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なんでもかんでもカワイイと形容してしまう最近の風潮はどうにかならないものだろうか、とつぶやきつつ、『あと10ぷんでねるじかん』を開けば、うーん、カワイイ……と笑みがこぼれる。 ペギー・ラスマンお待ちかねの新作。あと10分で寝なければいけない男の子の部屋に、やってくるハムスターの団体さん(観光客?)たち。これをカワイイと言わずして、なんと言おう。もちろん人によって、「10番のゼッケンをつけたちびハムがいい!」とか、「なんといっても、あと6ぷんのページの6番の子がたまらん!」とか、カワイイどころも違うだろう。私のツボは、拡声器で「9ふんでーす」と告げる運転手ハムスターの口の形。 カワイイ路線では、『もしもこぶたにホットケーキをあげると』もなかなかのモノ。「もしもこぶたにホットケーキをあげると、シロップもほしい、ときっという」勘のいい人には、もう展開が読めるはず。どんな無茶な要求を言い出すのかがお楽しみ。その要求を淡々とかなえていく女の子の点々目もまたカワイイ。教訓や深遠なテーマ性などとは無縁の、ただただ楽しいだけの絵本は、ときどき無性に読みたくなることがある。 ペトラ・マザーズは、最新刊『なにもかもタオルのおかげ』(BL出版)もカワイイけれど、今回は理屈を越えた奇妙な世界を味わわせてくれる『ぼくのお気にいり〜バルビーニさんちのセオドアくんの話〜』を紹介しておきたい。 ひとりぐらしのバルビーニさんちの犬セオドアが、ある日突然しゃべりだした。それがなんとも愛想のない口調。とりたてて奇抜なストーリーではないが、日常との微妙なズレをユーモラスにまとめた独特の風合い。カワイイとはほど遠い、セオドアくんの目つきの悪さが絶品だ。でも、これをカワイイという人もいるんだろうなあ。 (ながさわくにお) |
「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』1999年12月号掲載)のホームページ版です。
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