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●速報●2013年 ニューベリー賞/コールデコット賞/プリンツ賞発表!!
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現地時間の1月28日朝8時より、アメリカで最も権威ある児童文学賞、ニューベリ
ー賞/コールデコット賞の発表が行われた。これらの賞は、米国図書館協会(ALA:
American Library Association)が、前年にアメリカで出版された子どもの本の中で、
最も優れた作品に対して贈るものである。
同時に、ヤングアダルト(YA)作品を対象とするマイケル・L・プリンツ賞の発
表も行われた。この賞の主催は米国図書館協会(ALA)のヤングアダルト部門
(YALSA: Young Adult Library Services Association)である。
▼ALA 公式ウェブサイト
http://www.ala.org/home/
▼YALSA 公式ウェブサイト
http://www.ala.org/yalsa/
▼各賞の受賞作品・オナー(次点)一覧ページ(ALA内)
http://www.ala.org/news/pr?id=12298
▼ALA Youth Media Awards ウェブキャスト
(発表の様子がオンタイムで流された。現在も視聴できる)
http://live.webcastinc.com/ala/2013/live/
各賞の受賞作品、およびオナーは以下の通り。
【ニューベリー賞】(作家対象)
★Winner
"The One and Only Ivan" by Katherine Applegate
(HarperCollins Children's Books)
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☆Honor Books(3作)
"Splendors and Glooms" by Laura Amy Schlitz (Candlewick Press)
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"Bomb: The Race to Build - and Steal - the World's Most Dangerous Weapon"
by Steve Sheinkin (Flash Point)
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"Three Times Lucky" by Sheila Turnage (Dial Books for Young Readers)
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2013年ニューベリー賞は、世界的な人気SFシリーズ「アニモーフ」の作者である
Katherine Applegate の "The One and Only Ivan" に贈られた。Ivan とは、実在し
たオスのゴリラの名前である。アフリカで捕獲され、ワシントン州のショッピングモ
ールで長年飼われていた Ivan をモデルに、Applegate が創作した物語が展開してい
く。野生であれば守るべき家族や仲間がいるはずの成熟したオスでありながら、故郷
のジャングルを思い出すこともなく、檻の中での生活を受け入れている Ivan。唯一
情熱を傾けるのは、絵を描くこと。そんな毎日が、新たに連れてこられた赤ちゃんゾ
ウ Ruby との出会いを機に、変わっていく。Ivan の一人称の語りが胸を打つ作品だ。
オナーには3作品が選ばれた。"Splendors and Glooms" は、2008年にニューベリ
ー賞を受賞した Laura Amy Schlitz によるゴシックファンタジー。19世紀のロンド
ンに暮らす裕福な医師の娘 Clara は、街で目にした操り人形のショーに魅了され、
父親に頼み込んで、自分の12歳の誕生日パーティーに一座を呼んでもらう。ところが
その夜、Clara は行方不明になり、疑いをかけられた人形遣いも、その後、姿を消し
てしまう。執筆に6年をついやしたという、Schlitz の自信作。
Steve Sheinkin の "Bomb: The Race to Build - and Steal - the World's Most
Dangerous Weapon" は、2013年ロバート・F・サイバート知識の本賞にも選ばれたノ
ンフィクション読み物だ。第2次世界大戦中に密かに進んでいた各国の核兵器開発競
争の様子が、スピード感ある文体でつづられている。英米から情報や技術を盗もうと
する旧ソ連のスパイの暗躍にも焦点が当てられ、ノンフィクションでありながら、ス
リラー小説のようにぐいぐい読ませる。一方で、恐ろしい悲劇を想像できないまま核
開発を進めていた関係者もいたことを思うと、深く考えさせられる作品だ。
"Three Times Lucky" は、Sheila Turnage が初めて書いた子ども向け読み物。物
語の舞台は架空の町だが、Turnage 自身が暮らすノースカロライナ州にあるという設
定だ。人口150人足らずの小さな町で殺人事件が起き、11歳の少女 Moses とその親友
が、探偵事務所を立ち上げて真相解明に乗り出していく。赤ちゃんの時にハリケーン
でこの町に流れ着いたという Moses の生い立ちもなぞめいており、次々とページを
めくりたくなる。生き生きとした一人称の語りも魅力的だ。
今年選ばれた4作は、ジャンルもさまざまで、それぞれが独特の味わいを強く感じ
させる。邦訳されるかどうかなど、今後の動向に注目していきたい。
《参考》
▼ニューベリー賞公式ウェブサイト
http://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/newberymedal/newberymedal
▼Katherine Applegate 紹介ページ(HarperCollins 内)
http://www.harpercollins.com/authors/10991/Katherine_Applegate/index.aspx
▼"The One and Only Ivan" 作品公式ウェブサイト
http://theoneandonlyivan.com/
▼Laura Amy Schlitz 紹介ページ(Candlewick Press 内)
http://www.candlewick.com/authill.asp?b=Author&m=bio&id=3133
▼Steve Sheinkin 公式ウェブサイト
http://stevesheinkin.com/
▼Sheila Turnage 公式ウェブサイト
http://www.sheilaturnage.com/
▽ニューベリー賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/newbery/index.htm
(大作道子)
【コールデコット賞】(画家対象)
★Winner
"This Is Not My Hat" by Jon Klassen (Candlewick Press)
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☆Honor Books(5作)
"Creepy Carrots!" illustrated by Peter Brown, written by Aaron Reynolds
(Simon & Schuster Books for Young Readers)
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"Extra Yarn" illustrated by Jon Klassen, written by Mac Barnett
(Balzer + Bray)
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"Green" by Laura Vaccaro Seeger (Neal Porter Books)
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"One Cool Friend" illustrated by David Small, written by Toni Buzzeo
(Dial Books for Young Readers)
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"Sleep Like a Tiger"
illustrated by Pamela Zagarenski, written by Mary Logue
(Houghton Mifflin Books for Children)
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2013年コールデコット賞は、"This Is Not My Hat"(『ちがうねん』長谷川義史訳
/クレヨンハウス)を手掛けたカナダ出身の Jon Klassen が受賞した。本作は、大
きな魚の帽子をぬすみ、とんずらしようとしている小さな魚が主人公。前作 "I Want
My Hat Back"(『どこいったん』同上)と同じく、帽子をめぐる独白がおもしろい。
海底の黒をベースとしたシンプルなイラストと、サスペンス感すらただよわせる展開
が、読者をくぎ付けにする。邦訳の関西弁も評判で、子どもから大人まで大人気の作
品だ。
オナーには例年より多い5作品が選ばれた。
Peter Brown の "Creepy Carrots!" は、古典SFドラマや名作ホラー映画へのオ
マージュともいえるコメディ作品だ。ウサギの Jasper Rabbit に迫るニンジンおば
けのねらいはいったい!? 黒とオレンジを基調としたコミック風なイラストが、怖
さとおかしさを盛りあげる。
本年受賞者 Jon Klassen は、"Extra Yarn"(『アナベルとふしぎなけいと』なか
がわちひろ訳/あすなろ書房)でオナーにも選ばれた。Annabelle は、拾った箱に入
っていた毛糸でセーターを編むが、毛糸はなぜかなくならない。モノクロの世界に彩
りを与えていく毛糸の色合いが温かくやさしい。
Laura Vaccaro Seeger は、これまでにも鮮やかな色彩の絵本を数多く手掛けてき
たが、"Green" では、さまざまな緑色の魅力を力強く訴えかけてくる。森の緑、海の
緑、豆、トカゲ――。切り抜きの仕掛けも楽しく、画集としても手元に置きたくなる
1冊だ。Seeger がオナーに選ばれたのは、2008年に続き2度目。
David Small が手掛けた "One Cool Friend" は、ペットをめぐる父と子のユーモ
ラスなお話。ペンギンに心を奪われ、水族館から家に連れて帰った Elliot。でも父
親はなかなか気づかない……。親子のとぼけぶりを楽しく描くイラストは、部分的に
配された淡色がクールな印象。Small は "So You Want to Be President?" で2001年
コールデコット賞を受賞しており、オナー選出は1998年に次いで2度目となる。
Pamela Zagarenski は、"Sleep Like a Tiger" で、2010年に続きオナーに選ばれ
た。寝るのがいやなお姫様と辛抱強い両親とのやりとりがほほえましいストーリー。
おとぎ話にぴったりな Zagarenski のイラストは、物語を繊細できらびやかに彩る。
75年目のコールデコット賞に挙がった作品はいずれも個性豊かで、絵本の幅広い世
界をあらためて教えてくれるものとなった。
《参考》
▼コールデコット賞公式ウェブサイト
http://www.ala.org/alsc/awardsgrants/bookmedia/caldecottmedal/caldecottmedal
▼Jon Klassen 公式ブログ
http://jonklassen.blogspot.com/
▼Peter Brown 公式ウェブサイト
http://www.peterbrownstudio.com/
▼Laura Vaccaro Seeger 公式ウェブサイト
http://www.studiolvs.com/
▼David Small 公式ウェブサイト
http://davidsmallbooks.com/
▼Pamela Zagarenski 公式ウェブサイト
http://www.pzagarenski.com/
▽コールデコット賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/caldecot/index.htm
▽デイビッド・スモール作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/s/dsmall.htm
(小島明子)
【プリンツ賞】(YA作品対象)
★Winner
"In Darkness" by Nick Lake (Bloomsbury Books for Young Readers)
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☆Honor Books(4作)
"Aristotle and Dante Discover the Secrets of the Universe"
by Benjamin Alire Saenz(「Saenz」の「a」の上にアクセント記号(')がつく)
(Simon & Schuster Books for Young Readers)
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"Code Name Verity" by Elizabeth Wein (Hyperion)
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"Dodger" by Terry Pratchett (HarperCollins Children's Books)
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"The White Bicycle" by Beverley Brenna (Red Deer Press)
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前年にアメリカで出版された、優れたYA作品に贈られるプリンツ賞。受賞したの
はイギリスの作家 Nick Lake の "In Darkness" だ。物語の舞台はハイチ。2010年の
巨大地震の後、がれきの下から救出され、病院に収容されたスラム育ちの少年
Shorty が主人公。死の淵をさまよう中、Shorty は脳裏に浮かぶこれまでの過酷な人
生の道のりを語る。やがて彼の夢の中に、ハイチ独立の父、Toussaint l'Ouverture
が現れて……。現代に生きる Shorty の一人称による語りと、18世紀の Toussaint
の三人称による物語が互いに響きあい、現代と過去とをつないでいく。大学時代から
ハイチの文化に深い関心を抱き続けてきた作者による、スケールの大きな作品だ。
本年度のオナーには4作品が選ばれた。"Aristotle and Dante Discover the
Secrets of the Universe" は、ニューメキシコ州出身の作家 Benjamin Alire Saenz
の作品。刑務所に服役中の兄を持つ、怒りっぽくけんかっ早い15歳の Aristotle は、
ある夏の日に、プールで同い年の少年 Dante と出会う。まるで正反対な性格のふた
りが、かけがえのない友情を育んでいく様子が、シンプルで詩的な文章で語られてい
く。なお、Saenz は今年度のプーラ・ベルプレ賞作家部門も受賞している。
Elizabeth Wein の "Code Name Verity" は、第2次世界大戦中の1943年、ナチス
に占領されたパリを舞台に、スパイとして戦った少女たちの友情を描いたものだ。こ
の作品は、今年度のMWA賞YA小説部門候補作品にも選ばれている。
これまでに数多くの邦訳があり、日本でも人気の高い Terry Pratchett は
"Dodger" で、2009年以来の2度目のオナーに選ばれた。ヴィクトリア朝時代のロン
ドンを舞台に、浮浪児 Dodger が活躍するファンタジー作品だ。
最後はカナダの作家 Beverley Brenna の "The White Bicycle"。この作品は、ア
スペルガー症候群の少女 Taylor Jane を主人公にした "The Wild Orchid" シリーズ
の3作目にあたる。
《参考》
▼プリンツ賞公式ウェブサイト
http://www.ala.org/yalsa/printz/
▼Nick Lake 紹介ページ(Simon & Schuster Books 内)
http://authors.simonandschuster.com/Nick-Lake/62647477
▼"In Darkness" 作品公式ウェブサイト
http://www.in-darkness.org/
▼Benjamin Alire Saenz 紹介ページ(Simon & Schuster Books 内)
http://authors.simonandschuster.com/Benjamin-Alire-Saenz/44544494
▼Elizabeth Wein 公式ウェブサイト
http://www.elizabethwein.com/
▼Terry Pratchett 公式ウェブサイト
http://www.terrypratchett.co.uk/
▼Beverley Brenna 公式ウェブサイト
http://www.beverleybrenna.com/
▽マイケル・L・プリンツ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/award/us/printz/
▽テリー・プラチェット作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
http://www.yamaneko.org/bookdb/author/p/tpratc.htm
(山田智子) |