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ニュージーランドの賞レビュー集 一覧

エスター・グレン賞  ラッセル・クラーク賞

ニュージーランド・ポスト児童書及びヤングアダルト小説賞

このレビュー集について 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メルマガ「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていない作品については原作を参照して書かれています。



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 やまねこ10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」レビュー集

エスター・グレン賞(ニュージーランド) レビュー集
Esther Glen Award

 

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最終更新日 2009/09/01 リンクを1点追加

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 10周年記念「世界の児童文学賞ラリー」においてやまねこ会員が個々に書いたレビューを、各児童文学賞ごとにまとめました。メ ールマガジン「月刊児童文学翻訳」「やまねこのおすすめ」などに掲載してきた〈やまねこ公式レビュー〉とは異なる、バラエティーあふれるレビューをお楽しみください。
 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていな作品については原作を参照して書かれています。


以下の受賞作品は、他の賞のレビュー集ですでにレビューを公開しています。

2003年 "Buddy"『バディ たいせつな相棒』  * 2009年 "Old Drumble"追加


 "Losing It" NEW


2008年エスター・グレン賞候補作品

"Losing It" (2007) by Sandy McKay サンディ・マカーイ (未訳読み物)

その他の受賞歴 


 15歳のジョアンナは摂食障害で病院に入院している。摂食障害が始まったのは数年前、弟マットの出産直後からうつに悩まされるようになっていた母が失踪したころだった。自分では病気だと思っていないので、治療には積極的ではない。
 入院中のジョアンナに、親友イジーが手紙をくれる。お見舞いの手紙ではなく、自分や学校でのできごとなどをつづったごく普通の手紙である。それに対してジョアンナもごく普通に子どものころの思い出の話や、病院でのことなどを書く。一方、父からの手紙には返事を出すこともなく、面会も頑なに拒否していた。
 病院では治療の一環として、グループセラピーも行っていた。メンバーは6人で、順番に自分のことを話す。最初は居心地の悪さを感じていたジョアンナだが、少しずつ慣れていき、特にただひとりの男の子、レオンとは心を通じ合わせていく。
 病院内でときおり、いつも黒づくめのゴシック風ファッションに身を包んだ車椅子の女性を見かけることがあった。名前を知って、ジョアンナが気になっていたトイレの壁に書いてある詩の作者が彼女であることを知り、興味を持つ。しかし病状が悪化し、ほかの病院で治療を受けることになったため、姿を消してしまった。

 食べることを頑なに拒んでいた――自分は異常ではないと思っていた――ジョアンナが、あるできごとをきっかけに、これではいけない!とめざめていく。物語はジョアンナと親友イジーの手紙のやりとりや、父や弟からの手紙、ジョアンナが母に宛てた手紙、ジョアンナの日記、トイレの壁の落書き、病院に掲示してあるお知らせなどで構成されており、いわゆる「地の文」はない。その中で、ジョアンナが摂食障害になったきっかけや精神状態が断片的に描かれていく。
 グループセラピーの仲間が摂食障害に陥ったきっかけは人それぞれで、立ち直れるかどうかもさまざまである。最悪の結果を招いてしまうこともあれば、退院してもまた病院に戻ってくるようなケースもある。ジョアンナが立ち直れたのは、最終的には本人の意志の問題だが、イジーの友情や家族の愛、そして、いつも前向きで明るく、ジョアンナが立ち直れることを信じていた看護師ドットなど、周りの人間に負うところも大きい。
 雑誌の記事を書くため、読者から摂食障害の体験談を募ったときに寄せられたエピソードが反映されているという。

(赤塚きょう子) 2009年5月公開

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 Russell Clark Award

 

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最終更新日 2009/08/02 新規公開(レビュー1点)

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 なお、レビューは注記のある場合を除き、邦訳の出ている作品については邦訳を参照して、邦訳の出ていな作品については原作を参照して書かれています。


以下の受賞作品は、他の賞のレビュー集ですでにレビューを公開しています。

2004年SL Grandpa and Thomas


 "The Duck in the Gun" 『大砲のなかのアヒル』 NEW


1985年ラッセル・クラーク賞受賞作品

"The Duck in the Gun" (1984) by Joy Cowley ジョイ・カウリー(コウレイ),  illustrated by Robyn Belton ロビン・ベルトン(邦訳絵本)
『大砲のなかのアヒル』  ロニー・アレキサンダー/岩倉務 共訳 平和のアトリエ 1990年

その他の受賞歴 


 将軍が、兵隊をひきいてやってきました。城壁に囲まれた町を攻撃するのです。ところが、大砲の中にアヒルがたまごを産み、いすわってしまいました。
「戦争ができないじゃないか!」困った将軍は、敵の市長さんに相談し、3週間の休戦を決めます。その間、兵士たちは失業です。市長さんの提案で、兵士たちは、町の家々のペンキを塗りかえ、賃金をもらいました。みすぼらしかった町が、きれいになっていきます。
 3週間後、8羽のヒナと一緒に、大砲からアヒルが出てきました。兵士たちは、愛らしいアヒルの親子に万歳三唱! でも、将軍が「戦争再開だ!」と叫ぶと、一同は黙ってしまいました。兵士たちは、きれいになったあの町を破壊したくないのです。もう戦争はやめたいというのです。将軍は、考えた末に、再び市長さんに会いにいきました。

 1960年代に、ベトナム戦争反対の気持ちをこめて書かれたお話。初めはアメリカで出され、その後、ニュージーランドで出版される際に、ロビン・ベルトンが新たに絵を描いた。邦訳は「世界・平和の絵本」シリーズの1冊として出版されている。
 19世紀のヨーロッパの町を舞台にしたこの作品は、物語と絵がぴったりマッチして、昔話ふうのほのぼのとした雰囲気をかもしだしている。シンプルなストーリーにユーモアがたっぷりで、幼い子どもでも親しみやすい。主役のアヒルがなかなか顔を出さないので、アヒルの姿をさがしながら読むのも楽しそうだ。
 大砲で町をぶっとばそうとしていた将軍が、1羽のアヒルのために休戦を決めるところが印象深かった。「アヒルごと撃ちましょう」という部下の意見には、なぜか耳を貸さなかった将軍。豪華な軍服を着て威張りくさった姿とのミスマッチに、思わず笑ってしまう。将軍は、案外やさしい人なのかもしれない。
 反戦をテーマにした絵本としては、少々軽くも思えるが、決してきれいごとではなく、現実に起こり得る話だと私は思う。原書は長い間絶版だったが、2009年にWalker Booksから復刊された。ロングセラーになってほしい。

(大作道子) 2009年8月公開

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