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日本ではあまり知られていないが、『エロイーズ』というロングセラーの絵本がある。ニューヨークの超一流ホテル、ホテル・プラザの最上階に、ばあやと犬とかめと一緒に暮らす6歳の女の子、エロイーズを主人公とするお話だ。エロイーズはやりたいことをなんでもやる。館内電話をかけまくり、廊下の壁をがんがん蹴って歩き、ホテルで行われるパーティに招かれもしないのに出席し、食事はルームサービスをツケで注文する。この何者をも怖れない究極のいたずらっ子は、1955年の登場以来、ずっと米国の読者の心に住みついてきた。 そのエロイーズが、今、あらたな注目を集めているらしい。オンライン書店が電子メールで復刊を宣伝し、Publishers Weekly誌がエロイーズのイラストで表紙を飾った。一体、何が起きているのだろう? やまねこ調査隊は、早速、調査を開始した。 出版当時たちまちベストセラーとなった『エロイーズ』は、1963年までに、続編をあわせて100万部以上を売り上げた。だが、その後、作者のケイ・トンプソンが、第1作以外の再版を拒絶するようになり、続編3巻は一部の愛好家が所有するのみとなっていた。今回の人気再燃は、1998年に亡くなったトンプソンから著作権を譲り受けた遺族が出版社と合意し、復刊を取り決めたことによるものらしい。売上げは好調で、続編のタイトルが Publishers Weekly誌のベストセラー・リスト(児童書部門)に次々と登場している。 40年ぶりの復刊に沸き返るのは、出版社だけにとどまらない。おもちゃのチェーン店 FAO Schwarz は、店のディスプレイにエロイーズを起用する一方で、オリジナルのエロイーズ人形、家具等の販売をはじめた。化粧品のロラックは“エロイーズ”という名のピンクの口紅を発売。また、人気番組『テレタビーズ』のキャラクター版権を持つ The itsy bitsy Entertainment Company が、映画化権を獲得している。 はたして、このエロイーズ人気は日本をも巻き込んでいくのだろうか? 実は、調査隊員も10年来のエロイーズ・ファン。続編が日本に紹介されるのを強く望むとともに、入手不可能になってしまった邦訳の復刊を期待している。 (柳田利枝) |
「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』2000年7月号掲載)のホームページ版です。
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