最新の文体を持つ人といっしょに共訳というコラボレーションをやってるわけです。共訳してもぼくの労力は半分にはならなくて、6、7割はかかるかな。それでも文体のバトルがあって楽しいですし、後継者を育てることにもなります。またYAにもいろんな作品があるので、その時々、文体の合う人とやることで、味わいの違う作品を作り上げることができます。また、古典の新訳にも魅力を感じてます。今の読者が楽しめるような、わかりやすくてすっきりした新訳を目ざしています。
★児童書の翻訳家をめざしている会員たちへアドバイスをお願いします。
まず好きな本を見つけて要約を作り、出版社に持ち込むというスタイルを作っていくのがいいと思います。翻訳学校に通って、先生と直接コミュニケーションをとることもいいでしょう。どうかがんばってください。
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○●○おまけQ&A(座談会当日、会員から出た質問を以下に挙げます)○●○ |
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★年間、原書を何冊くらい読まれますか?
10年以上前、朝日新聞に書評を書いていた頃は、日本語の本と原書を合わせて1年に400〜500冊は読んでいました。今は300冊弱かな。そのうち原書は80冊くらい。 でも速読でないといけないとも思いません。じっくり読むのもいいですよ。要は自分にあった読み方をすることです。
★お好きな作家、注目されている作家はだれですか?
ベン・オクリ、ルドルフォ・アナヤ、スーザン・プライス、ジュマーク・ハイウォーター、シャーマン・アレクシーなどヘビーで読み応えのある作家が好きです。
★苦手な編集者はどんなタイプですか?
出した原稿を真っ赤にして返してくる人かなあ(笑)。文体が変わってしまうので。逆に全然入れない人も不安です。こちらがなるほどと思えるような点にチェックを入れてくる人がいいですね。「無神経な訳者」プラス「神経の細やかな編集者」の組み合わせがいいかな。
★お気に入りの読書の場所はどこですか? また、翻訳をされるときのお供の飲み物は何ですか?
読書の場所はどこでもいいです。いわゆる活字中毒でいつも何か読んでますね。飲み物は日本酒。気に入った徳利とぐいのみで飲むと目がさえてきます。★どうしてそれほどたくさん訳せるのでしょうか?
実は……以前はゲームが好きで好きで。それこそ1年の4分の1はやってたんじゃないかな。映画も月に5、6本は見てました。翻訳の仕事が増えたのは、それをやめたことが大きいですね。今残っている趣味は、芝居、歌舞伎、落語など。音楽で最近凝っているのは長唄の芳村伊十郎。酒器を集めるのも好きですね。でももうこれ以上、翻訳のために削れる娯楽の時間はないです。
★翻訳する上で心がけていらっしゃることは何でしょうか?
運動不足にならないことですね。ぼくはランダムハウスの紙の辞書を使ってますけど、訳しながら、これを持ち上げたり降ろしたりします。バーベルみたいに。けっこういいですよ。
★若さの秘訣は何ですか?
若くないですよ(笑)。20歳過ぎたら体力も気力も落ちる一方。だからぼくは、気力や体力を振り絞らないとできないという状態で翻訳するのはすすめません。適度に気を抜いて、できる範囲でやるものじゃないかな。
★いったいどんな生活をなさっているのですか?
ガーディアン賞を取ったソーニャ・ハートネット※みたいに地下に潜ってもいないし、木に登ってもいないなあ(笑)。大学で教えて翻訳もやるという二本立てです。 普通に生活してますよ。
※Sonya Hartnett の "Thursday's Child" は本誌今月号書評編「注目の本(未訳読み物)」にレビュー掲載。
(文責:中務秀子)
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コンテスト/展示会/セミナー・講演会情報 |
◎萬鉄五郎記念美術館「ガース・ウィリアムズ 絵本の世界」 | |
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所在地: | 岩手県和賀郡東和町土沢5-135 |
電 話: | 0198-42-4402 |
会 期: | 平成14年12月1日(日)まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 一般600円 大学生・高校生500円 小中学生100円 |
内 容: | 「大草原の小さな家」シリーズの挿し絵で有名な画家、ガース・ウィリアムズの展覧会。シリーズ挿し絵の原画など約50点を展示予定。 |
参 考: |
▼ YAHOO 地域情報コーナー http://dir.yahoo.co.jp/regional/japanese_regions/leisure_facilities/art_museums/iwate/001565/ |
◎おかざき世界子ども美術博物館 「世界巡回展 出版100年記念 ピーターラビットの世界」 | |
所在地: | 愛知県岡崎市岡町字鳥居戸1番地1岡崎地域文化広場内 |
電 話: | 0564-53-3511 |
会 期: | 平成15年1月13日(月)まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | 一般300円 中学生・小学生100円 |
内 容: | 日本で初めて公開される「ピーターラビット」の原画展。 |
参 考: | http://www.city.okazaki.aichi.jp/museum/ka341.htm |
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◎大阪府立国際児童文学館 「オランダの子どもの本を語る リンデルト・クロムハウト講演会国際講演会」 | |
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講 師: | リンデルト・クロムハウト(ゲスト 末吉暁子、通訳 野坂悦子) |
場 所: | 大阪府立国際児童文学館(〒565-0826 大阪府吹田市千里万博公園10-6) |
日 時: | 平成14年12月8日(日)14:00〜16:30 |
参加費: | 1000円 |
申込み: |
TEL(06-6876-8800)FAX(06-6876-8686)E-mail(info@iiclo.or.jp) または国際児童文学館カウンターへ申し込む。 |
詳 細: |
http://www.iiclo.or.jp/event/special/kouzakouenkai.htm ※この講演会は、名古屋、東京でも開催される。 名古屋会場(つちやホテル):平成14年12月9日(月) 15:00〜17:00 東京会場 (世田谷文学館):平成14年12月14日(土) 14:00〜16:30 ▼申込み方法など詳細は、以下のサイトで確認のこと。 http://www.01.246.ne.jp/~nozaka/ |
◎クレヨンハウス 子どもの本の学校「偶然か、必然か?」 | |
講 師: | 千葉茂樹(翻訳家) |
内 容: | いつのまにか翻訳を稼業にするようになったという氏が、これまでのさまざまな出会いを語る。 |
場 所: |
クレヨンハウス東京店(東京都港区北青山3-8-15) 劇団ひまわりビル(大阪府吹田市江坂町1-18-2) |
日 時: | 東京 平成14年12月7日(土) 大阪 12月14日(土) 16:00〜17:30 |
参加費: | 2500円(会員は無料) |
内 容: | ピーターラビットの作者ポターを取り上げる学会の一部。一般の参加も可。 |
定 員: | 東京 120名 大阪 150名 |
問合せ: | 東京店(TEL 03-3406-6492) 大阪店(TEL 06-6330-8071) |
その他: |
非会員は、当日の朝11時から子どもの本売場にて販売される当日券を購入。会員のみで定員に達した場合は立ち見になることもあり。 【10月号お詫びとお知らせ】 先月号では、白百合女子大学児童文化研究センター21世紀児童文学シンポジウムの情報に誤りがありましたことを改めてお詫び申し上げます。発行後、第12日目(12月14日)のゲストは未定とお知らせしましたが、松原秀行氏に決定いたしました。下記サイトにてご確認ください。 ▼白百合女子大学児童文化研究センター http://www.shirayuri.ac.jp/childctr/index.html |
(吉村有加/竹内みどり)
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