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※こちらは「情報編」です。「書評編」もお見逃しなく!!
児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、
M E N U
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プロに訊く 第19回 |
―― 酒寄進一さん(翻訳家) ――
今月は、ドイツ語の児童書を数多く翻訳なさっている酒寄進一さんに、注目のファンタジー3部作「ネシャン・サーガ」の話題を中心にお話をうかがいました。お忙しい中、快く取材に応じてくださった酒寄さんに心より感謝いたします。
【酒寄進一(さかより しんいち)さん】 1958年生まれ。上智大学、ケルン大学、ミュンスター大学に学び、新潟大学講師を経て、現在、和光大学表現文化学科教授。児童書を中心に、現代ドイツ文学の研究、紹介を行っている。主な訳書に、『砂漠の宝』(ジクリト・ホイク作/福武書店)、『小さなペルツ』(イリーナ・コルシュノフ作/ラインハルト・ミヒル絵/講談社)、『蠅の乳しぼり』(ラフィク・シャミ作/西村書店)、『ベルリン1933』(クラウス・コルドン作/理論社)※などがある。 |
★どういうきっかけで、ドイツ語を学ばれたのですか?
僕は基本的にあまのじゃくなところがあって、みんながやっていることって、あまり好きじゃない(笑)。だから、外国語も英語「以外」のものを勉強したくて、フランス帰りの高校の校長に「フランス語を教えてください」って頼みにいったんです。だけど、断られてしまいました。英語の先生にそのことで不満をいったら、その先生が実は英語よりドイツ語が得意で、そんなに勉強したいならドイツ語を教えてやるというんです。それで引っ込みがつかなくて、ドイツ語を習うことになりました。
★翻訳をされるようになったきっかけは、何だったのですか?
大学院にいたときから、ドイツ語の通訳をやっていたんです。その通訳仲間のひとりが翻訳事務所を持っていて、仕事を手伝いだしたのがきっかけです。だから、僕は最初、実務翻訳をやっていました。
★児童書の翻訳には、どのようにして関わるようになったのでしょう?
実務翻訳の仕事をするうちに、福武書店で絵本のドイツ語の契約書を訳すことになりました。そのときの担当が松居友さん。グリムの話で盛り上がるうちに、「これ知ってる?」といって松居さんが出してきたのが、グリム童話の『くまおとこ』の原作でした。「ああ、それなら卒論で丸々1章書いた話です」といったら、「じゃあ、訳さない?」という話になったんです。それから、福武書店でグリム童話を何冊か訳しました。当時は、まさか自分が児童書にずっと関わることになるとは思っていませんでした。
★ファンタジー3部作「ネシャン・サーガ」が大好評ですね。訳者からみたこの作品の魅力を教えてください。
「ネシャン・サーガ」シリーズは(※本誌2001年11月号情報編参照)、もともと作者のラルフ・イーザウさんがお嬢さんのために書いたプライベートな作品です。それ以降の作品は、プロであることをかなり意識して書いていて、芸が細かく、僕からみると、「大化け」しています。そういう作品ももちろん魅力的ですが、「ネシャン」は他人に読まれるという意識があまりなく自分の思いのたけを綴ったという点で、彼のものすごくコアな部分が出ているんです。たぶん、これから出てくる作品のいろんなところで見えてくる核になるようなものが、この作品には全部入っていると思います。イーザウさんの作品の出発点といえそうです。ですから、彼を追いかけるなら、「ネシャン」は外せませんね。
★「ネシャン」を訳すことになった経緯や、苦労した点などをお聞かせください。
僕が「ネシャン」の第1部を手にしたのは、出たばかりの1995年でした。話は面白かったのですが、どこかの出版社に「出しましょう」といって持ち込むかどうかは、第3部まで出てから、と思っていました。そうしたら、翌年1月にあすなろ書房から読んで評価してほしいという本がきたんです。それが、「ネシャン」の第1部。その本なら読みました、ということになって、そのまま翻訳を引き受けました。
第1部の翻訳を始めた頃、つづきはまだ出ていませんでした。ですので、どこに伏線がはってあるのかわからなくて、怖かったです。先がわからないために、登場人物の性格付けにも苦労しました。作者の空想の世界の細かい描写は、やはり訳すのが大変でした。作者に直接確認した点もあります。また、この作品は娘さんに語ろうという意識が強いので、書き込みすぎの部分があるんです。いくつかはイーザウさんと相談して圧縮しました。それから、「ネシャン」の世界観を理解するのは、難しかったです。第1部を読んだだけでは、なかなかとらえきれません。第2部、第3部を読んで初めてわかる部分もあって……。実は「ネシャン」には、聖書の思想だけでなく、東洋やほかのいろんな思想も組み込まれていて、それを読みながらときほぐしていくという作業もありました。そのあと最初にもどって、第1部を調整したので、翻訳には時間がかかりました。
★翻訳をするとき、どんな点に気をつけていらっしゃいますか。
まず、誤訳をしないこと。いや、僕にもありますよ、誤訳(笑)。でも気をつけるようにしています。あとは、日本語にする上でリズムを大切にしています。リズムといえば、僕は作品によってテーマ曲というのを決めているんです。「ネシャン」のときにもありました。ゼトアの曲とか、ヨナタンの曲とか(笑)。長い作品を訳していく中で、音楽があると、多少間があいても、その世界にすっと戻れるんですよね。リズムがすぐに戻ってくるんです。
★今後のご予定をお聞かせください。
具体的に決まっているのは、『盗まれた記憶の博物館(仮題)』(ラルフ・イーザウ/あすなろ書房)で、今年中に出ます。これは現代のベルリンと古代のバビロニアがつながっているという設定なんです。実在する博物館を舞台に、ベルリンっ子の姉弟が悪神と対決します。「記憶」を巡る壮大なファンタジーです。
つづいてイーザウさんの超大作『暁の円卓』(全4巻)にとりかかります。1冊700ページを越えますので、3年がかりくらいになりそうですが。それからアニメ「ロミオの青い空」の原作になったリザ・テツナーの『黒い兄弟』があすなろ書房から復刊されます。
★最後に、翻訳を学習している読者にメッセージをお願いします。
月並みですが、やはり日本語が大事だと思います。原作をしっかり読み取れることは、もちろん必要ですが、最終的に形になったものを届ける相手は、日本の読者ですよね。その人たちをどれだけ夢中にさせられるかが、腕の見せ所だと思います。
また、自分の世界観を持つことも大切だと思います。たとえば、自分はこういう世界を紹介したい、とかいうことです。そのためには、現地にどういう作品があるのか、当然勉強しないといけないでしょう。自分の世界観を持っていれば、出版社にアプローチしたとき、言葉に重みも出て、説得力もついてきます。そうなれば、出版につながる可能性も高くなります。がんばってください。
(取材・文 田中亜希子)
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展示会/セミナー・講演会情報 |
―― 展示会情報 ――
◎内之浦町開発センター「中釜浩一郎氏 絵画展『夏の扉』子どもの夢III」 | |
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所在地: | 鹿児島県肝属郡内之浦町南方 |
電 話: | 0994-67-2686 |
会 期: | 平成14年3月24日から31日まで |
休館日: | 会期中は無休 |
入場料: | 無料 |
内 容: | 『見習い物語』『汽車にのって』『天使の足あと』『タイムマシン』ほか多くの児童書の挿し絵を手がける中釜氏の絵画展。今回は出身地での開催である。 |
◎スカンジナビア ブックギャラリー「『長くつ下のピッピ』をイメージした絵画展」 | |
所在地: | 京都府宇治市槙島町落合142-1 KYOTOCOOPメイティ1F |
電 話: | 0774-28-1128 |
会 期: | 平成14年5月5日まで |
休館日: | 月曜日 |
入場料: | お茶と北欧のお菓子つきで600円 |
内 容: | 『長くつ下のピッピ』をテーマにした作家・イラストレーター競作の展示会。 |
参 考: | http://www.hokuou-hongarou.net |
(瀬尾友子)
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―― セミナー・講演会情報 ――
◎日本イギリス児童文学会(中部支部・東日本支部)特別講演会 「現代の子どものための〈赤ずきんちゃん〉リサイクル--Recycling Red Riding Hood for Contemporary Children--」 |
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講 師: |
サンドラ・ベケット(通訳つき) カナダ、ブロック大学フランス文学教授、IRSCL会長 |
内 容: | 平成14年3月より大阪国際児童文学館客員研究員として来日するベケット氏の講演。専門は児童文学(フェアリーテールと絵本)と20世紀仏文学。 |
(1) | |
場 所: |
愛知産業大学名古屋サテライト(名古屋法経情報専門学校金山校本館) (名古屋市熱田区金山町1-6-9 金山駅南口徒歩2分) |
日 時: | 平成14年3月29日(金)17:00〜20:00 |
参加費: | 500円(事前の予約は不要) |
問合せ: | 川端有子(TEL/FAX 052-833-8919、Email arikoka@attglobal.net) |
(2) | |
場 所: |
相模女子大学7号館721教室 (神奈川県相模原市文京2-1-1 小田急線相模大野駅北口徒歩約15分) |
日 時: | 平成14年3月30日(土)14:00〜16:30 |
参加費: | 500円(事前の予約は不要) |
問合せ: | 西村醇子(TEL/FAX 042-712-2647、Email nijun@jcom.home.ne.jp) |
詳 細: | http://wwwsoc.nii.ac.jp/jscle/ |
◎梅花女子大学 公開講座「絵本の魅力」 | |
講 師: |
教授 谷 悦子 3月25日(月)絵本を見る眼 助教授 加藤康子 3月26日(火)江戸・明治期の絵本 教授 石澤小枝子 3月27日(水)現代日本の絵本〜自己表現として〜 非常勤講師 正置友子3月28日(木)ヴィクトリア時代の絵本 教授 三宅興子 3月29日(金)現代イギリスの絵本 |
内 容: | あふれる絵本をどのように選ぶか、また日本とイギリスの絵本がどのように芸術性・多様性を実現してきたかなどを、実際に絵本を見て探る。 |
場 所: |
梅花女子大学茨木学舎F棟702教室 (大阪府茨木市宿久庄2-19-5 最寄駅よりスクールバスあり) |
日 時: | 3月25日〜3月29日 13:00〜14:30 |
参加費: | 1回1,000円(一括5回分4,500円) |
申 込: | 往復はがきで申し込む(返信が受講証) |
問合せ: | 梅花学園生涯学習センター(TEL 0726-43-6297) |
◎日本国際児童図書評議会(JBBY)イベント 2002年「子どもの本の日」記念事業〜本をひらけばたのしい世界〜 | |
内 容: | おはなし会、昔話やワークショップ、児童図書市、展示など。 |
場 所: | ゲートシティ大崎(東京都品川区大崎1-11-1) |
日 時: | 平成14年3月31日(日)10:00〜17:30 |
参加費: | 無料 |
問合せ: | JBBY事務局(TEL 03-5228-0051) |
◎クレヨンハウス 子どもの本の学校「だから、書かずにはいられない」 | |
講 師: | 富安陽子(児童文学作家) |
内 容: | 何をおいても原稿を書く。書くことの魅力を語る。 |
場 所: |
クレヨンハウス東京店(東京都港区北青山3-8-15) 劇団ひまわり(大阪府吹田市江坂町1-18-2) |
日 時: |
東京店 平成14年4月13日(土)16:00〜17:30 大阪会場 平成14年4月20日(土)16:00〜17:30 |
参加費: | 非会員 2,500円 会員は無料(年会費に含まれる) |
定 員: | 150名 |
問合せ: |
東京店(TEL 03-3406-6492) 大阪店(TEL 06-6330-8071) |
その他: | 非会員は、当日の朝11時から子どもの本売場にて販売される当日券を購入。会員のみで定員に達した場合は立ち見になることもあり。大阪会場は当日10時から大阪店2Fレジカウンターにて当日券を販売。 |
参 考: | http://www.crayonhouse.co.jp/home/index.html |
(竹内みどり・吉村有加)
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世界の児童文学賞 第18回 |
―― チルドレンズ・ブック賞(イギリス) ――
〜子どもたちが選ぶ、子どもたちの本の賞〜
名 称 : |
チルドレンズ・ブック賞(Children's Book Awards) (「子どもの本賞」と訳されることもある) |
対 象 : | 前年に英国内で出版された読物、絵本(フィクションのみ) |
創 設 : | 1980年 |
主 催 : |
子どもの本グループ連盟 (The Federation of Children's Book Groups:FCBG) |
発 表 : | 毎年6月 |
関連サイト: |
http://www.btinternet.com/~martin.kromer/ http://www.redhousechildrensbookaward.co.uk/ 2008年3月追記 |
主催団体である「子どもの本グループ連盟(FCBG)」は、イギリス国内で子どもの本と読書のために活動するグループの支援を目的に、1968年に設立された。「チルドレンズ・ブック賞」は、子どもたちの投票によって候補作から受賞作までを決定するイギリス最初の賞として、1980年に始まった。
候補作、受賞作の選定は以下のように行う。まず、出版社から推薦のあった作品を、全国の子どもの本グループが各地の学校や家庭に配り、子どもたちの感想を集める。それをもとに、FCBG 事務局が人気のあった50作を候補作("Pick of the Year" )として選定、「絵本(Picture Books)」「低学年向け(Shorter Novels)」「高学年向け(Longer Novels)」の3部門に分類する。さらに全国の子どもたちの投票で、各部門ごとの受賞作、および全部門通じての全体賞が決定することとなる。投票の際、最も多くの本を読んで感想を送った子どもたちが、授賞式での作家・画家との昼食会に招待される。
投票の過程で、子どもたちにより多くの本に接する機会を与え、また自らの投票で受賞作を決定することで自主的な読書の意欲を高めるなど、文字通り「子どもの本の賞」として、意義深い賞であるといえる。
※2001年の授賞式の様子を下記のサイトで見ることができる。
http://achuka.com/awards/cbward2001.htm 2008年3月リンク切れ
■主な受賞作家 ●Jeremy Strong(ジェレミー・ストロング) 1997年に "The Hundred-Mile-an-Hour Dog" で受賞。とっぴな設定とユーモアにあふれた文章で、イギリスの子どもたちに絶大な人気がある。"The Karate Princess"、"Dinosaur Pox" 他、多くの作品があるが、いずれも未訳。 ●Kes Gray(ケス・グレイ) 2001年、"Eat Your Peas" で受賞。子どもの気持ちに寄り添ったストーリー展開が、子どものみならず幅広い年齢層の読者に支持されている。新刊 "Really, Really" も好評で、今年の夏には "Ball Pool"、"Baby on Board" の2冊の出版も決まっている。今最も注目を集めている新進気鋭の作家。 |
(森久里子)
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読者の広場 |
―― 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ! ――
今月はイギリスにお住まいの読者、瀧野さんからいただいた、楽しいツアー体験談をご紹介します。物語の舞台や作家のインスピレーションの話を直接見聞きするのは、すばらしいでしょうね。
私は、今ロンドンの郊外に住んでいて、2人の子どもを現地の学校に通わせています。2人の学校での生活を通して、児童文学に興味をもち、特にイギリスの児童文学を読んで楽しんできました。たまたま、イギリスの児童文学のメールグループに紹介されていた、児童文学を訪ねる旅に、去年参加し、得難い経験をすることができました。 イギリスの児童文学界で活躍する Kim Reynolds 教授とその仲間が企画し、同行したこの旅は、彼らの友人の児童文学作家や、児童文学ゆかりの地を訪れるものでした。『スノーマン』の作家、レイモンド・ブリッグズの家は、サセックスの田舎の小さなコテージでした。絵の具やパステルがならぶ仕事部屋で、スノーマンがどのように生まれたか話を聞きました。 『トムは真夜中の庭で』の作者、フィリパ・ピアスの家は、馬が草を食む原っぱの一角にあり、彼女の庭でお茶を飲みながら話を聞きました。彼女が昔住んでいた『トムは真夜中の庭で』のモデルの家も案内してもらいました。 『黄金の羅針盤』のフィリップ・プルマンは、ドードー鳥の剥製で有名なオックスフォード博物館を案内してくれ、ここの展示物からインスピレーションが生まれて作品を書いたんだよ、と実物を前に話してくれました。 今年の夏もこのツアーはこじんまりとイギリスで実施されます。詳しくは、Kim た ちのHPに。http://www.literarylandscapes.com |
このコーナーでは、海外児童書にまつわるお話、ご質問、ご意見等を募集しています。
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――シノプシス勉強会、ファンタジー作品読破マラソン(開催中)――
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●編集後記●
たくさんの児童書を訳されている酒寄さん、インタビューのロングバージョンはHPで公開され、こちらもぜひ!(さ)
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編集人: | 林さかな(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) |
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