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今月は偶然、レイン・スミスの絵本が続けて出たのでご紹介しておきたい。1冊目は『とてもすてきなわたしの学校』。故ドクター・スースが未完成のまま遺した文章を、絵本として完成させたといういわくつきの作品。 ほかの学校とちがっている「なんでもスクール」の先生は、よそとちがった先生ばかり。それぞれが自分の考えをもっている。においのかぎわけや、むすぶことや、サボテンとめ牛のちがいを教えてくれる。誰もが入りたくなるこの学校に、ちょっとした騒動がもちあがった――。あくまで子どもたちの味方であり続けたスースからの、やさしさいっぱいの最後のプレゼントだ。 もう1冊は、悪友(?)ジョン・シェスカとのコンビによる『イカはいかようにしてもイカだ』。童話パロディの怪作『くさいくさいチーズぼうや&たくさんのおとぼけ話』(ほるぷ出版)でもおなじみのこのコンビ、今度はイソップ寓話で遊んでしまった。メチャクチャ度は前作を超えたかも。ちなみに副題が「イソップが生きていたら話していたにちがいない、いやらしいたとえ話(みずみずしい教訓つき)」。どのくらいみずみずしい教訓なのか、ご確認いただきたい。『とてもすてきなわたしの学校』と同じ作家とは思えないほど、毒気たっぷり。あなたなら、どっちを先に読む? にぎやかなスミスの絵本とは対照的な静謐さをもつのが、中国生まれのコールデコット賞作家エド・ヤングの『七ひきのねずみ』。内容は「群盲、象を撫ず」の一言で説明したも同然なのだけれど、黒い背景の上にコラージュされた単純な画面構成が、七色のねずみたちをはじめとするカラフルな素材を引き立たせ、安定感のあるデザインを実現させている。視覚的に表現するのが難しい題材だけに、このアイデアは拍手ものだ。 楽しい絵本で笑ったあとで、美しい絵本を眺めるのも、また格別の味わい。 (ながさわくにお) |
「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』2000年1月号掲載)のホームページ版です。
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