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モノをつくるというのは、どうしようもなくわくわくすることだ。そこには、創造力と想像力と向上心と好奇心が満ちあふれている。ときどきは冒険心ってやつも。 バイロン・バートンの絵本は、どうしてこんなに楽しいのだろう。『はたらくくるま』は、作業員たちがブルドーザーやクレーン車やショベルカーを使ってビルを建てていく過程を、ごくごく単純に描いた絵本。太い輪郭線と平面的な絵で構成された『はたらくくるま』たちの、なんとたのもしく、いさましく、かっこいいことか。バートンの絵本は、単純ながら、いや単純だからこそ、モノをつくることの本質を描いているのだ。無駄のないその描写は、ある意味とても機能的だ。 「イグルー」とは、イヌイットが北極圏につくる、雪と氷の家。そのイグルーができるまでを写真絵本にしたのが『「イグルー」をつくる』だ。モノクロの写真で綴られる、黙々とした作業からは、モノをつくる楽しさと喜び、そして誇りが感じられる。大昔から伝えられてきた生きるための知恵は、無駄なく、機能的で、美しい。つくりあげられたモノが美しいのはもちろんだが、モノをつくるという行為自体が美しいのだ。そこには何の欲も、魂胆も、しがらみもない。だから『はたらくくるま』たちは、はたらいていないときでも美しい。 自分もつくりたい、と思わせるのが『にたものランド』。こちらも写真絵本だが、町並みや家の中、公園までもが、さまざまな日用雑貨でつくられている。タンバリン、はさみ、クッキーやカーディガンなどが、巧みに配置され、読者の目をあざむく。手榴弾がストーブになってしまうなど、本来の意味を解体されたモノたちは、照れくさそうに発見されるのを待っている。こちらは、無駄であるがゆえの楽しさなのだろう。つくるのも楽しいけれど、さがすのもまた楽しい。 (ながさわくにお) |
「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』2000年5月号掲載)のホームページ版です。
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