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洋書でブレイク

ハリー旋風、まもなく上陸

 うおおおおお! 最後のページを読み終えたとき、頭のなかで歓声が響きわたり、感動の波が襲ってきた。わたしはその後しばらく、「すごい本なの!」と、ふれてまわらずにいられなかった。HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONEが、イギリスで出版された直後のことだ。

 とにかく、おもしろかった。最初は、孤児の主人公ハリー・ポターが、周囲からのけ者扱いされているのが不憫で仕方なかった。そして、11歳になったハリーのもとに魔法学校からの入学案内書が届いたときは、胸がわくわくした。ハリーが魔法使いの子どもで、しかも、赤ん坊ながら魔法の世界を悪の手から救った過去が明らかにされ、物語が急展開をはじめると、何もかも忘れて没頭した。

 この作品は、ハリーが、友人や教師との関わりのなかから、多くを学び成長していく物語である。だが、舞台が魔法学校となると、楽しさは格別だ。いたずらも遊びもスケールが大きく、奇想天外な事件が次々と起きる。わたしは思う存分笑ったあと、生まれながらのヒーロー、ハリーが、勇気と思いやりある本物のヒーローに成長するのを見て、目頭を熱くした。そして、ハリーという男の子のことで頭がいぱいになってしまった。

 だが、そんなわたしでも、これほどの騒ぎになるとは思ってもみなかった。本書は、イギリスで大ベストセラーになってからおよそ1年後、98年8月に、HARRY POTTER AND THE SORCEREE'S STONEのタイトルでアメリカで発売され、80万部という売り上げを記録した。現在、シリーズは3作目まで発表され、30か国、合計500万部以上発行されている。英米では、児童書全般――特にハードカバー――の売り上げが急伸し、図書館を訪れる子どもの数が激増しているらしい。『ハリー・ポター』を読んで本を読む楽しさを知った子どもたちが、次の物語を探し求めているということだ。まさしく、世界中がハリーに夢中。ああ、ハリー、きみは本当に素晴らしい!

 シリーズは7作で完結の予定という。日本では、1作目の翻訳が年内に出版されると聞いた。待ち遠しいなあ。

(柳田利枝)

HARRY POTTER AND THE PHILOSOPHER'S STONE
by J. K. Rowling, 1997
(Bloomsbury £4.99 223pages)
邦訳は『ハリー・ポッター「魔法の石」』(仮題)
  として、静山社から12月上旬に刊行予定

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追加情報:記事の中で刊行予定としていた本は、1999年12月1日に出版されました。

『ハリー・ポッターと賢者の石』
J・K・ローリング作
松岡佑子訳(静山社 本体1900円)

(1999.12.10)

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「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』1999年11月号掲載)のホームページ版です。

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