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2009年4月号
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  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
   =====☆   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ☆=====
                                No.109
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2009年4月15日発行 配信数 2370 無料
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●2009年4月号もくじ●
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◎注目の本(邦訳絵本):『かえるごようじん』
                   ウィリアム・ビー文・絵/たなかなおと訳
◎注目の本(邦訳読み物):『永遠に生きるために』
                       サリー・ニコルズ作/野の水生訳
◎注目の本(未訳読み物):"On the Jellicoe Road" メリナ・マーチェッタ作
◎世界の本棚(ドイツ語):"》Denk nicht, wir bleiben hier!《:
              Die Lebensgeschichte des Sinto Hugo Hollenreiner"
                         アーニャ・トゥッカーマン作
◎賞速報
◎イベント速報
◎世界のお祭り:第16回 ソンクラーン(タイ)
◎特報:IBBY賞・JBBY賞等伝達授与式
◎読者の広場

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●注目の本(邦訳絵本)●びっくりしゃっくりぎっくりどっきり!
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『かえるごようじん』 ウィリアム・ビー文・絵/たなかなおと訳
セーラー出版 定価1,575円(税込) 2009.01 41ページ ISBN 978-4883301706
Amazonで詳細を見る  bk1で詳細を見る
"Beware of the Frog" by William Bee
Walker Books, 2008
Amazonで詳細を見る
★2009年チルドレンズ・ブック賞幼年向け部門ショートリスト作品
★2009年ケイト・グリーナウェイ賞ロングリスト作品

 最近「ええっ!」「ギョッ!」なんて驚いたことはありますか? 大笑いしたこと
はありますか? 表紙には「フフン」と見つめる大きなかえるの横顔。飛び出さない
し、動きだすわけではないけれど、心がぐるぐるかきまわされる絵本です。
 おばあさんがひとり、森のはずれに住んでいました。深くて暗くて恐ろしいこの森
は、魔物のすみかです。おばあさんの味方はたった1匹の小さなかえるだけ。魔物は
つぎつぎやってきました。大丈夫でしょうか? ところがこのかえる、りっぱに立ち
向かうのです。そのお手並みたるや、魔物のほうが愛らしく見えてしまうほど。大喜
びのおばあさんに、まるでナイトのようなかえるが望むものとは?
 人々の予想を覆すことにかけては、ウィリアム・ビーの右に出る人はいないでしょ
う。前作『だから?』(たなかなおと訳/セーラー出版)でも大方の常識をひっくり
返す意外な結末に、眉をひそめた人もいたとか。今回も抜群のセンスと目にも鮮やか
な原色のかわいい絵で、言葉のイメージを裏返し、見る者の心を揺さぶってくれます。
 ここに登場するおばあさんは、ひとりだからってひしゃげてなんかいません。まぶ
しいほどのピンクのドレスに、ネックレスをいくつもつけ、赤いカバンに赤い傘まで
さして、パーティーにでも行きそうな華やかさです。かえるだって、ただものではな
いのです。「味方はかえる1匹? わぁ大変」と心配になった人は、次の頁で腰を抜
かすかもしれません。このかえるの驚くべき行動といったら! 読者は意表を突く展
開にびっくりしながら、笑ってしまうことでしょう。しかも作者は、読者を存分に楽
しませておいて、最後にはみごとな大どんでん返しを用意しているのです。
 予想がつかない意外さに得がたい魅力があります。イメージと発想の逆転に継ぐ逆
転を、大笑いしながら味わっていただきたい。ただしあまりに思いがけなくて、イヤ
になる恐れも、あるかも。かえるごようじん!

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【文・絵】ウィリアム・ビー(William Bee):ロンドン生まれ。現在は英国の田舎
に住み庭の手入れにいそしんで暮らす。絵本作家、ヴィンテージスポーツカーのレー
サー、スキーヤーでもある。『だから?』で2005年度BCCBブルーリボン絵本賞受
賞。邦訳は他に『さてさてきしゃははしります…』(もとしたいづみ訳/フレーベル
館)がある。

【訳】たなか なおと(田中尚人):1962年東京生まれ。グランまま社編集長。NP
O法人ファザーリング・ジャパン理事。2003年より友人3人とともに父親による読み
聞かせ活動「パパ's 絵本プロジェクト」を発足、父親と子どもと絵本を結ぶ時間つ
くりを全国で提唱している。共著に『ぼくの血みんなの血―あたたかい贈りもの―』
(かきぬまあきこ共著/石井聖岳絵/ももくり柿の木社)他。訳書に『だから?』が
ある。

【参考】
▼ウィリアム・ビー公式ウェブサイト
http://williambee.com/

▼田中尚人の公式ブログ 「たなかパパの三日ボーズ雑記」
http://www.cam.hi-ho.ne.jp/g-mama/tanaka-papa.html

                               (尾被ほっぽ)

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●注目の本(邦訳読み物)●最期までの3か月、ぼくが綴る「ぼくの本」
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『永遠に生きるために』 サリー・ニコルズ作/野の水生訳
偕成社 定価1,470円(税込) 2009.02 317ページ ISBN 978-4037449100
Amazonで詳細を見る  bk1で詳細を見る
"Ways to Live Forever" by Sally Nicholls
Marion Lloyd Books, 2008
Amazonで詳細を見る
★2009年カーネギー賞ロングリスト作品

 数か月前のこと、わたしは重松清さんの『その日のまえに』(文藝春秋)を読んで、
自分の余命がわかったなら、最期をどう迎えたいか、最期までにどんな準備ができる
だろうかと考えていた。そんなときに手にとったのが本書『永遠に生きるために』。
主人公のサムにはとてもかなわないと思った。
 サムは白血病に冒されている11歳の少年。何度も再発し、担当医師から治るみこみ
はないと告げられ、病気を治す薬ではなく、悪化させない薬をのみはじめた。それを
のめば、まる1年かそれ以上生きる人もいるのだと言われ、サムは思う。「1年あれ
ば、どっさりと、いろんなことがあるよね」
 サムは普通の学校には行っていない。入院中に知り合った親友のフェリックスとふ
たりきりで、家で「学校」の授業をときどき受けている。ある日、先生から「自分の
ことを書いてみない?」と言われたのがきっかけで、サムは「ぼくについての『ほん
と』」を書きためていく。
 その日記が始まってからおよそ3か月で、サムは最期を迎える。そのあいだにサム
がいかにたくさんのことを調べて書き、いかにたくさんのことに挑戦して、経験して、
また書いたか。細かな手書き文字を1文字1文字大切に読めば、未知の体験である死
(それは誰にとってもそうなのだが)を、サムがどう受け止めていたかがわかる。不
安。恐れ。子どもが病気になって死ぬのはどうしてなのかという、怒りと悲しみのま
じった疑問。大人になったら科学者になりたいサムは、どれからも目をそむけず調査
し、できるかぎり事実(サムの言葉で「ほんと」)を集めていくのだ。脱帽である。
 さて、忘れてはならない、いえ、忘れられないのが親友のフェリックス。自身も不
治の病で死を宣告されているフェリックスは、サムが書いた「ぼくのやりたい8つの
こと」を、からかったり皮肉ったり、彼流の励ましで全部かなえられるように助ける
のだ。笑えて泣けるエピソードが、少年らしいとても生き生きとしたやりとりで進む。
そんなからりと明るいなかでも、ぽろりぽろりと、サムの家族に対する優しい思いが
表れ、胸を打たれる。やはり、わたしはサムにはとてもかなわない、そう思った。

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【作】サリー・ニコルズ(Sally Nicholls):英国ストックトン生まれ。子どものこ
ろから作家になるのが夢だった。バース・スパー大学大学院で児童文学創作を学び、
在学中に執筆した "Ways to Live Forever" が院内の賞を受賞、初めての出版物とな
る。同書はウォーターストーン児童文学賞最優秀賞を受賞。2009年4月、2冊目の著
書 "Season of Secrets" が刊行されたばかり。

【訳】野の水生(のの みお):おもな訳書に『オークとなかまたち』(リチャード
・メイビー文/クレア・ロバーツ絵/講談社)、『その歌声は天にあふれる』(ジャ
ミラ・ガヴィン作/徳間書店)、『セシルの魔法の友だち』(ポール・ギャリコ作/
福音館書店)ほか。幸田敦子名で『穴』(ルイス・サッカー作/講談社)ほか。

【参考】
▼サリー・ニコルズ公式ウェブサイト
http://www.sallynicholls.com/

▼"The Ways to Live Forever" 公式ウェブサイト
http://www.waystoliveforever.co.uk/

▽野の水生訳書リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/akoda.htm

                               (吉井知代子)

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●注目の本(未訳読み物)●ひとつの物語が少女に明かす真実とは――
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『ジェリコ・ロード』(仮題)メリナ・マーチェッタ作
"On the Jellicoe Road" by Melina Marchetta
Penguin Group (Australia), 2006 ISBN 978-0670070299 (AU)
290pp.
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"Jellicoe Road"
HarperTeen, 2008 ISBN 978-0061431838 (US)
432pp.
Amazonで詳細を見る
★2009年マイケル・L・プリンツ賞受賞作品

 ジェリコ・ロード。オーストラリアの田舎にあるこの道で、テイラーは11歳のとき
麻薬中毒の母親に置き去りにされ、近くに住む若い女性、ハンナに助けられた。ハン
ナは行く場所のないテイラーの世話をし、テイラーがジェリコ・スクールに入学して
寮暮らしを始めてからも、この6年間、親代わりとしてずっと成長を見守ってきた。
時折、深い悲しみに沈んだ目でテイラーを見つめながら。
 ジェリコ・スクールにはひとつ変わった伝統がある。毎年9月、軍事訓練のために
都会からやって来るカデットと呼ばれる高校生たちと町の若者とを相手に、激しい縄
張り争いを繰り広げるのだ。寮生活が一番長いテイラーは交渉役に抜擢されるが、カ
デットのリーダーがジョナ・グリッグスだと知って動揺する。ジョナとは4年前、母
親探しのために学校を抜け出したときに出会い、ある苦い経験をしたのだった。そん
なとき、ハンナが前触れもなく姿を消し、テイラーは心のバランスを崩し始める。
 自分について多くを語らないハンナだったが、ジェリコ・ロードで起きた悲惨な事
故で両親を亡くした子どもたちの物語を書き続けていたことを、テイラーは知ってい
た。そしてある日、物語の場面にそっくりの場所をジェリコ・ロードで見かけたこと
をきっかけに、ハンナについての思いがけない真実を知り、衝撃を受ける。
 "Looking for Alibrandi" で鮮やかなデビューを飾った作者マーチェッタ。高校生
の成長をさわやかに描いた前2作とは異なり、3作目の本書ではミステリータッチの
展開でティーンエイジャーの心に深く切り込む。彼女の作品に登場する若者はいつも
非常にリアルだが、今回はそこに緊迫感とヒリヒリするような痛みが伴っている。勝
気で毒舌、人を寄せ付けないよろいをまとった少女の心は、大切な存在を失うことへ
の不安と孤独感、満たされない愛情への渇望で破裂しそうだ。そんな危うさの中で一
歩ずつ真実へ近づいていく姿を、作者は力強く、繊細に描きながら、過去と現在が複
雑に絡み合った糸をていねいに解きほぐしていく。縄張り争いを巡って飛び交う辛ら
つな言葉の裏で育まれていく厚い友情と、傷ついた主人公を支え守ろうとする少年の
想い。ティーンエイジャーの荒削りで飾らないやりとりは、絶妙なテンポで読者の心
をしっかりとつかむ。邦訳はまだないが、今回のプリンツ賞受賞を機に、日本でも作
者に対する注目度が高まることを期待したい。

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【作】Melina Marchetta(メリナ・マーチェッタ):1965年、オーストラリアのシド
ニーに生まれる。高校で英語教師を勤めながら執筆活動を行い、1993年にデビュー作
の "Looking for Albrandi" で、2004年には2作目の "Saving Francesca" で、いず
れもオーストラリア児童図書賞高学年部門を受賞。昨年、4作目 "Finnikin of the 
Rock" が発表された。シドニー在住、現在は執筆に専念している。

▼メリナ・マーチェッタ公式ウェブサイト
http://www.melinamarchetta.com.au/

▼メリナ・マーチェッタのインタビュー(Novel Journey 内)
http://noveljourney.blogspot.com/2008/11/ya-author-interview-melina
-marchetta.html

▽プリンツ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/printz/index.htm

                              (かまだゆうこ)

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●世界の本棚(ドイツ語)●ロマ族フーゴーが語るホロコーストの記憶
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『明日への希望』(仮題) アーニャ・トゥッカーマン作
"》Denk nicht, wir bleiben hier!《:
Die Lebensgeschichte des Sinto Hugo Hollenreiner"
by Anja Tuckermann
Carl Hanser Verlag, 2005 ISBN 978-3446206489(Germany)
304pp.
Amazonで詳細を見る  Amazonで最新版の詳細を見る
★2006年ドイツ児童文学賞ノンフィクション部門受賞作品

 ロマ族(ジプシー)の少年フーゴーが、第2次世界大戦、戦後という過酷な時代を
生き抜き、60歳を過ぎてから、自らの子ども時代の体験を語った半生記。
 1933年、ドイツ。フーゴーは馬を飼いながら運送業を営むロマの家族に生まれた。
当時権力を握ったナチスは、「優生学的」見地からロマを「人種的に劣る」と見なし
た。そしてその人種差別政策により、フーゴーは9歳のとき、家族とともに逮捕され、
強制収容所へと送られてしまう。そこでは、多くの同胞の死、飢え、過酷な強制労働、
メンゲレ医師による人体実験と、絶望的な日々が続く。3年後、フーゴーたちは生き
て終戦を迎え、収容所から解放される。しかし彼らが新たに直面した現実は、人々の
ロマに対する差別や嫌がらせという受難だった――。
 ロマ族はインドの北西部が起源とされ、ヨーロッパを中心に世界各地を転々としな
がら渡り歩く漂泊民族として知られる。著者トゥッカーマンはフーゴーにインタビュ
ーを行い、彼の言葉を忠実に書き記し、そこに時代背景の説明を付け加え、この本を
まとめあげた。
 強制収容所での重労働、劣悪な環境、ガス室送りへの恐怖。フーゴーはぽつりぽつ
りと告白する。生還者は、1日たりとも当時のことを忘れはしない。口にすれば思い
がよみがえり、当時に引き戻されるのだ。今でも、死体の焦げる臭いと親衛隊の点呼
の声を忘れられず、子どもの叫び声や大人の笑い声にびくっとする。フーゴーが感じ
た恐怖、飢え、孤独を想像するとき、私は気が沈み、心は重くなり、なかなか読み進
めることができなかった。しかし、悲惨な日々の中でも、両親は強靭な精神力と冷静
さを失わず、子どもたちを励まし、味方し、内面から支えた。家族の固い結束と温か
い愛情は、恐ろしい記憶を抱えながら戦後を生きのびるためには、彼らにとって不可
欠だったに違いない。
 ロマについては、今でもまだ人々の間に偏見がある、とフーゴーは語る。本書には、
家族の写真や書類などの貴重な記録類が添えられていて、ロマの姿が浮き彫りにされ、
読み応えのある構成となっている。戦中・戦後の時代を見渡すこのドキュメンタリー
は、歴史から学ぶことの大切さを若い人に訴えている。

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【作】Anja Tuckermann(アーニャ・トゥッカーマン):1961年ドイツ生まれ。作家
・ジャーナリスト。子どもの本だけでなく、大人向けの小説や劇の脚本なども手がけ
る。邦訳作品に、『おばあちゃん、ぼしゅう中!』(齋藤尚子訳/徳間書店)がある。
ベルリン在住。

【参考】
▽ドイツ児童文学賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/de/dj/index.htm

                                (大隈容子)

【特殊文字】
 「Hollenreiner」:「o」の上にウムラウト(¨)がつく

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2009年度ドイツ児童文学賞ノミネート作品発表
                   (受賞作品及び特別賞の発表は10月16日)
★2009年度アストリッド・リンドグレーン記念文学賞発表
★2009年オーストラリア児童図書賞候補作品発表(受賞作の発表は8月21日)

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 軽井沢絵本の森美術館「現代ヨーロッパの絵本展」
 銀座教文館「ぞうさんの詩人 まどさん100歳展」 など

★講座・講演会情報
 国立国会図書館国際子ども図書館「ラテンアメリカと子どもの本」
 ビュフェ子ども美術館「いせひでこ絵本原画展・ギャラリートーク」 など

★イベント情報
 出版文化産業振興財団(JPIC)「上野の森親子フェスタ」 など

★コンクール情報
 インターカレッジ札幌 第6回翻訳コンクール など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                           (冬木恵子/笹山裕子)

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●世界のお祭り●第16回 ソンクラーン(タイ) 4月13日〜15日
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 4月になり、新入生や新社会人の初々しい姿を目にするようになりました。日本で
は新年度がスタートするこの時期、南の国タイでは新年のお祭り「ソンクラーン」を
祝います。「ソンクラーン」は、サンスクリット語で「移動」という意味で、太陽が
おひつじ座の黄道帯に入り、タイの暦で新年が始まることをあらわしています。その
ため、以前は年によって「ソンクラーン」の日が変わっていましたが、現在では4月
13日に始まり15日に終わると定められています。
 お祭りの初日、人びとは新しい服を着て、朝早くから寺院に出かけてごちそうを捧
げます。それから仏像に水をかけて清め、お年寄りや目上の人の手に香料の入った水
をかけて敬意をあらわします。郷土芸能の上演やパレード、美男・美女のコンテスト
など、各地でさまざまなイベントも行われます。
 けれども、現在の「ソンクラーン」の一番の特徴といえば、人びとが、見ず知らず
の間柄でも、派手に水をかけあうことでしょう。2月号でご紹介したインドのホーリ
ー祭同様、まさに「無礼講」です。タイでは4月は夏の暑い時期ということもあり、
特に若い人たちは、水鉄砲やバケツで水をかけあったり、時にはトラックにポリタン
クを載せて水をまいたりもするそうです。そのため、「ソンクラーン」は水かけ祭り
とも呼ばれます。水をかけるのは、相手を清めるという意味だけでなく、農作物を育
てるのに十分な雨が降るようにという、祈りの意味もあると言われています。
 また、ソンクラーンの起源に関してはこんな伝説があります。昔、タンマバーン・
クマーンという名のたいへん賢い若者がいました。天上神タオ・カビンプラームはこ
の若者を妬み、難題を与えましたが、タンマバーン・クマーンはそれを解いてしまい
ました。敗れたタオ・カビンプラームはタンマバーン・クマーンに自分の首を捧げま
した。天上神の首は、地上に置かれれば大火災を起こし、海に沈められれば海の水を
干上がらせてしまいます。そこで、シヴァ神のすみかといわれるカイラーサ山に祭ら
れました。年に一度、タオ・カビンプラームの7人の娘たちは、交代で父の頭を捧げ
持って歩き、神々は宴を催すようになりました。それが「ソンクラーン」のはじまり
だということです。
 静かな水辺の村で祖父母と暮らす9歳の少女の物語『タイの少女カティ』(ジェー
ン・ベヤジバ作/大谷真弓訳/講談社)には、12月にせっせと新年のごちそうを作る
おばあちゃんに、おじいちゃんが「ソンクラーン」こそ新年だと言ってたしなめる場
面があります。

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
「これこれ、この地方では、四月のソンクラーン水かけ祭りのときに、新年のささげ
物をするんだぞ。」
 すると、おばあちゃんはいいかえした。
「だからって、いま、ささげ物をしたって悪かないでしょう。ソンクラーンの時期は、
ひょっとしたら、お坊さんたちはよそへ行ってしまうかもしれないわ。それにわたし
は、したいと思ったときにささげ物をさせてもらいます。」
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

 羽目をはずして水をかけあう真夏のお正月。日本の新年や新学期とはかなり趣が違
うようですが、晴れ晴れとした気持ちは同じなのかもしれません。

★参考ウェブサイト
タイ王国大使館
http://www.thaiembassy.jp/culture/songkran/index.html
タイ国政府観光庁
http://www.songkran.net/jp/

                           (笹山裕子/村上利佳)

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●特報●IBBY賞・JBBY賞等伝達授与式
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 2009年3月22日、IBBY賞・JBBY賞等の伝達授与式が都内で行われました。
「伝達授与式」となっているのは、2008年9月デンマーク、コペンハーゲンでの国際
児童図書評議会(IBBY)世界大会授賞式において贈られた賞状を、今回あらため
てIBBYの日本支部である社団法人日本国際児童図書評議会(JBBY)から受賞
者に贈呈する、という形をとっているためです。
 伝達を受けた受賞者は、国際アンデルセン賞に日本から2008年にノミネートされた
谷川俊太郎さん(作家部門)と林明子さん(画家部門)、第1回JBBY賞を受賞し、
IBBYオナーリストに推薦された高楼方子さん(文学作品の部門)、荒井良二さん
(絵本作品の部門)、千葉茂樹さん(翻訳作品の部門)、IBBY障がい児図書資料
センターに日本から推薦されることに決まった「ふきのとう文庫」さんです。このほ
かに、2008年IBBY朝日国際児童図書普及賞を受賞した「ラオスの子ども」さんも
表彰されました。

★JBBY賞について

 これまでJBBYは2年に1度、その2年間に日本で出版された児童書の中から外
国にぜひとも紹介したい優良作品を、児童文学・絵本・翻訳作品(1978年に新設)の
分野から1作品ずつ選び、IBBY本部に推薦してきました。IBBYは世界各国か
ら推薦された作品を「IBBYオナーリスト(優良作品)」としてまとめ、世界に向
けて発信し、子どもの本の持つ意義を広めています。
 この日本の代表として推薦した作品を、日本国内にむけてもっとアピールしていこ
うという目的で2008年に創設されたのが、JBBY賞です。2007年9月の選考委員会
で、IBBYオナーリストの選考基準にのっとって第1回JBBY賞の3作品が選ば
れ、翌2008年にはその3作品がそのままIBBYオナーリストに推薦されました。今
後も同じ方法で、JBBY賞とIBBYオナーリスト作品が選ばれることになります。
また、IBBY障がい児図書資料センターへの推薦作品も、JBBY賞となります。

 この記念すべき第1回JBBY賞翻訳作品、および2008年IBBYオナーリスト翻
訳作品に選ばれたのが、翻訳家、千葉茂樹さんの『おりの中の秘密』(ジーン・ウィ
リス作/あすなろ書房)です。2年間に出版された作品から代表作が1点選ばれるも
のの、翻訳作品部門は他部門と異なり、翻訳家のそれまでの作品全てが選考の対象と
なります。選考委員のひとりであるさくまゆみこさんは、「千葉茂樹さんは、ノンフ
ィクション、フィクション、絵本と、幅広い作品をわかりやすく味のある日本語に翻
訳してきた」と、千葉さんのこれまでの仕事を評価しています。式当日のスピーチで
千葉さんは、「気にいった作品しかやらないわがままな翻訳者だと編集さんには思わ
れているでしょうが、この賞をいただけたということは、そんな姿勢もふくめて認め
てくださったのだと思います」と感想を述べておられました。

 千葉さんは、やまねこ翻訳クラブ創設当初からこれまで、プロの翻訳家の立場から
われわれにさまざまな助言を通して道を示してくださいました。千葉さんの受賞に、
心よりお祝いを申しあげます。

【千葉茂樹(ちば しげき)さん】
 1959年、北海道生まれ。国際基督教大学を卒業、児童書編集者として出版社に勤務
した後、現在は英米作品の翻訳家として活躍している。訳書は『ウエズレーの国』
(ポール・フライシュマン文/ケビン・ホークス絵/あすなろ書房)、『雪の写真家
ベントレー』(J・B・マーティン作/メアリー・アゼアリアン絵/BL出版)、
『スターガール』(ジェリー・スピネッリ作/理論社)、『縞模様のパジャマの少年』
(ジョン・ボイン作/岩波書店)など多数。北海道在住。 

【参考】
▼IBBY公式ウェブサイト
http://www.ibby.org/

▼JBBY公式ウェブサイト
http://www.jbby.org/index.html

▼2008年IBBYオナーリスト
http://www.ibby.org/index.php?id=910

▽JBBY賞およびIBBYオナーリスト受賞作品リスト
                        (やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/jp/jbby/index.htm

▽千葉茂樹さんインタビュー(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/schiba.htm

▽千葉茂樹さん訳書リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/int/ls/schiba.htm

                               (植村わらび)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 5月号では、作家・翻訳家の★もとしたいづみさん★インタビューを掲載する予
 定です。また、2009年カーネギー賞とケイト・グリーナウェイ賞ショートリスト
 作品の概要もご紹介できそうです。
 詳細は毎月10日頃、やまねこ翻訳クラブHPメニューページに掲載します。
          http://www.yamaneko.org/info/index.htm
 どうぞお楽しみに!

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▽▲▽▲▽   海外児童書のシノプシス作成・書評執筆を承ります   ▽▲▽▲▽

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     ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のカジュアルウオッチ ☆☆
「FOSSIL は化石って意味でしょ? レトロ調の時計なの?」 これは創業者の父親が
FOSSIL(石頭、がんこ者)というあだ名だったことから誕生したブランド名。オーソ
ドックスからユニークまで様々なテイストの時計がいずれもお手頃価格で揃います。
2005年より新しいスローガン "What Vintage are you?" を掲げ、更にパワーアップ
した商品ラインナップでキャンペーンを展開。Vintage を表現する重要なツールが
TIN CAN(ブリキの缶)のパッケージです。年間200種類以上の新しいTIN CAN が発表
され、時計のデザイン同様、常に世界中のコレクターから注目を集めています。
http://www.fossil.co.jp/      (株)フォッシルジャパン:TEL 03-5981-5620
                             やまねこ賞協賛会社
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          吉田真澄の児童書紹介メールマガジン
             「子どもの本だより」
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新刊情報・イベント情報などを掲載いたします。詳細はmaple2003@litrans.netまで。

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編集者の方々へのインタビューもあります!    〈フーダニット翻訳倶楽部〉
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●編集後記●IBBY賞・JBBY賞の伝達式には、やまねこ翻訳クラブの会員も多
数かけつけてお祝いをし、嬉しい春の1日となりました。IBBYオナーリストに日
本から推薦された歴代受賞作品のリストを、やまねこ資料室にて新規公開しています。
そうそうたる作品の数々! ぜひご覧ください(う)
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発行人 武富博子(やまねこ翻訳クラブ 会長)
編集人 植村わらび/井原美穂(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 大隈容子 尾被ほっぽ かまだゆうこ 児玉敦子 笹山裕子 冬木恵子
    村上利佳 吉井知代子
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    ながさわくにお
    html版担当 ハイタカ
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