やまねこ翻訳クラブ 資料室
大久保寛さんインタビュー
『月刊児童文学翻訳』2000年4月号より一部転載
大久保寛さんインタビュー
【大久保 寛(おおくぼ ひろし)さん】 1954年、東京生まれ。主な訳書にリチャード・ハーマン・ジュニア『ウォーロード作戦』『米中衝突』(新潮文庫)、ディーン・R・クーンツ『コールド・ファイア』(文春文庫)『ファントム』(ハヤカワ文庫)、ジェイムズ・リー・バーク『天国の囚人』(角川文庫)他多数。埼玉県在住。 |
Q★翻訳のお仕事は、どのような経緯で始められたのでしょうか。 A☆ぼくはもともと英語になんか興味がなくて、翻訳家なんていう職業があることすら知りませんでした。 Q★ハードボイルドやミステリの翻訳でご活躍されていますが、児童書に興味を持たれたきっかけを教えていただけますか。 A☆自分自身が子どものころは、いわゆる児童書はほとんど読みませんでした。まじめに読んだのは、『昆虫図鑑』くらい。それが、娘が生まれてから、ちょっと何か読んでやろうかなと思って、手にとってみたのがきっかけですね。「子どもの本ってこんなにおもしろかったのか!」という驚きがありました。
Q★原書を読まれたときに「翻訳するのはたいへん」という印象を持たれたとのことですが、実際訳されて具体的にどのようなご苦労がありましたか。 A☆まずは、用語のむずかしさですね。かなり大きな辞書にしか載っていないような特別な用法や専門用語が多く、また造語なのか既存の言葉なのかわからないような単語もありましたので、調べものには非常に時間がかかりました。 Q★今月21日、シリーズ2作目の『神秘の短剣』が出版されますが、ずばり、1作目をふまえての読みどころを教えていただけますか。 A☆ストーリーテリングの妙で読ませる本なので、ネタバレなしに話すのはたいへんむずかしいですね。1作目をまだ読んでいない方もいるでしょうし。 Q★完結編であるシリーズ3作目は未発表ですが。 A☆3作目は、The Amber Spyglassというタイトルで、英米で9月に刊行予定らしいです。2作目までで話を広げるだけ広げたわけですが、それをどうやって収束させていくのか、早く読みたくてうずうずしています。きっと、あの魅力的なクマもまた出てくるでしょうしね。ここまで来た以上、絶対に後世に残るような傑作ファンタジーに仕上げてほしいですし、また”打倒ハリー・ポッター”めざしてガンバってもらいたい、と思います。 Q★お好きな児童書を教えていただけますか。 A☆基本的には楽しく読めるものが好きですね。『勇者の剣』(ジェイクス作/西郷容子訳/徳間書店)のREDWALLシリーズは、原書で読んでとても気に入っていました。古い作品では『赤毛のアン』やケストナーの作品などが好きですし、エンデも大好きです。日本の作品なら「ズッコケ三人組」シリーズ、柏葉幸子さんもおもしろいですね。新しいところでは、風野潮さんの『ビート・キッズ』に感動の涙を流しました。 Q★お仕事の息抜きは、どのようになさっていらっしゃるのですか。 A☆ウクレレを弾くこと! 1年ほど前、NHK教育テレビで「高木ブーのいますぐ始めるウクレレ」の第1回放送を見て「これだ!」と思い、次の日曜にはさっそく買いに行きました。思い立ったが吉日、というやつです。 Q★最後に、文芸翻訳家をめざしている読者のみなさんに、ひとことお願いします。 A☆ぼくがそうであったように、まず「自分は必ず翻訳家になれる」と思いこんでしまうことですね。「なれる」と思うからこそ、一生懸命努力することもできるわけで。「どうせだめだ」と思ったら、そこで終わりです。ひたすらプラス思考で行きましょう。英語力は、英検2級程度でいいんですから。 |
インタビュアー : 中村久里子
※本の表紙は、出版社の許可を得て使用しています。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ copyright © 2000, 2002 yamaneko honyaku club |