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月刊児童文学翻訳

─2005年9月号(No. 72)─

児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
電子メール版情報誌<HP版+書店街>
http://www.yamaneko.org/
編集部:mgzn@yamaneko.org
2005年9月15日発行 配信数 2340

もくじ

 ◎注目の本(邦訳絵本):『生命の樹 チャールズ・ダーウィンの生涯』
         ピーター・シス文・絵/原田勝訳
 ◎注目の本(邦訳絵本):『カクレンボ・ジャクソン』
         デイヴィッド・ルーカス文・絵/なかがわちひろ訳
 ◎注目の本(邦訳読み物):『川べのちいさなモグラ紳士』
         フィリパ・ピアス作/猪熊葉子訳
 ◎注目の本(未訳絵本):"My Name is Celia/Me llamo Celia"
                  モニカ・ブラウン文/ラファエル・ロペス絵
 ◎賞速報
 ◎イベント速報
 ◎お菓子の旅:第33回 ふわふわメレンゲとレモンの合体 〜レモンメレンゲパイ〜
 ◎読者の広場:海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!

●このページでは、書店名をクリックすると、各オンライン書店で詳しい情報を見たり、本を購入したりできます。

 


●注目の本(邦訳絵本)●

―― 絵本で楽しむ、ダーウィンの生涯と「進化論」 ――

生命の樹 チャールズ・ダーウィンの生涯
ピーター・シス文・絵/原田勝訳

徳間書店 定価1,785円(税込) 2005.06 40ページ ISBN 419862027X
"The Tree of Life" by Peter Sis
Farrar, Straus & Giroux, 2003

★2004年ボローニャ・ラガッツィ賞ノンフィクション部門受賞作品

 19世紀のイギリスでは、神がすべての生きものをつくったのだと信じられていた。そこへ「進化論」を発表し、論争を巻き起こしたのがチャールズ・ダーウィンである。
 医師の家系に生まれたダーウィンは、最初、医学を学びにエディンバラ大学に送られるが挫折。つぎにケンブリッジ大学で神学を学ぶが、こちらも好きになれなかった。興味の対象は地質学、動物学、植物学といった自然科学で、ケンブリッジではヘンロウズ教授の植物学の授業に夢中だった。教授とは個人的にも親しくなり、卒業後、ビーグル号に乗船する博物学者として推薦される。ビーグル号は英国の軍艦で、南米大陸南端の調査を政府から命じられていた。父に反対されたが、なんとしても行きたいダーウィンは叔父の後押しを得て父を説得。5年間の航海で見たこと経験したことが、その後の研究活動を方向づけることになった。帰国後、地質学者として本を書き、講演をおこないながら、いとこのエマと結婚して家庭を築き、その陰で「進化論」の研究をひそかに進める……。
 ダーウィン73年間の生涯が40ページの絵本に描かれている。彼が残した日記や手紙、航海日誌に着想を得て、シスが絵日記ふうに仕上げたビーグル号航海日誌がなんといっても楽しい。ブラジルの原生林に足を踏み入れて「楽しい、ということばでは、(中略)とうていあらわしきれない」。奴隷の扱いに「はげしく胸がいたむ……」。 アルマジロについては「焼くとうまい」。文章はダーウィンが書き残したものから抜粋されており、まるでダーウィン自身が書いた絵日記をのぞき見ているような気分を味わえる。
 リアルでかわいらしい動物たち、ビーグル号の内面図、ダーウィンの書斎のようす。シスが細かく丁寧に描き上げた絵に引き込まれ、小さな文字のひとつひとつまで、時間をかけてかみしめるように読んだ。子ども時代に出合っていたら、生物の授業への取り組み方が少し変わり、別の未来が待っていたかもしれない。そう思うと、今、こ の本を手にする子どもたちが、少しだけうらやましい。  

(赤塚きょう子)

 

【文・絵】ピーター・シス(Peter Sis)

1949年、旧チェコスロバキアのブルノに生まれる。プラハの美術工芸学校とロンドンの王立芸術大学を卒業したのち、映像作家となる。1982年にアメリカへ移住後、絵本を書き始め、"Starry Messenger: Galileo Galilei"(『星の使者』原田勝訳/徳間書店)がコールデコット賞オナーに選ばれたほか、これまでに多くの賞を受賞している。邦訳された作品も多い。

【訳】原田勝(はらだ まさる)

1957年生まれ。東京外国語大学を卒業。主な訳書に『二つの旅の終わりに』(エイダン・チェンバーズ作/徳間書店)、「古王国記」シリーズ(ガース・ニクス作/主婦の友社)などがある。

【参考】
▼ピーター・シス公式ウェブサイト
http://www.petersis.com/

▽ピーター・シス作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/s/psis.htm
 

※編集部注:「Sis」は、「i」の上にアクセント記号(´)がつく。

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●注目の本(邦訳絵本)●

―― めだちたくないのにめだっちゃう ――

カクレンボ・ジャクソン
デイヴィッド・ルーカス文・絵/なかがわちひろ訳
偕成社 定価1,365円(税込) 2005.06 25ページ ISBN 4032015201
"Halibut Jackson" by David Lucas
Alfred A. Knopf, 2004

 めだつのがきらいで、「いつもひっそりかくれるように」くらしているカクレンボ・ジャクソンが、この絵本の主人公。そのかくれっぷりは、徹底している。公園へ行くときは花だんに咲く花々にそっくりな服、図書館へ行くときは棚にならぶ本にそっくりな服を着ていって、カメレオンのごとく背景にとけこんでしまうのだから(ちなみに原題の "Halibut" は、大型のカレイの一種であるオヒョウのこと。「カクレンボ・ジャクソン」という名前は、さり気ないけれど名訳だと思う)。
 わたしは小学校での読み聞かせに参加しているので、先日、3年生の教室でこの本を読んでみた。ジャクソンくんがあまりにも上手にかくれてしまうので、広い教室では見えにくいかと心配したが、そこは目のいい子どもたち。ウォーリーでも探すように、わいわい言いながら、カクレンボ・ジャクソンを探してくれた。
 そして中盤、お話は急展開を見せる。女王さまのパーティーに招待されたジャクソンは、めだたないよう万全の備えをしていったのに、ひょんなことからお城じゅうの注目を集めてしまう。この場面、ほのぼのした絵のタッチとジャクソンのとぼけた表情があいまって、ユーモラスな雰囲気をかもし出しているので、笑いが起こるかなと予想していた。ところが「カクレンボ・ジャクソンは、とてもめだってしまいました」という一文を口にしたとたん、教室じゅうが「シーン!」。みんな固唾を呑む表情で本に見入っている。そうか、子どもたちにとって、めだつ、めだたないというのは大 問題なんだ。「めだちたくないのにめだっちゃう」のは、きっと、とてもドキドキする大事件なんだ――自分の子ども時代を思い出しながら、少しハッとさせられた。
 だったらなおのこと、このエンディングをたっぷり味わってくれるといいなと思う。ちょっぴりたくましくなって、もう背景にとけこんだりしていないカクレンボ・ジャクソン。相変わらずシャイな表情も、心なしか以前より大人びて見える。始めと終わりの見返しにも小さな工夫がされていて、作者がこの本に込めた愛情が感じられる。

(ないとうふみこ)

 

【文・絵】デイヴィッド・ルーカス(David Lucas)

1966年、イングランド北部のミドルズブラ生まれ。英国王立芸術学院を卒業後、イラストレーターとして活躍。日 本では、絵を担当した『そらとぶいぬ』(テッド・ヒューズ文/長田弘訳/メディアファクトリー)が紹介されている。絵と文をともに手がけた作品は、本書がはじめて。

【訳】なかがわちひろ(中川千尋)

なかがわちひろ(中川千尋):1958年生まれ。東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。創作絵本に『のはらひめ』(徳間書店)、『天使のかいかた』(理論社)、訳書に『ふしぎをのせたアリエル号』(リチャード・ケネディ作/徳間書店)、「チム」シリーズ(エドワード・アーディゾーニ作/福音館書店)など多数。

【参考】
▼アマゾン・コムによるデイヴィッド・ルーカスインタビュー
http://www.amazon.com/exec/obidos/tg/feature/-/559507/102-4031788-4732914

▽中川千尋作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/cnakagaw.htm
 

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●注目の本(邦訳読み物)●

―― モグラと少女の友情のゆくえは? ――

川べのちいさなモグラ紳士
フィリパ・ピアス作/猪熊葉子訳
岩波書店 定価1,890円(税込) 2005.05 196ページ ISBN 4001155753
"The Little Gentleman" by Philippa Pearce
Puffin Books, 2004

★2004年度カーネギー賞ロングリスト作品
★2005年ガーディアン賞ロングリスト作品

   ある日少女ベットは、骨折して動けない老人から、自分の代わりに川べで本を大きな声で読んでほしい、という奇妙な依頼を受ける。不思議に思いながらも本を読みに出かけたベットが目にしたのは、なんと、ベットの朗読に耳を傾けるちいさなモグラの姿だった。そのちいさなモグラは、人間の言葉を理解するだけでなく、話すこともできた。ベットはモグラと言葉を交わしているうちに、このモグラが、紳士と呼ばれるにふさわしい深い知識と教養を持っていると気づく。
 約300年前に不本意な魔法をかけられたモグラは、かつて親交を結んだ女性ミスXに、『テニソン詩集』などを読み聞かせてもらって教養を深め、人間の会話の仕方を学んだ。一方、生まれてすぐ母親に捨てられたベットは、ずっと音沙汰のなかった母親から連絡を受け、複雑な気持ちを抱えていた。自分に対しおごりたかぶった態度も、 恩着せがましい態度も取らないベットを、モグラはミスXと同じように対等に話ができる相手だと認め、両者は互いの悩みや心の内を打ち明ける間柄となっていく。
 友情といってもさまざまだが、ただ話して楽しいだけでなく、心底信頼できる相手とめぐり合えたとき、その友情は人生を変える力を持つことがある。ベットは、自分を捨てた母親に対する不信感と愛情をモグラに率直に話すうちに、母親を受け入れる準備ができた。そこには、人間と動物という枠を越えた真の友情があったからに違いない。「友だちはいつだって、友だちを助けるものだ」このモグラのせりふは、だれの心にも染み入るものだろう。真の友だちこそ、人生を豊かにしてくれる宝なのだ。
 さてこの作品は、彼らの友情物語だけで終わらないところに、ピアスらしさが現れている。モグラの口からは壮大な歴史が語られ、実際にあった王位継承争いが背景として描かれているのだ。それだけではない。モグラのトンネル内部の描写では、読者であるわたしたちまで、実際の土のにおいや手触りを感じるほどだ。こうした歴史的 知識や詳細な自然描写が、物語を一層おもしろくしている。また、モグラの本当の望みと数奇な運命の対比が、「生と死」という命あるものには当然の定めを思い起こさせてくれる素晴らしい作品である。真の友情が迎える結末に、胸が熱くなった。

(村上利佳)

【文】フィリパ・ピアス(Philippa Pearce)

1920年、英国ケンブリッジ州に生まれる。ガートン・カレッジ卒業。ラジオの脚本家や本の編集者を経て、1955年に『ハヤ号セイ川をいく』(足沢良子訳/講談社)で作家としてデビュー。"Tom's Midnight Garden"(『トムは真夜中の庭で』高杉一郎訳/岩波書店)でカーネギー賞を受賞。他にも数々の文学賞を受賞しており、戦後のイギリス児童文学を代表する作家のひとりである。

【訳】猪熊葉子(いのくま ようこ)

聖心女子大学名誉教授。社会貢献支援財団会長。著書は『児童文学最終講義』(すえもりブックス)『イギリス児童文学の作家たち』(研究社)など、翻訳書は『太陽の戦士』(ローズマリ・サトクリフ作/岩波書店)『秘密の花園』(フランシス・エリザ・ホジソン・バーネット作/福音館書店)など多数あり。

【参考】
▼フィリパ・ピアスのページ(英国 Puffin Books 内)
http://www.puffin.co.uk/nf/Author/AuthorPage/0,,15_1000024801,00.html
 

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●注目の本(未訳絵本)●

―― サルサの女王、お決まりのセリフは? ――

わたしはセリア』(仮題)
モニカ・ブラウン文/ラファエル・ロペス絵
"My Name is Celia/Me llamo Celia" text by Monica Brown, illustrations by Rafael Lo'pez
Luna Rising 2004, ISBN 087358872X
230pp.

★2004年アメリカス児童・ヤングアダルト文学賞受賞作品

 !AZU'CAR!(アスーカル!)
 私の声は強くて、なめらか、そして甘い。ほら、踊りたくなってくる。
 目を閉じて、聞いてちょうだい。
 ボン、ボン、ボン、コンガのリズムに! 手をたたいて! おしりを振って!
 私はサルサの女王よ。さあ、いっしょに踊りましょう。

 リズミカルでいきのいい語りかけではじまるこの絵本は、サルサの女王といわれるセリア・クルスの一生を描いたものだ。鮮やかでラテンらしい色づかいの絵を見ると、何だかうきうきと、楽しい気持ちになってくる。歌を愛するセリア自身の魅力がたっぷりと伝わってきた。
 セリアはキューバのハバナで生まれた。家の台所には家族はもちろん、いとこや友だちまでもがにぎやかに集まった。裕福ではないけれど、そこにはおいしい食べ物、家族のぬくもり、そして歌があった。学校の先生の一言に励まされ、歌の世界へ入っていったセリアは、キューバ革命のため、メキシコを経てアメリカへわたる。その後、マイアミのレストランでのある出来事がきっかけで、彼女は「!AZU'CAR!(スペイン語で砂糖の意)」と観客に語りかけるようになり、サルサという新しい音楽を生みだしたのだ。
 この絵本が出版される前年、2003年6月16日にセリアは亡くなった。ニューヨークの通りは彼女をしのぶファンの列であふれ、市長は命日を『セリア・クルスの日』と名づけたそうだ。セリアの存在を知らなかった私だが、それほど皆に愛されたサルサの女王について興味がわき、聞く人を幸せにするという歌声もぜひ聞いてみたくなった。
 ちなみにこの絵本は英語とスペイン語のバイリンガル・シリーズの中の1冊で、セリアの母国語であるスペイン語の雰囲気が味わえる。2つの文章を読みくらべ、表現や違いを見てみるという楽しみ方もできるだろう。

(美馬しょうこ)

 

【文】Monica Brown(モニカ・ブラウン)

米国アリゾナ州在住。ペルー生まれの母と北米出身の父の下、南米やアンデス山系を転々としながら育ち、英語・スペイン語文化の影響をうけた。北アリゾナ大学でラテン文学を教えるが、現在サバティカル(特別研究期間)中。今年8月には、チリの詩人ガブリエラ・ミストラルの生涯を描いた "My Name is Gabriela"(Luna Rising)も出版された。

【絵】Rafael Lo'pez(ラファエル・ロペス)

米国カリフォルニア州在住。建築家の両親の下、メキシコシティで育ち、自国の豊かな文化と壁画家から影響をうけた。サンディエゴでの Urban Art Trail Project などに参加、壁画なども手がける。大企業とも契約を結ぶイラストレーターで、グラフィックアートなどでも多数の賞を受賞している。

【参考】
▼モニカ・ブラウン公式ウェブサイト
http://www.monicabrown.net/index.htm

▼ラファエル・ロペス公式ウェブサイト
http://www.rafaellopez.com/

▼セリア・クルス公式ウェブサイト(セリア・クルスの歌が聞ける)
http://www.celiacruzonline.com/

▼セリア・クルスの紹介ウェブサイト(!Azu'car! という声が聞ける)
http://americanhistory.si.edu/celiacruz/

▼アメリカス児童・ヤングアダルト文学賞に関するウェブサイト
http://www.uwm.edu/Dept/CLACS/outreach/americas.html

※編集部注:「Rafael Lo'pez」は「o」の上にアクセント記号(´)がつき、本文中の「!AZU'CAR!」は最初の「!」は逆さま、「U」の上にアクセント記号がつく。

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●賞速報●

★2005年ローカス賞発表
★2005年オーストラリア児童図書賞発表
★2005年エスター・グレン賞/ラッセル・クラーク賞発表

海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」をご覧ください。

 

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●イベント速報●

★展示会情報

西宮市大谷記念美術館
「2005イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」他
 

★セミナー・講演会情報

東京ドイツ文化センター「ラルフ・イーザウ氏講演会」、
東京女子大学「シンポジウム Women and Writing 〜児童文学と『今』〜」他
  詳細やその他の展示会・セミナー・講演会情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、空席状況については各自ご確認願います。

(井原美穂/笹山裕子)

 

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●お菓子の旅●第33回 ふわふわメレンゲとレモンの合体
 〜レモンメレンゲパイ〜

 She swapped the spectacles on her head for the ones on her nose. "What about this lemon meringue pie?"

Diana Hendry
"Harvey Angell and the Ghost Child" Julie MacRae(1997)
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

 今回はレモン風味のカスタードの上に、ふわふわのメレンゲを乗せて焼き上げた、レモンメレンゲパイをご紹介します。
 レモンは紀元前から栽培され、薬や料理に使われてきました。17世紀ごろには、菓子に使うカスタードクリームにレモン汁をいれたレモンカスタードが作られました。上に乗せるメレンゲは、卵白に砂糖を加え、固く泡立てて焼いたものです。起源には諸説あります。1720年ごろ、スイスのマイリンゲン(Meiringen)の町の菓子屋が売り出したという説。フランスに亡命したポーランド国王付きの職人が考案し、ポーランドの菓子のマルツィンカ(Marzynka)から名づけられたという説など。このメレンゲとレモンカスタードとがいっしょになって、レモンメレンゲパイとなりました。
 冒頭の引用は、ちょっと不思議なエンジェルさんが活躍する、『屋根裏部屋のエンジェルさん』(ダイアナ・ヘンドリー作/こだまともこ訳/徳間書店/1997年)の続編、"Harvey Angell and the Ghost Child" から。休暇で海にやってきた主人公たち一行が借りた家には幽霊がいました。うわさを集めようと市場に出かけたおばあさん ふたりが、レモンメレンゲパイを勧められる場面です。
 メレンゲをたっぷり飾る華やかなパイですが、市販のパイシートを使えば手軽に楽しめます。ぜひお試しください。 

*-* レモンメレンゲパイの作り方 *-*

画像はこちら(やまねこ翻訳クラブ喫茶室)

材料:(21cmのパイ皿ひとつ分)
市販のパイシート  2枚

レモンクリーム

  • 卵黄  3個
  • 砂糖  100g
  • 塩  少々
  • コーンスターチ  25g
  • 薄力粉  5g
  • レモン汁1個分  約35cc
  • 水  250cc
  • 無塩バター  15g

メレンゲ

  • 卵白  3個
  • 砂糖  50g
  • 塩  少々
  • グラニュー糖  適宜
  1. 2枚重ねたパイシートを、パイ皿より一回り大きくのばして、パイ皿に敷き、なじませる。ナイフでまわりの余分な生地を切り落とし、フォークで底に穴をあけ、200度のオーブンで15分焼いて、粗熱をとっておく。
  2. まず、卵黄に砂糖、塩を加えてよく混ぜる。そこに、コーンスターチ、薄力粉、レモン汁を順に混ぜ合わせ、さらに沸騰させたお湯を加えて裏ごしする。火にかけてとろみがつくまで煮詰める。火をとめてバターを混ぜ、粗熱をとる。
  3. 1のパイ生地に2を流し込んで平らにならす。
  4. 卵白を固く泡立て、砂糖と塩を混ぜたメレンゲをつくり、3の上に飾る。
  5. グラニュー糖をかけ、180度のオーブンでメレンゲに焦げ目がつくまで焼く。
★参考文献・ウェブサイト
『百菓辞典』(山本候充編/東京堂出版)
『家庭画報 料理教室 12 お菓子とデザート』(世界文化社)
"The food timeline" http://www.foodtimeline.org/index.html

「やまねこ翻訳クラブお菓子掲示板」
(竹内みどり /早川有加)


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●読者の広場●海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!

このコーナーでは、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せください。
  • メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
  • タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
  • 掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
  • 回答も読者のみなさまから募集し、こちらに掲載させていただきます。編集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

 

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●編集後記●

今月号から、副編集長ふたりが加わり、3人交代で編集作業を行いま す。より充実した「月刊児童文学翻訳」をお届けできるよう、編集部一同がんばりま すので、どうぞよろしくお願いします。(よ)

発 行: やまねこ翻訳クラブ
発行人: 岩本みづ穂(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人: 横山和江/竹内みどり/大原慈省(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画: 赤塚きょう子 赤間美和子 井原美穂 ないとうふみこ 笹山裕子 早川有加 美馬しょうこ 村上利佳
協 力: 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
さかな ながさわくにお
html版担当 蒼子

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