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※こちらは「書評編」です。「情報編」もお見逃しなく!!
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2004年5月15日発行 配信数 2370
◎注目の本(邦訳読み物):『ママは行ってしまった』 クリストフ・ハイン作/ロートラウト・ズザンネ・ベルナー絵 ◎注目の本(未訳絵本):"At Home in This World: a China Adoption Story" ジーン・マクラウド文/チン・スー絵 ◎注目の本(未訳読み物):"Kira-Kira" シンシア・カドハタ作 ◎Chicoco の親ばか絵本日誌:第27回「想像の世界はよいところ?」 ●このページでは、書店名をクリックすると、各オンライン書店で詳しい情報を見たり、本を購入したりできます。 |
『きょうも いいこね ポー!』 『ママは行ってしまった』 "At Home in This World: a China Adoption Story" "Kira-Kira" Chicoco の親ばか絵本日誌 MENU |
注目の本(邦訳読み物)
―― だいじょうぶ、いつでもみてるよ ――
8歳の息子が私に話しかけてきた。「お母さん、僕より先に死なないでね」それは無理と苦笑しつつ、だんだん「死」について考えるようになってきたのだろうかと感慨深くもなった。 この物語は、ウラのママが亡くなり、その死を家族で受け止めていく様子があたたかい筆致で描かれている。ウラは、お兄ちゃんのカレルとパウル、そしてママとパパの5人家族だった。ママは仕事で忙しく飛び回り、パパは彫刻家としてほとんど家から出ずに仕事をしている。毎日が幸福にすぎていったのに、突然ママの気分が悪くなり、それから間もなく行ってしまった。ママを深く愛していた家族は、何をしてもママを思い出し、つらくてたまらない。そこへ、パパにピエタ像(死んだキリストをひざにだく聖母マリア像)を依頼した大司教さまが、仕事のはかどりぐあいを直接みたいと、ウラの家を訪れた……。
大司教さまは、短い滞在にもかかわらず、子どもたちと深く心を通わせる。自分も母親を亡くし、大人になったいまも恋しく思っているが、この悲しみは愛する母親が存在していたからなんだよと、ウラたちに語る。この物語は、悲しいだけの話ではない。ウラたちの日常も、時間がたつにつれ少しずつ楽しみがもどってきた。つらい悲
パパはウラたちにこんな話をした。 人も、ピエタという芸術作品も、じっくり時間をかけて芯にある美しさをみてほしいと、パパは願う。ひとたびその美しさを発見したならば、ピエタは人々にとって大切なものになるはずだ、と。ママのほほえみをピエタにきざみこんだパパも、長い時間の中でママの美しさを発見していったのだ。おいしい食事をした時のような幸福感で満たされ、私は本を閉じた。 (林さかな)
【作】 クリストフ・ハイン(Christoph Hein) 1944年生まれ。ベルリンのフンボルト大学で哲学、論理学を修めたのち、翻訳、ラジオなどの脚本を手がける。そのなかで小説も発表し、1982年『龍の血を浴びて』(藤本淳雄訳/同学社)で作家として高い評価を得る。児童書の作品は、1984年に発表した作品『暖炉の下に馬がいる』(仮題/未訳)に続き本作で2作目。 【訳】松沢あさか(まつざわ あさか)1932年生まれ。名古屋大学文学部文学科(ドイツ文学専攻)卒業。富山県在住。訳書に『絵で見るあの町の歴史』(スティーブ・ヌーン絵/アン・ミラード文/さ・え・ら書房)、『一方通行』(クラウス・コルドン作/さ・え・ら書房)、『ウルフ・サーガ(上下)』(ケーテ・レヒアイス作/福音館書店)など多数。 《参考》 ◇松沢あさか訳書リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室)
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注目の本(未訳絵本)
―― 海を渡った養女、失われたルーツを求めて ――
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注目の本(未訳読み物)
―― 絆深き日系人姉妹の愛と悲しみと夢 ――
ケイティーが初めて口にしたのは、「きらきら」という日本の言葉だった。大好きな姉、リンが教えてくれたのだ。大きくなっても、空、海、目、そして子犬、子猫、蝶、色のついたティッシュまで、美しいものはみな「きらきら」だと喜んだ。変な日本語だと笑う母、そして父も、米国で生まれ日本で教育を受けた日系2世だ。 1950年代、両親はアイオワ州で東洋系食材店を営んだが、東洋人が少ないため商売は続かなかった。そこで父は、日系人がほとんどだった、ひよこの雌雄鑑別の職を、母は鶏肉加工工場の職を得て、5歳のケイティーと9歳のリンを連れ、人種差別の激しい南部のジョージア州に移る。町に31人だけの日系人たちは助け合って暮らしていたが、労働環境は劣悪で、母はトイレに行く時間もなく、おむつをあてて働いた。なんとか家を購入しようと両親が寝る時間を惜しんで働く中、ケイティーを見守り、愛してくれたのはリンだった。姉の教えることはそのままケイティーの世界になった。やがて、思春期を迎えたリンは同世代との交際を始め、ケイティーは、姉との間に生じた距離に戸惑う。そんな時、リンが病に倒れ、日に日にやつれていった。両親は、リンが心安らぐよう家を買うが、ローンと医療費のためますます仕事に追われ、疲れ果てていく。愛情ゆえに壊れそうになる家族だが、みな悲しいほど懸命に生きていた。耐えることで差別と貧しさの中を生き抜いてきた一家がやがて選んだことは……。 辛く悲しいことが続く中、家族の愛、特に姉妹の愛がきらめいている。ケイティーの内面がみごとに描かれ、幼い頃ジョージア州に住んだ作者自身の回想かと思えてしまうほどだ。実際作者は、自分の過去と作品の登場人物の経験の区別がつかなくなることもあるという。ケイティーの目に映る当時の生活には、人種差別、過酷な労働状況、組合化への圧力など多くの社会問題が影を落としている。読者は、姉妹と家族の話に引き込まれながら、米国経済の底辺がかつて抱えていた問題を知ることとなる。 逃れられない運命もあるけれど、世界が「きらきら」輝いていることに気づくと、人は夢と希望をもって生きる強さを得る。そんなリンの人生の見方がケイティーに伝わっていく。そして、作者の人生への願いが感じられる。 (リー玲子)
【作】Cynthia Kadohata(シンシア・カドハタ) 1956年シカゴ生まれ。幼少時、父親の職のためジョージア州他を転々とした。南カリフォルニア大学卒。雑誌投稿を続け、ニューヨーカー誌で作家デビュー。ニューヨーク・タイムズが1989年最も注目すべき作品の1つに選んだ "The Floating World"(『七つの月』/荒このみ訳/講談社)で、新世代の日系作家と評された。当書が初の児童向け作品。ロサンゼルス在住。 《参考》 ◆シンシア・カドハタの公式サイト
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●編集後記●
「カーネギー賞/ケイト・グリーナウェイ賞読もう会」を開催中です(詳細は情報編をご覧ください)。私が気に入った作品はカーネギー賞のショートリストには残らず。でも、両賞の行方は気になります。発表まであと2か月弱。 (あ)
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編集人: | 赤塚きょう子(やまねこ翻訳クラブ スタッフ) |
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