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ラスカルという作家は、不思議な才能を持った人物だ。日本ではまだ、文章のみを担当した絵本しか紹介されていない。しかし、『オレゴンの旅』(ルイ・ジョス絵/山田兼士訳/セーラー出版)といい、『はじめてのたまご売り』(イザベル・シャトゥラール絵/中井珠子訳/BL出版)といい、その作品は、深みのある、熟成した味わいとでもいうべき魅力に満ち満ちしている。 新作『くまのオルソン』にしてもそうだ。ひとりぼっちのくまオルソンが、ある日小さなぬいぐるみのくまを見つけ、かわいがるようになる。ここには、人形やぬいぐるみがしゃべりだしたりすることをなんの疑問もなく受け入れる幼児の視点はない。大人であるオルソンは、あくまでぬいぐるみであるちびすけとともに暮らしながら、「口をきいてくれたらなあ」とひそかに願う。この絵本は、大人のための大いなるフィクションなのかもしれない。 新作『くまのオルソン』にしてもそうだ。ひとりぼっちのくまオルソンが、ある日小さなぬいぐるみのくまを見つけ、かわいがるようになる。ここには、人形やぬいぐるみがしゃべりだしたりすることをなんの疑問もなく受け入れる幼児の視点はない。大人であるオルソンは、あくまでぬいぐるみであるちびすけとともに暮らしながら、「口をきいてくれたらなあ」とひそかに願う。この絵本は、大人のための大いなるフィクションなのかもしれない。 再刊ながら、文庫化の機会に読んでおきたいのが、『絵本をよんでみる』。「翻訳の世界」10月号に五味太郎のインタビューが載ったから勧めるわけではないが、彼の絵本に対する取り組みには、ある種の潔さがある。そして新たな切り口を提示してくれる。たとえば、ディック・ブルーナの『うさこちゃんとうみ』(石井桃子訳/福音館書店)という単純きわまりない絵本を、深く深く読み込んでいく。13冊の絵本が、五味流に料理されていく。 だからといって、この本を絵本の解説書であると勘ちがいしてはいけない。あくまでひとつの「よみかた」。だから本書は「絵本をよむ」ではなくて「絵本をよんでみる」というタイトルなのだ。 飼い主のいない間、ねこは何をしているのだろうか。『マーサのいぬまに』は、その謎を解き明かしてしまった。ねこを飼っている人は、知らなければよかったと後悔してしまうかも、ね。 (ながさわくにお) |
「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』1999年11月号掲載)のホームページ版です。
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