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オールOK! きみならできる!

「きみの行く道」表紙

『きみの行く道』
OH, THE PLACES YOU'LL GO! (1990)
ドクター・スース作・絵
伊藤比呂美訳
(河出書房新社 本体1600円)
「王さまの竹うま」表紙

『王さまの竹うま』
KING'S STILTS (1967)
ドクター=スース作・絵
渡辺茂男訳
(偕成社 本体1800円)
「どうして?」表紙

『どうして?』
WHY? (1998)
リンジー・キャンプ文
トニー・ロス絵
小山尚子訳
(徳間書店 本体1500円)

 大人のための「癒し」の絵本というものを、このところよく見かける。そこに描かれているのは、冒険ではなく応援歌、好奇心ではなく安心感、「あなたはそのままのあなたでいいのだ」という容認。それはそれで大切なことなのだが、ただ「それだけ」の本はあまり感心しない。そういうことは、やはりストーリーを通じて語ってもらいたいからだ。

 大好きな故ドクター・スースの新刊が出たというので見てみたら、この『きみの行く道』がまさに「応援歌」本。ストーリー性はないが、読んでいるうちに、その徹底的な応援ぶりが心地よくもなってくる。読者と同じ視点に立つのではなく、あくまで大人(人生の先輩)の視点から、やさしく見守るような語り口で、「きみならぜったいだいじょうぶ!」と太鼓判を押してくれる。この安心感といったらないだろう。子どもにとって、無条件にこんなことを言ってくれるおじさんがひとりはいてほしいものだ。

 同時期に、スースの名作『王さまの竹うま』も復刊された。こちらはストーリーテリングの王道。胸がどきどきするドラマを見せてくれる。無類の働き者であるビン王国の王様は、エリック少年と竹馬で走り回るのが至上の楽しみ。だがあるとき、いじわるなドルーン卿が竹馬を隠し、エリックを牢に閉じこめてしまう。竹馬とエリックの両方を失った王様は意気消沈。ふぬけた王様のために、王国に重大な危機が。愛するもの(物・者)がどれだけ人間のパワーとなるのかが、胸に迫る。

 そうそう、新刊も紹介せねば。奔放な子ども像に定評のあるトニー・ロスの新作は『どうして?』。このタイトルで内容はほぼ想像できるだろう。なににつけても「どうして? どうして?」でお父さんを困らせるリリー。そこへ巨大な宇宙船が現れ、ザーグ星人が降りてきた。リリーの「どうして」パワーは、ザーグ星人に通じるか? 子どもにはおもしろくてたまらず、大人には身につまされてたまらない絵本だ。

(ながさわくにお)

「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』1999年9月号掲載)のホームページ版です。

表紙の画像は、出版社の許可を得て掲載しています(無断転載不可)。

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