はじめて見たときから気になるキャラクターだった。脇役だが、個性が光っていた――。ペトラ・マザーズの絵本に登場するアヒル、ハービーのことだ。シリーズ1作目
Lottie's New Beach Towel(『なにもかもタオルのおかげ』今江祥智・遠藤育枝訳/BL出版)で主人公ロッティーのボーイフレンドとしてデビューし、次作
Lottie's New Friend(『あたらしいともだち』)では実質的な主役を務めている。今回紹介する3作目
A Cake for Herbie も、タイトルからおわかりのように、ハービーが堂々と主役を張っている作品だ。
木の葉の色づきぐあいから見て、季節は秋だろう。ロッティーと一緒に買い物に来たハービーは、スーパーの店先に貼ってあるポスターに目をとめた。ポスターには、今度の金曜日に町のホールで「詩の創作コンテスト」が行われると書かれている。賞品は3段重ねの大きなケーキ! 食いしんぼうのハービーは家に帰ってさっそく詩を書きはじめ、苦心の末、"From
Herbie's Kitchen A to Z" というタイトルの詩を完成させた。コンテスト当日、ロッティーが体調をくずしてしまったので、ハービーはひとりで会場に向かう。舞台に上がり、緊張に震えながら自作の詩を朗読しはじめるが……。
大人っぽく落ち着いているロッティーに比べ、どこか子どもっぽいハービー。とぼけた言動で笑わせてくれるが、傷つきやすくデリケートな一面も持っている。作者のマザーズは、そんなハービーの心情をさらりとユーモラスに描き出す。ほどよく距離をおきながら、彼を暖かく見守っているかのように。
絵はベタに塗り込んであるが重苦しさを感じさせない。色づかいもおしゃれだ。ほのぼのとした可愛らしさの中に、マザーズのほかの作品『ヴィクターとクリスタベル』(童話館出版)や『ぼくのお気にいり』(BL出版)にも通じる、都会的でクールな雰囲気も漂わせている。
秋の夜長、ページをめくりながらハービーの詩を口ずさんでみようか。おいしいケーキを食べながら……いや、太るからそれはやめておこう。
(生方頼子)
A Cake for Herbie
by Petra Mathers, 2000
(Atheneum $15.00 32pages)
未訳
|
|