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※1月は定期休刊です。1月号外を1月31日に発行予定です。どうぞお楽しみに!

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2012年12月号
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  =====★   月 刊  児 童 文 学 翻 訳   ★=====
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                                No.145
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児童文学翻訳学習者による、児童文学翻訳学習者のための、電子メール版情報誌
http://www.yamaneko.org                         
編集部:mgzn@yamaneko.org     2012年12月15日発行 配信数 2370 無料
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●2012年12月号もくじ●
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◎特集:第15回やまねこ賞──会員が選んだ、今年の児童書ベスト5は?
◎注目の本(邦訳絵本):『トラのじゅうたんになりたかったトラ』
                  ジェラルド・ローズ文・絵/ふしみみさを訳
◎賞速報
◎イベント速報
◎世界のお祭り:第29回 シンタクラース祭(オランダなど)
◎読者の広場

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     ☆☆ FOSSIL 〜 Made in USA のライフスタイルブランド ☆☆
 独創的なデザインで世界100ヶ国以上で愛用されているフォッシルはアメリカを代
表するライフスタイルブランドです。1984年、時計メーカーとして始まったフォッシ
ルは時計をファッションアクセサリーの一つと考え、カジュアルな「TREND」ライン
からフォーマルなシーンにも使える「CERAMIC」など、年間300種類以上のモデルを発
売し続けています。またフォッシル直営店では、時計以外にもレザーバッグ、革小物、
ファッションサングラスなどのラインも展開しています。
TEL 03-5992-4611
http://www.fossil.co.jp/     (株)フォッシルジャパン:やまねこ賞協賛会社

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●特集●第15回やまねこ賞            協賛:(株)フォッシルジャパン
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 さる11月1日から17日までの間、やまねこ翻訳クラブ恒例のやまねこ賞の投票が、
当クラブ特設掲示板にて開催されました。やまねこ賞は、前年10月から本年9月まで
に出版された邦訳児童書、未訳・既訳・言語を問わない原書、および、過去1年間に
読んだ邦訳児童書を対象に、会員がベスト5を選び、大賞作品を決定するものです。
新刊を対象とする読み物部門と絵本部門の大賞に輝いた作品の翻訳者には、賞状と副
賞が贈られます。今年も株式会社フォッシルジャパンより、副賞の時計をご提供いた
だきました。

副賞の時計の写真1      副賞の時計の写真2

「読み物」「絵本」の分類については、原則として各出版社、書店などの種別を参考 に、当クラブの判断で決定しています。  記事中に記載した、本誌の過去のレビューについては、やまねこ翻訳クラブウェブ サイトに掲載のバックナンバーをご参照ください。 http://www.yamaneko.org/mgzn/  すべての投票と感想はこちらでご覧いただけます。 http://www.yamaneko.org/yn_award/index.htm  やまねこ翻訳クラブは、会員・非会員を問わず、海外児童書を主とした本の話題が 書き込める「読書室掲示板」を運営しております。 http://www.yamaneko.org/dokusho/index.htm      ★☆★☆【2012年 第15回やまねこ賞 読み物部門】☆★☆★ ★大賞 『怪物はささやく』    パトリック・ネス作 シヴォーン・ダウド原案 ジム・ケイ絵 池田真紀子訳                                 あすなろ書房 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  病気の母を抱え、学校では孤立している少年コナーの前に現れた怪物は、自分が話 す3つの物語のあとに、コナーにも〈真実の〉物語を語るように言う。怪物はそのた めにコナーに呼ばれたのだと。不安と孤独、怒りにさいなまれる少年の〈真実〉とは。 2012年、カーネギー賞とケイト・グリーナウェイ賞をダブル受賞した話題作が、本年 度やまねこ賞において圧倒的な票数を得て大賞に輝いた。読者を引きつけて離さない 物語とともに、不気味で迫力のある怪物のイラストも強い印象を残す。 (本誌2012年7月号「特集」のレビューをご参照ください) ◎まさに圧倒的。亡くなった原案者の魂すら感じさせるすばらしい作品に、心が揺さ ぶられた。(キジトラ) ◎心のなかの怪物に心が震えた。ネスとダウドの素晴らしいコラボだと思う。(ワラ ビ) ◎心の闇と向き合わなくてはならないコナーの姿が痛々しかったが、読後にはほっと した。(おとむとむ) ◎善と悪が複雑に絡み合う人間。その人間が包み隠している心の闇があぶりだされて いる。心に響く言葉があり、書き留めた。(ちゃぴ) ◎作中、物語の力について語られているが、まさにその力を示した作品だと思う。お 母さんと原案のシヴォーン・ダウドが重なってつらかったが、彼女が書きたかった物 語をネスが形にしてくれて、ほんとうによかったと思った。(anya) ◎自分の感情をどう理解するべきか悩んでいる高校生に、すすめたい本。(はなみ) ☆~~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 池田真紀子さん ~~~~~~~~~~~~~~☆ |                                    | |『怪物はささやく』は、初めて原書を読み始めた瞬間からもう、頭のなかで訳し| |始めていたくらい、私にとっては強い魔力のような何かを持った作品でした。た| |くさんの良書のなかからこの特別な1冊を「やまねこ賞」に選んでいただいたこ| |とに、たいへん感激しています。2人の著者からのバトンを受け取ってくださっ| |たみなさん、本当にありがとうございました。               | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位 『サースキの笛がきこえる』                 エロイーズ・マッグロウ作 斎藤倫子訳 偕成社 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  人間の世界で暮らす、妖精と人間の両方の血を引く少女サースキは、成長するにつ れて周りの子との違いに悩むようになる。村の子どもたちからいじめられ、大人たち からはあらぬ疑いをかけられ、ついにその危害が家族にまで及ぼうとしたとき、サー スキは行動を起こす。大好きな笛と数少ない理解者を心の支えにして生きる、半妖精 の少女のせつない物語。1997年ニューベリー賞でオナー(次点)に選ばれた。 (本誌2012年10月号「注目の本」のレビューをご参照ください) ◎人間でも妖精でもない、サースキの孤独が痛いほど伝わってくる。仲間ができてほ んとうによかった。(SUGO) ◎妖精界にも人間界にも居場所のないサースキ。その身の置き所のないつらさがひし ひしとせまってくる。でも妖精の血が流れるサースキには、どこかしらワイルドな芯 の強さもあるから、読んでいてとことん苦しくはならない。友と音楽のありがたさよ。 (BUN) ◎とりかえ子にされたサースキの切なすぎる人生。その選択はきっと、みんなを幸せ にすると信じたい。サースキ自身ももちろん。(ぎねびあ) ◎古くからある「とりかえ子」という言い伝えを、新しい切り口でとりあげ、魅力的 なお話に仕上げています。挿絵も好き。(りり) ◆3位 『ジェンナ 奇跡を生きる少女』                  メアリ・E・ピアソン作 三辺律子訳 小学館 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  私はいったい誰? 事故による意識不明から目覚めたジェンナは、記憶のほとんど を失っていた。両親に監視されているような生活の中、ジェンナは過去の映像をもと に次第に記憶を取り戻していき、自分の存在の秘密にたどり着く。物語は近未来を舞 台に、親子の愛、思春期の恋、少女の心の葛藤など、さまざまな要素を盛り込んでミ ステリータッチで進行。意外なラストまで、「生きる」ことの意味を問いかけている。 ◎人の命と科学の進歩について考えさせられた。生命倫理の問題はとても難しい。 (モリー) ◎ドキドキしながら読み進め、そして考えさせられました。ありえない設定だと思え ないところが怖い。(コアラン) ◎「人間とは何か、わたしとは?」科学技術が進むほどに重くのしかかってくる問題 だ。(あぐりんこ) ◎「人間性とは?」改めて考えさせられた。家族・親子関係、友情、恋愛問題、いろ んなことがいっぱい詰まっていて、心の琴線がびんびん震える。(おちゃわん) ◆4位 『雨あがりのメデジン』             アルフレッド・ゴメス=セルダ作 宇野和美訳 鈴木出版 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  カミーロは、友だちのアンドレスと訪れた市の図書館で、父親の酒代にするために 本を盗んだ。お金を持っていないが酒を買って帰らないと、父親に殴られるからだっ た。貧困や暴力など、厳しい環境で育つふたりの少年が、図書館で働く女性や本との 出会いにより変わろうとする姿を、コロンビアのメデジン市の風景とともにすがすが しく描く。 (本誌2012年6月号「注目の本」のレビューをご参照ください) ◎カミーロとアンドレスが生き生きと描かれ、ほとんど知らないバリオの様子までも 目に浮かぶようです。実在するスペイン公園図書館の外観も忘れられません。(みー こ) ◎コロンビアが舞台の物語。貧しいということ、本の持つ力について考えた。 (shoko) ◎2人の少年がそれぞれに抱える複雑な事情や本音が、図書館や本とのかかわりを通 して見えてくるところが印象的だった。2人を見守る図書館員の女性の温かいまなざ しにほっとする。(asayaka) ◎貧困や暴力の中で生きる子どもたちを救うことは、なかなか厳しい。それでも本は 子供たちの心に希望の光を灯すことはできるのだと、本書を読んであらためて感じた。 (MOMO) ◆5位 『戦火の馬』マイケル・モーパーゴ作 佐藤見果夢訳 評論社 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  第1次世界大戦中、イギリスの農場で飼われていた馬のジョーイは、愛する飼い主 と引き裂かれ、軍馬としてフランスの戦場に送られた。ジョーイの目から見た、悲惨 な戦争の現場と、人と馬との温かな絆。原作は30年も前に発表されたが、昨年スピル バーグ監督により映画化され、その公開にあわせて待望の邦訳出版となった。 ◎悲惨な戦争の中でも、馬を愛する気持ちを忘れなかった人々がたくさんいたことに 希望を感じ、感動しました。ラストシーンは映画より原作のほうが絶対にいい!(み ちこ) ◎馬のジョーイから見た第1次大戦。戦後、馬たちが受けた扱いには驚かされました。 (蒼子) ◎馬の視点からみた戦争というのが新鮮。馬からしてみれば、国境も人種も関係ない。 戦争はとてもくだらないし、大切なのはひとりひとりの人間だというストレートなメ ッセージが伝わってくる。映画より断然、原作がいい!(めめこ) ◆6位以下の作品 6位『灰色の地平線のかなたに』『もういちど家族になる日まで』(2作同点) 8位『クラーケンの島』『心のナイフ』(2作同点) 10位『そして、ぼくの旅はつづく』       ★☆★☆【2012年 第15回やまねこ賞 絵本部門】☆★☆★ ★大賞 『トラのじゅうたんになりたかったトラ』              ジェラルド・ローズ文・絵 ふしみみさを訳 岩波書店 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  インドのジャングルに、骨と皮ばかりにやせこけたトラが住んでいた。宮殿をこっ そりのぞいては、王さま一家のことをうらやんでばかり。ごはんをたっぷり食べて幸 せそうだなあ、なかまにはいりたいなあ。そんなある日、庭に干されたトラのじゅう たんを見てひらめいた。あっと驚く、そのアイデアとは? ボロボロでなさけないト ラの姿を、大胆なタッチで色鮮やかに描いた楽しい絵本。 (本誌今月号「注目の本」のレビューをご参照ください) ◎トラのアイデアに乾杯! 小学校のおはなし会でも、みんな引き込まれていました。 (みーこ) ◎動きのある独特のタッチで描かれたトラが印象的。(おとむとむ) ◎おもしろいし、絵も楽しいです。色づかいが魅力的。なさけないトラの姿に、なん ともいえない親しみと味わいを感じます。(モーモー) ◎とぼけたストーリーとキャラクターで笑わせてくれました。(ちゃぴ) ◎色づかいがとても美しく、山場では迫力もある楽しい絵本。ダメダメなトラをちゃ かしたり、つっこみをいれながら子どもたちと読んだ。(shoko) ◎ちょっと漫画的で豪快なタッチの絵がいい。(あんこ) ☆~~~~~~~~~~~~~~~【受賞のことば】 翻訳家 ふしみみさをさん ~~~~~~~~~~~~~☆ |                                    | |本が大好きなやまねこ翻訳クラブのみなさんに大賞に選んでいただいたこと、と| |ても光栄です。トラもよれよれの胸をはって、喜んでいることでしょう。訳に迷| |った時は、トラがより「なさけなく」見えるほうの言葉を選びました。ジェラル| |ド・ローズはわたしがダントツ好きな作家のひとりです。あの自由さや、線のき| |っぱりした感じ、大胆さは、うっとりするほどです。よかったら『ウィンクルさ| |んとカモメ』『おおきなかしの木』もごらんになってみてくださいね! 目が釘| |づけになること、うけあいですよ!                    | ☆                                    ☆  ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ◆2位 『キュッパのはくぶつかん』        オーシル・カンスタ・ヨンセン文・絵 ひだにれいこ訳 福音館書店 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  キュッパは丸太の男の子。物を集めるのが大好きだけれど、コレクションが増えす ぎて困ったことに。おばあちゃんに相談すると、博物館を作ったらどうかと提案され た。かわいいキュッパの魅力を味わいながら、博物館について学べるノルウェーの絵 本。美しくもどこか不気味な雰囲気を漂わせる針葉樹林のイラストからは、森に寄せ る北欧の人たちの思いも伝わってくる。 ◎主人公は丸太! 木じゃなくて、丸太! 絵本ならではの衝撃の設定に打ちのめさ れました。捨てられない物に圧迫されて暮らしている大人には、何とかしなきゃ!と いう刺激を与えてくれる、ありがたい本。(hanemi) ◎丸太のキュッパが、とにかくかわいいです。おばあさんもかわいい。丸太のおばあ さんは、やっぱり丸太なんですね……あたりまえだけど。(モーモー) ◎くせになる感じです。たくさんのものを分類してかざったり、まとめたりするのが やりたくなります。情報あふれる現代にあたたかなメッセージ? 分類して整理しよ う! そして大事な物が見つかるよ!(くまのプー) ◎丸太の男の子キュッパがかわいい! 教育的な内容でありながら、おしつけがまし くないところがいい。(キジトラ) ◆3位 『ピートのスケートレース 第二次世界大戦下のオランダで』       ルイーズ・ボーデン文 ニキ・ダリー絵 ふなとよし子訳 福音館書店 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  第2次世界大戦中、オランダはドイツに占領されていた。不自由な生活を強いられ た暗い時代だったが、スケートが大好きな10歳の少年ピートには夢があった。それは 11の町をまわる長距離スケートレースにいつか出場すること。そんなピートが、スケ ートの実力と勇気が必要とされる、命がけの仕事を任された。スケートへの情熱を心 の支えにして、すべり続ける少年。そのひたむきな姿に圧倒される。 ◎文句のつけようがない完璧な作品。(林檎) ◎他に頼れる人がいない状況で、こんなに厳しいピンチを乗り越えたこと、子どもの 頃の私にあっただろうか?(みちこ) ◎主人公の勇気、彼が感じる心細さ、人々のきずなの温かさが胸に迫る。「スイッシ ュー」という力強いスケートの音が本当に聞こえてくるようだった。(からくっこ) ◎文章量が多いですが、小学6年生に読みきかせしました。絵本を手にとりにくくな った高学年にこそ読んでほしい作品です。(SUGO) ◆4位 『リスと青い星からのおきゃくさん』                    (「リスと森のなかまたち」シリーズ4)        ゼバスティアン・メッシェンモーザー文・絵 松永美穂訳 コンセル Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ある朝クマが目を覚ますと、頭の上に不思議な青い生き物が。逃げても追い払って も、いつのまにやら、またそばにいる。鮮やかな青い色なんて、森では見たこともな い。もしかしてこの生き物は遠い星からやってきたのかも!? クマをさらいにきた のかも!? シリーズ第4弾の本作でも、リスと森の仲間たちは、とんでもない妄想 を繰り広げる。 ◎クマやリスたちの勘違いが楽しい作品。シリーズ続けて読まなくても、続けて読ん でも、おもしろい!(shoko) ◎いったいリスの妄想の源はどこにあるのでしょうか? それが気になって仕方ない シリーズ4作目です。(ワラビ) ◎繊細なイラスト、生き生きした動物たちの表情、くすっと笑うことも大笑いもでき るユーモラスな展開、何をとっても絶品!(ゆま) ◆5位以下の作品 5位『アナベルとふしぎなけいと』   「教会ねずみ」シリーズ(『教会ねずみとのんきなねこの メリークリスマス!』               『教会ねずみとのんきなねこの わるものたいじ』)   『くらくてあかるいよる』『グランパ・グリーンの庭』(4作同点) 9位『カーリーさんの庭』『モグラくんがみたおひさま』   『レ・ミゼラブル ファンティーヌとコゼット』(3作同点)       ★☆★☆【2012年 第15回やまねこ賞 原書部門】☆★☆★  出版年や邦訳の有無を問わない原書部門には、13名が投票し、39作品が挙がった。 複数票(各2票)を獲得した4作品のうち、2作品はニューベリー賞関連、残る2作 品は、この秋の来日でやまねこ会員の話題をさらった、国際アンデルセン賞受賞作家 デイヴィッド・アーモンド氏の著作である。これら4作品を、投票者のコメントを添 えてご紹介しよう。 【ニューベリー賞関連作品】  本年のオナー作品 "Inside Out & Back Again" は、主人公の日記を通して、ベト ナム戦争下のサイゴンと、難民として渡ったアラバマ州での暮らしを描く。昨年の受 賞作 "Moon over Manifest" では、大恐慌時代の「今」と、炭鉱の町の「過去」の物 語が重なり合って展開する。2作品ともに、移民国家アメリカならではの作品だ。歴 史的背景を舞台に、困難な状況にあっても懸命に生きる人々の姿が、心を打ってやま ない。 ★ "Inside Out & Back Again"(タンハー・ライ作) Amazonで詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (本誌2012年3月号「特集」のレビューをご参照ください) ◎難民となり、アメリカに逃れたベトナム人少女。その激動の1年を描いた物語。詩 の形式で、言葉少なに語られる少女の心情が切なかった。(モリー) ◎ベトナム戦争末期の1年間を、10歳の少女の視点でつづった散文詩形式の物語。難 民として渡ったアメリカでの暮らし、差別や偏見――現実はあまりに重いが、それで もしっかりふんばっている少女の姿に、未来へのひとすじの光を感じた。(MOMO) ★ "Moon over Manifest"(クレア・ヴァンダープール作) Amazonで詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ◎歴史的事実を盛り込みながら細やかに描かれたストーリーや、生き生きとした人物 描写の裏に、作者の故郷に対する深い愛情を感じた。(asayaka) ◎読み応えたっぷりの感動作。過去の物語にふれるうちに、自分の居場所を見つけて いく少女が主人公。スケールは大きく描写は細やかで、ニューベリー賞受賞も納得。 (キジトラ) 【デイヴィッド・アーモンド作品】  美しい文体で知られるアーモンド作品。ファンならやはり原書で読みたい! デビ ュー作『肩胛骨は翼のなごり』の前日譚である "My Name is Mina" では、鳥のよう に自由な心を持つ少女ミナが、思いのままに言葉を羽ばたかせる。"Raven Summer" は、大人への入り口に立った少年の衝撃的なひと夏を描き、読者に鮮烈な印象を残す 作品だ。魅惑のアーモンドワールドからは、これからも目が離せない。 ★ "My Name is Mina"(邦訳『ミナの物語』) Amazonで詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ (本誌2012年10月号「注目の本」の邦訳レビューをご参照ください) ◎主人公ミナの語りがとても魅力的だった。自分で考え、自分で表現する。その自由 なところに憧れる。ありのままのミナを見守る母親の姿も良かった。(モリー) ◎ミナの果てしない想像力、生きる喜びが本からあふれてきた。とにかくミナという キャラクターが大好きで夢中になった。素晴らしい内面の世界をもちつつも、外の世 界とつながるのがちょっぴり苦手なミナの気持ちにも共感。アーモンド作品のなかの 真骨頂だと思う。(めめこ) ★ "Raven Summer"(UK 版タイトル "Jackdaw Summer") Amazonで詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ◎少年が鳥に導かれるようにみつけたのは、捨てられた赤ちゃんだった。里親、捨て 子、難しい問題も抱えながらも、物語はとても希望に満ちている。作風がちょっぴり 明るくなった?と感じた作品。(めめこ) ◎鳥に導かれて赤ん坊を見つけた少年たちの夏。主人公 Liam の父は作家で、作者本 人を思わせる。舞台となる英国北部の自然描写が美しい。(あんこ)  その他、1票ずつを獲得した35作品は、絵本からYA作品、古典からドキュメンタ リー作品まで、言語も内容も多岐にわたり、投票者それぞれの読書傾向が垣間見られ て興味深かった。年初より5か月間にわたって開催された「原書読破マラソン」に触 発された会員も多い。話題作で盛り上がる、大好きな作家の世界にひたる、自分好み の作品を見つける、あるいは隠れた名作を発掘するなど、原書を読む楽しみは尽きな いのである。     ★☆★☆【2012年 第15回やまねこ賞 オールタイム部門】☆★☆★  オールタイム部門は、今年1年間で読んだ新刊以外の翻訳児童書の中から、順位を つけず5作品を選んで投票するものだ。今年は20名の会員が48作品に票を投じた。例 年同様、昨年のやまねこ賞上位作品に多くの票が集まるなか、昨年ランクインしなか ったが読書室で話題にあがった『エリザベス女王のお針子 裏切りの麗しきマント』 が4票を集めて1位となった。2位には各2票で10作品が並んだ。12位以下もバラエ ティー豊かなラインアップで、全てをご紹介できないのが残念だが、ここでは、1位 の作品と、2位の作品の中からこれまで本誌で取りあげていない2作品を紹介する。 ★1位 『エリザベス女王のお針子 裏切りの麗しきマント』               ケイト・ペニントン作 柳井薫訳 徳間書店 2011年 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  16世紀のイギリスを舞台に、実在した人物を配して語られる物語。仕立て職人の父 を持ち、片田舎でお針子として生きる13歳のメアリーは、自然の美しさを愛し、いつ かそのすべてを刺繍で表現したいと夢みていた。そんな折、主人の宮廷訪問用衣装を 手がける機会を得るが……。思いがけない来訪者の出現で、恐ろしい陰謀に巻き込ま れながらも、誠実に力強く生きるメアリーの姿が胸を打つ。スリリングな展開からも 目が離せない。 ◎16世紀イギリスの貴族たちの豪華なファッションを想像しながら読みました。お針 子メアリーが巻き込まれる壮大なドラマにひきこまれました。(コアラン) ◎16世紀のエリザベス1世の時代をお針子の視点で描いたスリリングな物語。英国史 に興味のあるわたしには、領主の館で働く人々の暮らしぶりや、宮殿の様子も垣間見 ることができて、1冊で2度おいしい作品だった。女王をはじめ、宮殿に暮らす人々 の豪華な衣装にはうっとり。(MOMO) ◆2位 『ねえ、おきてる?』    ソフィー・ブラックオール文・絵 もとしたいづみ訳 光村教育図書 2011年 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の情報を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  朝の4時なのに、ちっとも眠くないエドワード。小さな頭の中は、聞きたいことで いっぱい。「ねえ おきてる?」「んー……おきてない……。」からはじまるママと エドワードの会話は、ちょっぴりちぐはぐで、とってもあたたかい。どんなことにも 答えてくれるママと「そっか」と言いながらちっとも納得しないエドワードのかけあ いはおもしろく、読み聞かせでも喜ばれそうだ。子どもが眠れない夜、そっと開いて 一緒に楽しめば、ふたりでいい夢が見られる……かも? ◎ママの眠くてつらそうな表情に共感!(みーこ) ◎眠いママを質問攻めにする男の子に参りました〜。(おとむとむ) ◆2位 『モーツァルトはおことわり』                マイケル・モーパーゴ文 マイケル・フォアマン絵                       さくまゆみこ訳 岩崎書店 2010年 Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  入社して3週間の新米記者に訪れた、千載一遇のチャンス。それは、世界的に有名 なバイオリニストを取材することだった。「モーツァルトの件は質問するな」という 上司の言葉の意味がわからないまま、取材にのぞんだ記者に語られる事実とは……。 行間から聞こえてくる音楽とフォアマンの絵が彩る、美しくも悲しい物語は、思いも よらない感動の結末へとつながっていく。 ◎気になりながらずっと読み逃していたのだけど、「読書探偵」に刺激されて読むこ とができた。これだけのテーマをこんな短い物語でしっかり描くのはすごい。そして マイケル・フォアマンの水彩画の美しいこと。(BUN) ◎絵本のような読み物のような形式と美しい絵にひかれて手にとったら、中身は思い のほか重厚だった。多くの人に読んでもらいたい作品のひとつ。(anya) ◆その他2位作品 『おとまり、おことわり?』『きみに出会うとき』『肩胛骨は翼のなごり』 『ダーウィンと出会った夏』『ハティのはてしない空』『ボグ・チャイルド』 「リスと森のなかまたち」シリーズ 『私は売られてきた』 【参考】 ▽やまねこ賞受賞作品リスト(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/index.htm ▽やまねこ賞大賞受賞作品一覧(やまねこ翻訳クラブ資料室) http://www.yamaneko.org/bookdb/award/yn/ichiran.htm                  (井原美穂/森井理沙/小島明子/岡田衣央)

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●注目の本(邦訳絵本)●老いてやせこけたトラの夢見た暮らし
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『トラのじゅうたんになりたかったトラ』
ジェラルド・ローズ文・絵/ふしみみさを訳
岩波書店 定価1,470円(税込)2011.10 32ページ ISBN 978-4001112269
"The Tiger-Skin Rug" by Gerald Rose
Bloomsbury Publishing Plc,2011
Amazonで詳細を見る  hontoで詳細を見る  Amazonで原書の詳細を見る

 インドのジャングルに、年老いて獲物も満足にとれないやせこけたトラがいた。ト
ラは宮殿の窓から、王さまが家族とおいしそうにごはんを食べているのを見るにつけ、
自分も仲間に入りたいと思っていた。そんなある日、宮殿の庭で召し使いがじゅうた
んを干しているのを見て、じゅうたんのふりをして宮殿の中に入ることを思いつく。
なんとか洗濯ひもにぶら下がったものの、あまりの汚さにちりひとつ出なくなるまで
召し使いに叩かれる。しかし我慢の末やっと宮殿にもぐりこむことができた。昼はじ
ゅうたんのふりをしてじっとみんなのお尻に敷かれ、夜になるとごちそうの残りを食
べて幸せに暮らした。だが、トラにはひとつ心配でたまらないことがあった……。
 表紙を見てまず驚いたのは、ゴロンとひっくり返り舌を出してヘラヘラしているな
さけないトラの姿だ。おまけにジャングルの王者トラともあろうものが「じゅうたん
になりたい」とはいったいなにごとだ!と思いつつページをめくると、とぼけたトラ
のありえない話が次々に繰り広げられていく。そんなことはないでしょう、と突っ込
みたくなる話も、トラのあまりのひょうきんさに思わず応援したくなってしまう。ウ
ソがばれないように我慢し続けるトラのおかしさ、大変さは、子どもにもわかりやす
い。さらに、勢いのあるペンのタッチと鮮やかな色彩の楽しげな絵が、物語の舞台で
ある暑いインドの雰囲気をよく表していて話をぐっと盛りあげている。
 作者が初めて生きたトラを見たのは、第2次世界大戦中の香港だという。父親を捕
虜にとられ、母親と自分は収容所に入れられていた。そんな辛い状況で見たトラは戦
争中でやせ細り、寂しそうな顔をしていたかもしれない。しかし、この絵本の中では
知恵をしぼり、一生懸命自分の居場所を求めるチャーミングなトラとして描かれてい
る。どんな状況でも前向きに生きていくトラに元気をもらえる楽しい絵本だ。

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【文・絵】ジェラルド・ローズ(Gerald Rose):1935年、香港生まれ。英国で油絵
を学ぶ。妻のエリザベス・ローズ(文)との作品 "Old Winkle and the Seagulls"
(『ウィンクルさんとカモメ』ふしみみさを訳/岩波書店)で1960年にケイト・グリ
ーナウェイ賞を受賞。

【訳】ふしみ みさを(伏見操):1970年、埼玉県生まれ。上智大学文学部仏文科を
卒業。主にフランス語、英語の子どもの本を翻訳。最近の訳書に『チビウオのウソみ
たいなホントのはなし』(ジュリア・ドナルドソン文/アクセル・シェフラー絵/徳
間書店)、『れいぞうこにマンモス!?』(ミカエル・エスコフィエ文/マチュー・
モデ絵/光村教育図書)などがある。

【参考】
▼ジェラルド・ローズ紹介ページ(Bloomsbury Publishing内)
http://www.bloomsbury.com/author/gerald-rose/

▼ジェラルド・ローズ作品紹介ページ(Pinterest 内)
http://pinterest.com/pettieb/gerald-rose/

                               (しまだまみ)

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●賞速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★2012年全米図書賞(児童書部門)受賞作品発表
★2012年カナダ総督文学賞(児童書部門)受賞作品発表
★2013年チルドレンズ・ブック賞ショートリスト発表
                  (受賞作品の発表は2013年2月23日の予定)
★2012年コスタ賞ショートリスト発表
     (受賞作品の発表は2013年1月3日、最優秀賞の発表は1月29日の予定)
★2012年チェント賞候補作品発表(最終順位の発表は来春の予定)
★2012年フィンランディア・ジュニア賞受賞作品発表
★2012年アウグスト賞受賞作品発表

 海外児童文学賞の書誌情報を随時掲載しています。「速報(海外児童文学賞)」を
ご覧ください。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=award

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●イベント速報━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★展示会情報
 国立国会図書館国際子ども図書館
  「セント・ニコラス:世界の子どもたちが集った雑誌」
 美術館「えき」KYOTO「レオ・レオニ 絵本のしごと」 など

★講演会情報
 メリーゴーランド「今江祥智さん講演会 長新太の魅力」 など

★イベント情報
 クレヨンハウス「長谷川義史さんクリスマスライブ&サイン会」
 教文館 子どもの本のみせ ナルニア国「ナルニア国のクリスマス」 など

 詳細やその他のイベント情報は、「速報(イベント情報)」をご覧ください。なお、
空席状況については各自ご確認願います。
http://www.yamaneko.org/cgi-bin/sc-board/c-board.cgi?id=event

                           (笹山裕子/冬木恵子)

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●世界のお祭り●第29回 シンタクラース祭(オランダなど) 12月5日
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 12月6日は、3世紀後半に実在したキリスト教の聖人、聖ニコラウスの命日にあた
り、オランダやベルギーなどではその前日の5日に、前夜祭であるシンタクラース祭
を盛大に祝います。この祭りはいまや、オランダでは国民的行事と言っても過言では
ありません。オランダの大人たちは毎年、伝統を守りつつも子どもたちの夢を壊さな
いように、「国を挙げての」大がかりな作戦に本気で取り組みます。今回は、その様
子もまじえながら、伝統あるシンタクラース祭をご紹介しましょう。
 赤いマントに冠、白くて長いひげが特徴のシンタクラースは、お供の少年ズワルト
・ピートとともに、毎年11月中旬、聖マルティンの日の直後の土曜日に、蒸気船でス
ペインからオランダにやってきます。到着する港は毎年違っていて、今年は11月17日
に、オランダ南部のルールモントに到着しました。港では市長自らが出迎え、上陸し
たシンタクラースは白馬アメリゴにまたがり、街中をパレードします。上陸の様子は
テレビ中継され、大手新聞もニュースとしてまじめに報道します。
 この日からお祭りの日まで、シンタクラースは国中の子どもたちを訪ね歩きます。
実際、街角や学校などいたる所で、シンタクラースとピートの姿が見られ、〈シンタ
クラース・ジャーナル〉というテレビ番組が毎晩放送されます。子どもたちは、暖炉
の前や玄関に靴を置き、白馬用のにんじんや水などを準備して眠ります。というのも、
夜中になると、シンタクラースは白馬に乗って屋根から屋根へと各家庭を回り、ピー
トに手伝ってもらって子どもたちの靴の中にクッキーなどを入れ、白馬アメリゴはに
んじんをかじっていくと言い伝えられているからです。
 そして、いよいよ12月5日の夜、シンタクラースがプレゼントを持ってきます。プ
レゼントのつまった麻袋が、玄関や暖炉の前に置かれているのが一般的なようです。
このプレゼントには、伝統的に詩が添えられていることが多く、その子のほめるべき
点や期待していることなどが盛り込まれているそうです。悪い子だと判断されると、
ピートが持ってきた麻袋に入れられて、スペインへ連れていかれてしまうというから
大変ですね。
 ところで、シンタクラースはどうしてスペインから来るのでしょうか? その理由
は定かではなく、その昔、オランダとスペインの船による貿易が盛んだったことや、
聖ニコラウスが海運の守護聖人で、海運国オランダで特に崇拝されていることなどが
考えられるそうです。ちなみに、聖ニコラウスは、子どもの守護聖人でもあります。
 お供のズワルト・ピートは、肌が真っ黒なのが特徴です。その理由も、「ピート少
年がムーア人(北西アフリカに住むイスラム教徒を指す呼称)だから」とか「煙突を
通ってプレゼントを運ぶから」など色々な逸話があるそうです。「ズワルト」という
のは、オランダ語で「黒い」という意味です。ピートは第2次世界大戦ごろまではひ
とりでしたが、現在ではシンタクラースは大勢のピートたちを従えているということ
になっています。そのピート少年が配ってくれるのが、丸くて小さいシナモン味のク
ッキー〈ペパノーチェ〉や、シンタクラースにちなんだ型を押された薄いクッキー
〈スペキュラース〉です。スペキュラースは、ロータス社のカラメルビスケットが有
名で、日本でも輸入食品店などで売られているため、食べたことがある方もいらっし
ゃるかもしれませんね。イニシャル型のチョコレートの交換もよく行われます。
 このように、現在はメディアも参加して大がかりなお祝いになっていますが、今回
ご紹介する児童書には、昔ながらの伝統的なお祝いの風景が描かれています。第2次
世界大戦中のオランダで、ユダヤ人であることを隠して疎開していた少女リーネケの
実話を基にした『父さんの手紙はぜんぶおぼえた』(タミ・シェム=トヴ作/母袋夏
生訳/岩波書店)には、シンタクラース祭のことが詳しく出ています。また、オラン
ダの国民的作家アニー・M・G・シュミットの作品で、タイトルもそのものずばり
『イップとヤネケ シンタクラースがやってくる!』(フィープ・ヴェステンドルプ
絵/西村由美訳/岩波書店)では、イップとヤネケがワクワクしながらシンタクラー
スを迎える準備をする様子が描かれています。お祭り当日、家にやってきたシンタク
ラースを前にして、緊張しすぎたイップは、ひとこともしゃべることができません。
果たしてイップはよい子にしていたのでしょうか?

*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*
「さて、ピート、荷物を出して。」シンタクラースが、黒いピートにいいます。
 ピートの持っていたふくろから、たくさんの包みが出てきました。とてもたくさん。
十こはあるでしょうか。イップとヤネケの頭文字のかたちをしたチョコレート。お人
形、飛行機。子ブタのかたちをした砂糖菓子。それに電車やショルダーバッグも。
「じゃあ、こんどは歌をうたっておくれ。イップ、うたえるかな?」シンタクラース
がいいました。
*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

 聖ニコラウスにちなんだこの祭りが、17世紀にオランダ人移民によってアメリカに
伝えられ、やがてアメリカ風のサンタクロースが生まれたとも言われています。
 なお、下記のシンタクラース・ジャーナルのサイトでは、毎晩放送されていた番組
を動画で見ることができます。11月17日分の放送では、シンタクラースとピートが蒸
気船に乗ってルールモントの港に到着する今年の様子が紹介されていますので、サイ
ト内の「filmpjes(ムービー)」をクリックしてご覧ください。

★参考文献・ウェブサイト
『世界各地のくらし(26) オランダのくらし』
                 (野田一郎監修/田中弘美文・写真/ポプラ社)
『オランダを知るための60章』(長坂寿久著/明石書店)
オランダ政府観光局公式ウェブサイト
http://www.holland.com/jp/tourism.htm
Sinterklaas Journaal 2012(オランダ語)
http://sinterklaasjournaal.ntr.nl/#/home

                           (村上利佳/笹山裕子)

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●読者の広場● 海外児童文学や翻訳にまつわるお話をどうぞ!
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 このコーナーでは、本誌に対するご感想・ご質問をはじめ、海外児童書にまつわる
お話、ご質問、ご意見等を募集しています。mgzn@yamaneko.org までお気軽にお寄せ
ください。

※メールはなるべく400字以内で、ペンネームをつけてお送りください。
※タイトルには必ず「読者の広場」とお入れください。
※掲載時には、趣旨を変えない範囲で文章を改変させていただく場合があります。
※質問に対するお返事は、こちらに掲載させていただくことがあります。原則的に編
集部からメールでの回答はいたしませんので、ご了承ください。

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●お知らせ●

 本誌でご紹介した本を、各種のインターネット書店で簡単に参照していただけます。
こちらの「やまねこ翻訳クラブ オンライン書店」よりお入りください。
http://www.yamaneko.org/info/order.htm
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           ・☆・〜 次 号 予 告 〜・☆・

 ニューベリー賞・コールデコット賞・プリンツ賞の発表にともなう号外を1月31日
に発行する予定です。どうぞお楽しみに!

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  やまねこ翻訳クラブ(yagisan@yamaneko.org)までお気軽にご相談ください。

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●編集後記●今年で15回目を迎えたやまねこ賞。当クラブでは、この投票が1年の終
わりを告げる風物詩になりました。みなさまは、今年はどのような本との出会いがあ
ったでしょうか? お読みになった本で、やまねこ賞にランクインしている作品もあ
ったかもしれませんね。来年も素敵な本とのめぐり会いがありますように。(か)
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発 行 やまねこ翻訳クラブ
編集人 蒲池由佳/大作道子/植村わらび(やまねこ翻訳クラブ スタッフ)
企 画 赤間美和子 井原美穂 大塚道子 岡田衣央 尾被ほっぽ 加賀田睦美
    かまだゆうこ 小島明子 笹山裕子 しまだまみ 武富博子 冬木恵子
    村上利佳 森井理沙
協 力 出版翻訳ネットワーク 管理人 小野仙内
    ayo からくっこ ながさわくにお めめこ ラッテ
    html版担当 ayo
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