スゴイ絵本作家があらわれた。その名は、ローレン・チャイルド。強烈なインパクトを持つチャイルドの作品は、万人受けこそしないものの、一度読んだらやめられない不思議な魔法がかかっているようだ。チャイルドのスゴサは、2000年にClarice Bean, That's Me で、英国のスマーティーズ賞銅賞、ケイト・グリーナウェイ賞次席、I Will Not Ever Never Eata Tomato で、2001年のケイト・グリーナウェイ賞を受賞したことでも裏付けられる。
チャイルドの作品の一番の特徴は、絵と文字のデザインが一体になっているところ。登場人物ごとに書体が変わったり、気持ちと連動して、うねうね、くるくると動き回ったりする文字のデザインは、それ自体が絵の一部として完成されている。また、明るくはっきりとした色彩、自由奔放なコラージュは、パワーあふれる子どもたちを象徴しているようだ。 絵自体は、かわいらしいというよりは、ちょっとラフでヘタウマな感じ。眉毛はなし、細めのつり目、鼻の下の長い子どもたちの顔は、ちょっと小生意気そう。どんな時にもしれっとした表情をしている子どもたちは、シニカルでイマドキを感じる。一見するとラフに書いているような絵だが、パソコンを駆使し、登場人物の大きさやレイアウトを自由自在に変えているらしい。凝りに凝った子どものおもちゃ箱のような絵からは、チャイルド自身が、楽しんで創作している雰囲気が伝わってくる。
どの作品も、子どもの日常生活に密着しており、現実と想像の世界をたやすく行き来できる子どもたちを、自然かつリアルに描き出している。いつもにぎやかな大家族を持つ少女が、自分の身近に巻き起こる騒動をシニカルに語っていたり、わがままな妹を持つ兄がイマジネーションを利用してなんとか好き嫌いを克服させようとしたり、はたまた、お話好きの少年が、絵本から飛び出してきたオオカミに食べられそうになり、絵本を使ってやっつけようとしたり……。
こんなにおもしろい絵本たちが、日本語で読めないのはもったいない! 出版社さん、どうか訳書をバンバン出してください〜。
(横山和江)
ローレン・チャイルド作品リスト
I Want a Pet(1999.2.)
(邦訳『わたしペットをかいたいの』2001.8.PHP研究所)
Clarice Bean, That's Me (1999.7.)
My Uncle Is a Hunkle Says Clarice
Bean(2000.9.)
I Will Not Ever Never Eat a Tomato(2000.5)
(邦訳『ぜったいたべないからね』2002.1.フレーベル館)
Beware of the Storybook Wolves(2000.10)
I Am Not Sleepy and I Will Not
go to Bed(2001.5.)
(邦訳『ぜったいねないからね』2002.1.フレーベル館)
What Planet Are You From, Clarice
Bean(2001.9.)
My Dream Bed(2001.9.)
(邦訳『ベッドがいっぱい』2001.12.小学館)
出版予定
That Pesky Rat
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