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夏、といってももう残りわずかだけど、くよくよ考えずに楽しくいきたいもの。スカッと爽快な気分になりたい人には、『そらとぶいぬ』がおすすめ。 イギリスの桂冠詩人の遺作を、日本を代表する詩人が翻訳、と聞くとなにやらものものしいが、読んでびっくり見てびっくり。ヘタウマな絵もすごいが、話の「翔び」っぷりもすごい。 2匹の犬が、カーニバルの回転木馬にのっているうちに回転で投げ出され、落ちたところは電気自動車、正面衝突して投げ出されると、そこは観覧車で……と、どんどんとばされていく。そのあげく、どうなってしまうのか。最後のシーンがほっとさせる。 ペンギンのメスは、産卵するとオスに卵を預け、魚をとりに遠くの海まで出かけるのだそうだ。ではそのあいだ、オスはなにをしているのか。その答えが『ペンギン・カルテット ニューヨークへいく』だ。 とうさんペンギンは、息子3人と卵を連れ(?)、なんとニューヨークへ演奏旅行へ行っていた。スウェーデンの新進作家といいながら、アメリカのポップアートを思わせる「はじけた」絵本だ。 単純に楽しい2冊に比べ、『ウエズレーの国』は少々重く見えるかもしれない。町の中でひとりだけはみだしてる少年ウエズレーの物語だからだ。 だけど、ウエズレーはそんなことに悩んでなんかいない。自分の好きなことを好きなようにする、それだけだ。夏休みの自由研究に、「自分だけの文明」を創り出そうと思い立ち、見事にそれを実行する。はみだしてるから、独自だからこそできた、ウエズレーの国。 これは重い話ではなく、実は痛快な話なのだ。夏休みにぴったりの、とびっきりの冒険を思い切り楽しんでしまおう(もう残りわずかだけどね)。 (ながさわくにお) |
「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』1999年10月号掲載)のホームページ版です。
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