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今年のボローニャ・ブックフェアでの紙芝居実演。野坂さんは英語への通訳を担当。 ボローニャで再会したリンデルト・クロムハウトさんも英語で実演した。 |
「紙芝居」とは、日本発祥の文化だということをご存じだろうか。その紙芝居を世界に広めていこうという活動が、いま、盛り上がりを見せている。オランダ語の翻訳家として知られる野坂悦子さんは、現在、「紙芝居文化を日本と世界に広める会」の創立に協力している最中だという。 「紙芝居って、一般にはこれまで懐かしさという部分でしか語られてこなかったのですが、これからもっと広まっていくべき可能性を持った文化だと思っています」と野坂さん。 野坂さんが紙芝居に興味を持ったのは、数年前の東京国際ブックフェア。児童書出版社の共同ブースで紙芝居実演の通訳を手伝ったとき、その魅力に目覚めたのだそうだ。『おおきくおおきくおおきくなあれ』(まついのりこ作/童心社)や『かさじぞう』(松谷みよ子脚本/童心社)などの紙芝居作品に触れ、「絵本と似ているようでいて、表現が全然違うのに驚きました」。 紙芝居作品の出版に力を注ぐ童心社では、10年ほど前から、ベトナムをはじめとするアジアの国々で紙芝居を普及させる活動を地道に行っており、現地で紙芝居作家が育つところまで成果を上げている。 その童心社の協力と、オランダ人作家リンデルト・クロムハウトさんの奔走のおかげで、2000年秋には、8名の有志による「オランダかみしばいの旅」を実現。今年4月にイタリアで開催されたボローニャ・ブックフェアでも、世界の児童書関係者を前に紙芝居の実演を行った。ボローニャでは、各国の出版人や作家たちから大いに注目を集めたという。そのひとり、イタリアのイラストレーターであるペッポ・ビアンケッシさんは、童心社から紙芝居作品を出版することに決定。翻訳は、野坂さんが担当する。 紙芝居という文化に魅せられ、集まる人たちがいる。現在、国内でもさまざまな紙芝居グループが活動しているが、「広める会」で作るネットワークを、ペッポさんのような新しい才能に出会うチャンスにつなげたいと野坂さんは考えている。「訳者は役者でもあるといいますが、紙芝居の演者には、また違った楽しみがあります。このおもしろさを、多くの人たちに伝えていきたいですね」と、野坂さんはやる気満々の様子で微笑んだ。 (ながさわくにお) |
「キッズBOOKカフェ」(月刊『eとらんす』2001年11月号掲載)のホームページ版です。
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