「ハリー・ポッター」シリーズで、いつもハリーたちの冒険の舞台となるホグワーツ魔法魔術学校。そこで使われている教科書と図書館の蔵書を、わたしたちマグル(魔法使いではない、いわゆる普通の人間)も手にすることができるのをご存じだろうか。ハリーの世界を疑似体験できるその本のタイトルは、Fantastic Beasts & Where to Find Them と Quidditch Through the Ages。どちらも「ハリー・ポッター」の作者J・K・ローリングがイギリスの慈善団体“コミック・リリーフ”のために書きおろしたもので、その売上は恵まれない地域の人々を援助する資金として使われることになっている。
Fantastic Beasts & Where to Find Them(『幻の動物とその生息地』)は、ホグワーツの1年生が使用する教科書だ。ドラゴンやユニコーンなど、さまざまな「幻の動物」がアルファベット順に紹介されており、それぞれの危険度も、まったく問題のない「X」から最も危険な「XXXXX」までの5段階で示されている。中身はただの退屈な教科書にすぎないのだが(失礼!)、あちこちにハリーの書き込みがあるのがおもしろい。たとえば、ドラゴンの種類名である
Norwegian Ridgeback をバツ印で消して Baby
Norbert にしてあったり(そう、ハグリッドが卵からかえした、あのノーバートだ)、Pixie
の「危険度XXX」の横に「ロックハートにはXXXXXXX」とXを7つも書いてあったり(『ハリー・ポッターと秘密の部屋』参照)。シリーズのファンなら、各場面を思い出してフフッと笑ってしまうに違いない。
Quidditch Through the Ages(『クィディッチ今昔』)は、魔法界独自のスポーツ“クィディッチ”について書かれた、ハリーのお気に入りの本だ。こちらは図書館の本という設定なのでさすがに書き込みはないが、最初のページが貸出しカードのような様式になっており、もちろんハリーの名前も載っている。クィディッチの歴史や、イギリスの各チームの紹介などが書かれたこの本を読めば、あなたもクィディッチ通になれる……かもしれない。
2冊とも“持っていること”に価値がある本だと言える。本とのこんな関わり方も、たまにはアリなんじゃないだろうか。
(生方頼子)
Fantastic Beasts & Where to Find Them
by Newt Scamander
(Bloomsbury £2.50 42pages)
Quidditch Through the Ages
by Kennilworthy Whisp
(Bloomsbury £2.50 56pages)
ともに未訳 |
※それぞれの日本語タイトルは、シリーズ第1作の邦訳
『ハリー・ポッターと賢者の石』(松岡佑子訳/静山社)より。
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