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大人になれば、わかるよ。

「くまのアーネストおじさん とおいひのうた」表紙

くまのアーネストおじさん
 とおいひのうた』

ERNEST ET CÉLESTINE: UNE CHANSON (1998)
ガブリエル・バンサン作
もりひさし訳
(BL出版 本体1400円)
「サン・トロペ」表紙

『サン・トロペ』
SAINT-TROPEZ (1968)
ジャン−ジャック・サンペ作・絵
荻野アンナ訳
(太平社 本体2700円)
「シンプキン」表紙

『シンプキン』
SIMPKIN (1993)
クエンティン・ブレイク作
まえざわあきえ訳
(朔北社 本体1400円)

 若い時分にこそ味わえる感情もあれば、年齢を重ねることでより深まっていく感情もある。幼い頃に読んでおきたい絵本もあれば、老人になってもまた読み返したい絵本だってある。

 ガブリエル・バンサンの「くまのアーネストおじさん」シリーズ最新巻『とおいひのうた』は、10年後、20年後にまた読み返したくなる作品だ。街角でバイオリンひきに出会い、「何か」に心乱されるアーネスト。いつも互いを思い、心を通い合わせるアーネストとセレスティーヌだが、今回は、簡単には分かち合うことのできない感情がテーマとなる。個のなかでわきあがり、くすぶる想い。ふたりはそれにどう対処していくのだろうか?

 完全に大人向けの絵本なのが、サンペの『サン・トロペ』。60年代に高級リゾート地として名を馳せた港町サン・トロペを舞台にしたこの作品、断片的なスケッチと小さなコママンガなどで構成され、一貫したストーリーというものはない。一貫して流れているのは、退廃した雰囲気とでもいうべきもの。「ささやかな漁師町なんです。」という冒頭、満艦飾のヨットとスポーツカーがひしめきあっている図は、サンペ独特の皮肉たっぷり。ヒッピー、反体制、インテリ、開放、セックス――そんなキーワードで彩られた、たくさんの青春。そして、若者たちも確実に年をとっていく。ため息とともに語られるのは、美しい思い出か、若者へのルサンチマンか。大人になると、説明のしようがない感情が増えてくるものだ。

『みどりの船』などで知られるクエンティン・ブレイクの新作『シンプキン』は、「へなちょこのときもあれば、つよいときもある」男の子の気まぐれと多面性を、単純に楽しく描いている。そう、「内気な子ども」「元気な子ども」なんていうレッテルはもうやめようじゃないか。いつも元気な子どもなんて、いるわけないんだから。

(ながさわくにお)

「キッズBOOKカフェ」(月刊『翻訳の世界』2000年3月号掲載)のホームページ版です。

表紙の画像は、出版社の許可を得て掲載しています(無断転載不可)。

3月号「洋書でブレイク」

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