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洋書でブレイク

原書でこそ楽しめる
絵と物語のコラボレーション

  絵本とは、言うまでもなく「絵の本」。ことばと絵が一体となって初めて、完成された作品ができあがる。今回ご紹介する FOX は、物語と絵がひとつの圧倒的な世界を作り出している、まさに絵本の中の絵本ともいえる傑作である。

 野火でけがをしたカササギ。飛ぶことができなくなり、悲観しきっていたが、助けてくれた犬との友情によって、再び生きる希望を持つことができた。そこへ、ふたりの友情をねたむ孤独なキツネがあらわれて、カササギの心に変化が起こる……。

 物語を語るのは、画家ロン・ブルックスによる手書きの文字。ページせましと、縦に横に配され、大きさもさまざま。多少の読みづらさも味になるほどの迫力だ。絵の一部となったそれらのことばが、カササギの絶望と希望、葛藤と決意を切実に伝える。絵のほうも、赤や茶を基調とした濃厚な色遣いと、やや粗めのタッチが印象的。舞台であるオーストラリアの砂漠の暑さが感じられる。また、カササギと犬の友情物語に「キツネ(FOX)」というタイトルがついているのも、絵を見ると納得できる。キツネの目には、誰の心にもある弱さや迷いを見透かすような、不思議な力がある。見る者の気持ちを揺さぶるが、決して単純な悪とはいえない深み。作者があえてことばにしなかったテーマが、ここに象徴的に描かれている。もちろん、ストーリー自体に芯があるからこそ、「描かれた」テーマも立ち上がってくる。
 この絵本のように、ことば、絵、文字が一体となって完成された作品の「翻訳」は難しい。悔しいけれど、この手の作品にかぎっては、やはり原書で読むのが一番かもしれない。
 作者のワイルド、画家のブルックスは、ともにオーストラリアを代表する子どもの本の作り手として、内外に評価が高い。同じコンビによる『ぶたばあちゃん』(今村葦子訳/あすなろ書房)は、淡い色彩の絵としんみりするストーリーで、本作とはまったく印象が異なるが、こちらも強く心に残る秀作だ。
                                                           

 (森久里子)
FOX
Margaret Wild and Ron Brooks, 2000
(Allen & Unwin A$24.95 30pages)

「キッズBOOKカフェ」(月刊『eとらんす』2000年10月号掲載)のホームページ版です。

10月号「やまねこ調査隊」

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