クリストファー・ポール・カーティスといえば、黒人一家の絆と愛情をおもしろおかしく描きながら人種差別問題にも触れた『ワトソン一家に天使がやってくるとき』(唐沢則幸訳/くもん出版/原題
THE WATSONS GO TO BERMINGHAM――1963)の作者だ。そのカーティスが2作目BUD,
NOT BUDDY で2000年度のニューベリー賞を受賞した(ちなみに「ワトソン一家」でも1996年度のオナーに選ばれている)。
BUD, NOT BUDDY の舞台となっているのは、カーティスの故郷でもあるミシガン州の町。ときは大恐慌時代の1930年代だ。孤児院で暮らしていた10歳の少年バドが、新しく預けられた里親のもとを飛び出し、父親だと思われる人物に会いに行く。手がかりは、あるジャズ・バンドが載っているチラシ。バドは、母親が生前、そのチラシを見ていたときのようすから、バンド・リーダーでベーシストの「ハーマン・E・キャロウェイ」が自分の父親に違いないと思っていた。120マイルも離れた町に向かって歩いていたバドは、途中で出会った心やさしい人物に、目的地まで車で連れていってもらうことになる。ハーマンに会うバド。さて、本当にハーマンは彼の父親なのか……?
時代も時代だし、ストーリーも一見暗そうだが、さにあらず。作品の雰囲気は暖かく、ユーモラスだ。たとえば、物語の中に出てくる「バド・コールドウェルの楽しい毎日とうそ上達のためのルール」。これは6歳のときに母親を亡くしたバドが、ひとりで生きていくための知恵として、自分で作り上げたルールだ。第3条「うそをつくなら、簡単で覚えやすいものにすること」、第83条「大人に心配するなと言われたら、急いで心配しはじめること」などなど。くすりと笑えるものから、大人には耳の痛いものまで次々に出てくるこのルール、いったい何条まであるのやら……。
作者のカーティスは、前作同様、作品のあとがきで読者にストレートなメッセージを伝えている。実は、このあとがきにちょっとした種明かしが用意されているのだ。家族の絆を大切にするカーティスならではの、粋なあとがきをぜひ読んでみてほしい。もちろん、先に作品を読んでから、ということで。
(生方頼子)
BUD, NOT BUDDY
by Christopher Paul Curtis, 1999
(Delacorte $15.95 245pages)
未訳
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